ふたば系ゆっくりいじめ 1055 さげゆん

さげゆん 10KB


虐待-いじめ 観察 桃の節句記念 二行作




【はじめに】

 桃の節句にちなんだ即興SSです。
 過度なヒャッハーは期待しないで下さい。

 なお、登場する方言は適当です。
 あと、ネタが被っても泣かない。





【本編】

 2月下旬、早朝。
 町の男達は、軽トラックからポリバケツを降ろす。
 荷台に満載されたそれは、手馴れた男衆の手によって次々に運ばれていく。

 ポリ容器が公民館の中に持ち込まれると、ご婦人方がねぎらいの言葉をかけた。

「朝はよから、お疲れやんしたあ」
「いやあ、毎年のことやんすから」
「そいで、今年の出来はどうやんすか」
「まんずまんず、生きのいい子らでやんすよお」

 男が、ポリバケツを開ける。
 中を覗き込むと、上下左右にダンボールで作った間仕切りが巡らされている。
 何故そんな構造になっているかといえば、柔らかくて丸いものをたくさん運ぶためである。

 容器の中にいるのはもちろん、ゆっくり達。
 ほとんどが子ゆなのであろう。小さな饅頭が穏かな寝息を立てている。

「しかし、こんな状況でよく寝てられるもんすなあ」
「まだこの時期は寒くなっとるんすで、ゆっくりどもは、ほとんど寝て暮らしとるんすやあ」
「そうかん。ならばぼんちぼんち、始めるやんすかね」

 男衆はこの時期山に入り、越冬中のゆっくりの巣を漁っては、お目当ての饅頭を集めていく。
 収集されたゆっくり達は、これから女達の手によって、ある加工が施される。
 全てはこの街の風物詩の準備である。
 古くから伝わる春の祭り。その名は、『さげゆん』という。





『さげゆん』 (作・二行) 





 春の節句といえば雛祭りであるが、地方によって独特な風習があったりする。
 ポピュラーなのは、流し雛。
 川に小さな船を浮かべ、人形や飾り、適当なゆっくりを流したりする微笑ましい行事である。

 それとは別に、吊るし飾りというものがある。
 その名の通り、桃の節句に人形や色とりどりの装飾を吊るして縁起を担ぐ。
 福岡県柳川市のさげもん、静岡県稲取地区の雛のつるし飾り、山形県酒田市の傘福が有名である。
 詳しくは、ググってWikiって頂ければ幸い。

 さて、『さげゆん』である。
 察しの良い読者諸氏のことである。何を吊るすかは言うまでもあるまい。

 ただ、そのまま吊るし上げては干しゆっくりと何ら変わりはない。
 やはり伝統だけあって、おめでたい彩りを加えるのである。

 ここからは、取材した私の主観を交えて紹介することにしよう。

 未だのんきに寝息を立てている、捕獲ゆっくり。
 その隙に、公民館に集められた地元婦女会の方々が作業に入る。

 彼女達は筆を手に取り、それに食紅を水に溶かしたものを付け、ゆっくりに模様を描いていく。
 そのオリエンタルかつ雅な様式は、海外でも高く注目されている。
 何より、そんな伝統技能が地元に根付いていることが素晴らしい。

 鮮やかな手際で平凡な饅頭が、おめでたい雛飾りに変貌していく。
 私程度の技量では、その食紅模様の美しさを表現することは、とてもできない。

 そんなことを言っている間に、彩色済みの饅頭は次の工程に移行する。 
 『紐(ひも)付け』である。
 饅頭に次々とヒモを通していくわけだが、乱暴に穴を開けていくような真似はしない。
 苦悶丸出しのゆっくりが吊られていても、おめでたくも何ともないからである。

 詳しくは地元の秘伝として教えてくれなかったのだが、ヒモの先にある金具を付ける。
 それをゆっくりの口に通すと、どういうわけか、あにゃるからプリっと飛び出すのである。
 あとは、あにゃるの下に大きな結び目を付け、結びと尻の間に綿を糊付けして裂けないようにする。
 これでヒモ通し済み饅頭の完成であるが、1本のヒモに付き、4・5匹のゆっくりを通すのが慣例である。

 ヒモ自体にも、工夫が凝らしてある。
 色は実に様々で、赤白黄色、中には夜光る蛍光色を練りこんでいるものまである。
 そしてヒモには繊維と一緒に、細長い金属が編みこまれている。
 こうすると、ゆっくりがヒモを消化する速度が落ちるらしい。
 先人の知恵である。

