アットウィキロゴ



『――――――人は誰だって、頑張れば輝けると思うので!』



それが、後の親友との出会いだった。
よさこいに憧れて日本へと渡って。
留学した中学校でよさこい部を設立して。
あの時に出会った子と友達になって、よさこい部に誘って。
いつしか、4人の仲間と共に部活動を頑張り始めて。
夏のよさこい祭りに向けて、何度も汗を流してきた。
掛け替えの無い青春を、仲間達と過ごしてきた。



『―――――また、家族三人で一緒に暮らしましょう』



そんな少女は、父と離縁していた母親と再会した。
母は少女に言った。また家族三人でいたいと。
アメリカに戻って、家族として一緒に暮らそう―――――――と。
少女にとって、大切なものは仲間達だけではなかった。
自分を愛してくれた両親も、仲間達と同じくらいに大切で。
内緒にしていたよさこいのことを家族に言える訳も無く。
少女は、家族と共にアメリカへ帰ることを選んだ。



『―――――ハナちゃんは、ハナちゃんの幸せを選んで?』



少女の選択のきっかけとなったのは、よさこい部の親友の言葉。
少女は、少女にとっての幸せを。
家族と過ごすという幸せを選んだ。
自らの仲間への想いを押し殺して、家族と共に祖国へと帰った。

よさこい部の仲間達は、最後に私を見送りにきてくれた。
だから、もう後悔は無いと思っていた。

だけど。
それでも、やっぱり。
みんなと一緒に、よさこいがしたい。
あの華やかな舞台で、みんなと一つになりたい。
よさこい部の仲間達と、一緒にいたい。

家族を選んだ少女は、夢を諦め切れなかった。
仲間達との思い出を捨て切れなかった。
あの素敵な青春を、また皆と一緒に味わいたい。
また皆で、よさこいがしたい。
そんな無垢な願いを抱いてしまった。

小さな『祈り』を抱いた少女の手元には、いつの間にか見覚えの無い陶器の人形が握られていた。


◆◆◆



「はいはーい、もしもし…パパ?」


時刻は下校時間から間もない頃。
中流層の学生が通うジュニアハイスクールの校門前で、少女が着信の掛かった携帯電話に出る。
連絡を入れてきたのは彼女の父親だ。


「あー、解ってますよ。でも、大丈夫デスって!
 パパ、私がフリーランニング出来ることくらい解ってるでしょう?
 だからほら、心配することないデスよ!もしもの時は急いで逃げられますから!」


彼女の父親は、何かあればしょっちゅう娘を心配してくれて電話を掛けてくれる。
仕事の合間を縫って車で迎えに行こうか、等と連絡を入れてくる。
おせっかいとはいえ気遣いは嬉しいが、あまり父に迷惑を掛けたくはない。
心配も不安も掛けさせたくない。
それが例え、『偽りの日常』だとしても。
少女はそう考えていた。


「それにパパも仕事忙しいんデスから、私のことは気にせず!
 私はすぐに帰りますから、大丈夫デス!それじゃ!」


少女はそういって通話を切り、携帯電話をポケットにしまう。
ほんの僅かに間を空けた後、曇った空を見上げて溜め息を吐いた。

最近になって、猟奇的な殺人事件が頻発しているという。
死体は最早原型すら留めておらず、まるで『補食』か『破裂』でもしたかのような状態で発見される。
犯人は未だ見つかっておらず。容疑者の特定もままならない状況だ。
父親が娘を心配して迎えの電話を入れてくれたのは、そんな事件が起こっていたからだった。


(…殺人事件、デスか)


少女には、事件への心当たりがあった。
一見凶悪犯罪とは縁もないように見える14歳の少女は、自らの右手を静かに撫でる。
手袋に覆われた右手の甲に存在する―――――――歪な『令呪』に触れるかのように。

通学鞄を肩に下げ、少女は帰路に着く。
普段ならば快活に日々を過ごすであろう少女は、その顔に陰を落とす。
足下に転がる空き缶やゴミを無視しながら、不安定な足取りで細い歩道を歩いていく。
顔にかかる冷たい風は、少女に取ってどこか不快で気持ち悪く感じられた。


