第十話 追撃、そして
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天高く聳え立つ高層ビルの群れ。都会のネオンは淡い幻想。
街の喧噪もあまり見られないここは、地球の中でも比較的治安の良い場所だ。
公社の寄越した小型飛行挺に乗車した(この時代・この世界における乗用車の一種なので、敢えてこの表現を使用することにする)、フィリア・シュード。
頬杖をつき、景色を眺めていると、助手席に搭乗したカナンが話しかけてくる。
「シュード主任、初めての火星はどんなモンでした?エイリアンとか、いそうな感じのイメージが俺の中にはあるんだけどねえ」
意外と話好きなのかもしれないこの男。
「エイリアンもプレデターもいませんよ。全て昔の人達の妄想です」
「夢がないねぇ」
「夢は見る物じゃなくて、叶える物ですよ」
デイヴ譲りの皮肉で返すフィリア。
「…詳細は、その“ジャイアントマン”なる人物に提示する予定ですので、その際にご一緒にどうぞ」
そう、フィリア達がジャイアントマンなる人物に呼び出された理由。
火星での調査報告を直に行うことと、未確認MSについての情報の直接的な提示、であった。
ジャイアントマンなる人物が一体何者なのかは一切知らされてはいないが、地球連邦政府の重鎮、とだけは先程聞かされていた。
ロクでもないことになりそうだな、とフィリアは腹を括る。
しかし、同時に考えてもいた。
うまくジャイアントマンに取り付くことで、デイヴ捜索の為に動けるかもしれないからだ。
(その辺、うまくやらなくちゃ)
フィリアは夜空に浮かぶ月を眺め、親友・デイヴの為に決意を新たにした。
街の喧噪もあまり見られないここは、地球の中でも比較的治安の良い場所だ。
公社の寄越した小型飛行挺に乗車した(この時代・この世界における乗用車の一種なので、敢えてこの表現を使用することにする)、フィリア・シュード。
頬杖をつき、景色を眺めていると、助手席に搭乗したカナンが話しかけてくる。
「シュード主任、初めての火星はどんなモンでした?エイリアンとか、いそうな感じのイメージが俺の中にはあるんだけどねえ」
意外と話好きなのかもしれないこの男。
「エイリアンもプレデターもいませんよ。全て昔の人達の妄想です」
「夢がないねぇ」
「夢は見る物じゃなくて、叶える物ですよ」
デイヴ譲りの皮肉で返すフィリア。
「…詳細は、その“ジャイアントマン”なる人物に提示する予定ですので、その際にご一緒にどうぞ」
そう、フィリア達がジャイアントマンなる人物に呼び出された理由。
火星での調査報告を直に行うことと、未確認MSについての情報の直接的な提示、であった。
ジャイアントマンなる人物が一体何者なのかは一切知らされてはいないが、地球連邦政府の重鎮、とだけは先程聞かされていた。
ロクでもないことになりそうだな、とフィリアは腹を括る。
しかし、同時に考えてもいた。
うまくジャイアントマンに取り付くことで、デイヴ捜索の為に動けるかもしれないからだ。
(その辺、うまくやらなくちゃ)
フィリアは夜空に浮かぶ月を眺め、親友・デイヴの為に決意を新たにした。
「地球へは、どうするつもりかね、ソウヤ君?」
火星義勇軍・ダイモスではマスター・ベイトを中心に、今後の動向についての会議を行っているようだ。
陽光は起立し、ベイトの質問に答える。
「はっ、地球へ向かった火星開発公社の者達の追撃には、既にマイケル・ミッチェル隊を向かわせました」
「フム…彼ならうまくやってくれるか。いいだろう。第七次調査団、だったかな?彼らの個人データを先程閲覧したが、なかなか興味深い」
ベイトは唇の端を上げると静かに言う。
「それで、月へ向かったと考えられる謎のMS、ガンダムドルダを有する者達への追撃はいかがなさいましょう?」
レオ五郎右衛門、いや、ジミー・アンが口を挟む。
「そうだな、禍根は早めに絶っておかねばなるまい。来るべき連邦との“聖戦”の前にな」
「ジミー。それなら私に考えが…」
陽光がジミーに対して意見を言おうとするのに対し、ベイトは冷たく射抜くような視線で陽光を捉える。
「彼はレオ五郎右衛門だよ、ソウヤ君。口には気をつけたまえ」
「!」
陽光の瞳がわずかに揺らぐ。
が、日本刀のように研ぎ澄まされたその瞳は、真っ直ぐベイトを見つめ返した。
「…失礼致しました」
「……」
静かににらみ合う陽光とベイト。
ジミーはどうしていいかわからず、おろおろとしている。
やがて、ベイトが口を開く。
「…どるだ、を追撃した方がいいというのは君の意見だったな、エステル」
「…ええ」
エステルが答える。この少年は、重要な会合に出席することも出来るらしい。
「あれは、放っておけば我々にとっても大きな障害になるでしょう。即刻、滷獲及び破壊すべきです」
「その機体、連邦側への攻撃意思はないのか?我々の味方となる可能性も…」
陽光がエステルに問う。
「ガンダムマルスのミッションレコーダーを拝見しましたが、あの機体は数機のローズを破壊しています」
「そうか…」
陽光が頭を抱える。
「…で、考えというのは何だね?ソウヤ君。聞かせてもらおうか」
ベイトが頬杖をついて尋ねる。
「はっ、今こそ『ムスペルヘイム』を使うべき時なのでは、と…」
「…うむ。まあ、そうだろう。しかし相手も一筋縄にいきそうにないな。誰か同行せねばなるまい。構わないな、アンデレ権八郎?」
これまで静かに話を聞いていたアレスに話しかける。
「問題ありません、猊下」
無表情のアレスが淡々と答える。
「でも、君にはツライだろ?」
気遣うように言うエステル。
「構わない。マルスに乗ることになった時から、どんなことになろうが覚悟はできている」
「でも…なら、僕がドル・デーに搭乗してマルスを補佐します」
エステルが強い決意を宿した瞳でベイトを見る。
「ふむ…よかろ」
ベイトが言いかけたのを、ティモールが阻む。
「ならん、エステル!済まんがお主にはワシの研究を手伝ってもらわねばならん。敵を知り己を知れば百戦危うからず、そうじゃろ?」
「…博士の仰ることはもっともです。では…」