 こうした単純ながらも繊細な工程を経て、さげゆん飾りが作られていく。
 しかし、この饅頭どもは一向に目覚める気配がない。
 不思議に思って、地元の方に訪ねてみると、明快な答えが返ってきた。

「捕まえたら、まんず酒を吹きかけるやんすよお。
 そんしたら、めったなことでは起きることはないんすやあ」





 あくる日。
 私はあるお宅にお邪魔して、実際にさげゆん飾りが飾られるところを拝見した。

 中々立派な邸宅。
 主は、この度めでたく還暦を迎えられた緒等さんである。

「緒等さん、今回は取材にご協力頂きありがとうございます」
「いんや、毎年毎年息子やら孫やらが、さげゆん楽しみに来るんすから。
 1人増えんても、どうってこともないんすやあ」 

 緒等さんの言葉通り、緒等家には主の息子2人に孫5人が遊びに来ていた。
 息子さん達に話を聞くと、さげゆんのために一週間ほど休みを取ったという。

「この時期はやっぱり、さげゆんに関わらないと」

 息子さん達はゆっくり取りから参加し、奥さんも彩色を手伝ったりしている。
 こうした暖かい絆によって、さげゆんは伝えられているのだ。

 ではそろそろ、お待ちかねのさげゆん飾りをご覧頂くことにしよう。
 やはり生きたゆっくりを使うだけあって、さげゆんはうるさい。
 なので、居間などからは少し離れた場所に吊るすのが一般的だ。

 緒等家の場合は、離れの一角をさげゆんにあてている。
 そこに近付くにつれ、やたら元気な声が大きくなっていく。

「ゆーん、なんにゃのこれ」
「はなすのぜ! まりささまを、はなすのぜ!」
「びぇぇぇぇん! たきゃいよぉぉぉ!」 
「ゆわぁ・・・おしょらを、とんぢぇるみちゃい」

 実際にさげゆんを目の当たりにして、私は息を呑んだ。
 美しい。

 ゆっくりの白い肌に塗られた紅が、文字通り踊っている。
 それはまるで、優しく飛び交う幻灯のようだ。
 そして饅頭が暴れるたび、ヒモも激しく揺れる。
 揺れる度にヒモに編まれた金属がきらめき、夢のような光に包まれる。

「どんす。凄いでやんそ?」
「話には聞いていましたが、まさかこれほどとは」
「でんも、3月3日はこれよりもっと綺麗でやんそお」

 これより美しいとは、いったいなんなのか。
 今から桃の節句が待ちきれない。

 ふと見ると、子供達がさげゆん飾りと戯れていた。

「やめてにぇ! ふーりふーりしないでにぇ!」
「めがまわるのぜ! たのむから、やめてくれのぜ!」

 幼女が面白がって、ヒモをブンブンと振り回していた。
 吊られまりさだけが、完全に赤ゆ言葉が抜け切っている。
 逆にいえば、それだけ成長の遅い固体なのかもしれない。

 適当に吊られているように思えるゆっくりだが、実はそれぞれに願いが込められている。
 れいむは、美しい人になりますように。
 まりさは、元気で健康でありますように。
 ありすは、誰からも愛されますように。
 ぱちゅりーは、賢くなれますように。
 ちぇんは、良い結婚ができますように。
 みょんは、仕事で成功できますように。
 ただ、みょん種は御存知の通り淫語を操るため、使われることは稀である。

 そんな親の祈りが詰まった飾りであるから、その扱いにも一定のルールがある。
 この日も孫娘の1人が、れいむを強く引っ張った。
 みちみちという軽快な音とともに、饅頭の皮が裂けていく。

「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛・・・」
「何してるの! さげゆん飾りを壊しちゃいけません!」

 母親が血相を変えて飛んできた。
 それはそうであろう。娘は美人であってほしいものだ。
 だから、れいむ飾りを壊すなんてとんでもない。

 母は慌ててれいむにオレンジジュースをかけた。
 こんな修繕の容易さもまた、長い人気の秘訣なのかもしれない。
 ともあれ、さげゆん飾りを壊すことは、残念ながらタブーとされている。

