ふたば系ゆっくりいじめ 929 ブラック・スイーツ・ちぇぇぇぇぇんソー

ブラック・スイーツ・ちぇぇぇぇぇんソー 5KB


現代 バレンタインもの 二行作



【はじめに】

 当SSは、愛で寄りかもしれません。
 心にモヒカンがある方は、ご注意下さい。

 餡コンペで胴付き美ゆをもらった人がいると聞いて、カッとして書いた。
 ふらんの飼い主は、その淫猥な性活をどろわだに上げるべきそうすべき。

 あと『虐チョコ』が被った。
 切ない。





【本編】 

 その日、広くて場末な公園に、ちょっとした囲いが作られた。
 大人であれば一跨ぎで通れるくらいの柵が、四方に張り巡らされている。

 この中にウサギやハムスターでも入れれば、子供も大人も癒される催しとなろう。
 しかし、今日柵の中に放たれるのは小動物ではない。
 大小織り交ぜた、ちぇんである。

 集う人間も、純真無垢な幼子では決してない。
 むしろ人生に疲れ、腹の底に鈍い怒りを溜めた大人達だ。

 今日は2月14日。
 そして、ちぇんの中身はチョコレート。
 ゆっくりの跳躍力では決して逃れられない囲いの中に、沢山のちぇんが入れられる。
 ほぼ同時に、続々と入場する鬼威惨達。
 身勝手な復讐の幕が、切って落とされようとしていた。





『ブラック・スイーツ・ちぇぇぇぇぇんソー』 (作・二行)





「ヒャッハー! バレンタインは虐殺だー!」

 ゆっくりできない形相で迫る鬼威惨達。
 当然ながら無数のちぇんは、逃げる、逃げる、逃げる。 

 今までなかったのが、不思議なくらいだ。
 生きるチョコレート・ちぇんを思う様虐待し、心の闇を晴らす催し。
 近年、バレンタインに怨みを持つ紳士達の間で、静かなブームとなっている。

「わかるよー。わかるよー」
「わかるよぉ?」
「わかるよぉぉぉ!」

 このイベントに使われるちぇんには、ある工夫が施されている。
 本来あるべき言語が、極端なまでに抑制されているのだ。
 要は、『わかるよー』としか喋れない。
 余計な言葉で参加者のハートを傷付けまいとする、主催者の心憎い気配りだ。

「ヒャッハー! リア充は虐待だー!」
「わかるよー!」
「ギャッハー! 非モテは自由だー!」
「わかるよぉぉぉ!」

 余程、うっぷんが溜まっているのだろう。
 誰も彼も、あっさりちぇんを潰そうとはしない。
 狭い空間を縦横無尽に走り回り、地獄の追いかけっこを楽しんでいるのだ。

 頃合を見計らい、係員がチェーンソーを配る。
 もちろん本物ではない。
 駆動音と振動が無闇に再現された、ゴム製のオモチャである。

 しかし、それを持つ鬼威惨の姿は、まるで13日なアレのよう。
 スイッチを入れれば、男らしいバイブレーションが両腕を覆う。
 これでテンションが上がらない方が、どうかしている。

「ヒャッハー! 1匹残らず、皆殺しだー!」
「わかるよ! わかるよー!」

 人間には無害でも、柔らか生き物に押し付ければ、簡単に死ぬだろう。
 それ以上に、チェーンソーを振り回して追い掛け回す絵面が怖過ぎる。
 逃げるちぇんも、後ろ向きにテンションが上がり、やがて恐慌状態に入る。

「わかる! わかるっ! わかるよー!」
「ヒャッハー! バレンタインは潰せー!」
「わかるよぉぉぉ!」
「ヒャッハー! 虐チョコだー!」
「わかるよぉぉぉっ!」

 荒い息が聞こえる。
 いくらフルテンション状態とはいえ、人間の体だった。

 やがて、ある変化が訪れた。

「わかるよー!」
「何が、わかるよー、だ」
「わかるよぉ!」
「お前に、何が分かるってんだよぉぉぉ!」
「わかるよ・・・」
「嘘付くな、ゆっくりのくせに!」
「わかるよーっ」

