草木も眠るウシミツ・アワー。
マッポーめいた価値観の支配する暗黒大都市・ゴッサムシティの港は都市部とは異なりお通夜めいた静けさに満たされている。
だが、だからといって人の気配がない訳ではない。
倉庫街の一角に複数の人影、同じジャケットとジーンズで服装を統一したヨタモノじみたティーンの集団の姿がある。
彼らはこの倉庫地帯を根城にしているストリートギャングだ。
強盗、殺人といった犯罪行為で生計を立てている彼らは今日もドラッグや煙草、酒を口にしながら本日の戦利品を分配している。
上機嫌に下卑た笑いを浮かべるギャング達を小さな影がジッと見つめている。
それは一人の少女だ。
雪の様に真っ白な肌とオーガの角めいたアクセサリ、そして血の様に真っ赤な双眸が特徴的な少女だ。
グルグルと湾岸を巡回するサーチライトが少女の姿を照らす。
少女とギャングの一人の視線が交差した。

「エ?」

ギャングが声をあげる。
なんでこんな所に少女がいるのか。
ドラッグのし過ぎで幻覚でも見ているのではないか。
仲間に声をかけようとして、ふとギャングは気が付いた。
急に、自分の周りが暗くなっている事に。
ギャングは上を見上げた。

「エ?」

ギャングが声をあげる。
なんで自分の頭上に巨大な機械の腕があるのか。
ドラッグのし過ぎで幻覚でも見ているのではないか。
仲間に声をかけようとして、ふとギャングは気が付いた。
頭上の腕が、ドンドン近づいてきていることに。
ギャングは目を見開いた。

「エ?」

ギャングが声をあげる。
なんで自分に向かって巨大な機械の腕が降ってきているのか。
ドラッグのし過ぎで幻覚でも見ているのではないか。
仲間に声をかけようとして、ふとギャングは気が付いた。
既に、そんな余裕はなかった事に。
ギャングは身動き一つ取ることができなかった。

地響き、ゴシャリと何かがひしゃげる音。
そして水音と共に赤い飛沫が舞った。

「……アンドレ?」

ギャングのリーダーが何かが落ちてきた先にいた筈の仲間の名前を呟く。
舞う土煙に隠れてその姿は確認できない。
しかし、罅割れたコンクリートの地面と、そこから染み出すトマトジュースめいた赤い液体がアンドレがどうなったのかを如実に語っていた。
港に一陣の潮風が吹く。
風に流され土煙が晴れた先にいた者を見たとき、その場にいたギャング達は潜在的恐怖に支配された。

「「「「「アイエエエエエエエエエエエエエ!?」」」」」

本能的にギャング達が叫び声をあげる。
おお、なんたるゴアめいた光景か!
砕けて大きく陥没したコンクリートにネギトロめいた飾りと真っ赤なペイントががされている。
飾りとペイントの材料はアンドレの血と肉だ。
そしてそのゴアめいた空間に立つ一つの人影は更にギャング達の恐怖を助長させる。
男がいた。
ソバシェフ装束を着込み、筋肉質な上半身をはだけ、その顔の大部分をメンポで覆った奇妙な男だった。
だが、男の何よりもの異常性はその両腕だ。
男の両肘より先はコミックに出てくるロボットめいた巨大な鉄塊の如きサイバネアームに置換されている。
男の右腕にはところどころ赤い塗装がなされ、筋肉繊維がこびりついている。
ギャング達にその腕が哀れなアンドレを押しつぶしたのだと言外に語っていた。

「全部、全部だ」

メンポの男が声を発する。
地獄の底から響くような暗い声と共に、男の狂気に支配された両目がギャング達を捉えた。
その瞬間、ギャング達は理解する。
次は自分たちがアンドレと同じ末路を辿ることに。
ギャングの一人が半狂乱になりながら銃を構えた。

BANG!! BANG!! BANG!!

銃声が響く。
しかし、メンポの男は銃弾など異にも介さず、銃を撃った男に向かって疾走する。

「アイエエエエ! ナンデ!? 無傷ナンデ!?」

銃を撃っても人が死なない。
そのあまりにも常識外の光景からくる恐怖によって銃を撃っていたギャングはしめやかに失禁!
メンポの男が駆け寄りながら右拳を引く。
サイバネアームが盛大に蒸気を吐き出す。

「アバッ」

猛スピードで放たれた拳がギャングのいた場所を通過する。
破壊の鎚が通り過ぎた後には、腰から上を消失した遺体がスプリンクラーめいて血を吹き出しながら転がっていた。

「全部だ! 全部だ! 全部だ! 全部だ!」

メンポの男は止まらない。
その目は既に別のギャングを捉えている。
蒸気を吹き出しながら次のギャングへと駆け寄る。

「アイエッ!?」
「全部だ!」

CRAAAAASH!

サイバネアームが振り下ろされる。
哀れギャングはネギトロめいた姿になって即死!
メンポの男は次のギャングに向かって駆け出す!

「アイエッ!?」
「全部だ!!」

CRAAAAASH!!