ベイトが言いかけると、陽光が名乗り出る。
「僭越ながら、私めが」
「陽光、しかし君は対連邦軍の指揮を取らねば…」
ジミーが陽光をたしなめる。
「百聞は一見に如かず。私はこの目で一度ドルダなるMSを見ておきたいのだ」
頑として譲らない陽光。
「…そういうことなら、ソウヤ君。君に任せた。対連邦指揮はしばらくレオ五郎右衛門、君に一任する」
「「はっ!」」
コンパニヤ式の敬礼をするジミーと、火星軍式の敬礼をする陽光。
「当面の方針はそういうことにしておこう。では諸君、祈りの時間だ」
席を立ち、神妙な面持ちで胸に手を当てるベイト。
「…くだらん。ワシにゃ時間が惜しい。退室させてもらおう。行くぞ、エステル」
「…はい」
そそくさと退室するティモールに、その後ろに従うエステル。
「私も、失礼させていただく」
陽光もそれに続く。
やがて薄暗い部屋の中には三人の男が残った。
「…フン、無粋な者達だ。では始めよう」
ベイトが言うと、アレス、ジミーは静かに目を閉じ、彼らの神に祈り始めた…
火星義勇軍・ダイモスではマスター・ベイトを中心に、今後の動向についての会議を行っているようだ。
陽光は起立し、ベイトの質問に答える。
「はっ、地球へ向かった火星開発公社の者達の追撃には、既にマイケル・ミッチェル隊を向かわせました」
「フム…彼ならうまくやってくれるか。いいだろう。第七次調査団、だったかな?彼らの個人データを先程閲覧したが、なかなか興味深い」
ベイトは唇の端を上げると静かに言う。
「それで、月へ向かったと考えられる謎のMS、ガンダムドルダを有する者達への追撃はいかがなさいましょう?」
レオ五郎右衛門、いや、ジミー・アンが口を挟む。
「そうだな、禍根は早めに絶っておかねばなるまい。来るべき連邦との“聖戦”の前にな」
「ジミー。それなら私に考えが…」
陽光がジミーに対して意見を言おうとするのに対し、ベイトは冷たく射抜くような視線で陽光を捉える。
「彼はレオ五郎右衛門だよ、ソウヤ君。口には気をつけたまえ」
「!」
陽光の瞳がわずかに揺らぐ。
が、日本刀のように研ぎ澄まされたその瞳は、真っ直ぐベイトを見つめ返した。
「…失礼致しました」
「……」
静かににらみ合う陽光とベイト。
ジミーはどうしていいかわからず、おろおろとしている。
やがて、ベイトが口を開く。
「…どるだ、を追撃した方がいいというのは君の意見だったな、エステル」
「…ええ」
エステルが答える。この少年は、重要な会合に出席することも出来るらしい。
「あれは、放っておけば我々にとっても大きな障害になるでしょう。即刻、滷獲及び破壊すべきです」
「その機体、連邦側への攻撃意思はないのか?我々の味方となる可能性も…」
陽光がエステルに問う。
「ガンダムマルスのミッションレコーダーを拝見しましたが、あの機体は数機のローズを破壊しています」
「そうか…」
陽光が頭を抱える。
「…で、考えというのは何だね?ソウヤ君。聞かせてもらおうか」
ベイトが頬杖をついて尋ねる。
「はっ、今こそ『ムスペルヘイム』を使うべき時なのでは、と…」
「…うむ。まあ、そうだろう。しかし相手も一筋縄にいきそうにないな。誰か同行せねばなるまい。構わないな、アンデレ権八郎?」
これまで静かに話を聞いていたアレスに話しかける。
「問題ありません、猊下」
無表情のアレスが淡々と答える。
「でも、君にはツライだろ?」
気遣うように言うエステル。
「構わない。マルスに乗ることになった時から、どんなことになろうが覚悟はできている」
「でも…なら、僕がドル・デーに搭乗してマルスを補佐します」
エステルが強い決意を宿した瞳でベイトを見る。
「ふむ…よかろ」
ベイトが言いかけたのを、ティモールが阻む。
「ならん、エステル!済まんがお主にはワシの研究を手伝ってもらわねばならん。敵を知り己を知れば百戦危うからず、そうじゃろ?」
「…博士の仰ることはもっともです。では…」
ベイトが言いかけると、陽光が名乗り出る。
「僭越ながら、私めが」
「陽光、しかし君は対連邦軍の指揮を取らねば…」
ジミーが陽光をたしなめる。
「百聞は一見に如かず。私はこの目で一度ドルダなるMSを見ておきたいのだ」
頑として譲らない陽光。
「…そういうことなら、ソウヤ君。君に任せた。対連邦指揮はしばらくレオ五郎右衛門、君に一任する」
「「はっ!」」
コンパニヤ式の敬礼をするジミーと、火星軍式の敬礼をする陽光。
「当面の方針はそういうことにしておこう。では諸君、祈りの時間だ」
席を立ち、神妙な面持ちで胸に手を当てるベイト。
「…くだらん。ワシにゃ時間が惜しい。退室させてもらおう。行くぞ、エステル」
「…はい」
そそくさと退室するティモールに、その後ろに従うエステル。
「私も、失礼させていただく」
陽光もそれに続く。
やがて薄暗い部屋の中には三人の男が残った。
「…フン、無粋な者達だ。では始めよう」
ベイトが言うと、アレス、ジミーは静かに目を閉じ、彼らの神に祈り始めた…
そして同時刻。
デイヴィッド・リマーを乗せたガンダムドルチェは既に大気圏を突破し、無事に火星開発公社・地球本社へと向かっていた。
「わぁー、見て見てデイヴ。海よ!」
はしゃぐエリス。対してデイヴは気のない返事を返す。
「そうだな」
ここまで何事もなく来られた、ということはデイヴにとって少し意外ではあった。
なにせあのハンスとかいう少年、超絶うさん臭かったからだ。
…理由?デイヴ的に言わせてもらうと、そもそもエリスがうさん臭い。イコールその連れもうさん臭い。
ただそれだけだった。…ただ、恐ろしく勘の鋭いこの男の読みは、少なくとも外れてはいない。
(ホントに、来ちまった、地球…)
デイヴは感慨深そうに景色を見渡す。
(俺の故郷、か)
思えば色々なことがあったな…
地球で、平凡な中流階級のアースノイドの両親の下に生を授かり、それなりに生きてきたこれまでの人生。
人より恐ろしく勘の良い彼はその勘の良さで、神童と呼ばれたフィリア・シュードと学生時代の全てを過ごしてきた。
彼らは進宇宙国際記念学園の卒業生だった。
