Doll-Device Archive No.07 ドリームズ
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それは、彼女が今より若かった頃。
彼女が幸せだった頃。
幸せに、満ち溢れていた頃。
『近年、戦争による被害者は増える一方。兵士も、民間人も』
『それで、無人兵器を戦争に投入して早期解決を図るか』
彼女には恋人がいた。
同じ軍人で、同僚であった。
『これ以上人命を軽視できないわ。こんなことを続けていれば、
いずれ世界中の人々の感情は爆発して、暴動やテロが起きてしまう』
未来を悲観して、彼女は憂いを口にする。
『でも無人兵器は、戦争をゲームとして考えてしまうんじゃないのかい?』
『それは指揮官が正しく導ければ大丈夫よ。私は、そんな指揮官になりたいの』
『メリル、君は強いな』 恋人の言葉に、彼女は小さく首を振る。
『私はそんなじゃないわ。ただ、世界の安定を望んでいるだけ』
相次ぐ戦争は、彼女の心を痛めた。
戦地に赴き、その惨状を目にしたこともある。
彼女は優しい女性だった。
あの事件が訪れるまでは。
『どういうことだねルシェッタ大尉?』
『わ、私はっ……』
厳つい中年の男。当時の上官だった男だ。
彼女を、火星圏に追いやった男でもある。
『機密漏洩。スパイであった君の恋人がしでかしたことで、我々は対応に追われている』
『私は関係ありません! 信じてください!』
『信じておるよ。調査もしたしな。君は実に優秀な士官だ』
その目は、信じてなどいなかった。
一度疑いがかかれば、信用は一気に地に落ちる。
それが例えどんなエリートだったとしても。
『それでだ、ルシェッタ大尉。君を特別待遇で中佐に昇進させ、
火星圏駐留軍艦隊、旗艦モーリシャスの艦長に任命したい』
『!?』
彼女に衝撃と動揺が走る。
『それは、左遷ということ……でしょうか』
『何を言う。2階級特進に艦長就任。立派な栄転じゃないか』
苦虫を噛み潰したように、彼女の顔が歪む。
2階級特進。それが何を意味するか。
地球から遠く離れた、治安の悪い火星圏に転属すること。それが何を意味するか。
彼女はわかっていた。
(あぁ……この男も、そうなのか。同じなんだ……)
彼女は、諦めてしまった。
呆れて、笑みが込み上げてきそうになる。
『メリル、愛しているよ』
『ふふっ。私もよ』
違う。
『ルシェッタ大尉。君と肩と並べられるとは光栄だ』
『いえ、私も司令殿のお隣で勉強させて頂きます!』
違う。
『メリルの才能には惚れ惚れするよ。君は僕の最高のフィアンセさ』
『そんなに褒めないで。照れてしまうわ……』
違う。
『ハッハッハ。これでは私のイスも危ういな』
『私はまだまた、現場も不慣れな未熟者です』
違う。
そうやって、いかにも気を許したかのように笑いかけ、優しい言葉を吐く。
ただ自分の目的のために、自分が満足感を得るためだけに。
そして必要がなくなったならば、簡単に切り捨てる。
(そうか……信じた私が…………)
一言一句に喜んで、舞い上がって。
ただいいように扱われただけじゃないか。
信じることに、意味などあるのか。
(こんなに惨めな思いまでして……)
彼女は、ゆっくりと目を覚ました。
肌はじんわりと汗をかき、不快にさせる。
「あの頃の夢を、見るなんて……」
ビットシステムが軌道に乗ったからか。
ビットシステムの原形は、あの頃にあった。
優秀な指揮官が無人機での戦闘の指揮をとることによって、人命の損失の軽減を図る。
戦場には少ない人員で済む。被害も最小限で抑えられ、早期解決も可能だ。
初めは、そんな淡い願いから生まれた構想だった。
しかしその願いは変貌し、別のものへと変わっていく。
命令に絶対服従の無人兵器。
信じることも疑うことも必要ない、裏切らない機械。
「そうだ……それでいい」
そう割り切っても、虚しいのは何故だろう。
彼女が幸せだった頃。
幸せに、満ち溢れていた頃。
『近年、戦争による被害者は増える一方。兵士も、民間人も』