(いつだって、笑顔でいるのが一番なのに)


少女は―――ハナ・N・フォンテーンスタンドは日向の人間だ。
陰惨な社会の闇。残忍で歪んだ人の欲望。
そんな負の世界とは無縁の場所で育ち、眩い夢を見続けてきた普通の少女だ。


(…今は、出来そうにもないデスね)


この街、ゴッサムシティは、あの華やかで温かい日常とはまるで違う。
まるで薄汚れた廃墟に放り込まれたような。
汚濁した下水道の中で一人取り残されているような。
そんな居心地の悪さに包まれている。

ふと人気のない路地へと視線を向ければ、行き倒れた貧困者が当たり前のように視界に入る。
新聞やニュースでは、凶悪犯罪が日常茶飯事として伝えられている。
普段ならば閑散としている街も、日が沈めばたちまち犯罪者の巣窟になるという。
ただ普通に暮らしているだけでも、この街の異様さは解ってしまう。


帰りたい。
あの明るくて、暖かい世界に。
“みんな”がいる、よさこい部に。


陰鬱な非日常は、取り返せぬ時間の流れと共に日常へと変貌していく。
過去は少しずつ今に塗り潰されていく。
そんな現実を前に、ハナの心は不安と焦燥に蝕まれていく。
勝てば生き残れる。勝てば元の日常に帰れる。

それどころか。
どんな願いでも叶う聖杯を使えば、これからも皆とずっとよさこいが出来るかもしれない。
パパとママと一緒に暮らして、その上でよさこいを続けられる。
そんなある筈もない未来が手に入るかもしれない。

だけど、勝つ為には誰かを犠牲にしなければならない。
日向で生きてきた14歳の少女に、他者を踏み台にしてでも勝ち残る覚悟など出来る筈もない。
しかし、死ぬのは勿論怖い。まだ死にたくない。
こんな箱庭の中で永遠に閉じ込められるのも、それと同じくらい怖い。
覚悟を引き締めることも出来ず、絶望することも出来ず、ハナは足踏みを続ける。
どうすればいいのか、彼女には解らなかった。


「―――――――――――あ、」


答えの出ぬ自問自答を繰り返していた最中。
ぼんやりと視線を動かしていたハナが、“それ”を認識する。
路地のマンホールの淵から僅かに溢れる黒い液体。
まるでタールのようにドロリと濁ったそれを見て、ハナは一瞬動きを止める。
彼女の記憶の底より沸き上がってきたのは既知感。
『自分はこれを知っている』という確かな感覚。


昔から本が好きだったハナ。
特に彼女はヒーロー物に出てくるニンジャが好きだった。
得意なフリーランニングを始めたのも、ニンジャへの憧れがきっかけである。
そんな彼女のサーヴァントは、自らが憧れて止まなかったニンジャだった。


そうだ。
この黒い液体は。
あのニンジャの――――――――


ハナは顔を俯かせ、その場から小走りで去っていった。
目の前の現実から逃避するように。


◆◆◆




犯罪と堕落に支配されし衆愚の街。
淀んだ街から溢れ出たかのように、血の惨劇が地下で繰り広げられた。



「アバッ、アババッ」



苦痛と恐怖に喘ぐ男の声が、下水道で静かに反響する。
荒い息からは溢れ出るのは死への恐れ。目の前の現実への絶望。


「アー……やっぱり食い足ンねえわ……」


そんな男の前に立つのは、異様な風貌の殺人鬼。
拘束具にも似た奇怪な装束。
呼吸口より黒い液体がボトボトと溢れ出ているメンポ。
ジゴクめいて逆立った奇抜な黒髪。

それはまるで、神話に出てくる『ニンジャ』とでも言うべき風貌。

その出で立ちは端から見ればただのニンジャ気取りの狂人、コカイン狂いのヤク中にでも見られかねない。
しかし、男は眼前の殺人鬼に対して本能的な恐怖を覚えていた。
言うなれば、怪物に対する絶対的な畏れのような。
人が神という存在を畏怖するような、ごく自然の摂理というべき感情。
目の前の殺人鬼はニンジャであるという――――確信。