それから大学も同じところに進学して、共に軍に入隊して…
父さんが死んで、母さんも死んで。一人になって。
やがてテロリズム・イヤーでのガンダムドルチェの悲劇。
助けられた筈の少女の命を助けられなくて。
自暴自棄になって、軍を退役して、地球を出て。
それから…
(ああ、こっからは思い出したくもねえや)
デイヴはエリスのはしゃぎ声をBGMに、自嘲気味に笑う。
「…ちょっと!ねえデイヴ。聞いてるの?」
エリスがデイヴに話しかける。
あの謎の場所を飛ってからというもの、ずっとこんな調子であった。
「…聞いてるよ」
頬杖をつくデイヴ。
「じゃあさっきまでの私の話を300字以内で要約してみて」
「う・み・が・き・れ・い。(マル)…悪りぃ、7字だわ」
指を折り曲げながら答えるデイヴ。だんだんエリスの扱いにも慣れてきたらしい。
「…ちょっとぉ!愛があれば出来るはずよ!」
「愛なんかいらない」
「えー!?デイヴったら、冷たい男(ヒト)…」
泣き真似をしてみせるエリス。
「同情するなら金をくれ」
「じゃあ、お金をあげたら私のものになってくれる?」
「だが断る」
…二人はそんな感じで、目的地へと向かっていた。
突然、先ほどまでキャアキャアはしゃいでいたエリスが、鋭い目つきになる。
「…どうした?」
さすがのデイヴも気になったらしい。尋ねてみる。
するとエリスは面を上げ、いやな笑みを見せながら言う。
「来たわ、来たわぁ。雑魚がわんさか!」
それなんてミハ兄?って思った人は五秒正座。
「!」
見ると、ガンダムドルチェの目の前には、火星義勇軍・ダイモスの手によるローズ部隊がいたのだった。
デイヴィッド・リマーを乗せたガンダムドルチェは既に大気圏を突破し、無事に火星開発公社・地球本社へと向かっていた。
「わぁー、見て見てデイヴ。海よ!」
はしゃぐエリス。対してデイヴは気のない返事を返す。
「そうだな」
ここまで何事もなく来られた、ということはデイヴにとって少し意外ではあった。
なにせあのハンスとかいう少年、超絶うさん臭かったからだ。
…理由?デイヴ的に言わせてもらうと、そもそもエリスがうさん臭い。イコールその連れもうさん臭い。
ただそれだけだった。…ただ、恐ろしく勘の鋭いこの男の読みは、少なくとも外れてはいない。
(ホントに、来ちまった、地球…)
デイヴは感慨深そうに景色を見渡す。
(俺の故郷、か)
思えば色々なことがあったな…
地球で、平凡な中流階級のアースノイドの両親の下に生を授かり、それなりに生きてきたこれまでの人生。
人より恐ろしく勘の良い彼はその勘の良さで、神童と呼ばれたフィリア・シュードと学生時代の全てを過ごしてきた。
彼らは進宇宙国際記念学園の卒業生だった。
それから大学も同じところに進学して、共に軍に入隊して…
父さんが死んで、母さんも死んで。一人になって。
やがてテロリズム・イヤーでのガンダムドルチェの悲劇。
助けられた筈の少女の命を助けられなくて。
自暴自棄になって、軍を退役して、地球を出て。
それから…
(ああ、こっからは思い出したくもねえや)
デイヴはエリスのはしゃぎ声をBGMに、自嘲気味に笑う。
「…ちょっと!ねえデイヴ。聞いてるの?」
エリスがデイヴに話しかける。
あの謎の場所を飛ってからというもの、ずっとこんな調子であった。
「…聞いてるよ」
頬杖をつくデイヴ。
「じゃあさっきまでの私の話を300字以内で要約してみて」
「う・み・が・き・れ・い。(マル)…悪りぃ、7字だわ」
指を折り曲げながら答えるデイヴ。だんだんエリスの扱いにも慣れてきたらしい。
「…ちょっとぉ!愛があれば出来るはずよ!」
「愛なんかいらない」
「えー!?デイヴったら、冷たい男(ヒト)…」
泣き真似をしてみせるエリス。
「同情するなら金をくれ」
「じゃあ、お金をあげたら私のものになってくれる?」
「だが断る」
…二人はそんな感じで、目的地へと向かっていた。
突然、先ほどまでキャアキャアはしゃいでいたエリスが、鋭い目つきになる。
「…どうした?」
さすがのデイヴも気になったらしい。尋ねてみる。
するとエリスは面を上げ、いやな笑みを見せながら言う。
「来たわ、来たわぁ。雑魚がわんさか!」
それなんてミハ兄?って思った人は五秒正座。
「!」
見ると、ガンダムドルチェの目の前には、火星義勇軍・ダイモスの手によるローズ部隊がいたのだった。
「うーん、アレがドルチェか。ディラン、どうだい?」
第七次調査団の追撃任務として遣わされたローズ隊の隊長、マイケル・ミッチェルが言う。
「……」
ディラン、と呼ばれた少年。静かにローズのコクピットに座っている。
どことなくアレスに似た雰囲気のこの少年を、やはりどことなくエステルに似たマイケルは放っておけないのであった。
「どうするの?すぐにでも仕掛ける?」
尋ねたのは女パイロット、ターニャ・ソブロフ。マイケルの右腕的存在の女性だ。
「…そうだね、敵にも視認されたみたいだし、こちらから先手を打った方がいいかもしれない。タオとマオ、君達もいいかな?」
マイケルがそう言うと、ディスプレイに『OK, Master.』と文字による通信が送られてきた。
タオとマオ。この二人の少年兵は口がきけなかった。けれど、マイケルはその理由を知らない。
むしろ、知らなくていいと思っている。人には誰しも、知られたくない事があるのだ。
人の弱さを知ることで、歩み寄れる…そんなものは詭弁だ、とマイケルは考える。
「それじゃあ行こう。僕とディランで先行する!」
五機のローズは、白き舞姫ガンダムドルチェの元へと向かっていった。
世界一高い塔。ここに、通称・ジャイアントマンがいるらしい。
「ここに、ジャイアントマンがいらっしゃいますわ」
長い長いエレベーターに乗って到達した扉。ヴァニラが恭しく言う。
「彼は地球圏連邦政府発足の当時からその風格を現し、今も尚各界に影響を与えることのできる大富豪、『BIG5』のうちの一人。くれぐれも、粗相のないように」
ニヤリ、と笑ったヴァニラが扉に手をかける。
ゴクリ。息を飲んで、扉に入るフィリア。
しかし彼の目にしたものとは…
(これが…ジャイアントマン!?)