『それで、無人兵器を戦争に投入して早期解決を図るか』
彼女には恋人がいた。
同じ軍人で、同僚であった。
『これ以上人命を軽視できないわ。こんなことを続けていれば、
いずれ世界中の人々の感情は爆発して、暴動やテロが起きてしまう』
未来を悲観して、彼女は憂いを口にする。
『でも無人兵器は、戦争をゲームとして考えてしまうんじゃないのかい?』
『それは指揮官が正しく導ければ大丈夫よ。私は、そんな指揮官になりたいの』
『メリル、君は強いな』 恋人の言葉に、彼女は小さく首を振る。
『私はそんなじゃないわ。ただ、世界の安定を望んでいるだけ』
相次ぐ戦争は、彼女の心を痛めた。
戦地に赴き、その惨状を目にしたこともある。
彼女は優しい女性だった。
あの事件が訪れるまでは。
『どういうことだねルシェッタ大尉?』
『わ、私はっ……』
厳つい中年の男。当時の上官だった男だ。
彼女を、火星圏に追いやった男でもある。
『機密漏洩。スパイであった君の恋人がしでかしたことで、我々は対応に追われている』
『私は関係ありません! 信じてください!』
『信じておるよ。調査もしたしな。君は実に優秀な士官だ』
その目は、信じてなどいなかった。
一度疑いがかかれば、信用は一気に地に落ちる。
それが例えどんなエリートだったとしても。
『それでだ、ルシェッタ大尉。君を特別待遇で中佐に昇進させ、
火星圏駐留軍艦隊、旗艦モーリシャスの艦長に任命したい』
『!?』
彼女に衝撃と動揺が走る。
『それは、左遷ということ……でしょうか』
『何を言う。2階級特進に艦長就任。立派な栄転じゃないか』
苦虫を噛み潰したように、彼女の顔が歪む。
2階級特進。それが何を意味するか。
地球から遠く離れた、治安の悪い火星圏に転属すること。それが何を意味するか。
彼女はわかっていた。
(あぁ……この男も、そうなのか。同じなんだ……)
彼女は、諦めてしまった。
呆れて、笑みが込み上げてきそうになる。
『メリル、愛しているよ』
『ふふっ。私もよ』
違う。
『ルシェッタ大尉。君と肩と並べられるとは光栄だ』
『いえ、私も司令殿のお隣で勉強させて頂きます!』
違う。
『メリルの才能には惚れ惚れするよ。君は僕の最高のフィアンセさ』
『そんなに褒めないで。照れてしまうわ……』
違う。
『ハッハッハ。これでは私のイスも危ういな』
『私はまだまた、現場も不慣れな未熟者です』
違う。
そうやって、いかにも気を許したかのように笑いかけ、優しい言葉を吐く。
ただ自分の目的のために、自分が満足感を得るためだけに。
そして必要がなくなったならば、簡単に切り捨てる。
(そうか……信じた私が…………)
一言一句に喜んで、舞い上がって。
ただいいように扱われただけじゃないか。
信じることに、意味などあるのか。
(こんなに惨めな思いまでして……)
彼女は、ゆっくりと目を覚ました。
肌はじんわりと汗をかき、不快にさせる。
「あの頃の夢を、見るなんて……」
ビットシステムが軌道に乗ったからか。
ビットシステムの原形は、あの頃にあった。
優秀な指揮官が無人機での戦闘の指揮をとることによって、人命の損失の軽減を図る。
戦場には少ない人員で済む。被害も最小限で抑えられ、早期解決も可能だ。
初めは、そんな淡い願いから生まれた構想だった。
しかしその願いは変貌し、別のものへと変わっていく。
命令に絶対服従の無人兵器。
信じることも疑うことも必要ない、裏切らない機械。
「そうだ……それでいい」
そう割り切っても、虚しいのは何故だろう。
ドルダを狙った襲撃から、半日近くが経過した。
戦闘は、残存したローズの撤退をもって終了。
ドルダはそれを追撃することなく、ドックに戻った。
地球圏連合軍側も、ビットシステムを積んだイーグルクロウを墜とされ、追撃を断念した。
「どう? ヘルガちゃんの容態は?」
医務室にクランが入ってくる。
休戦協定の交渉が決裂し、ギデオンと共に居住施設も兼ねたドックに帰ってきていた。