「アイエエエエエ……」
「抵抗すンなよ、わざわざこんなドブみてェな所にまで追い込んでるんだからよ」


恐怖のあまり失禁を繰り返す男の身体を踏み躙り、殺人鬼は――――否。
殺人鬼の『ニンジャ』は、愉悦の眼差しで見下ろしていた。
湿気に覆われた下水道にて、ニンジャの足下を赤黒く淀んだ物体が取り巻く。

ぶちまけられた人間の紅い血液。
最早原形を留めていない赤黒い肉塊。
潰れた果実のような臓器の数々。

それらは下水道へと引きずり込まれ『補食』された何人もの浮浪者達の搾りかすとでも言うべき物体。
欲望の限りに殺し尽くし、ついでに『魂喰い』をした者達の成れの果て。
その搾りかすもまた、ニンジャの足下から広がるコールタールのような黒い物体に飲み込まれていく。
悪趣味なスプラッター映画のような惨状が、街の地下で繰り広げられている。


「まるで俺みてえだよな。ほんとドブみてェで汚えよな」


最後の生き残りである男の顔を覗き込むように、ニンジャはグイッとその顔を近づける。
にたついた笑みを浮かべるニンジャの姿に、男はただただ恐怖に戦くのみ。
そんな男の姿を見下ろし――――――――ニンジャは豹変したかのように捲し立てる。




「なァ!汚ェよなァ!へへへへへへへへ!アンダーガイオンの掃き溜めみてェだ!
 俺の品性そっくり!ドブみてェな街!ドブみてェな殺し合い!最高じゃねえか!」




絶叫のような。哄笑。
男は恐怖に耐え切れず、悲鳴を上げようとした。
だが。
言葉が。
出ない。
言葉が。
言葉に。
言葉に。
ならない。
身体が。
痛い。
痛い。
痛い。
痛い。
痛い。
痛、



「―――――――――――――――――――アバ、アバッ、アバババババババババババババーッ!!!?」



男の身体が、爆ぜた。
肉体の内側からぶちまけられたのは大量の黒いコールタール状の暗黒物質。
血肉の混じった暗黒物質はぐちゃりぐちゃりと流動体の如く蠢き出す。
内側から肉体を破壊されゴアめいた死体と化した男を、ニンジャは愉快げに見下ろす。



「へへへへへへへへ!久しぶりの自由!楽しいなァオイ!へへへへへへへへ!」



笑う。嗤う。品性の欠片も無い下衆な声で、ニンジャは嗤う。
他者の命を奪った彼は心底愉しそうに笑う。
殺人、強盗、強姦、放火――――――生前の彼は欲望の赴くままに犯罪を繰り返してきた。
故に他者の命を踏み躙り、貪ることに躊躇を覚えるはずも無い。

殺したいから殺す。
犯したいから犯す。
嬲りたいから嬲る。

ただそれだけのことだ。
彼にとっては当たり前の摂理だ。
何故なら、それが何よりも愉しいから。



「殺しまくれる!しかも願いも叶う!最高じゃねェか!へへへへへへへへ!」



キャスターのサーヴァント、デスドレイン
本来ならば魔術の心得など持ち合わせていないキャスター。
「接近戦を不得手とし、特異能力を駆使して戦う」といった要素からキャスターのクラスに適合した異端の存在。
彼はマスターのことなど意にも介さず、己の欲望の限りを尽くす。
キャスターの足下に広がる赤黒い肉塊達は、彼の哄笑と共に暗黒物質に飲み込まれていった。




【クラス】
キャスター

【真名】
デスドレイン(ゴトー・ボリス)@ニンジャスレイヤー

【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷C+ 魔力B 幸運A+ 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
陣地作成:E-
正確には陣地作成スキルを持たない。
宝具『死の濁流(アンコクトン)』の暗黒物質による擬似的な陣地を作れるのみ。

道具作成:E-
正確には道具作成スキルを持たない。
宝具『死の濁流(アンコクトン)』で暗黒物質を生成するのみ。

【保有スキル】
精霊の加護(偽):B++
危機的状況において驚異的な幸運を手繰り寄せる。
「いくら追い詰められようと自分には必ず神の助けが降りる」という身勝手な自負の具現。