サイバネアームが振り下ろされる。
哀れギャングはネギトロめいた姿になって即死!
メンポの男は次のギャングに向かって駆け出す!

「アイエッ!?」
「全部だ!!!」

CRAAAAASH!!!

サイバネアームが振り下ろされる。
哀れギャングはネギトロめいた姿になって即死!
メンポの男は次のギャングに向かって駆け出す!

なんたる凄惨な光景か!
男がサイバネアームをふるう度にギャングが死んでいく。
その様はさしずめに全てを破壊する嵐といったところか。

「ヒッ、ヒィィィィ!!」

運よく助かったギャングの一人が近くのコンテナの裏に隠れる。
何故、こんな事になってしまったのか。
今までの悪行がこの結果を招いてしまったのか。
ギャングは神に祈り、助けを乞う。
ここから助かる事ができればこれまでの行いを悔い改めることを誓う。
足音が近づいてくる。
ちょうどコンテナを挟んで向かい側に男の気配がする。
ギャングは気付かずにいてくれる事を願う。
ボシュウと蒸気の上がる音が響く。
ギャングが両手を組み、目をつぶる。
衝撃がギャングを襲い、そこで意識は途絶えた。

「ハァーッ! ハァーッ!」

ギャングのリーダーが肩で息をする。
既に彼以外のギャングは死んでしまった。
逃げる一瞬、メンポの男がコンテナの裏に隠れた仲間をコンテナごとサイバネアームで吹き飛ばした光景が目に入った。
一刻も早く逃げなければ。
警察に事態を話して保護してもらわねば。
錯乱する中どうにか思考をまとめ、ふらつきながら港の出口を目指して歩くギャングの前に、一つの小さな人影が立ちふさがった。

「ワッザ!?」

目の前にいたのは少女だった。
それはアンドレと呼ばれたギャングが偶然発見した少女であったが、このギャングには知る由もない。
だが、一目見てその少女が異常な存在である事は理解できた。
人らしからぬ見た目である事はもちろんだが、その少女の周囲には不気味な球体が浮かんでいた。
黒く、猫耳のような突起のある球体だった。
その球体一個一個がむき出しの歯が生えた口を開き、べろりと舌を出す。
少女のサーチライトめいて光る赤い双眸がギャングを見据える。

「ア……、ア……」
「ヤレ……、バーサーカー……」

後ずさるギャングの背にトン、と何かが当たる。
振り向くとそこにはサイバネアームを振り上げるメンポの男の姿があった。
ギャングはこの少女がメンポの男を、バーサーカーと呼ばれた男を使って自分たちを襲った事を知る。
何故、どうしてと少女に問うよりも早く、大質量のサイバネアームが振り下ろされた。

一瞬の内に幕の開いた惨劇を生み出した少女が血に塗れた破壊の跡を見下ろす。
凄惨極まる光景だが、少女は顔色一つ変えない。
そして、傍らに立ったバーサーカーを、少女のサーヴァントを見上げた。

「魔力、溜マッタ?」
「……」

バーサーカーはこくりと頷く。
狂化によって言語能力を失っている為、会話自体が行えない。
彼の発する「全部だ」という言葉もうわ言のような者で意味のある言語とはなっていない。
フルフェイスのメンポの奥に光る瞳にはただ全てを破壊せんとする狂暴な意思しか殆ど残っていないのだ。

「霊体二戻ッテ、バーサーカー」

少女の指示を受けて、バーサーカーは霊体化する。
再び静寂が戻った港で少女が一人月を見上げる。

深海棲艦。
ある世界において、人類の敵性存在として海の大半を支配した存在。
その中でも棲姫と呼ばれる上位存在の一つが彼女、北方棲姫であった。
彼女がここにくる前までにあった記憶は、艦娘と呼ばれる少女達との戦いだった。
配下の艦は全て沈み、それでもなお艦載機を飛ばし抗戦していた彼女に降り注ぐ無数の散弾。
息も絶え絶えの彼女の視界には、いつか配下が拾ってきた人形が鈍い光を放っていた。
何事かと人形に手を伸ばすと、気づけばこの港に彼女はいた。
脳裏に浮かぶのは聖杯戦争の情報。
彼女の傍らには理性を失ったバーサーカーのクラスのサーヴァント。
何度か北方棲姫はバーサーカーとの会話を試みたが、バーサーカーが会話に応じる事はなかった。
バーサーカーの破壊衝動に取りつかれた瞳は、どこか彼女たち深海棲艦の一部に見られるものと同じだと北方棲姫は感じた。
憎しみ・恐怖・怒り・悲しみ。そういった感情すらもなく、ただ衝動に支配されるままに破壊を振りまく存在。
あるいは深海棲艦という存在だからこそ、このサーヴァントを呼び出したのかもしれない。

全てのきっかけであるあの戦いで見上げた空とまったく同じ月夜を見上げながら、北方棲姫は思考を打ち切る。
バーサーカーが呼ばれた理由など、彼女にとっては些末事に過ぎない。
バーサーカーは強い。魔力の消費も魂喰いを行っていけば、北方棲姫が生成する艦載機を複数呼び出して戦闘を補助する程度の余裕はある。
この聖杯戦争で勝ち抜く事は決して不可能ではない筈だ。

