『────ポケモンにとって一番幸せなのは、好きな人のそばにいられること。
だったらそのポケモンは、君と一緒にいるべきだ』
──ウツギポケモン研究所博士、ウツギ
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一瞬、ほんの一瞬の静寂。
睨み合いの時間は即ち、相手を「視」る時間。
ポケモンの強さを数値として見極める、神懸り的な観察眼を持ち合わせた〝王者〟同士だからこその、嵐の前の静けさ。
互いの手持ちの二匹は、相応の相手を前に臨戦態勢。
帽子の奥底にて潜む眼光が、鋭く見開かれた。
「ピカ、かげぶんしん! オーダイル、アクアテール!」
「ジャローダ、アクアテール! オノノクス、りゅうのまい!」
交錯する指示。
己の主人の声に従い、四つの影が動く。
ピカチュウは三つの影分身を生み出し、オーダイルはその隙を補うように水流を纏った尾を放つ。
肉薄で勢いを付けた尾の横薙を、ジャローダの靭尾が同様のワザで迎え撃つ。
前衛をそちらに任せ、この場において最もレベルの低いオノノクスが舞踏を刻み自己強化を終えた。
アクアテールの威力は互角。
レベルの勝るジャローダに対して、オーダイルのアクアテールはタイプ一致により威力が五割増となる。
逆に言えば、得意分野のワザでさえジャローダの不一致ワザと同等なのだ。
正面から戦えば、タイプ相性から考えてもオーダイルは分が悪い。
この場に少しでもポケモンの知識がある者が居れば、そう判断を下すだろう。
「下がれオーダイル! ピカ、十万ボルト!」
「ジャローダは地を這って前へ! オノノクスは右へ避けろ!」
一度オーダイルを下がらせ、残影を従えたピカチュウが宙へ跳ぶ。
分身を含めて計四つの電撃が鞭のように降り注ぐも、トウヤにそんな小手先は通用しない。
安全地帯を見極め、後退するオーダイルへの追従をジャローダに任せてオノノクスは回避に徹する。
「ジャローダ、リーフブレード!」
「オーダイル、後ろへ跳べ!」
身を焦がす雷撃がジャローダの数センチ上を掠めるのも構わず前進、
肉薄を終えた翠蛇は大自然の力を宿した尾を刃に見立て、右斜め上からの袈裟斬り。
しかしほぼ同時に繰り出されたレッドの指示により、前方の空間を抉りとるだけに終わる。
「ジャローダ、そのまま────いや、」
「ピカ、ボルテッカー!」
「一度距離を取れ! オノノクス、代わりにオーダイルの前へ!」
次なる追撃を加える為の指示が、研鑽された〝勘〟に潰される。
矢継ぎ早に繰り出される言葉の錯綜を前にしても、忠実な手駒であるジャローダに迷いはない。
宙返りで距離を取るジャローダとオーダイルの間に稲妻纏う砲撃が割り込み、追撃を許さない。
急突進から流れるように切り返し、ジャローダと見合うピカチュウ。
その横をオノノクスが通り過ぎ、体勢を整えたオーダイルと対峙する。
(────読み合いをするなんて、いつぶりだ?)