 鬼威惨が、逃げ惑うちぇんと会話を始めるのだ。
 本当に、それが成り立つはずはない。
 きっと本質は、自己との対話だ。

「俺は、年齢=彼女いない歴なんだよぉ!」
「わかるよー」
「それだけで、なんで人生の落伍者みたいに言われなきゃいけねえんだ!」
「わかるよー」
「畜生、俺だってイチャイチャしてえよ!」
「わかるよー」

 仕舞いには、参加者がちぇんを抱き上げて泣き出す始末だ。
 鬼威惨もちぇんも、お互い頬を涙で濡らしている。
 しかし、2筋の涙の意味は、それぞれ別のものなのだろう。



 社員は、そんな光景を遠くから眺めていた。
 彼はこのイベントを主催した会社の人間だ。それ以上でも以下でもない。

 社員はおもむろに立ち上がると、泣いている男達に、1人1人声をかける。

「よろしかったら、ちぇんをお引取りになりますか?
 1匹、1300円ですが・・・」

 ほとんどの人が買っていく。
 このイベントでは、潰されるちぇんよりも、飼いゆになるものの方が遥かに多い。
 慰められたと錯覚し、誤解し、愛着がわいてしまうのだろう。

 1匹1300円。
 言語抑制済みの飼いゆっくりとしては、良心的な値段。
 しかしその実、非モテの弱みに付け込んで小銭を巻き上げている。
 アコギな商売であることは間違いない。

 救いは、男達も買われていくちぇん達も、ゆっくりした表情を見せていることだ。

 社員はバイトを呼んで、器材の撤収を指示した。
 自分は、運悪く果てたちぇんを袋に詰め込む作業に入る。

 たった1匹だけ、潰されることも買われることもなく取り残されたちぇんが、いた。
 何を思っているのか。
 染まり始めた夕焼けの色に照らされ、妙に寂しく見える。

 残されちぇんを社員は手に取り、戯れ半分に話しかけた。

「お前は運が良かったのかな、悪かったのかな」
「わかるよー」
「大勢のお仲間が買われていったぞ。羨ましいか?」
「わかるよー」
「羨む。バレンタインってのは、そんなに良いものなのかねえ」
「わかるよー」
「まぁ、嫉妬ってのは邪悪な思いだが、救いもある」
「わかるよー」
「自分の中に希望がなければ、心が疼いたりはしないものだ」
「わかるよー・・・」

 ちぇんは一声鳴いた後、じっと、社員の方を見つめた。
 お前は、どうなんだ。
 言われた気がした。

「分からないよ・・・」

 無造作にちぇんを袋に詰め、車のトランクに押し込む。
 扉を開け座席に座ると、男は息をひとつ、吐く。

 もしかしたら、嫉妬できることに嫉妬してるのだろうか。
 或いはそれもまた、希望なのかもしれない。
 そんな取りとめのないことを考えつつ、男はハンドルを握り締めた。





(終)





【過去作】




※ぬえ
 nue059 「スキャット・ゆん・ジョン」
 nue022 「ゆナッフTV」
 nue009 「ブラックペーパー・チャイルド」

 その他の作品に関しては、ふたばSS@WIKIの『二行の作品集』をご覧下さい。
 餡娘ちゃんとWIKIあきに、深謝。
 前回の薄暗いSSを楽しんでくれた、とっしーとゆ虐怪獣さんに、感謝。


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感想

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  • 鎖 -- 2014-06-07 11:32:56
  • 最後のわからないよ… -- 2012-09-19 18:34:23
  • 「おまえ、そこ気にしなくていいよ。」と思うかもしれんが、13日はチェンソー使いません。
    使うのは、テキサスな奴と悪魔な奴です。本当に細かいことですみません。
    -- 2012-07-29 21:31:25
  • わからんでもない…
    最後の独白が良い感じだな -- 2010-11-25 18:43:38
  • わかるよー -- 2010-09-29 16:38:06
  • 仕事とかで嫌なことがあると思う。ゆっくりが欲しいと。
    愛で・虐両方の意味で。 -- 2010-06-20 10:54:39
最終更新:2010年03月02日 20:11
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