 ちなみに、さげゆん飾りには野菜の切れ端などを与えるそうだ。
 野生ゆに対する云々というよりは、昔はそれくらいしかやれるものがなかったのだろう。





 3月3日の朝が来た。
 私は緒等さんと一緒に邸宅の屋根に登り、『それ』を見下ろすことにした。

「そろそろ始まるやんすから、まぁ、見てくんさいやあ」

 素っ気無い言い方だったが、緒等さんの顔には子供のような無邪気さが浮かんでいた。 

「じいさまな、そんろそんろヒモ切りんすで」
「やあ」

 どうやら、さげゆんのヒモを切るらしい。
 階下から、かすかにゆっくり達の声が確認できる。

「ゆっ? こんどはにゃに?」
「まりさはじゆうのぜ! ゆっくりしないでにげるのぜ!」
「ゆっくりまっちぇね! れいみゅたち、つながってりゅよ」
「なら、ゆっせーのせ! でにげるのぜ」

「「「「ゆっ せー の せっ!」」」」

 饅頭どもの会話に耳を傾けていると、緒等さんに肩を叩かれた。

「見んさいやあ。さげゆんが流れてやんす」

 家のあちこちから、ヒモが通されたゆっくりが逃げ出してくる。
 その数は時間が経つごとに増えていき、最後はひとつの大河のようになった。
 紅い模様が押し合いへし合いし、鮮やかなヒモが輝きながら流れていく。

 美しい。
 思わず、そう呟いていた。

「どうでやんす。ちょっとした見ものでやんそお」

 ちょっとどころじゃない。想像を絶する眺めだった。
 紅色を施されたゆっくり達の群れは、まるで煌(きら)びやかな提灯行列のようだ。
 街の至るところで飾りヒモが波のように揺れ、その度に全く違う色彩が浮かび上がってくる。

 さげゆん達は山に帰っていくのだろう。
 故郷を目指す健気さが、列の美しさを引き立たせているのかもしれない。

 その時は、ただただ見惚れているだけだった。
 後で振り返ってみれば、通りにある看板や自転車などは全て避けられていたようだ。
 さげゆんが通るのを邪魔しない配慮であろう。

 一切が終わった後、残されたのはいくつかの饅頭の死骸だった。
 それを見下ろしつつ、緒等さんは悲しそうに語ってくれた。

「あれは付いていけんかったり、自分勝手なゆっくりやんす。
 ゆっくり休もうとしたり、人様の家に上り込もうとしたりするんす。
 そんなもんは、帰っても皆に迷惑かけるだけんすやなあ。
 これもきっと間引きというやつやんして、良かったんだろけんど・・・」





 後日、さげゆん会の会長に詳しく話を聞いた。
 群れに帰ったゆっくり達は、再び冬ごもりに入るそうだ。
 体内にある糸は、春までには消化されるという。

 春の目覚めを得たゆっくり達は、決して人里に近付こうとはしない。
 さげゆんがトラウマとなって、人間を恐れるようになるらしい。

 こうして、人間とゆっくりはそれぞれの領域で暮らしていく。
 さげゆんは、人とゆっくりが共存するための祭りでもあるのだ。

 私は彼らに幸多かれと祈りつつ、街を後にした。
 心には爽やかな感動が残っている。

 しかし懸案ともいうべきものが、ただひとつ。
 お土産にもらったこのさげゆん飾り、どうしたものだろうか。 





(終) 





【過去作】






※ぬえ
 nue059 「スキャット・ゆん・ジョン」
 nue022 「ゆナッフTV」
 nue009 「ブラックペーパー・チャイルド」

 その他の作品に関しては、ふたばSS@WIKIの『二行の作品集』をご覧下さい。
 餡娘ちゃんとWIKIあきに、感謝。


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感想

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  • ↓↓↓馬鹿丸出しワロタw -- 2011-12-30 12:08:17
  • ↓↓うわぁ… -- 2011-04-16 03:00:22
  • ううん、確かに勝手に動き回る飾りって美しそうだ。
    すんげぇ、煩そうだけどもw

    さげゆん、切った後に何かに紐が引っかかって死ぬ奴とか多そうw

    異端扱いは、他のゆっくりが過去にされた記憶が有れば一応同族として扱われるんじゃね? -- 2010-12-11 22:55:58
  • ごみを放す集落ははやり病で皆死ね -- 2010-11-29 02:58:25
  • 二行さんのこういうネタは本当良いなぁ。和む -- 2010-09-03 04:09:30
  • 森に帰っても、異端として同属に殺されるだけじゃね? -- 2010-08-20 02:17:34
最終更新:2010年03月27日 17:19
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