ふたば系ゆっくりいじめ 1124 おひさまさんをつかんでしまった

おひさまさんをつかんでしまった 7KB


パロディ 小ネタ 悲劇 飼いゆ 野良ゆ 愛護人間 雰囲気モノ 二行作




【はじめに】

 今回は、雰囲気モノです。
 説明不足とも取られる描写がありますが、仕様ですのでご了承下さい。





【本編】 

『おひさまさんをつかんでしまった』 (作・二行)


 太陽をつかんでしまったまりさは、ライオンの付いたプールで死んでた。





 まりさは野良ゆっくりだった。
 同じ境遇のありすと一緒に、つつましく暮らしていた。

 初めておちびを授かった時の感動を、まりさは忘れない。
 そんな何ものにも換え難い宝物は、野良猫があっというまに連れ去ってしまった。

 悲しみに押し潰されそうになりながら、2匹の饅頭は街をさまよう。
 いつのまにか、まりさは宙に浮いていた。

 振り向けば、大きな大きな人間さんの腕。
 無駄を承知の抵抗。慟哭するありす。
 覚えているのは、そこまでだ。


 華やかなカーペットの上に、雲のようなソファーが敷かれている。
 自分がそこに寝かされていたことに、まりさはようやく気が付いた。

 頭を起こすと、瞳の先に広い芝生。
 穏かな風、美しい泉、整備された花壇。
 まるで楽園のような光景を目の当たりにして、まりさの餡子は硬く震えた。
 これは人間さんのおうちだ。野良がここに入れば、生命はない。

 まりさは逃げることさえ諦めた。
 頭をふかふかさんに突っ込む。
 ずっとゆっくりさせられる前に、せいぜい目の前のゆっくりを楽しもう。

 尻丸出しのまりさに、ゆっゆっと呼びかけるものがいる。
 再び頭をもたげると、目の前にいたのは楽園の素敵な饅頭。
 見たこともないほどの美れいむだった。


 まりさは知るよしもないことだったが、ここは気の毒な金持ちの家だった。
 何が気の毒かといえば、有り余る財産をゆっくり如きに費やしていたからだ。
 ある時は、ゆっくり型のカラクリ時計を街に寄贈したり。
 ある時は、ゆっくりの群れがいる山を買い取り、愛護団体に預けたりしていた。

 そんな彼が一番大事にしていたのは、丹精込めて育て上げたれいむだった。
 湯水の如く金を注ぎ込んだ甲斐もあり、品評会では信じられないほどの値が付いた。
 勿論、金持ちにれいむを売る気はない。
 大輪の薔薇を思わせるリボン、黒い絹を思わせる髪の毛、聖母のようにふくよかな頬。
 何より慈悲深くものどかな性格が、男の気持ちをつかんで放さなかったのだ。

 れいむは通常種とは思えないほどの謙虚さを保ち、我儘など口にしたこともない。
 しかしたった一度だけ、自分の希望を金持ちに打ち明けた。
 飼い主と車に乗って出かけた時に見かけた、野良まりさ。
 そんな貧乏ゆっくりに一目惚れしてしまったのだ。
 出来れば、あのまりさと一時で良いから一緒にゆっくりさせてほしい。
 そんな細やかな願いであった。

 金持ちは親馬鹿の常として、過剰に反応した。
 即座に野良まりさを拉致し、最高級のクリーニングを施した後、家に連れてきたのだ。

 そんな黒饅頭は今、ゆっくり用ソファーに頭を突っ込んで震えている。
 れいむの呼びかけでようやく身を起こしても、どこかオドオドとしていた。
 金持ちはそんな光景を、微笑ましく眺めている。

 今から2匹は番だと告げられた時、美れいむも野良まりさも困惑した。
 だが、美れいむの表情はすぐに紅潮する。
 末永くよろしくお願いします。
 おおよそゆっくりらしからぬ求婚の言葉を、まりさは跳ね除けることが出来なかった。

 こうして、野良まりさは飼いゆっくりとなった。
 それも愛護セレブの下で、美れいむの夫としてである。
 まりさは生涯に渡るゆっくりを約束されたのだ。
 まるで太陽を手中にしたかのような僥倖であったに違いない。



 太陽をつかんでしまったまりさは、太陽から手を離したくなかった。



 まりさは1匹で過ごすことが多かった。
 美れいむはセレブの飼いだけあって、パーティーなどに引っ張りだこだったのだ。
 番とはいえ、まりさの出番はなかったし、行きたいと思ったこともなかった。

 美れいむとまりさには、小さいながらも家が与えられている。
 屋敷の中に建てられた、庭付き一戸建ての豪勢なゆっくりプレイス。
 道楽の極みであった。

 よくまりさは、庭にあるプールの側でゆっくりしていた。
 プールには常に花びらが浮かべられて、鮮やかな色彩を湛えている。
 時折まりさは、帽子に乗って遊泳をしたりする。
 それを美れいむが、ことのほか喜ぶからだ。