馴染みのないダブルバトル。
思考が二倍、相手の動きを合わせれば四倍に加算されることを踏まえても──ここまで頭の中が試行錯誤で埋め尽くされるなど、忘却の遥か彼方にあった。
「ピカ、十万ボルト! オーダイル、飛び込んでかみくだく!」
「ジャローダ、左へ回り込んでリーフブレード! オノノクス、右へ避けろ!」
今こうしている間も、トウヤの余裕は表情ほどはない。
高揚を抑えられている理由は奇しくも、思った通りの戦術が立てられない息苦しさにあった。
「残念、分身だよ!」
「…………へぇ」
鋭利な尾がピカチュウの身体を切り裂いたかと思えば、その小柄な影は霞と消える。
ならばあのジャローダの追撃を食い止めたボルテッカーも、実体など無かったということだ。
では本物のピカチュウは──と、探し当てるよりも先に答えが出た。
「ピカチュウ、ボルテッカー!」
「オノノクス、回転しながらドラゴンテール!」
トウヤから死角となる柱の裏──オーダイルと対峙する、オノノクスの右斜め後方。
頻繁に位置を切り替えながら戦っているために気がつくのが遅れた。
前方のオーダイルへの牽制も込めて、金色の弾丸を迎え撃つために加速を乗せた回転斬りを見舞う。
〝りゅうのまい〟により一段階の攻撃力上昇を経たオノノクスの巨体が、その全霊をもっても尚完全には威力を殺し切れず尾が弾かれる。
しかしドラゴンテールは対象を吹き飛ばすことに長けたワザ。
体重差のあるピカチュウは大きく空へ投げ出されるが、着地先の柱を器用に蹴り上げて再びジャローダの前へと躍り出た。
「……そのピカチュウ、認識を改めなくちゃいけませんね」
「へへ、少しは見直したか?」
「ええ、確かに強い。ライチュウに進化していたら危なかったかもしれない」
「ったく、なんもわかってねーじゃん」
トウヤの得意戦術とは、前半で敵の攻めを誘い、回避を織り交ぜつつほどほどの反撃を見舞う。
これの繰り返しでペースを掴み、動揺した相手が別の手──回避や後退といった受け手に回った瞬間に、能力強化により追い詰める。
徹底的なまでに確実性を突き詰めた、いわば究極の後攻。
けれどレッドは毅然とした態度を崩さず、こちらの動きを冷静に見極めて攻め手と受け手を切り替える。
一対一のシングルバトルならまだしも、二対二の乱戦を強いられるダブルバトルにおいて能力強化の暇など皆無に等しい。
被弾覚悟で、などという甘い戯言を抜かせられるようなレベルの相手ではない。
タイプ有利を取っているオノノクスが一段階の強化を経ても、拮抗にしかもっていけない状況がなによりの証明だ。
(ジャローダがつるぎのまいを打てれば話は早いけど……そうはいかないな)
現状、オノノクスとオーダイルはほぼ互角。
ピカチュウとジャローダは、レベル差を鑑みてピカチュウの方がやや上手か。
〝つるぎのまい〟は攻撃力を二段階上昇させる強化ワザ。
一度でもこれを発動してしまえば、機動力に長けたピカチュウはともかくタイプ有利を突けるオーダイルは問題なく下せるはずだ。
綻び一つでも生じれば形勢が変化する。そしてそれは、レッドにとっても同じこと。
果てのない長期戦、しかしこの場に焦りを抱く未熟者は存在しない。
「オーダイル、かみくだく! ピカ、かげぶんしん!」
「オノノクス、きりさくで迎え撃て!」
迫り来る巨牙を、黄金竜は同じく巨牙を以てして鍔迫り合う。
その横で、四体の虚像を作り出すピカチュウの動きを冷静に観察するジャローダ。
実際に数が増えたわけではないのだから、実体を見極めさえすれば脅威とは程遠い。
「ピカ、十万ボルト!」
「ジャローダ、地面に向けてアクアテール!」
右方から二本、左方から二本、上空から一本。
振るわれる稲妻の包囲網──しかし、その内の本物は右方の一本のみ。
地へと尾を叩きつけ、反動で宙を舞ったジャローダは加速度を味方につけて落下する。
大きく距離を離されたピカチュウが孤立し、今度はオーダイルの後方へ。
オノノクスとジャローダに前後を挟まれる形となったオーダイル。一手分、二対一の状況が作られた。
「リーフブレード! りゅうのまい!」
「上に跳べ、オーダイル!」
ジャローダの鋭利な尾撃を跳躍で回避。
しかしその一手分、オノノクスに強化の隙を与えてしまった。
すぐさまピカチュウが割って入り再び二対二の状況が作られるが、先程とはまるで戦況が違う。
「オノノクス、ドラゴンテール!」
「オーダイル、アクアテール!」
龍と鰐の尾が、異なる体色による残光を描いて衝突。
競り合いはふたたび拮抗し、無益な攻防で終わるはずだった。
──つい、先程までは。
「オォ……ダ……!」
「グルル……!」
力負けしたオーダイルの体勢が大きく横へ弾かれる。
二段階の強化を経たオノノクスの膂力は、すでにオーダイルのそれを越えていた。
