「ぐああっ!!」

兜を被り全身を鎧で覆った騎士が吹き飛ばされ地を転がった。
アーマードライダー・バロンこと、駆紋戒斗。
マスター候補としてゴッサムシティに呼ばれた彼は今まさに絶命の危機を迎えていた。

記憶を取り戻す前に勤務していた洋菓子店が魂喰いに訪れたあるマスターとサーヴァントに襲撃されたその時。
戒斗は全ての記憶を取り戻し、ロッカーに置いていた荷物から戦極ドライバーとバナナロックシードを取り出し敢然と敵サーヴァントに立ち向かった。

結果はこれこの通り。
サーヴァント相手にも押し負けないパワーを誇るアーマードライダーだが神秘の無い武器では霊体であるサーヴァントに歯が立たない。
立ち上がり挑みかかるも剣による一閃を受けついに変身を解除された。

「まだだ……!」
「いいや、ここまでだ」

サーヴァント―――恐らくはセイバー―――の剣先が戒斗の眼前に突きつけられる。
一秒先にある死を確信しても戒斗の眼は烈火の如く燃え滾っていた。

「まさかマスター候補の一人に当たるとはね。
サーヴァントを召喚されては面倒だ。セイバー、やれ」
「はい」


マスターの指示によってセイバーの剣は生身になった戒斗を切り裂く。
そのはずだった。

「これは―――!」


セイバーの破壊で生じた瓦礫の中から噴き出す青い光の奔流。
溢れだす魔力は瓦礫と犠牲になったNPCの死体を等しく吹き荒らす。
セイバーはその中から閃光のように駆ける人影を確かに見た。


戒斗を両断するはずだった剣は突如現れた人影の槍を迎え撃ち、甲高い金属音が数回に渡って打ち鳴らされた。
数回というのは常人が瞬きを一回する間に二人が五度以上刃を交えていたからだ。
目の前の敵のただならぬ力量を感じ取ったセイバーは一度マスターの下まで退き距離を取った。

「よう、あんたがオレのマスターってことで良いのか?
いきなりサーヴァントに襲われるとはついてねえな」
「サーヴァント…、お前が俺の…」

戒斗はそこで初めてサーヴァントを名乗る男をはっきりと視認した。
青い頭髪に紅い瞳、髪と同じく青を基調にした軽装鎧から男が速さを武器にする戦士だと直感した。
何より目を引くのは神々しくも禍々しい、朱い長槍だ。
アームズウェポンやソニックアローが玩具のようにすら思える。
セイバーもそうだが元の世界で見てきたどんな存在よりも強大で鮮烈な、絶対的な力の塊だった。

「いや、逆についてるのか?サーヴァントに襲われたにしちゃ随分傷も少ないしな。
ま、ここはとりあえずオレに任せて休んでろ」

何でもないように語った直後、青い男とセイバーの姿が掻き消えた。
違う、二人は文字通り目にも映らぬ速さで互いの距離をゼロにしたのだ。

「何だ…この戦いは……」

驚愕の言葉は戒斗かセイバーのマスターか、どちらのものだったのか。
たった二人の人間が成しているとは考えられない戦いがそこにはあった。


青い男が槍を一突きしたかと思えばセイバーが受けたと思しき金属音が三回聞こえた。
セイバーが突貫したかと思えば青い男が背後に回り振り下ろしの一撃を加え、セイバーが当然のように背面からこれを受ける。
セイバーが超人的な脚力で数十メートル跳躍し、着地した瞬間青い男が追いついた。
セイバーとの距離を詰めた踏み込みだけでソニックブームが生じコンクリートの地面が割れて吹き飛んだ。


―――何よりも、剣と槍を交える二人の英霊は笑っていた。


「ほとんど魔力のない者がマスターでそれだけの実力とは恐れ入る。
できるなら互いに名乗りを上げたいところなのだが……」
「同感だが、それをやったら聖杯戦争にならないわな。
サーヴァントが戦場で真名を明かすとなれば、手は一つしかないだろうさ」

再び両者が距離を開けたと同時。
物理現象として感じられるほどに空気が凍り、張り詰めるのがわかる。
二人のサーヴァントは己の半身―――すなわち宝具を開帳しようとしていた。
その空気を破ったのはセイバーのマスターだった。

「いや、ここまでだセイバー。
帰還するぞ、ここで衆目に手の内を見せるのは早すぎる」
「……はっ。すまないランサー、この決着はいずれ必ず」

言うが早いか剣を収めたセイバーはマスターを抱えビルからビルへと跳躍し消えて行った。
残されたランサーと呼ばれた男は「物足りない」と書いてあるような表情で戒斗へと向き直った。

「追わないのか?」
「ん?そりゃあ追いたいに決まってるがマスターを放ってってわけにもいかねえだろ。
その様子じゃまだほとんど何もわかってなさそうだしな」
「確かにな。どういうことか説明してもらおうか」
「ああ、そいつは構わんがとりあえずここを離れた方が良い。
野次馬やら何やらが集まってきてる」