 留守番まりさは、今は泳ぎ回ることもなく、ひなたぼっこをしている。
 プールの端には一段高いところがあって、そこが黒白饅頭のお気に入りであった。
 水上の花びらが気ままに泳ぐ様を見下ろす。見ていて飽きない。

 プールの真ん中にはどういうわけか、大きなライオンの半身像がある。
 マーライオンよろしく、獅子の口からは水が絶え間なく流れ落ちていた。
 大きな顔をしたそれもまた、まりさには好ましく思えるのだった。

 ライオン像の向こう側には、生垣がある。
 厳重な塀ではない。その気になれば抜け出すことも可能だろう。

 今の暮らしを、あのありすはどう思うだろう。
 かつての番を、まりさは忘れてはいなかった。
 いっそこっそり迎えに行こうかと思ったことも、ある。

 思い出すのは、野良としての毎日。
 人間、動物、同族、環境、天候。
 全てが明確な敵意を持っていた。

 もしあの生垣を越えてしまえば、2度と帰ってこれないかもしれない。
 そうなったら、またあの頃に戻ってしまうのだ。

 この庭から、出られるはずもなかった。



 太陽をつかんでしまったまりさは、どうしてもそこから動けずに立ってた。



 穏かな昼下がり。まるで、この家に来た日を思い出す。
 空の太陽は遥か高みにあり、幸福を手に入れたまりさを照らし出していた。

 ライオンの右肩越しに、花壇が見える。
 以前なら、餌場としか見ることが出来なかっただろう。
 毎日ゆっくりとしたご飯を頂いている今では、自生する花は景観でしかない。

 整備された花々の名前を、まりさは知らない。
 美れいむは知っているようで、ひとつひとつ教えてはくれたのだが。
 それでも、まりさは思う。
 どれかの花が抜かれて仲間達と別れることになれば、泣いたりするんだろう、と。

 飼いまりさは、番を思い浮かべた。
 ありすではない、美れいむの方を。
 確か今日は、飛行機というものに乗ってパーティーに向かっているはずだ。

 飛行機は、どこまでも高く、お空を飛んでいけるのだという。
 まりさは、別段それを羨ましくは思わない。
 今以上のものを、望みたくもなかった。


 風がいつもより強く吹いたようだった。
 自分が空を飛んでいる気がしたのだ。

 いつのまにか、まりさは宙に浮いていた。
 飼い饅頭は仰向けの姿勢で空を見つめる。
 きっと、後頭部の下にはプールがあるのだろう。
 自分の上に、ありすがいた。
 突き飛ばされたのか。

 逆光でその表情はうかがえない。
 見慣れたカチューシャだけが、僅かに確認できた。
 赤いお飾りが震えている。
 そのことが、何故ここにありすがいるかということよりも、心に残った。

 最期にまりさの中身に浮かんだのは、家族のこと。
 ありすと、2匹のおちびに囲まれた、あの頃の夢。

 激しい水しぶきが上がる。
 深いプールに2匹が沈み、形を失っていく。
 かつて愛し合った2つの生命が、1つに溶け合って結び合う。
 それはゆっくりに許された、数少ない至福であったのかもしれない。

 まりさには意識も生命も残されてはいない。
 僅かなシミだけを水の底に残し、やがてそれも排水口へと消えていった。
 お帽子だけが名残のように、優しく浮いている。
 陽光のような花びらに囲まれて、ゆらり、ゆらり、ゆらり。





 太陽をつかんでしまったまりさは、ライオンの付いたプールで死んでた。





(終)


挿絵 byめーりんあき



【過去作】





※どろわ&ぬえ
 draw006 「パラダイゆch」
 nue079 「素晴らしき世界」
 nue059 「スキャット・ゆん・ジョン」
 nue022 「ゆナッフTV」
 nue009 「ブラックペーパー・チャイルド」

 その他の作品に関しては、ふたばSS@WIKIの『二行の作品集』をご覧下さい。
 餡娘ちゃんとWIKIあき、感謝。



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感想

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  • He got the sun -- 2016-08-14 00:35:45
  • ありす、、、、、、、、、 強し -- 2013-07-17 21:00:33
  • 人の飼いゆっくりを殺すとは何とゲスなアリスだ!!(棒) -- 2011-10-30 22:30:47
  • ・・・MGEか?>ミッシェルの唄だね。
    -- 2010-11-29 21:49:41
  • どうやって侵入したんだろ?
    なんか映画みたいな雰囲気だね。 -- 2010-07-26 02:22:26
  • ありす… -- 2010-07-20 02:31:45
  • ・・・MGEか?そうなのか!?
    -- 2010-07-12 22:33:08
最終更新:2010年04月12日 12:46
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