世界一高い塔と思われる場所に到着し、世界一高いエレベーターに乗って、世界一高い場所に案内されたフィリアの前にいたのは、なんてことのない小男だった。
身長は、140cm前後だろうか。
リーゼントを自慢気にキメ、偉そうに足を組んでいる。
変な柄のアロハシャツに、趣味の悪い純金のネックレス。
ディックもスメッグヘッドも、驚きを隠せない様子だった。
「ねぇ、主任。これ、どこの白雪姫ですか?」
ひそひそとフィリアに耳打ちするディック。小人のことを揶揄しているのだろう。
「え…!?知らないよ、僕に聞かれても…」
困った表情のフィリアに、男・ジャイアントマンが言う。
「…聞こえてんぞ、コラ」
「「!」」
びくっ、と肩を震わせるフィリアとディック。
「あ、い、いや、失礼しました!」
慌てて言うフィリア。
「フン、まあいいさ。これぐらいのことで怒る俺様じゃねえ。なんたって俺様は、世界一ビッグな漢、ジャイアントマン様だからなぁ!」
夜露四苦ぅぅぅぅ!声高に叫び、ジャイアントマンが言う。
「は、はぁ…」
苦笑いするフィリアとディック。スメッグヘッドは帰りたそうにイライラしている。
「なあお前ら思ったろ?何故俺がジャイアントマンなのか、不思議でしょうがねえだろ?」
煙草をふかしながら言うジャイアントマン。
フィリアとディックは焦りつつ答える。
「い、いえ。別に…」
「よし、答えてやろう!なんたって今日の俺様はビッグだからな!」
まあいつもビッグだけどな、ジャイアントマンはそう言うと口を開く。
「なんてったって、デカイからさ」
「態度が、だろ?」
口を挟むカナン。
「ァア!?んだとカナンテメェコラ!」
思い切りカナンにメンチ切るジャイアントマン。
「まあまあ。お客さん、困ってるぜ?ジム。さっさと本題に入ったらどうだい?」
カナンがジャイアントマンをたしなめるように言う。
「…わかったよ。で?フィリア・シュードにディック・オメコスキー、アルフ・スメッグヘッドだな?」
急に、なんだか深みのある目線になって三人を順々に見ていく。
「フェアプレイの精神といこうぜ。俺の本名は、ジム・ストライカー。連邦議会ではジャイアントマンで通ってる」
偉そうにふんぞり返るジム。
「今日お前らを呼んだのは他でもねぇ。こないだの火星調査の件だ。なんだありゃ?意味わかんねえな。世の中デカいぜ、チクショー」
煙草をふかすジム。
「そうそう、世の中は広いですわね、ジム。ジムが小さいのではなく、世の中が広すぎるのです」
粗相のないように、と言っておきながら早速粗相をしてみせるヴァニラ。相当強かだ。
「うんうん…って何度言わす気だコラァ!このスットンキョーがァ!てめえヴァニラ(ピー)するぞコラァ!」
この男、ノリツッコミもばっちりだった。
「あら、そんな気なんかないクセに」
しれっと流すヴァニラ。どうやらカナンとヴァニラ、ジムの間ではこの程度の会話は日ごろから行われているらしい。
「あー、悪りぃ。話を戻すぜ。で、早速調査の詳細を、直にこの俺に見してくんねえか?」
「…ええ。し、承知しました」
この場のノリに着いていけず、まだフラフラするフィリアとディック。
スメッグヘッドなどは最初から着いて行く気などないらしいが。
フィリアがおぼつかない足取りで、ジムの座る椅子の前のテーブルに、カード型端末を通す。
現れるホログラム映像に、ジムは「ほぅ」と洩らし、ニヤリと笑ってみせたのだった。
第七次調査団の追撃任務として遣わされたローズ隊の隊長、マイケル・ミッチェルが言う。
「……」
ディラン、と呼ばれた少年。静かにローズのコクピットに座っている。
どことなくアレスに似た雰囲気のこの少年を、やはりどことなくエステルに似たマイケルは放っておけないのであった。
「どうするの?すぐにでも仕掛ける?」
尋ねたのは女パイロット、ターニャ・ソブロフ。マイケルの右腕的存在の女性だ。
「…そうだね、敵にも視認されたみたいだし、こちらから先手を打った方がいいかもしれない。タオとマオ、君達もいいかな?」
マイケルがそう言うと、ディスプレイに『OK, Master.』と文字による通信が送られてきた。
タオとマオ。この二人の少年兵は口がきけなかった。けれど、マイケルはその理由を知らない。
むしろ、知らなくていいと思っている。人には誰しも、知られたくない事があるのだ。
人の弱さを知ることで、歩み寄れる…そんなものは詭弁だ、とマイケルは考える。
「それじゃあ行こう。僕とディランで先行する!」
五機のローズは、白き舞姫ガンダムドルチェの元へと向かっていった。
世界一高い塔。ここに、通称・ジャイアントマンがいるらしい。
「ここに、ジャイアントマンがいらっしゃいますわ」
長い長いエレベーターに乗って到達した扉。ヴァニラが恭しく言う。
「彼は地球圏連邦政府発足の当時からその風格を現し、今も尚各界に影響を与えることのできる大富豪、『BIG5』のうちの一人。くれぐれも、粗相のないように」
ニヤリ、と笑ったヴァニラが扉に手をかける。
ゴクリ。息を飲んで、扉に入るフィリア。
しかし彼の目にしたものとは…
(これが…ジャイアントマン!?)