レッドの額に汗が滲む。
ここにきて顕となった僅かな綻びは、真綿で首を絞めるかのように戦況を傾けてゆく。
パワーも俊敏性も上回るオノノクスを相手に、オーダイルの立ち回りには自然と慎重さが求められて。
攻撃の頻度を落とした隙を付け狙うかのように、オノノクスの凶刃が襲いかかる。
「ピカ、オノノクスに十万──」
「ジャローダ、リーフブレード!」
「っ……避けろ、ピカ!」
実力に大差がないジャローダを相手にしている分、ピカチュウのカバーにも限界がある。
各々が眼前の相手を注視している状態、下手な行動は裏目に出るだろう。
「オノノクス、きりさく! ジャローダ、リーフブレード!」
「オーダイル、後ろに跳べ! ピカ、かげぶんしん!」
段々と攻撃の割合がトウヤに割かれていく。
オノノクスの自己強化という分かりやすい転換点を迎えて、二人の〝差〟がボロボロと顔を出し始めた。
(よく持ちこたえてはいるけど…………崩れるのも時間の問題かな)
判断力、反射神経共に同格のトレーナー同士なのであれば。
勝敗を分かつのは、知識量の差。
トウヤはピカチュウとオーダイルを知っていて、レッドはジャローダとオノノクスを知らない。
相手のタイプや覚えるワザを事前に把握しているトウヤと違い、常に未知の相手に対し〝予測〟して戦うことを強いられる。
長期戦になればなるほど、その負担の有無が浮き彫りになっていった。
(…………やっぱり、予想は越えないか)
トウヤから見たレッドは。
確かにかなりの実力を備えているが、期待を上回る程ではなかった。
危ない場面を迎えることなく、じわじわと勝利の兆しが見え始めているのがなによりの証拠。
もしもステータスを数値化できるのであれば、オーダイルの体力は三分の一以上削れているであろう。
ダブルバトルという性質上、一匹でも落ちれば勝敗は確定したも同然。
ここから逆転される展開は──今のところ、思い浮かばない。
しかし、トウヤは油断しない。
ピカチュウもオーダイルも、残り一つの技を見せていない状態だ。
ここまで温存している以上、なにか理由があるはずだと、冴える脳は忙しなく回転し続ける。
「ピカ──」
「! ……オノノクス、さがれ!」
「でんじは!」
そして、答え合わせ。
でんじは──それは文字通り、対象に電磁波を浴びせて麻痺状態に陥れる変化技。
トウヤはここにきて自身の油断の無さに感謝した。
オノノクスがいた場所を電磁波が過ぎ去る。
威力の持たないそれはしかし、ポケモンバトルにおいては下手な攻撃技では到底届かない厄介さを持ち合わせている。
「ジャローダ、リーフブレード!」
「ピカ、よけろ!」
麻痺状態──ポケモンの身体の自由を奪う状態異常。
りゅうのまいで積み上げた機動力も、攻撃力も。麻痺になった瞬間ゼロに等しくなる。
目まぐるしく状況が変化するこの場において、状態異常とは即ち〝敗北〟に直結するのだ。
「へへ、そう上手くいかねぇか……!」
「…………なぜ笑っているんですか? 逆転の目が潰されたというのに」
「そんなの決まってるだろ!」
多少驚いたとはいえ、致命的な一撃は避けた。
レッドからすれば絶望的な状況のはずなのに、なぜこの少年は笑っているのだろうか。
理解出来ぬ感情をぶつけるも、目の前の王者は当然のように胸を張ってみせた。
「────その方が、楽しいからさ!」
少しだけ、トウヤの瞼が痙攣する。
不愉快さから来るものか、はたまた彼の心に何か影響を与える言葉だったのか。
既に本人でさえも自覚できないほど、何処かへ追いやってしまった勝負に不必要な感情を。
一欠片ほど、味わったような感覚だった。
「……オノノクス、ドラゴンテール!」
「受け止めろ、オーダイル!」
胸を覆う靄を振り払うように、次なる指示を飛ばす。
脅威となるピカチュウの動きを制しているジャローダの横で、疾風と化したオノノクスが鋭い尾の一撃を放つ。
回避は困難と判断し、オーダイルは両腕でそれを防御。
急所への直撃は避けたが、ダメージを殺しきれず距離を取らされる。
「グルルル……!」
「オォダ……!」
その時、オノノクスは。
傷付きながらも笑みを浮かべるオーダイルを見て、目を見開いた。
窮地に陥りながらもそれを感じさせないニヒルな笑みは、まるで勝利を確信しているかのように。
レッドというトレーナーへの信頼を見せつけられているようで。
まるで太陽と月のように、決して交わらない境地の違いを垣間見た。
◾︎
Nの城最上階、王の間。
備え付けられた窓から、外の景色を見下ろす隻眼の長身痩躯──ゲーチス。
忌々しげに歪む左目は、眼下の中庭にて繰り広げられる死闘を捉えていた。
(想定外だ……! まさか、トウヤが既に来ているとは……!)