公衆の面前では聖杯戦争の説明も何もあったものではない。
戒斗もここは素直に従い瓦礫の中からゲネシスドライバーやロックシードを含めた荷物を取り出しその場を後にした。





◆◆◆




「聖杯という願望器を巡り、サーヴァントを召喚して行う二人一組の殺し合いか。
ふん、なるほどな。それで貴様が俺のサーヴァント、ランサーというわけか」
「おう。しかし何も知らなかったにしちゃ随分落ち着いているな」
「ここがどこであろうと、敵が何であろうと俺のやることは変わらない。
むしろ、最も強い者だけが生き残り弱い者が死ぬこの世界はわかりやすくて良い」

アパートの自宅でランサーから聖杯戦争について説明された戒斗は至極冷静に事態を受け止めていた。
戦極凌馬の趣味でゲネシスドライバーの入ったスーツケースに同梱されていた人形がシャブティだったことに多少の驚きはあったが。

「聖杯とやらに辿り着けば誰にも負けない最強の力が手に入る。
それにお前達サーヴァントの強さはオーバーロードのような種族の力に頼ったものではなく人の磨き上げた技だ。
聖杯戦争は俺の知らなかった種類の強さに満ち溢れている」
「そうかい。ま、やる気があるのは結構だ」

勝利への意欲に燃える戒斗の瞳はランサーの生前にもそう見なかったほどの意志の強さを感じさせる。
例えどのような存在であろうとその意志を捻じ曲げることは敵うまい、と確信できるほどだ。
だが、そこには単なる野心とも違う一種の危うさがあるように見えた。
方向性を誤れば、世界さえも滅ぼしてしまいそうな―――そういった危険性があるように思えてならないのだ。
我ながら馬鹿げていると思うが、念のためこの男からはあまり目を離さない方が良いかもしれない。


「早速作戦を詰めるぞ。一秒でも時間を無駄にするわけにはいかん」
(ま、なるべくこいつが道を踏み外さんようにオレが気をつけていればいい話か。
それにこいつはどこまででも強くなる可能性を持っている。
肉体の強さはいくらでも補いがつくが心はそうはいかん。
こいつがどこまで行けるか見届けるのも悪くない)





【クラス】
ランサー

【真名】
クー・フーリン@Fate/stay night

【ステータス】
筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:C 幸運:E 宝具:B

【属性】
秩序・中庸 

【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
戦闘続行:A
往生際が悪い。瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命的な傷を受けない限り生き延びる。

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。  

ルーン:B
北欧の魔術刻印・ルーンの所持。

矢よけの加護:B
飛び道具に対する防御。狙撃手を視界に納めている限り、どのような投擲武装だろうと肉眼で捉え、対処できる。ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。

神性:B
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。 

【宝具】

『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2~4 最大捕捉:1人
突けば必ず相手の心臓を貫く呪いの槍。ゲイボルクによる必殺の一刺。
その正体は、槍が相手の心臓に命中したという結果の後に槍を相手に放つという原因を導く、因果の逆転である。
ゲイボルクを回避するにはAGI(敏捷)の高さではなく、ゲイボルクの発動前に運命を逆転させる能力・LCK(幸運)の高さが重要となる。
幸運のランクがA以上で稀に外れるとされるがBランクでも高ランクの直感スキルとの組み合わせで回避できる場合がある。

『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:5~40 最大捕捉:50人
ゲイボルクの呪いを最大限に開放し、渾身の力を以って投擲する特殊使用宝具。
もともとゲイボルクは投げ槍であり、使用法はこちらが正しい。
死棘の槍と違い、こちらは心臓命中より破壊力を重視し、一投で一部隊を吹き飛ばす。

【人物背景】

アイルランドの大英雄。
アルスター神話で登場する。
光の神ルーとアルスターの王コノールの娘デヒテラとの間に
産まれた半神半人の英雄。
幼名をセタンタと言い、幼い頃から
「この子は英雄として生きる」と予言されていた。
ある日のこと、クー・フーリンはドルイドのカスバドが、今日騎士になるものはエリンに長く伝えられる英雄となるが、
その生涯は短いものとなるという予言をしたのを聞き、騎士となるべく王の元へと向かった。
騎士になるにはまだ早いと渋る王に対して、クー・フーリンは槍をへし折り、剣をへし曲げ、チャリオットを踏み壊して自身の力を見せつける。
観念した王はクー・フーリンが騎士になるのを許し、彼の力にも耐えられる武器とチャリオットを与えた。
クー・フーリンは、フォルガルの娘エメルに求婚するが断られたため、影の国を訪れ女王スカアハの下で修行を行う。
この時共に修行を行った仲間に、コノートのフェルディアがおり、彼とクー・フーリンは親友となる。
修行中、影の国ではスカアハと対立するアイフェ(一説には双子の姉妹)との間に戦争が起こった。
スカアハはクー・フーリンが戦場に出ることのないように睡眠薬を与えるが、クー・フーリンには効き目が薄く彼を止めることができなかった。
戦いは膠着し、アイフェは一騎打ちで決着を付けようとするがスカアハは負傷していたため、代わりにクー・フーリンがアイフェと一騎打ちを行い生け捕りにした。
スカアハの下には彼以外にも修行を行う仲間がいたが、その中でただ一人ゲイボルグを授かる。
その後、帰国したクー・フーリンだが、フォルガルはエメルとの結婚を許さなかったので、フォルガルを打倒してエメルを娶った。
クーリーの牛争いに端を発するコノートの女王メイヴとの戦いで、修業時代の親友フェルディアをゲイボルクで殺してしまう(また、彼を訪ねてきた息子コンラをやはりゲイボルクで殺してしまう)。
ゲッシュを破り半身が痺れたところを敵に奪われたゲイボルクに刺し貫かれて命を落とすが、
その際、こぼれ落ちた内臓を水で洗って腹におさめ、石柱に己の体を縛りつけ、最後まで倒れることがなかったという。

