眠るもの ◆EAUCq9p8Q.
薄暗い廊下。割れたガラス。這いずり回る赤ん坊。突然飛び出す日本人形。
誰が鳴らしているのか、おどろおどろしいBGMまでついている。
閉じ込められた世界は、ドロドロになった誰かの深層心理を鍋に詰め込んで煮詰めたような、おぞましいもの。
角から飛び出す作り物の怪物に、羽ペンをで書いた流れ星をぶつける。
流れ星を受けた怪物は空間にノイズを残して消えていく。
空気中に溶けた何かが体に流れ込み、また少し、本調子に戻っていく。
まるで最初の村の外でザコ敵を狩り続けるみたいな気が遠くなる作業。
敵と出会うためにトラウマに潜れば潜るだけ、トラウマが
シルクちゃんに潜ってくる。
頭に流れ込んでくるのは、ひたすらの、絶望。体すら動かせなくなりそうな、どうにもならない、絶望。
気を抜けば心がトラウマに溶けていってしまいそうになる。
叫びながら、泣きながら、笑いながら、全てを投げ出して倒れ込んでしまいたくなる。
それでも、忌まわしき町の主・エンブリオから受けた傷を癒やすには、きっとこれが一番効率がいい。
トラウマに揉まれようが、心が砕けようが、それでもこの心に宿る恩讐の炎を絶やさず、勝ちに向かう。
「ねえ、聞こえる?」
駆け抜ける絶望に蹲って息を整えていると、突然声が割り込んできた。
羽ペンで星を生み、攻撃する。手応えがない。避けられた。
魔力の無駄撃ちは出来ない。次で決めるために相手の場所を探る。
見つけたその姿は、忘れもしない。おぞましき町で創造主を名乗る二柱が一人。クリエーター。
「まあ待ちなよ。待たなきゃ殺すだけだけど」
羽ペンを構えたまま、息を整える。
クリエーターは口元だけ笑って、続けた。
「そうさ。そうやってじっとしてればいい。
僕をその気にさせないようにするのが身のためだよ」
ぬるりと壁から入り込んでくるクリエーター、警戒はしたが、今のところは戦うつもりではないらしい。
ならば何をしに来たのか。
先の戦闘中にも人を見下すような口ばかり叩いていたし、這いつくばった
シルクちゃんを笑いに来たというのもありえる話だ。
「ねえ、シルクハットのマスター、ひとつ取引をしない?」
クリエーターは
シルクちゃんとのあれこれなどどこかに置いてきたように一方的にさっさと話し出す。
「君、僕のマスターになってよ」
一方的なのは話し口だけではない。内容も随分一方的だ。
傲岸不遜なその態度は、まさに神様というべきもの。反吐が出る。
☆
シルクちゃんの敵意を見透かし、それでも反逆すら起こせない
シルクちゃんの有様すら見透かし。
顎を持ち上げ、鼻で嗤いながら、続ける。
「サチコ。ありゃあ駄目だ。
ちょっとは腹をくくったかと思ったけど、根っこが平和に毒されて腐ってる。
あと二回三回地獄を見なきゃ、勝ちより大事な何かなんてありもしないものを信じてじたばたもがくばっかりだ。
別に地獄を見せてもいいんだけどさ、あの甘ったれが二回も三回も地獄を見て、無事でいられるとは思えないよ」
「それで、私か」
「気に食わないけどさ。それでも、君のほうがましだ。
負けられない、勝ちたい、真っ直ぐな憎悪。何を背負ってるかなんて関係ない、勝ちたいって気持ちだけで十分だ」
「選びなよ。
僕と一緒にここを出るか。
一人でここで死ぬか」
この世界――誰かのトラウマの世界に干渉できるのは、おそらくこの世に二人だけ。
そして、そのうちの一人が本気で鍵を閉めれば、ここは完全に閉じた世界になる。
外側が誰かに塗りつぶされれば、
シルクちゃんによく似た力を持つエンブリオではもう手出しが出来ない。
ならばこれは、実質的な死刑宣告。
目を閉じ、大きく息を吐く。頭によぎったいろいろなことを飲み込み、一言、答える。
「やなこった」
答えなんて、決まっている。
クリエーターは表情を崩さず、尋ねてくる。
「一応理由を聞いておこうか」
「こんな世界をぽんと作るとか、君、ろくなやつじゃないだろ。
性格面に難ありだ。これならまだ、うちのもーろく爺の方がよっぽど頼もしいね」
クリエーターが目を細める。笑顔ではない。長いまつ毛の向こうの瞳は、凍てつくような冷ややかさだ。
「それだけで?」
「……なあ、神様。聞いていいかい」