ベッドにはヘルガ。そしてそれを見守るシオンとモモ。
「例の侵入者さんと遭った極度の恐怖感のせいで失神したみたいですね。その内起きると思いますぅ……」
「クソッ! 俺のせいだ。……俺がヘルガから離れたから!」
「シオン君、自棄になっちゃ駄目よ」
シオンに駆け寄るクラン。
屈んで、今にも泣き出しそうなシオンの頭を、優しく撫でる。
「昔、私にも妹がいたわ。もう……この世にはいないけれど」
「えっ……」
シオンは、クランが何を言っているのかわからずに、不思議そうに顔を上げた。
モモは不安気に、かける言葉を探している。
「私は助けられなかったから。だからシオン君、あなたは、ヘルガちゃんを守ってあげて」
強いが、悲しい瞳。
クランは切なく、小さい笑って、またシオンの頭を撫でた。
そんなクランを見つめていたモモは、不意に立ち上がる。
「クランさん……モモ、思うんです。クランさんも、自分の過去に決着を付けた方がいいと思います」
「モモちゃん……」
「シンシアちゃんと出会ってからのクランさんは、ずっと辛そうです。
クランさんは、本当の妹さんとシンシアちゃんと重ねてるんじゃないですか?」
「それは……」
表情を曇らせていくクランに、モモは苛立ちを募らせていく。
「しっかりしてくださぁい! モモはどんな結果になっても、クランさんとシンシアちゃんを応援します!」
怒るようにも励ますようにも取れる言い方で、モモは言う。
精一杯の叱咤激励だった。
「…………ありがとう」
クランは、笑った。
「そうね。そうだわ。このままじゃいけないもの」
クランも立ち上がる。
「行ってきます」
「はいっ! 行ってらっしゃいです!」
互いに笑って、短い挨拶を交わす。
クランはしっかりと顔を上げて、医務室から出て行った。
吹っ切れたように。否、彼女は吹っ切れたのだ。
「なぁ、シンシアって、何者なんだ?」
クランのいなくなった医務室で、ぽつりと、シオンが疑問を口にする。
「シンシアちゃんは、火星の地下でドルダと一緒にいたんです。何者なのかは、わかりません……」
「それって……」
「でも、モモは信じたいんです。シンシアちゃんも、クランさんも」
例えシンシアが普通じゃないとしても。
紫藤兄妹には知らされていないが、シンシアが撃たれたことはモモの耳にも入ってきている。
患部が謎の発光現象を引き起こし、傷を治癒させたことも。
「モモは地球にパパとママがいるし、ヘルガちゃんにだってシオン君やパパがいます」
暗い表情に変わるモモ。
「……でも、このままじゃ、クランさんは独りだもん」
「そっか……家族に、姉妹(きょうだい)になろうとしてるんだ、あの人も」
「うん。だから、シオン君もシンシアちゃんのこと、変な目で見ないでくださいね」
「おう! 俺はジャンク屋の子供だぜ!」
明るく元気に言ってみせるシオンに、暗い面持ちだったモモも笑顔に変わる。
(でも、独りなのはクランさんだけじゃない……)
シオンに不安をかけまいと、笑顔は消さずに。
しかしモモの中には、まだ心配に思う人物がいた。
「ん、んん……」
ベッドから声が聞こえる。
「ヘルガ! 気が付いたか!?」
「…………?」
ぼんやりとした顔で、ヘルガがシオンを見る。
一瞬、この人は誰なんだろうと、疑問が浮かぶ。
段々と意識が晴れていく中、やっと目の前の少年がシオンだということを思い出した。
「お兄ちゃん……」
彼女は夢を見ていた。
今より幼かった頃の夢。
血の繋がった家族と暮らしていた頃の、夢。
戦闘は、残存したローズの撤退をもって終了。
ドルダはそれを追撃することなく、ドックに戻った。
地球圏連合軍側も、ビットシステムを積んだイーグルクロウを墜とされ、追撃を断念した。
「どう? ヘルガちゃんの容態は?」
医務室にクランが入ってくる。
休戦協定の交渉が決裂し、ギデオンと共に居住施設も兼ねたドックに帰ってきていた。
ベッドにはヘルガ。そしてそれを見守るシオンとモモ。
「例の侵入者さんと遭った極度の恐怖感のせいで失神したみたいですね。その内起きると思いますぅ……」