世界一高い塔と思われる場所に到着し、世界一高いエレベーターに乗って、世界一高い場所に案内されたフィリアの前にいたのは、なんてことのない小男だった。
身長は、140cm前後だろうか。
リーゼントを自慢気にキメ、偉そうに足を組んでいる。
変な柄のアロハシャツに、趣味の悪い純金のネックレス。
ディックもスメッグヘッドも、驚きを隠せない様子だった。
「ねぇ、主任。これ、どこの白雪姫ですか?」
ひそひそとフィリアに耳打ちするディック。小人のことを揶揄しているのだろう。
「え…!?知らないよ、僕に聞かれても…」
困った表情のフィリアに、男・ジャイアントマンが言う。
「…聞こえてんぞ、コラ」
「「!」」
びくっ、と肩を震わせるフィリアとディック。
「あ、い、いや、失礼しました!」
慌てて言うフィリア。
「フン、まあいいさ。これぐらいのことで怒る俺様じゃねえ。なんたって俺様は、世界一ビッグな漢、ジャイアントマン様だからなぁ!」
夜露四苦ぅぅぅぅ!声高に叫び、ジャイアントマンが言う。
「は、はぁ…」
苦笑いするフィリアとディック。スメッグヘッドは帰りたそうにイライラしている。
「なあお前ら思ったろ?何故俺がジャイアントマンなのか、不思議でしょうがねえだろ?」
煙草をふかしながら言うジャイアントマン。
フィリアとディックは焦りつつ答える。
「い、いえ。別に…」
「よし、答えてやろう!なんたって今日の俺様はビッグだからな!」
まあいつもビッグだけどな、ジャイアントマンはそう言うと口を開く。
「なんてったって、デカイからさ」
「態度が、だろ?」
口を挟むカナン。
「ァア!?んだとカナンテメェコラ!」
思い切りカナンにメンチ切るジャイアントマン。
「まあまあ。お客さん、困ってるぜ?ジム。さっさと本題に入ったらどうだい?」
カナンがジャイアントマンをたしなめるように言う。
「…わかったよ。で?フィリア・シュードにディック・オメコスキー、アルフ・スメッグヘッドだな?」
急に、なんだか深みのある目線になって三人を順々に見ていく。
「フェアプレイの精神といこうぜ。俺の本名は、ジム・ストライカー。連邦議会ではジャイアントマンで通ってる」
偉そうにふんぞり返るジム。
「今日お前らを呼んだのは他でもねぇ。こないだの火星調査の件だ。なんだありゃ?意味わかんねえな。世の中デカいぜ、チクショー」
煙草をふかすジム。
「そうそう、世の中は広いですわね、ジム。ジムが小さいのではなく、世の中が広すぎるのです」
粗相のないように、と言っておきながら早速粗相をしてみせるヴァニラ。相当強かだ。
「うんうん…って何度言わす気だコラァ!このスットンキョーがァ!てめえヴァニラ(ピー)するぞコラァ!」
この男、ノリツッコミもばっちりだった。
「あら、そんな気なんかないクセに」
しれっと流すヴァニラ。どうやらカナンとヴァニラ、ジムの間ではこの程度の会話は日ごろから行われているらしい。
「あー、悪りぃ。話を戻すぜ。で、早速調査の詳細を、直にこの俺に見してくんねえか?」
「…ええ。し、承知しました」
この場のノリに着いていけず、まだフラフラするフィリアとディック。
スメッグヘッドなどは最初から着いて行く気などないらしいが。
フィリアがおぼつかない足取りで、ジムの座る椅子の前のテーブルに、カード型端末を通す。
現れるホログラム映像に、ジムは「ほぅ」と洩らし、ニヤリと笑ってみせたのだった。
後編へ続く
翌日。
ルナリアンの手配したホテルですっかり疲れを取ったクラン達は、再びルナリアンの元を訪れていた。
「ようこそ。お待ちしていましたわ」
恭しくクラン達を迎えるルナリアン。
「どうぞ、かけてください」
大きなテーブルに、豪奢な椅子。
こんな高価な椅子には腰掛けたことのないヴァイスなどは、ドギマギしていた。
「では、早速本題に入らせていただこう」
ギデオンが、指を組んで神妙な面持ちで言う。
先日の火星調査報告の件…コロニー支社本部にはメールで報告を済ませてあった。
ただ、ルナリアンの直属の上司である月支社長の要請で、その報告をルナリアンに行うように、とのことであった。
故に、面々はこうして再びルナリアンの元を訪れていたのだった。
ギデオンがカード型端末をテーブルにかざす。
浮かび上がるホログラム映像。
議論を交わすギデオン、クラン、ルナリアン。
小一時間ほど、報告や議論等が交わされる。
そんな中、モモ・マレーンは退屈で仕方がなかった。
(ふあぁ…退屈です)
これまで何度も欠伸を噛み殺してきたが、今回はそれが出来なかったようだ。
ふと、ルナリアンと目線が合う。
ニッコリと大人の微笑みを浮かべるルナリアンに、サッと顔を赤くするモモ。
(うぅ…見られちゃいましたぁ、恥ずかしいです…)
がっくりと肩を落とすモモに、ルナリアンは優しく言う。
「…なんでしたら、月支社の内部を色々とご覧になってください」
「!い、いえ!だ、大丈夫です!」
慌てて首を振るモモ。
すると、シンシアがモモに話しかける。
「私、色々見てみたいな。行こ?モモちゃん」
シンシアの微笑みを見て、モモの顔にもじわじわと嬉しさがこみ上げてくる。
「…うん!」
シンシアとモモは、ルナリアンに礼をすると、手を繋いで部屋を駆けだして行った。
「…ふふ」
微笑ましそうに笑うルナリアンと、安心するクラン。
(すっかり仲良くなっちゃって…)
モモとシンシアは、年齢が近いということもあってか、すぐに仲良くなっていたのだった。
「…いいよなァ、子供はのん気で」
ヴァイスがぶっきらぼうに言う。
「あら、一番の子供はあなたでしょう?」
クランが出された紅茶を一口飲んでから言う。
「…フン」
そっぽを向くヴァイス。不意に、こみ上げてきた大きな欠伸を噛み殺す。