【サーヴァントとしての願い】
強者との死力を尽くした戦いを楽しむ。
また、戒斗をサポートしつつ彼が道を踏み外さないよう見守る。


【マスター】
駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武
(参戦時期はゲネシスドライバー受領後から沢芽市壊滅までの間)

【マスターとしての願い】
聖杯戦争に勝利し、何者にも負けない力を手に入れる。

【weapon】
戦極ドライバー…アーマードライダー・バロンへの変身ベルト。
認証機能により戒斗以外の人間には使えない。

バナナロックシード…バナナアームズへの変身に必要なクラスAのロックシード。
専用アームズは西洋風のランス・バナスピアー。

マンゴーロックシード…マンゴーアームズへの変身に必要なクラスAのロックシード。
専用アームズは重量のあるメイス・マンゴパニッシャー。

ゲネシスドライバー…クラスSのエナジーロックシードに対応する新型変身ベルト。
戒斗は戦極凌馬から対オーバーロードインベスへの切り札としてこのベルトを受領した。

レモンエナジーロックシード…レモンエナジーアームズへの変身に必要なクラスSのロックシード。
専用アームズの代わりに創世弓ソニックアローを用いて戦う。
戒斗は戦闘中に戦極ドライバーからゲネシスドライバーに着け替える戦術を使う。

ローズアタッカー…バイク型のロックビークル。
速度を上げることでヘルヘイムの森への行き来が可能だが本聖杯戦争では不可能になっている。

ダンデライナー…機銃と飛行能力を備えたホバーバイク型ロックビークル。

【能力・技能】
作中では敗戦や苦戦が多いが多くの実戦を通じてライダーとして高い力量を身に着けるに至っている。
孤高を良しとする性格とは裏腹に他のライダーのアシストやチームプレー、戦闘指揮も難なくこなす。
しかし何より特筆すべきはどんな強敵・難敵にも決して屈することなく敗れても何度でも立ち上がる精神力である。
また菓子作りが得意で本職のパティシエさながらにフルーツタルトを作れる。

【人物背景】
沢芽市のダンスチーム・バロンの元リーダー。20歳。
幼少期に大企業・ユグドラシルコーポレーションによって実家の町工場を潰されており、「弱肉強食」という概念を強く意識している。
無愛想で威圧的な性格の持ち主で、たとえどんな苦境であっても屈することのない強靭な精神力を持つ。
自らの中にある「強さ」と「弱さ」という哲学に従って行動し、「強者」と認めたものであればたとえ自分と考えを違えるものであっても強く評価して力を貸し、逆に「弱者」であるなら強い嫌悪感を露わにして接する。
この強弱は社会的権力を度外視したもので、作中では「優しさ」や「屈しないこと」を「強さ」、「偽り」や「卑怯」を「弱さ」としており、また優しさと同居できない力に対しても怒りを示す。
その態度に反発的な感情を抱く者は少なくない一方で、強い信頼を向ける者も多い。
本人もザックや舞の精神を高く評価しており、紘汰に対しても決して相容れない意見を持つと知りながら「邪魔者であるが敵ではない」と、徹底して自らの揺るがぬ価値観に生きている人間として描かれている。
内心では自らを強いと思っておらず、「弱さという痛み」を抱えながら常に何かと戦っている不器用な男で、時に容赦のない言葉を浴びせることもあるが、他人に対して素直でない優しさを持つ青年。
作中終盤ではオーバーロードインベスと化し「弱者が一方的に虐げられる」既存の社会の破壊と新世界の創造に向けて動き出すも紘汰に阻止された。

【方針】
あまりにも姑息な行為は良しとしないが同盟などルールに反しない範疇での策略は迷わず行う。
堅実に戦えば独力での優勝も夢ではないチームなのだが戒斗の格上にも果敢に挑む気質が災いする可能性は非常に高い。
良くも悪くも戦闘力と闘争心に溢れた組み合わせである。




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最終更新:2015年04月20日 02:22