「クソッ! 俺のせいだ。……俺がヘルガから離れたから!」
「シオン君、自棄になっちゃ駄目よ」
シオンに駆け寄るクラン。
屈んで、今にも泣き出しそうなシオンの頭を、優しく撫でる。
「昔、私にも妹がいたわ。もう……この世にはいないけれど」
「えっ……」
シオンは、クランが何を言っているのかわからずに、不思議そうに顔を上げた。
モモは不安気に、かける言葉を探している。
「私は助けられなかったから。だからシオン君、あなたは、ヘルガちゃんを守ってあげて」
強いが、悲しい瞳。
クランは切なく、小さい笑って、またシオンの頭を撫でた。
そんなクランを見つめていたモモは、不意に立ち上がる。
「クランさん……モモ、思うんです。クランさんも、自分の過去に決着を付けた方がいいと思います」
「モモちゃん……」
「シンシアちゃんと出会ってからのクランさんは、ずっと辛そうです。
クランさんは、本当の妹さんとシンシアちゃんと重ねてるんじゃないですか?」
「それは……」
表情を曇らせていくクランに、モモは苛立ちを募らせていく。
「しっかりしてくださぁい! モモはどんな結果になっても、クランさんとシンシアちゃんを応援します!」
怒るようにも励ますようにも取れる言い方で、モモは言う。
精一杯の叱咤激励だった。
「…………ありがとう」
クランは、笑った。
「そうね。そうだわ。このままじゃいけないもの」
クランも立ち上がる。
「行ってきます」
「はいっ! 行ってらっしゃいです!」
互いに笑って、短い挨拶を交わす。
クランはしっかりと顔を上げて、医務室から出て行った。
吹っ切れたように。否、彼女は吹っ切れたのだ。
「なぁ、シンシアって、何者なんだ?」
クランのいなくなった医務室で、ぽつりと、シオンが疑問を口にする。
「シンシアちゃんは、火星の地下でドルダと一緒にいたんです。何者なのかは、わかりません……」
「それって……」
「でも、モモは信じたいんです。シンシアちゃんも、クランさんも」
例えシンシアが普通じゃないとしても。
紫藤兄妹には知らされていないが、シンシアが撃たれたことはモモの耳にも入ってきている。
患部が謎の発光現象を引き起こし、傷を治癒させたことも。
「モモは地球にパパとママがいるし、ヘルガちゃんにだってシオン君やパパがいます」
暗い表情に変わるモモ。
「……でも、このままじゃ、クランさんは独りだもん」
「そっか……家族に、姉妹(きょうだい)になろうとしてるんだ、あの人も」
「うん。だから、シオン君もシンシアちゃんのこと、変な目で見ないでくださいね」
「おう! 俺はジャンク屋の子供だぜ!」
明るく元気に言ってみせるシオンに、暗い面持ちだったモモも笑顔に変わる。
(でも、独りなのはクランさんだけじゃない……)
シオンに不安をかけまいと、笑顔は消さずに。
しかしモモの中には、まだ心配に思う人物がいた。
「ん、んん……」
ベッドから声が聞こえる。
「ヘルガ! 気が付いたか!?」
「…………?」
ぼんやりとした顔で、ヘルガがシオンを見る。
一瞬、この人は誰なんだろうと、疑問が浮かぶ。
段々と意識が晴れていく中、やっと目の前の少年がシオンだということを思い出した。
「お兄ちゃん……」
彼女は夢を見ていた。
今より幼かった頃の夢。
血の繋がった家族と暮らしていた頃の、夢。
クランはドックに向かう。
用意された自室に、シンシアはいなかった。
そうなると、シンシアはどこにいるのだろうと考える。
もし、このコロニーに友人がいるなら、繋がりを求めて、その友人を訪ねるかもしれない。
繋がり。そう、繋がりだ。
シンシアにとっての繋がり、それはドルダ。
安心できるのは、偽りの姉ではなく、自分が眠っていた揺り籠。
「やっぱり、ここにいた」
ドルダの足下で、うずくまっているシンシアがいた。
「……クラン」
気付いたシンシアが、名を呼ぶ。
呼び方が、ステーションにいた時に戻っていた。
「気付いたのね。自分が、私の妹じゃないって」