「……」
真っ赤になるヴァイスに、ルナリアンが言う。
「少し、休憩にいたしましょうか」
上品な手つきで紅茶を注ぎ、それを口に含む。
ルナリアンの手配したホテルですっかり疲れを取ったクラン達は、再びルナリアンの元を訪れていた。
「ようこそ。お待ちしていましたわ」
恭しくクラン達を迎えるルナリアン。
「どうぞ、かけてください」
大きなテーブルに、豪奢な椅子。
こんな高価な椅子には腰掛けたことのないヴァイスなどは、ドギマギしていた。
「では、早速本題に入らせていただこう」
ギデオンが、指を組んで神妙な面持ちで言う。
先日の火星調査報告の件…コロニー支社本部にはメールで報告を済ませてあった。
ただ、ルナリアンの直属の上司である月支社長の要請で、その報告をルナリアンに行うように、とのことであった。
故に、面々はこうして再びルナリアンの元を訪れていたのだった。
ギデオンがカード型端末をテーブルにかざす。
浮かび上がるホログラム映像。
議論を交わすギデオン、クラン、ルナリアン。
小一時間ほど、報告や議論等が交わされる。
そんな中、モモ・マレーンは退屈で仕方がなかった。
(ふあぁ…退屈です)
これまで何度も欠伸を噛み殺してきたが、今回はそれが出来なかったようだ。
ふと、ルナリアンと目線が合う。
ニッコリと大人の微笑みを浮かべるルナリアンに、サッと顔を赤くするモモ。
(うぅ…見られちゃいましたぁ、恥ずかしいです…)
がっくりと肩を落とすモモに、ルナリアンは優しく言う。
「…なんでしたら、月支社の内部を色々とご覧になってください」
「!い、いえ!だ、大丈夫です!」
慌てて首を振るモモ。
すると、シンシアがモモに話しかける。
「私、色々見てみたいな。行こ?モモちゃん」
シンシアの微笑みを見て、モモの顔にもじわじわと嬉しさがこみ上げてくる。
「…うん!」
シンシアとモモは、ルナリアンに礼をすると、手を繋いで部屋を駆けだして行った。
「…ふふ」
微笑ましそうに笑うルナリアンと、安心するクラン。
(すっかり仲良くなっちゃって…)
モモとシンシアは、年齢が近いということもあってか、すぐに仲良くなっていたのだった。
「…いいよなァ、子供はのん気で」
ヴァイスがぶっきらぼうに言う。
「あら、一番の子供はあなたでしょう?」
クランが出された紅茶を一口飲んでから言う。
「…フン」
そっぽを向くヴァイス。不意に、こみ上げてきた大きな欠伸を噛み殺す。
「……」
真っ赤になるヴァイスに、ルナリアンが言う。
「少し、休憩にいたしましょうか」
上品な手つきで紅茶を注ぎ、それを口に含む。
「ハッハァ、成程なァ。コイツは相当グレイトなことになってきてやがる」
フィリアの報告が全て終わった後、ジムが言う。
「ガンダム、ドルダ、か。フン、なかなか粋なデザインじゃねえか。で」
ジムはそこまで言うと、豪快に2リットルコーラを飲みほしてみせた。
「これからお前らは、どう動くつもりだ?」
再び、悟ったような鋭い目つきになるジム。
その視線に捉われたフィリアとディックはやや戸惑うが、意を決してジムに切り出す。
「実はそのことで、一つお願いがあるんです」
フィリアが真っ直ぐジムを見据えて言う。
「…何だい?言ってみろよ」
対してジムはニヤニヤしながら、煙草をふかす。
「先ほど、報告の際にも述べたのですが、我々第七次調査団の中に一名、MIAがいるのですが、その捜索に動きたいのです」
フィリアが言う。
ジムはニヤニヤしたまま何も言わない。
「公社の上層部や連邦軍の方にも働きかけてみたのですが、却下されてしまい…」
そこまでフィリアが言うと、ジムは手をかざし口を挟む。
「一つ聞きてえ。なんだって今更ソイツを探す?調査からもう数日経ってる。死んでるんじゃねえのか?」
「それは…!」
唇を噛むフィリアとディック。
「あら、ジムったらまたデリカシーのないことを」
「…るせえよ、ヴァニラ。静かに聞いてろ。で、何でだよ、理由を言ってみな」
今度はディックが答える。
「はい、実は今回の報告、火星で起こったことのすべてではないのです」
「!てめえら、この俺に嘘をつきやがったのか…!?」
ジムのこめかみがピクピクと動く。
「おいおい、ジム。そういう物言いだから器量が小さいのさ」
カナンがフッと笑う。
「黙ってろ、カナン。それと俺様の前で小さいは禁句だ。…で?どうなんだよ?」
ジムが目を細める。
カナンやヴァニラの挑発にも乗らない、ジムの真剣(マジ)モードだった。
カナンとヴァニラは目を合わせると、肩を竦める。
「その鍵を、現在MIAのその隊員が握っています。ですから、お願いします!」
ディックが深く頭を下げる。
プライドの高いこの男には、さぞや辛かろう。
ジムは、静かに問う。
「オメーは軍人だったな。捜索隊には間違いなくオメーも選ばれる。またあのドルダと出会うかもしんねえ。それでも行くか?」
「!…答えるまでもありません。自分は何としてでも、彼を捜し出す心づもりです」
真っ直ぐジムを見据えるディック。
再びジムは静かに口を開く。
「そうかよ。で、探す理由は?調査の全貌を知る為かい?」
ジムの鋭い目線が、さらに鋭くなる。その眼力に、思わず何も言えなくなる二人。
そこに、カナンが助け舟を出す。
「…そういや、シュード主任は彼と親友なんだっけ」
親友、という言葉にロコツに反応を示すジム。
「そ、そうです!彼とは、生まれた時からの親友なんです!だから僕、いや、自分はどうしても彼を助けたい!お願いします!何だって言うことは聞きますから!」
ダメ元で畳みかけ、豪快に土下座するフィリアとディック。
カナンとヴァニラ、スメッグヘッドは目を丸くする。
ジムの表情は小揺るぎもしない。
(やっぱり、ダメか…!)