「やだね」
「私はたしかに勝ちたい。君が言ったとおりだ。メラメラ燃えてる心の火を抑えきれないから、勝ちたくて勝ちたくてしょうがない」
クリエーターの見下す視線に向き合い、はっきり言い切る。
「私は、守りたいものがあって、でも守れなくて、それでもやっぱり守りたいから戦ってるんだよ。
うちのランサーはそれを分かって戦ってくれる。私の勝ちたい気持ちを背負って、只、勝ちに向けて進んでくれる。
その点、君はどうなんだよ。マスターまで変えようとしてるけどさ、本当の本当に勝ちたいって思ってやってんのかい」
ドン、と床が鳴り、揺れる。
放たれたマホウによく似た力が、床を穿っていた。
同時に払いあげていた羽ペンが、マホウの残滓を散らしている。
「ほざけよ」
「ほざいてやったよ、お望み通り」
クリエーターの目は、冷ややかを通り越して一点熱を帯びている。
場合によっちゃあランサーを呼び出さざるをえないかと身構えたが、その場合はこなかった。
「そんなにほざきたいなら一人でほざいてればいいさ。
ここならどれだけ叫んでも、誰も文句は言わないよ」
ぐわんぐわんと空間が歪む。クリエーターが歪みの中に身を委ね、少しずつ、少しずつ、消えていく。
「後から泣いても聞かないよ」
「だったらせいぜい、馬鹿みたいに笑ってやるさ」
消え去る直前、クリエーターは何かを放った。
攻撃ではないはずの小さな紙切れ。
だが、その文面が目に入った瞬間に、
シルクちゃんの頭の中に濁流のように絶望が流れ込み、体を不調が襲う。
「プレゼントだ。心まで壊れて、消えてなくなれ」
そう捨て台詞を吐いてクリエーターが消え去ったことに注意を払う余裕など、
シルクちゃんにはありはしなかった。
【???/さいはて町/2日目 未明】
【クリエーター(
クリシュナ)@夜明けの口笛吹き】
[状態]霊体化、魔力消費(小)、不快
[令呪]幸子の敵を倒せ(一画)
[装備]なし
[道具]なし
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:勝つ
1.イライラするよ、ホントに。
2.戦い、勝つことの、理由……ね。
3.『この世界の神様』に会いたいもんだ。
[備考]
※
シルクちゃん&ランサー(
本多・忠勝)、玲&エンブリオ(ある少女)、
ルーラー(
雪華綺晶)を確認しました。
※幸子の部屋は現在、
クリシュナの幻想世界に作り替えられている途中です。ほぼ完成の状態です。
完成した際、マスターとサーヴァントに対する精神攻撃として作動します。
※誰かの精神世界を下地に、さいはて町内に『放課後悪霊クラブ』を創造しました。
さいはて町が『幻想世界』や『認知の浅瀬』に近い概念であったため+幸子の魔力まで利用した+令呪によるささやかなブーストからの速度であり、現実世界では再現不可能です。
※令呪によって、クリエーターが『幸子の敵』と戦う場合、若干の補正が働きます。
※聖杯戦争の開催に何者かが関与していると考察しています。
ルーラーは正統な裁定者ではなく彼女の手先であるとも考えています。
この空間はその人物が作り上げた世界であり、その人物の意向次第で結末が変わると睨んでいます。
“安らかに眠ってね 有希”
それだけが書かれたメッセージカード。
だが、それは、このトラウマまみれ、トラウマづくし、トラウマだくの世界で今まで以上の強いトラウマを引き出す鍵だった。
「は、あァ……」
もうそのメッセージカードは何も意味を持たない。
調べてみても、トラウマを閉じ込める鍵にはならなかった。
誰かの優しさが込められた文字だけが、縁起でもない文章だけが、ただただ
シルクちゃんを見つめ返していた。
ポケットにしまい、救いを求めるようにただ歩き、ただ進む。
敵を倒すことに集中し、トラウマから目をそらす。
敵を倒し、敵から吸い上げた力でまた敵を倒す。
体に満たされていく力で体を安定させ、安定した体で無理やり心を抑え込もうとする。
だが、暴れる心を抑え込めず、また救いを求めるように歩を進める。
敵を倒しながら進み続け、そうしてついに、世界の終わりが見えた。
戸を開けた先に、もう道はない。
腐ったような色の床。
天井から吊るされた赤い照明。