クランが言うと、シンシアはハッとする。
やはりそうなのかと、シンシアは思い詰めた様子だった。
「これに乗ると、わたしがわたしでなくなっちゃう」
「シンシア……」
「敵を倒せって、別のワタシが囁くの。これに乗ると、その囁きに耐えられなくなっちゃう」
ドルダに乗ると、一時的に記憶を取り戻すのだろうか。
火星の地下で出会った、冷たいあの少女に。
デブリでの一戦の際、酷く苦しそうにしていたのは、攻撃的な自分に抗おうとしていたからなのか。
「わたしは誰なの? なんなの!?」
縋り付くように、シンシアは声を荒げた。
「撃たれたはずなのに、どこも痛くない……」
服の上から撃たれた箇所を触りながら、シンシアは消え入りそうな声を出す。
「わたし、化け物なのかな」
「!!」
「ねえ……わたし、化け物なの!?」
「違う!」
クランはシンシアを抱き締める。
「あなたは化け物じゃない! 化け物なんかじゃない!!」
「でも、こんなの、人間じゃないよ…………」
「それでも、あなたは私の妹よ」
クランはより強く、シンシアを抱き締める。
「いもうと……?」
そうではない。
クラン自身も、妹ではないと言った。
ゆっくりと、クランはシンシアから少しだけ距離をとる。
目線の高さをシンシアと同じにして、クランはまっすぐ、シンシアを見た。
「私は、してはいけないことをしてしまった。死んでしまった妹と、あなたを、重ねてしまった」
謝罪にもならない。
ただただ、クランは自分を責める。
「あなたと、あの子は違うのに。あの子だと思おうとしてしまった」
だが、それは間違いなのだ。
そんなことを続けていても、嘘はいつまでも嘘に過ぎない。
自分は、赤の他人を妹として扱うというその嘘に対して、永遠に自責の念にかられ、
そして偽りの妹は、自分が本当に妹なのだろうかという違和感に、自分と姉を疑い続ける。
「だから、もう一度、やり直させて」
こんなことを頼むのは、図々しいことなのかもしれない。
けれども、言わずにはいられなかった。
そうしなければ、贖罪にもならないから。
「私はあなたの、姉になりたい」
今度は、都合のいい言い訳などにはしない。
クランは、右手を差し出す。
どんな結果になろうとも、後悔はしない。
「…………」
シンシアは、否、もうシンシアではないのかもしれない。
彼女はクランの目を、じっと見つめていた。
そして、その視線は、差し出された手へと移る。
彼女はゆっくりと自分の右手を、クランの右手へと持っていく。
その二つの手を重ねて、優しく握った。
「わたしはシンシア・ナギサカ。あなた、だぁれ?」
そう言って、笑った。
込み上げてくる涙を抑えず、クランは再び、シンシアを抱き締める。
泣きながらも、クランの顔は、笑顔に満ち溢れていた。
シンシアも抱き締め返す。
心地良い温もり。
心の中にあった壁が一つ、崩れた気がした。
だが、まだシンシアの中には、自分に対する疑問が残っている。
ドルダに乗ると現れる攻撃的な自分。
(もう一人のワタシは誰なんだろう)
それが、本当の……
「化け物です」
ドックに、クランとシンシアではない女の声が響く。
クランとシンシアは振り返る。
そこにいたのは、ノーマルスーツを着た、ミランダだった。
「ミランダさん、何を言っているの……?」
「その子は、化け物だと言ったんです。クラン・R・ナギサカ」
強い口調で、ミランダは言う。
「火星地下の建造物。そこにあったモビルスーツとそのパイロット。その正体が何かはわかりません」
ゆっくりとミランダが近付いてくる。
その表情は険しく、凄みさえ感じさせた。
「わからないけれど、それが何を意味するのかはわかります」
「何を、意味するのか……?」
「敵意あるものから自身を防衛し、そして掃討を行う兵器です」
現在の人類とは別の高度な技術を持った人類が生み出した兵器。
信じたくはなかったが、やはりそう考えなくては合点がいかない。
「そして私は、その兵器から、火星コロニーの独立を訴える人々を守らなくてはならない」