あのヘリの音を聞いて、襲撃を予想したゲーチスは王の間にて篭城することを選んだ。
イレブン達を当て馬にして様子を見ようと、迎撃の準備を整えていた矢先にこの結果。
まさかあのヘリに乗ってきたのがトウヤだというのか。だとしたら、とんだ挑発だ。
更に、彼の計画を狂わせた要因はもう一つある。
今現在トウヤと互角のバトルを繰り広げている謎の少年もまた、ゲーチスにとってのイレギュラー。
遠目でも分かるほど、両者の戦いは一般的なポケモンバトルという枠組みを外れている。
それこそ、伝説のポケモン同士の争いにも匹敵するような──次元の違いをひしひしと感じ取り、ゲーチスは歯噛みした。
あんな怪物が二人もいるなど、悪夢を通り越した理不尽さに笑いすら起きる。
カメックスとギギギアルという強力な手札を手に入れたというのに、まるで勝てるビジョンが見えない。
ここはイレブン達ごと切り捨てて、ひとまずこの場を後にするべきか。
(…………いや、待て)
と、受け身な思考がピタリと静止する。
この危機的状況、むしろ利用できるのではないか。
総帥まで上り詰めた頭脳が導き出した答えに、ゲーチスの焦燥は消え失せて笑みへと変わる。
「ハハハ……! やはりワタクシは天に味方されている!」
なぜ気が付かなかったのだろう。
トウヤも、あの少年も、自分を追い詰める脅威として訪れたわけではない。
むしろその逆──自身が生き残るために用意された舞台装置なのだと、今この瞬間確信した。
(そうと決まれば、手筈を整えなければ……今無闇に動く必要はありませんが、迅速さが求められますね…………)
思い至った計画をより綿密なものに変えるため、脳内でシミュレーションを繰り返す。
幸いここはNの城。間取りや各部屋への最短経路は頭に叩き込んでいる。
今はただ機を待つだけでいい。
まるで溢れ落ちる砂時計を見るかのように、ゲーチスの瞳は窓の外へ注がれていた。
「ゲーチスさん!」
と、扉が勢いよく開かれる。
見遣ればそこにはどこか落ち着かない様子のベルとイレブンの姿。
「おや、お二人共。どうかされましたか?」
「えっと、さっきレッドさんがお城に来て、それで、どっか行っちゃって……」
「レッド?」
しどろもどろながら状況を説明するベル。
吐き出される言葉を掻い摘んで、頭の中で要約していく。
子供の世話をするような感覚に嫌気を差しながらも、得られた情報はゲーチスにとって有益なものだった。
「なるほど、あのヘリの音はレッドさんが乗ってきたものだと……いやはや、これはとんだ奇縁だ」
「それでその、レッドさんが見回りに行ってくるって言ってたんだけど、心配になっちゃって……」
合点がいった。
カントーとジョウトを制したチャンピオンの噂は、勿論ゲーチスの耳にも届いている。
トウヤと渡り合えるトレーナーなどこの世に居るのかと疑問だったが、それがかのレッドであれば不可能ではないだろう。
ゲーチスは逡巡する。
ベルとイレブンは、自身の計画を遂行するには邪魔になるだろう。
蚊帳の外でいてもらうためにはトウヤとレッドのことを隠しておくべきだろうが、逆に巻き込むことで利用する手もある。
「ベルさん、そのレッドさんなのですが……」
そうして選び取ったのは、真実を打ち明けるという方向。
ベルとイレブンの二人を窓際まで誘導し、中庭の光景を見せつける。
イレブンは戦慄の表情で息を呑み、ベルは愕然と目を見開いていた。