無数に突き刺さる手術用メス。
血に濡れた手術台。
「な、んで」
そして、佇む男が一人。
「なんでッ!」
見覚えのある男が一人。
「なんてお前達が、ここにッ!?」
手術台の前に、男が一人。
背後に無造作に置かれたはちみつ色の髪の毛を守るように、男が一人。
「NNNNNNNNNNNNNOOOOOOOOOOOOOWWWWWWWWWWHHHHHHHHHHEEEEEEEEEEEEEEERRRRRRRRRREEEEEEEEEEE」
灰色の男が一人、立っていた。
【???/さいはて町 『放課後悪霊クラブ』/2日目 未明】
【
シルクちゃん@四月馬鹿達の宴】
[状態]精神消耗(大)、魔力消費(中)、HP残り5割、魔力・体力回復中
[令呪]残り一画(絆創膏のような二画が消え、瞳型の令呪のみが残りました)
[装備]魔法の羽ペン
[道具]マツリヤの名刺、古ぼけた絵本、ぬいぐるみ、鎖帷子の欠片、ひとすじの髪、メッセージカード
[所持金]一人暮らしに不自由しない程度にはある
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れて、復讐する。
0.そうか、ここは―――
1.クリエーター、エンブリオの打倒。さいはて町の破壊。
2.探索が終われば、一旦帰還する。
4.
フェイト・テスタロッサに対しては――
5.
ルーラーへの不信感。
6.時間があれば『本』について調べる。
[備考]
※アサシン(ウォルター)を確認しました。真名も特定しています。ただしバネ足ジャックとしての姿しか覚えていません。
※
輿水幸子&クリエーター(
クリシュナ)、玲&エンブリオ(
ある少女)を確認しました。
※偽アサシン(まおうバラモス)を確認しました。本物のアサシンではないことも気づいています。
※
フェイト・テスタロッサを助けるつもりはありません。ですが、彼女を
ルーラーに突き出すつもりもありません。
※令呪は×印の絆創膏のような形。額に浮き上がっているのをシルクハットで隠しています。
※出展時期は不明ですが、少なくも友達については覚えていません。
例の本がどの程度本編を書いているのかは後の書き手さんにお任せします。
※魔法の羽ペンは『誰かの創った世界』の中でのみそうぞう力を用いた武器として使用できます。それ以外ではただの羽ペンと変わりありません。
※ハートの女王様を倒したので、古ぼけた絵本とぬいぐるみを手に入れました。
大人になった少女の恋の証である鎖帷子の欠片を手に入れました。
灰色の男の後ろにあったひとすじの髪を手に入れました。
クリエーター(
クリシュナ)よりさいはてに隠されたメッセージカードを受け取りました。
クリエーターの悪意により、誰かのトラウマを強く認識しました。
忘れさられた物語が彼女の元に集まりました。
※固有結界内のため電子機器による通達受け取りが行えません。
直接会えば通達をもらえますし、固有結界から抜け出せば手に入ります。
[地域備考]
さいはて町内に出現した「 放課後
悪霊クラブ」の最深部に灰色の男
が居ます。これは、「 ■■■■■
■■ 」が正■■■■き■■■ず
に無理■■■成された■■■ そ
れに伴い■■■■■トラウマ■■
■■■■■■■忘却■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■
■■優しいドクター ■■■■■■
■■■■■■■ひと■じ ■髪 ■
■■■■た■■■■■現 ■■■
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■■■■■■■■■■■■■■
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見てください!世界で最初の時計
が完成しました!素晴らしい!こ
れで私達は時間を手に入れたわけ
だ!琺瑯の針、硝子の文字盤、刻
まれていく世界の数だけ私達の世
界は閉じていく ! どこまでも広が
っている海すらも単なる粒でしか
ない!私達の永遠は今消滅した!
WllWMIIlMMW……
最終更新:2020年07月26日 21:16