「ミランダさん、あなた、何を言って……」
ミランダの言っていることに、理解が追い付かない。
そんなクランとシンシアと、ミランダがいるドック内に、警報が鳴り響く。
『皆、聞いているか。コロニーにローズ部隊が接近している。
1機は、隊を離れてコロニーの下方に向かったということだ』
ギデオンの声がスピーカーから流れてくる。
コロニーの下方。
この、ドックが位置する場所。
「まさか、ミランダさん……」
「火星調査任務。素晴らしい経験でした。火星の大地を踏み締めて、火星コロニー民の未来にも希望が持てた」
「いつから? いつからなの!?」
「第一次調査隊が選抜される以前からです。審査官の中に潜入者がいたんです。
私はその方の推薦で調査隊に選ばれ、監視のために貴女達と行動を共にした。
ステーションのスタッフも、私の指示で独立派の構成員とすり替えておきました」
嘘はついてない。
いつもと変わらない、真面目で冷静な、ミランダだった。
「そんな……」
あまりにも受け入れ難い事実。
動揺を隠せずにいるクランの目の前にまで、ミランダはやってくる。
「今まで、ありがとうございました」
頭を下げて、ミランダは謝辞を口にした。
そして、シンシアに顔を向ける。
「私は、あなたを殺す」
「……」
「あなたとこのモビルスーツは、危険すぎるわ」
敵意に満ちた顔をして、ミランダが告げる。
シンシアは、驚くでも怖がるでもなく、じっとミランダを見ていた。
(ッ……不気味だわ!)
ミランダは駆け出す。
もうこの場所にいる理由はない。
ミランダは、気密扉のロックを解除する。
「ミランダさん! ミランダ・ウォン!!」
クランの叫びは届かない。
(さよなら、調査隊として過ごした日々。さよなら……ヴァイスさん)
ミランダは、開いた扉の先に、消えていった。
用意された自室に、シンシアはいなかった。
そうなると、シンシアはどこにいるのだろうと考える。
もし、このコロニーに友人がいるなら、繋がりを求めて、その友人を訪ねるかもしれない。
繋がり。そう、繋がりだ。
シンシアにとっての繋がり、それはドルダ。
安心できるのは、偽りの姉ではなく、自分が眠っていた揺り籠。
「やっぱり、ここにいた」
ドルダの足下で、うずくまっているシンシアがいた。
「……クラン」
気付いたシンシアが、名を呼ぶ。
呼び方が、ステーションにいた時に戻っていた。
「気付いたのね。自分が、私の妹じゃないって」
クランが言うと、シンシアはハッとする。
やはりそうなのかと、シンシアは思い詰めた様子だった。
「これに乗ると、わたしがわたしでなくなっちゃう」
「シンシア……」
「敵を倒せって、別のワタシが囁くの。これに乗ると、その囁きに耐えられなくなっちゃう」
ドルダに乗ると、一時的に記憶を取り戻すのだろうか。
火星の地下で出会った、冷たいあの少女に。
デブリでの一戦の際、酷く苦しそうにしていたのは、攻撃的な自分に抗おうとしていたからなのか。
「わたしは誰なの? なんなの!?」
縋り付くように、シンシアは声を荒げた。
「撃たれたはずなのに、どこも痛くない……」
服の上から撃たれた箇所を触りながら、シンシアは消え入りそうな声を出す。
「わたし、化け物なのかな」
「!!」
「ねえ……わたし、化け物なの!?」
「違う!」
クランはシンシアを抱き締める。
「あなたは化け物じゃない! 化け物なんかじゃない!!」
「でも、こんなの、人間じゃないよ…………」
「それでも、あなたは私の妹よ」
クランはより強く、シンシアを抱き締める。
「いもうと……?」
そうではない。
クラン自身も、妹ではないと言った。
ゆっくりと、クランはシンシアから少しだけ距離をとる。
目線の高さをシンシアと同じにして、クランはまっすぐ、シンシアを見た。
「私は、してはいけないことをしてしまった。死んでしまった妹と、あなたを、重ねてしまった」
謝罪にもならない。
ただただ、クランは自分を責める。
「あなたと、あの子は違うのに。あの子だと思おうとしてしまった」
