坂道

さかみち

収録作品:スーパーマリオRPG[SFC]
作曲者下村陽子
編曲者:亀岡夏海、下村陽子(NS)

概要

いまから けっこんしきじょうまでのひととき
かけっこをして すごすのだが……
マリオは ボキを つかまえてはいけない!

では いまから やる。


本作のミニゲームの一つ「さかみちきょうそう」と「カブト虫キャッチャー」がプレイできる「ブッキー坂」で流れるBGM。
ステージ名の通り、これらのミニゲームはどちらも本作の迷キャラクター「ブッキー」絡みの内容のため、ツッコミ所満載のイベントである。
だがどちらのミニゲームとも、追いかける対象がピーチ姫を担いだブッキーかカブト虫かの違いと、報酬がフラワーかコインかの違いはあれど、タルが転がる坂道でブッカーの妨害を搔い潜りながら追いかけ回す内容は一致している。
本作には多数のミニゲームが入っており、極めるとなるとそのどれもが一筋縄ではいかない曲者ぞろいなのだが、その中でもこの「ブッキー坂」のミニゲームはタルへの反射神経とブッカーの動きに対する判断力が問われることから、殆ど報酬が手に入らないことすらザラというレベルで操作難度が高い。
しかも「さかみちきょうそう」はストーリーの一部ということで一発勝負というプレッシャーまで加わってくる。もっともフラワーが八個以下の場合はミニゲームの行われない「ブッキー坂」で回収できることから、ある程度のリカバリーが保証されているが。

そんな「ブッキー坂」で流れる曲はというと、キノピオの説明中の勇ましいドラムのイントロが終わると、もはや運動会で流れていても違和感のない疾走感溢れる熱いマーチ風の曲となっている。
そしてこの曲、ループしているように見せかけておいて、実際は1フレーズが終わるごとに少しずつ転調しているのである。
どちらのミニゲームも終了まで5ループするが、序盤と終盤の音程の差は一目瞭然であり、これにより曲の面で少しずつテンションを上げていく作りとなっている。
なおサントラでもゲームに準拠して約5ループとなっているが、実は内部データ上ではなんと7ループも転調していることが分かっている。*1

実はミニゲームも曲に合わせて変化しており、1ループするとブッカーが動き出し、更には徐々にタルも多くなっていき、4ループ目以降の終盤ではいよいよタルすらなくなりブッカーが縦横無尽に動き回るメチャクチャな状況となる。
この曲とミニゲームのシンクロにより、最後までテンションを上げ続けるゲーム設計の完成度の高さはプレイしてこそ味わえるものである。
なおみんなで決めるミニゲーム音楽ベスト100では、本作の多くのミニゲーム曲がランクインしたが、この曲は唯一のトップ10内に入っており、秘めた力を見せつけている。


それでは なにか、
みぶんの しょうめいに
なるようなものを おねがいします。

はい。
わかりました。


そしてリメイク版においてこの曲も他の曲と同様にオーケストラアレンジとなったのだが、その際になんと全曲中唯一ループを完全に撤廃し、ブラスバンド風の曲として完成させてしまったのである。
原作準拠のシステムにも関わらず曲のループを排除するというのは、テレビゲームの製作の流れを考えると常識破りもいいところである。
とはいえ、原曲の時点で疑似的なループの構成となっていたうえに、原作の二つのミニゲームともに丁度5ループで終了する作りとなっていたことから、原作の時点でループを止める要素はあったのである。
このアレンジはそれらの要素を最大限生かすことでこの結論に達したものと思われる。

原曲では転調を繰り返すことで変化をつけていたが、アレンジ版は副旋律の楽器数を段階的に増やし音圧を上げていくことで更なる変化を生み出している。
イントロの太鼓の時点から力強さを感じ、主旋律のトランペットがブラスバンドらしい元気な盛り上がりを出してくる。
それどころか、初っ端から通常の最高音であるB♭まで出しており、3ループ目まで来ると最早限界を超えた音域まで達していながら、トランペットの音を維持して演奏を続ける凄まじさ。
4ループ目はいきなり主旋律がヴァイオリンに変わり豪華さが一気に増してくる。
そして5ループ目は全楽器総出でテンションを最大まで持ち上げ、そのまま一気にフィニッシュとなる。
PVのフィニッシュを飾ったのはこの5ループ目である。
編曲者の亀岡夏海氏は、アレンジの際に金管楽器を根幹に据えてくる傾向と、びっしり書き込まれた激ムズの譜面で業界人から恐れられることもある人物であるが、
ここまで編曲者の色が全面に出たアレンジも珍しい。

またリメイク版の「さかみちきょうそう」と「カブト虫キャッチャー」については、他のミニゲームがほぼ原作準拠だったのに対し、あろうことか難易度の大幅なアッパー調整となってしまった。
1ループ目の後半からブッカーが動き出しタルは最後まで出てくるなど序の口、3ループ目ではブッカーが画面中を動き出す中、原作にはなかった高速で向かってくる赤タルまで登場。
最終盤では全てが赤タルとなり、原作を遥かに超えるメチャクチャな状況となり、まともな反応すら困難になった末のフィニッシュとなるだろう。
そして「さかみちきょうそう」はミニゲームと演奏の終了が同時となっており、テンションMAXでの圧巻のフィニッシュとなる。
また「カブト虫キャッチャー」は5ループ目の始まりで終了となっているが、フェードアウトしていく曲が原作らしさを出しており、原作へのリスペクトもバッチリである。

ループを完全排除する大胆極まりない選択をし、全ループとも全く異なる曲構成に仕上げ、ゲーム内容も難易度を引き上げて原作以上のハチャメチャ感を出し切ったこの曲は、リメイク版の全曲において最も化けた曲と言っても過言ではない。
多くの名曲を抑えてPVの大トリを務めた事実が、スタッフの自信の現れと言っていいだろう。

過去ランキング順位

スーパーマリオRPG (SFC)「坂道」

スーパーマリオRPG (NS)「坂道」


サウンドトラック

SUPER MARIO RPG ORIGINAL SOUND VERSION


スーパーマリオRPG Original Soundtrack


スーパーマリオRPG Original Sound Box



関連動画

スーパーマリオRPG 紹介映像

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最終更新:2025年04月24日 16:23

*1 某動画ではソフトを指で突いて進行停止バグを発生させる危険な荒業で突き止めたそうだが、これにより一度セーブデータが全て吹き飛んだそうな。決して真似しないように。