「必ズ、カエル」

北方棲姫は直観的に感じていた。ここは自分がいるべき世界ではないと。
夢見た光景はここでは手に入らないと。
帰らなければならない、本来彼女があるべき世界へ。
例え、元の世界で滅びる運命にあったとしても、それがこの世界で朽ちていい理由にはならない。
船の汽笛がどこかから聞こえる。
港に人影はもうどこにも見当たらなかった。

イツカ、楽シイ海デ、イツカ……

【クラス】
バーサーカー

【属性】
混沌・狂(悪)

【真名】
ランペイジ@ニンジャスレイヤー

【ステータス】
筋力A 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A

【クラス別スキル】
狂化:C
魔力と幸運を除いたパラメーターをランクアップさせるが、言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。

【保有スキル】
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
金属と融合した身体と破壊衝動に飲まれた精神は致命的な一撃を与えない限り全てを破壊し続ける。

威圧:C
戦闘時に対象の敏捷に若干のペナルティを与える。同ランク以下の精神干渉を無効化するスキルで無効化が可能。
威圧的な両腕、そして強大なニンジャソウルはプレッシャーとなって相対した者の動きを阻害する。

【宝具】
『青銅纏いし剛力の鬼神(アカラ・ニンジャ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:自身
常時発動宝具。
負傷しても両腕のサイバネアームなどから金属繊維が這い回り負傷箇所をただちに修復する。
修復する度にマスターの魔力が消費される。
遥か古代に名を馳せた半神的存在であるニンジャの一人、アカラ・ニンジャのニンジャソウルがバーサーカーには憑依している。
このニンジャソウルが憑依したものは異常ニンジャ膂力と金属同化能力を宿す。
その膂力は生身の時点で、素手によるパンチのみでビルを解体できる程である。
また、金属同化能力によってバーサーカーは重機や鉄塊を連想させる両腕の巨大なサイバネアームを自身の手の様に自由に動かせるだけでなく、自らの負傷の治癒にも使うことが可能となっている。

【weapon】
両腕の巨大サイバネアーム
破壊力が高いだけでなく、蒸気を任意で吹き出せるので接近時のけん制や目くらましも可能。

【人物背景】
本名はゼンダ。
元々はキョートで働く善良なソバ職人だったが巨大企業の工場建設の反対運動の折にソバ屋の廃業・妻の死を経験し絶望する。
結果、彼は装甲車に改造した巨大ビークルで工場建設現場を破壊して回った「ソバシェフ・ランペイジ事件」を起こして逮捕される。
収監後もその憎悪は収まることがなく、「ソバシェフ・ランペイジ事件」を続行するために脱走したところ、デスドレインという忍者に勧誘を受け、彼の仲間となる。
その後はニンジャ「ランペイジ」としてデスドレインの司令塔のようなポジションについて破壊活動に従事し、ある戦闘で両腕を失った事を機に巨大なサイバネアームを手に入れた。
最終的にはニンジャスレイヤー・ダークニンジャとの戦闘中に破壊衝動に呑まれて暴走したところニンジャスレイヤーによって致命傷を負わされる。
末期に意識の戻った後はデスドレインと言葉を交わし、ゼンダではなくランペイジとしてその生涯を終えた。
アカラ・ニンジャというニンジャのソウルに憑依されているが憑依した明確な時期の記述はなく、デスドレインがソバシェフ・ランペイジ事件の新聞記事を見て勧誘を決めたことから、事件が起きる前段階でニンジャソウルが憑依していた可能性が示唆されている。

【サーヴァントの願い】
全てを破壊する

【マスター】

北方棲姫@艦隊コレクション

【マスターとしての願い】

元の世界に帰る

【weapon】
艦載機
たこ焼きに似ている球状の艦載機。口からエネルギー弾を発射するがサーヴァントにはダメージは与えられない

【能力・技能】

魔力を消費して艦載機を生成可能
主砲など艤装については元の世界の戦闘で破壊されたので使用不可

【人物背景】
深海棲艦の中でも実際の基地や飛行場の特性を持つ「棲姫」と呼ばれる上位存在。
見た目はロリロリしい少女だが、その見た目とはかけ離れた火力をもってアリューシャン作戦に挑む艦娘達を迎え撃った。
モデルとなったダッチハーバーやアリューシャン作戦で無傷のゼロ戦が鹵獲された事から、航空機に対して執着を見せる。
「カエレッ!」や「コナイデッテ、イッテルノ」というセリフから深海棲艦の中でも好戦的ではない部類の存在だと思われる。
余談だが下着は黒の紐パンである。

【方針】
バーサーカーは一撃の威力は高いが肉薄する距離まで接近されると攻撃が行えず途端に不利になる。
その弱点のカバーは北方棲姫の艦載機が行うので、艦載機の運用とバーサーカーの安定した戦闘の為魔力の貯蔵は必須。
魂喰いに拒否感は微塵もないので、魂喰いを行いながら優勝を目指す形になるか。
同盟については視野にもいれていない。

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最終更新:2015年05月06日 22:45