フィリアが悔しそうな表情をする。
ふと上を見上げると、ジムはその目からポロポロと、大粒の涙をこぼしていた。
「オ、オメーラァ、泣かせるじゃねえか、コノヤロウ…!」
突然の反応に、戸惑う一同。カナンとヴァニラはニヤニヤしているのだが。
「チクショウ、ダチの為かよ…!命賭けててめえの鬼友(オニダチ=マブダチの最上級形、らしい)助けに行くだとぉ…!」
どうやらこの男のブロックワードは「親友」などとそういった類のものらしい。
「いいぜ、オメーラ気に入ったぜ!連邦議会には俺の方から言っといてやる!大船に乗ったつもりでこのジャイアントマン様に全てを任せなァ!!」
何処から取り出したのか、可愛い少女趣味なクマの絵がプリントされたハンカチで、涙を拭っている。
(うわぁ…嬉しいけど、なんか色々どうしよう…)
立ち上がったフィリアとディックは顔を見合わせ、戸惑っていた。
が、すぐにお礼を言う。
「あ、ありがとうございます!」
「なぁに、いいってことよ!おっと、こうしちゃいられねえ!ヴァニラ!メシの時間だ!よぉ、オメーラ、ソイツとの漢なレジェンド、この俺に聞かせやがれ!」
豪快に言うジムに、ヴァニラは恭しく頭を下げ、給仕室に連絡を入れる。
「ささ、座れよ!漢と飲む酒ほどうめえモンはねえ!今夜は飲み明かそうぜ!」
戸惑いながらテーブルの席につくディック。
フィリアは、ふとカナンの方を見る。
カナンはフィリアの視線に気づくと、パチッとウインクをしてみせたのだった。
フィリアの報告が全て終わった後、ジムが言う。
「ガンダム、ドルダ、か。フン、なかなか粋なデザインじゃねえか。で」
ジムはそこまで言うと、豪快に2リットルコーラを飲みほしてみせた。
「これからお前らは、どう動くつもりだ?」
再び、悟ったような鋭い目つきになるジム。
その視線に捉われたフィリアとディックはやや戸惑うが、意を決してジムに切り出す。
「実はそのことで、一つお願いがあるんです」
フィリアが真っ直ぐジムを見据えて言う。
「…何だい?言ってみろよ」
対してジムはニヤニヤしながら、煙草をふかす。
「先ほど、報告の際にも述べたのですが、我々第七次調査団の中に一名、MIAがいるのですが、その捜索に動きたいのです」
フィリアが言う。
ジムはニヤニヤしたまま何も言わない。
「公社の上層部や連邦軍の方にも働きかけてみたのですが、却下されてしまい…」
そこまでフィリアが言うと、ジムは手をかざし口を挟む。
「一つ聞きてえ。なんだって今更ソイツを探す?調査からもう数日経ってる。死んでるんじゃねえのか?」
「それは…!」
唇を噛むフィリアとディック。
「あら、ジムったらまたデリカシーのないことを」
「…るせえよ、ヴァニラ。静かに聞いてろ。で、何でだよ、理由を言ってみな」
今度はディックが答える。
「はい、実は今回の報告、火星で起こったことのすべてではないのです」
「!てめえら、この俺に嘘をつきやがったのか…!?」
ジムのこめかみがピクピクと動く。
「おいおい、ジム。そういう物言いだから器量が小さいのさ」
カナンがフッと笑う。
「黙ってろ、カナン。それと俺様の前で小さいは禁句だ。…で?どうなんだよ?」
ジムが目を細める。
カナンやヴァニラの挑発にも乗らない、ジムの真剣(マジ)モードだった。
カナンとヴァニラは目を合わせると、肩を竦める。
「その鍵を、現在MIAのその隊員が握っています。ですから、お願いします!」
ディックが深く頭を下げる。
プライドの高いこの男には、さぞや辛かろう。
ジムは、静かに問う。
「オメーは軍人だったな。捜索隊には間違いなくオメーも選ばれる。またあのドルダと出会うかもしんねえ。それでも行くか?」
「!…答えるまでもありません。自分は何としてでも、彼を捜し出す心づもりです」
真っ直ぐジムを見据えるディック。
再びジムは静かに口を開く。
「そうかよ。で、探す理由は?調査の全貌を知る為かい?」
ジムの鋭い目線が、さらに鋭くなる。その眼力に、思わず何も言えなくなる二人。
そこに、カナンが助け舟を出す。
「…そういや、シュード主任は彼と親友なんだっけ」
親友、という言葉にロコツに反応を示すジム。
「そ、そうです!彼とは、生まれた時からの親友なんです!だから僕、いや、自分はどうしても彼を助けたい!お願いします!何だって言うことは聞きますから!」
ダメ元で畳みかけ、豪快に土下座するフィリアとディック。
カナンとヴァニラ、スメッグヘッドは目を丸くする。
ジムの表情は小揺るぎもしない。
(やっぱり、ダメか…!)