戦闘続行:B+
往生際の悪さとすら言える生存能力。
瀕死の傷であっても生き延びることが可能。

精神汚染:A
あらゆる凶行を謳歌する狂人。
同ランク以下の精神干渉をシャットアウトする。

ノーカラテ:A
カラテを体得していない。
体術による基礎的な戦闘技術を備えていない稀なニンジャ。
白兵戦においてパラメータで下回る相手に打ち負ける確率が上昇する。

【宝具】
「ダイコク・ニンジャ」
ランク:A 種別:対己宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
ニンジャとは平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在である。
この宝具はデスドレインに憑依したダイコク・ニンジャのニンジャソウル、つまり魂そのもの。
ニンジャソウルに憑依されたものは個人差こそあれど、超人的な身体能力や生命力を獲得する。
その戦闘力は常人を遥かに凌駕するものの、急所への攻撃はニンジャといえど致命傷となる。

「死の濁流(アンコクトン)」
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000
暗黒物質とも称されるユニーク・ジツ、つまりデスドレイン固有の特殊能力。
コールタールめいた可燃性の流動状エネルギー「アンコクトン」を自在に操る。
主に触手状になって他者を捕獲・吸収する他、他者の体内に侵入させ窒息・破裂させることも可能。
更に物理攻撃に対する防御、本体の負傷部分の治癒や再生など、非常に応用が利く。
ただしアンコクトンの守りを上回る威力や魔力さえあれば防御を貫通することが可能。
他者の生命を力の源とし、生命を補食することで際限なく増殖を繰り返す。
アンコクトンから直接NPCを魂喰いすることも可能。

【Weapon】
宝具「死の濁流(アンコクトン)」

【人物背景】
強姦殺人、連続放火、銀行強盗など数々の凶悪犯罪を起こした囚人「ゴトー・ボリス」。
死刑判決が下された直後、法廷内でアーチニンジャ「ダイコク・ニンジャ」のソウルが憑依。
邪悪なるニンジャ「デスドレイン」として覚醒し、法廷に出席した人間を皆殺しにして逃走した。

極めて凶悪な殺人鬼であり、自らの欲望のままに刹那的な犯罪を繰り返す。
また凄まじい強運の持ち主で、窮地において幾度と無く生還している。
一方で幼稚な寂しがり屋の一面も持ち、イマジナリー・フレンドと会話をする癖がある。
そういった性格故か法廷からの逃走後は仲間を集めようとした。

ニンジャとしての能力はジツ特化型であり、身体能力こそ高いもののカラテの実力は皆無。
強大なニンジャ組織からの刺客を幾度と無く始末し、幹部クラスのニンジャとも互角に渡り合う等その実力は高い。
ノーカラテ・ノーニンジャの理念が基本とされるニンジャの中でも異色の存在。

【サーヴァントとしての願い】
自由と殺戮を謳歌する。

【方針】
気の赴くままに遊んで、ついでに魂喰い。
勿論勝ち残りたいが、そこまで後先のことは深く考えていない。
気の合いそうな仲間も欲しい。


【マスター】
ハナ・N・フォンテーンスタンド@ハナヤマタ(アニメ版)

【マスターとしての願い】
皆とよさこいを続けたい。
家族とも一緒にいたい。

【Weapon】
なし

【能力・技能】
ニンジャに憧れてフリーランニング(パルクール)を習得している。
小柄ながら身体能力は高いが水泳は苦手。

【人物背景】
由比浜学園へと留学してきたアメリカ人の少女。中学二年生。
アメリカ合衆国ニュージャージー州プリンストン出身。
前向きで積極的、常に快活な明るい少女。
幼少期に日本へ家族旅行に訪れた時に見たよさこいに魅了され、自分もよさこいをするべく日本へ留学。
中学でよさこい部を設立し、部員らと共に「花彩よさこい祭」に参加すべく活動を始める。
しかし祭の直前に母親のジェニファーが来日し、「家族との生活をやり直したい」という想いを告げられる。
思い悩んだハナは母親の意思を優先し、よさこいへの想いを押し殺しながらアメリカへと帰国した。

【方針】
元の日常へ帰りたい。




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2015年06月08日 03:08