ふたば系ゆっくりいじめ 906 蟷螂の斧

蟷螂の斧 5KB


都会 ほんの少し未来の話 狂人 鬱話 黒二行作



【はじめに】

 このSSは、フィクションです。
 違法行為を奨励するものではありません。

 単純明快な虐待や愛でを求める方は、読まないことをお勧めします。 





【本編】

『蟷螂の斧』


 以前と比べて、大きく変わったことが、2つある。

 1つは、道行く人間の表情だ。
 長引く不況、という理由だけでは片付けられないほど、暗く、淀んでいる。

 何が原因だろう。
 TVや居酒屋やインターネットでは、盛んに議論だけが交わされた。
 政治が悪いとか、娯楽のせいだとか、他国の仕業だとか。
 そして議論することにも疲れ果てると、誰も何も言わなくなった。

 私も、そんな人間の1人だ。
 仕事をクビになりたくない、という理由だけで、毎日仕事らしいことをやっている。

 それでも、人生に疲れた人間を、優しく包む場所は確かにある。
 例えば、公園のベンチだ。
 仕事帰りに、ふと腰掛け、夜空を見上げる。
 それくらいの権利は、誰にだってある。

 目の前を、丸い影が、のそのそと横切る。
 大きめのれいむと、小さなまりさの親子。子供は、2匹だ。

 私は、れいむ達と目があった。
 すると、3匹のゆっくりは、こちらへ向かって歩み寄ってくる。

 私の前まで来ると、親子は顔を地に付けたまま、動かなくなった。

 これが、2つ目の変化だ。
 物乞いしているのではない。その方が、何倍もマシだろう。
 ゆっくりは、ただただ、潰されるのを待っているのだ。

 非暴力主義者を気取っているのか。
 違う。
 生きる苦しみから逃れるための、自殺だろうか。
 それさえ、違う。

 私は、小さな饅頭を、ゆっくりと踏む。
 潰す意思が出る前に、ひしゃげて、まりさはいなくなった。
 もう1匹も同じように、やる。
 子供のはずなのに、うめき声1つ立てない。

 その時、嫌でも気付く。
 ゆっくりは、一切を諦めてしまったのだ。

「おい」

 私はれいむに話しかけたが、返事はない。

「お前の子供が、死んだぞ」
「・・・・・・」
「何か言ったら、どうなんだ」
「・・・ゆっくりは、つぶされるためにあるんだよ」
「それで、いいのか?」

 昔は、ゆっくりはもっと、生きようとしていた。
 無知でも、無力でも、精一杯抵抗した。
 その様を誰もが、面白がったものだ。

 そして、気付いてしまったのだろう。

「ゆっくりは、さいていの、いきものだよ。
 だから、つぶされて、とうぜんなんだよ」

 れいむは、語ってしまった。
 自虐とか、卑下とか、最早、そんなものじゃない。

「それで、いいのかよ・・・」
「おにいさん、れいむをつぶして、ゆっくりしてください」
「れいむ、それがお前のゆん生か」
「ゆ?」

 初めて、れいむが顔を上げた。

「誰かに殺されるために、お前は生きてきたのか」
「だめだよ、おにいさん。ゆっくりは、はなしあいてじゃ、ないよ。
 れいむなんかと、はなしていると、あんこのうって、いわれちゃうよ」
「私はな、れいむ。お前と大して変わらないんだよ」
「ゆゆ?」
「お前達は、ゆん生を一瞬で踏み潰される。
 私達は、人生をじわじわと踏み潰される。
 抵抗し難い、大きなものに、な」

 私は、何をしゃべっているのだろう。
 幸いと言っていいのか、周りに咎めるものは、いない。
 そんな慈悲深い人間が、1人でも残っているのか?

「れいむ、ゆっくりはな、人間と違う生き物なんだ」
「そうだよ。れいむと、おにーさんは、ぜんぜんちがうよ」
「ゆっくりというものはな、感情豊かでなきゃいけないんだ。
 泣いて、喚いて、怒って、喜んで。
 ほんの些細なことで、馬鹿みたいに、反応して、な。
 それを愛でたり、虐めたりするから、面白いんじゃないか」
「ごめんなさい、おにーさん。
 れいむは、つぶされるしか、のうがないんだよ」
「やめてくれ!」