フィリアが悔しそうな表情をする。
ふと上を見上げると、ジムはその目からポロポロと、大粒の涙をこぼしていた。
「オ、オメーラァ、泣かせるじゃねえか、コノヤロウ…!」
突然の反応に、戸惑う一同。カナンとヴァニラはニヤニヤしているのだが。
「チクショウ、ダチの為かよ…!命賭けててめえの鬼友(オニダチ=マブダチの最上級形、らしい)助けに行くだとぉ…!」
どうやらこの男のブロックワードは「親友」などとそういった類のものらしい。
「いいぜ、オメーラ気に入ったぜ!連邦議会には俺の方から言っといてやる!大船に乗ったつもりでこのジャイアントマン様に全てを任せなァ!!」
何処から取り出したのか、可愛い少女趣味なクマの絵がプリントされたハンカチで、涙を拭っている。
(うわぁ…嬉しいけど、なんか色々どうしよう…)
立ち上がったフィリアとディックは顔を見合わせ、戸惑っていた。
が、すぐにお礼を言う。
「あ、ありがとうございます!」
「なぁに、いいってことよ!おっと、こうしちゃいられねえ!ヴァニラ!メシの時間だ!よぉ、オメーラ、ソイツとの漢なレジェンド、この俺に聞かせやがれ!」
豪快に言うジムに、ヴァニラは恭しく頭を下げ、給仕室に連絡を入れる。
「ささ、座れよ!漢と飲む酒ほどうめえモンはねえ!今夜は飲み明かそうぜ!」
戸惑いながらテーブルの席につくディック。
フィリアは、ふとカナンの方を見る。
カナンはフィリアの視線に気づくと、パチッとウインクをしてみせたのだった。
「ところで」
紅茶をすすったルナリアンが言う。
「あの娘…シンシアさん、でしたか。彼女は調査隊の一員なのですか?」
「!」
クランとギデオンの動きが一瞬止まる。
報告には、シンシアの件は適当にごまかしていたのだった。
「…私の、妹です」
クランが言う。
「ええ。それで、調査隊の一員なのですか?」
にこやかに尋ねるルナリアン。相当強かだ。
「…あなたには、包み隠さずお話いたしましょう」
ギデオンが観念したように言う。ルナリアンの、全てを見透かすかのような瞳の前に屈したのだった。
「…ええ」
ルナリアンが頷くと、一同は再び真剣な面持ちで話し始めたのだった。
紅茶をすすったルナリアンが言う。
「あの娘…シンシアさん、でしたか。彼女は調査隊の一員なのですか?」
「!」
クランとギデオンの動きが一瞬止まる。
報告には、シンシアの件は適当にごまかしていたのだった。
「…私の、妹です」
クランが言う。
「ええ。それで、調査隊の一員なのですか?」
にこやかに尋ねるルナリアン。相当強かだ。
「…あなたには、包み隠さずお話いたしましょう」
ギデオンが観念したように言う。ルナリアンの、全てを見透かすかのような瞳の前に屈したのだった。
「…ええ」
ルナリアンが頷くと、一同は再び真剣な面持ちで話し始めたのだった。
ジュネスでは、ガンダムマルスに搭乗したアレスと、ドル・デーに搭乗した陽光が出撃の準備を行っていた。
「準備はいいな、少尉?」
気遣うように言う陽光。やはり、置いてきた自らの娘に年齢が近いことがあってのことだろうか。
「問題ありません、大尉」
アレスは静かに答える。
ちなみにアレスは、ベイトやジミーの前ではコンパニヤの名を名乗り、全てをコンパニヤの礼儀に則って行っていた。
しかし、陽光に対しては、以前自らが所属していた火星コロニー軍の所属であるかのように接していたのだった。
「ふっ、そういえば我々ももう、軍の大尉や少尉ではなくなっていたのだったな…」
陽光は呟くと、わずかに目を細める。
「では、いざ、尋常に参らん!」
目的地は月。
ガンダムドルダの追撃を目的としたローズ部隊が一斉にジュネスを発つ。
宇宙を舞うローズを確認すると、二人も声高に言う。
「ドル・デー、宗谷陽光!出るぞ!」
「マルス ムスペルヘイム、アレス・ルナーク!出る!」
勢い良く宇宙に現れた紅きMSが、今再び、ドルダと運命の剣を交えようとしていた。
「準備はいいな、少尉?」
気遣うように言う陽光。やはり、置いてきた自らの娘に年齢が近いことがあってのことだろうか。
「問題ありません、大尉」
アレスは静かに答える。
ちなみにアレスは、ベイトやジミーの前ではコンパニヤの名を名乗り、全てをコンパニヤの礼儀に則って行っていた。
しかし、陽光に対しては、以前自らが所属していた火星コロニー軍の所属であるかのように接していたのだった。
「ふっ、そういえば我々ももう、軍の大尉や少尉ではなくなっていたのだったな…」
陽光は呟くと、わずかに目を細める。
「では、いざ、尋常に参らん!」
目的地は月。
ガンダムドルダの追撃を目的としたローズ部隊が一斉にジュネスを発つ。
宇宙を舞うローズを確認すると、二人も声高に言う。
「ドル・デー、宗谷陽光!出るぞ!」
「マルス ムスペルヘイム、アレス・ルナーク!出る!」
勢い良く宇宙に現れた紅きMSが、今再び、ドルダと運命の剣を交えようとしていた。
十話 終 十一話に続く