「トウヤ……!?」
「え、トウヤって…………」
彼女のこぼした名前に、イレブンも驚きの声を漏らす。
ベルの幼馴染であり、イレブンからすれば彼女と同じく紛れもない保護対象である存在。
それが今、巧みにポケモンを駆使してレッドと戦闘を行っている──状況整理すら追いつかず、目が回るような感覚を抱く。
なぜトウヤとレッドが戦っているのか。
そもそも、なぜトウヤが彼と渡り合えるほどの実力を持っているのか。
渦巻く疑問の矛先は、この光景を見せた大人へと向けられる。
「ゲーチスさん! どうなってるの!?」
「落ち着いてください、ベルさん。ワタクシとしても状況が分からず、下手に動けませんでした。……まさか、あの二人がトウヤさんとレッドさんだとは…………」
我ながらの名演技に心中で笑いかける。
傍から見れば今のゲーチスの姿は、ベルやイレブンと同じく状況を掴み切れておらず焦燥する一参加者として映るだろう。
「ゲーチスさんは、ずっとここにいたんですか?」
「ええ。外から物音がしたのでこの窓から覗き込んだのですが、その時にはもう戦いが始まっていましたね」
「そんな…………!」
嘘ではない。
事実、事の発端は目にしていないのだから。
しかし容易に予想はつく。あのバトルに飢えたトウヤのことだ、レッドを誘き出して先に仕掛けたのだろう。
必要以上の情報を与える必要は無い。
ここからの流れは、すでに掌握したも同然なのだから。
「とにかく、あの二人を止めないと……!」
「そーだよっ! トウヤもレッドさんも、なにか誤解してるだけだからっ!」
──ああ、やはりこうなった。
あまりにも予想通りの展開。
好都合を通り越してもはや滑稽にも思える。
「そうですね……お二人にお任せしてもよろしいでしょうか? ワタクシは周辺の様子を見てきます。あの音を聞き付けて危険な者が来ないとも限らない」
「わかりました……お願いします、ゲーチスさん…………!」
深く一礼し、イレブンがベルを連れて外へ出る。
その様子を見届けて、ゲーチスの顔面は遂に綻びを隠さない。
ベルとイレブンの信頼は、彼らを山小屋から助けた事ですでに勝ち取った。
もし万が一〝計画〟に不備があったとしても、あの二人を利用すればどうとでもなるだろう。
トウヤとレッドの戦いにあの二人が介入するとなれば、否が応でも混乱は避けられない。
それに乗じて自身がどんな動きをしたところで、気に掛けられる余裕などないだろう。
「さて、もう少ししたら動きましょうか…………フフフ、それまでは高みの見物といきましょう……! 精々無様に踊り狂え、トウヤ……!」
世界は自分を中心に回る。
そう確信した男の哄笑は、まるで波瀾の序奏かのように響く。
役者は今、足並みを揃える。
白城を舞台にして、群像は織り成す。
熱く燃ゆる陽の喜劇も、淡く幽かな月の悲劇も。
如何なる結末であろうとも、目指す先は高く遠く。
花形の腕は、藻掻くように天へ伸びる。
◆
OK! 次に 進もうぜ
OK! 一緒なら 大丈夫
OK! 風が 変わっても
OK! 変わらない あの夢
ここまで来るのに 夢中すぎて
気づかずに いたけれど
新しい世界への 扉のカギは
知らない内に GETしていたよ
GOLDEN SMILE & SILVER TEARS
よろこびと くやしさと
かわりばんこに カオ出して
みんなを 強くしてくれてるよ
最終更新:2025年06月05日 20:38