 自分でも驚くほど、大きな声が出てしまう。

「何だよ、お前は、今の、お前達は」
「おにーさん・・・」
「まるで、今の人間と、同じじゃないか
 どうしてゆっくりなんかを、鏡みたいに見なきゃいけないんだよ」
「れいむには、むずかしいことは、ゆっくりりかいできないよ。
 おにーさん、つかれてるんだよ」
「ああ、そうだ、疲れてるんだ。
 無駄に歴史を重ねた結果が、これだよ!」
「おにーさん、ゆっくりしてね!
 はやくれいむを、つぶして、ゆっくりしてよ」
「れいむ、お前は、自分が死ぬことが分かってるのか?
 喚けよ! 叫べよ! 怒れよ!」

 私はれいむをつかむと、何度も何度も、自分の足にぶつけた。

「こうやって、こうやって、こうやって、飛び掛れよ!
 おちびちゃんを返せ! このゲス人間って!」
「ゆぐっ! おちびちゃんは、ゆっくりつぶされたよ。それだけだよ」
「悔しがれよ!」

 頬を握って、思い切り、引っ張る。

「ぷくーだ、れいむ! こうやって、膨らんで、怒るんだよ!
 ぷくーってやれよ! ぷくぅぅぅぅぅ!」
「・・・・・・」
「この歯で、噛み付いてこい!」
「・・・・・・」
「せめて、目で、睨め!」

 まるで、説得だ。
 自分でも、馬鹿馬鹿しいとは、思っている。
 それ以上に、衝動を、押さえられない。
 何だろう。

「考えろ!」

 いったい、私は、どうしてしまったんだろう。
 目の前のれいむは、明らかに困惑していた。

 ゆっくりれいむの口を、手で大きくこじ開ける。
 饅頭の奥に向かって、私は怒鳴りつける。
 意味のある言葉じゃない。
 叫んだのは、単なる感情の羅列だ。

 私は、帰宅途中であることを思い出した。
 れいむを抱えたまま、歩き出す。 
 ともあれ、自宅のドアを開かなくてはいけない。
 そこまでは、これまでの自分だ。
 部屋に入り、ドアを閉めた時。
 それからは、これからの自分だと、途切れそうな意識が告げていた。





 2日後。
 国会議事堂の鉄門に、白い乗用車が突っ込んだ。
 激突防止用の鉄柱に阻まれ、国の被害としては、鉄の柱と枠が、僅かに凹んだだけだった。
 車の中には、男が1人と、何故かゆっくりれいむが1匹。
 どちらも頭の中身を盛大にぶちまけて死んでいた。
 ただ、血と餡子に塗れたその表情は、意外にも穏かであったという。





(終)





【過去作】




※ぬえ
 nue059 「スキャット・ゆん・ジョン」
 nue022 「ゆナッフTV」
 nue009 「ブラックペーパー・チャイルド」

 その他の作品に関しては、ふたばSS@WIKIの『二行の作品集』をご覧下さい。
 何かとお世話かけているWIKIあきに、感謝。


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感想

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  • 蝙蝠要素どこ? -- 2023-04-21 16:47:24
  • ゆっくりを虐待する気力も愛でる気力も根こそぎ削られたわけか…
    こういう時こそゆっくりの出番だろう -- 2014-06-07 11:27:23
  • あの瞬間、虐待派は死んだ―― -- 2012-12-02 12:02:42
  • ゆっくりは人間というモノの鏡であるという考え方ですな…うむ -- 2012-11-11 20:22:21
  • これは深いな…良くも悪くも凄い作品だわ

    ↓↓愛で虐待派だぞ!間違えるなよ! -- 2012-04-12 00:48:44
  • …現代社会…マジで洒落にならなくて…笑えませんね…冷や汗モノですよ。 -- 2010-11-29 05:14:47
  • ゆっくりは可愛いからこそ潰したいと思ってる愛で派の俺にはつらいぜ・・・ -- 2010-11-27 12:15:00
  • 洒落にならなさすぎて笑えないな… 深いぜ -- 2010-11-21 22:31:32
  • これはある意味現代社会を捉えている深い話だと思う -- 2010-10-23 12:23:15
  • 一匹のゆっくりが絶望するだけなら喜劇になるけど、すべてのゆっくりが絶望したら悲劇にもならないんだね
    ただひたすら空虚なだけだ -- 2010-09-25 23:08:35
  • 作者は多分病んでいる -- 2010-09-25 21:26:12
  • なんか笑えんかった。面白くないという意味でなく。多分シャレにならんと思ってしまったのか・・・ -- 2010-08-18 02:34:45
  • なんか・・・仮にゆっくりが絶滅するのならば、こんな感じなんかなあ・・・・ -- 2010-06-29 22:45:28
最終更新:2010年02月28日 19:47
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