だが、それは間違いなのだ。
そんなことを続けていても、嘘はいつまでも嘘に過ぎない。
自分は、赤の他人を妹として扱うというその嘘に対して、永遠に自責の念にかられ、
そして偽りの妹は、自分が本当に妹なのだろうかという違和感に、自分と姉を疑い続ける。
「だから、もう一度、やり直させて」
こんなことを頼むのは、図々しいことなのかもしれない。
けれども、言わずにはいられなかった。
そうしなければ、贖罪にもならないから。
「私はあなたの、姉になりたい」
今度は、都合のいい言い訳などにはしない。
クランは、右手を差し出す。
どんな結果になろうとも、後悔はしない。
「…………」
シンシアは、否、もうシンシアではないのかもしれない。
彼女はクランの目を、じっと見つめていた。
そして、その視線は、差し出された手へと移る。
彼女はゆっくりと自分の右手を、クランの右手へと持っていく。
その二つの手を重ねて、優しく握った。
「わたしはシンシア・ナギサカ。あなた、だぁれ?」
そう言って、笑った。
込み上げてくる涙を抑えず、クランは再び、シンシアを抱き締める。
泣きながらも、クランの顔は、笑顔に満ち溢れていた。
シンシアも抱き締め返す。
心地良い温もり。
心の中にあった壁が一つ、崩れた気がした。
だが、まだシンシアの中には、自分に対する疑問が残っている。
ドルダに乗ると現れる攻撃的な自分。
(もう一人のワタシは誰なんだろう)
それが、本当の……
「化け物です」
ドックに、クランとシンシアではない女の声が響く。
クランとシンシアは振り返る。
そこにいたのは、ノーマルスーツを着た、ミランダだった。
「ミランダさん、何を言っているの……?」
「その子は、化け物だと言ったんです。クラン・R・ナギサカ」
強い口調で、ミランダは言う。
「火星地下の建造物。そこにあったモビルスーツとそのパイロット。その正体が何かはわかりません」
ゆっくりとミランダが近付いてくる。
その表情は険しく、凄みさえ感じさせた。
「わからないけれど、それが何を意味するのかはわかります」
「何を、意味するのか……?」
「敵意あるものから自身を防衛し、そして掃討を行う兵器です」
現在の人類とは別の高度な技術を持った人類が生み出した兵器。
信じたくはなかったが、やはりそう考えなくては合点がいかない。
「そして私は、その兵器から、火星コロニーの独立を訴える人々を守らなくてはならない」
「ミランダさん、あなた、何を言って……」
ミランダの言っていることに、理解が追い付かない。
そんなクランとシンシアと、ミランダがいるドック内に、警報が鳴り響く。
『皆、聞いているか。コロニーにローズ部隊が接近している。
1機は、隊を離れてコロニーの下方に向かったということだ』
ギデオンの声がスピーカーから流れてくる。
コロニーの下方。
この、ドックが位置する場所。
「まさか、ミランダさん……」
「火星調査任務。素晴らしい経験でした。火星の大地を踏み締めて、火星コロニー民の未来にも希望が持てた」
「いつから? いつからなの!?」
「第一次調査隊が選抜される以前からです。審査官の中に潜入者がいたんです。
私はその方の推薦で調査隊に選ばれ、監視のために貴女達と行動を共にした。
ステーションのスタッフも、私の指示で独立派の構成員とすり替えておきました」
嘘はついてない。
いつもと変わらない、真面目で冷静な、ミランダだった。
「そんな……」
あまりにも受け入れ難い事実。
動揺を隠せずにいるクランの目の前にまで、ミランダはやってくる。
「今まで、ありがとうございました」
頭を下げて、ミランダは謝辞を口にした。
そして、シンシアに顔を向ける。
「私は、あなたを殺す」
「……」
「あなたとこのモビルスーツは、危険すぎるわ」
敵意に満ちた顔をして、ミランダが告げる。
シンシアは、驚くでも怖がるでもなく、じっとミランダを見ていた。
(ッ……不気味だわ!)
ミランダは駆け出す。
もうこの場所にいる理由はない。
ミランダは、気密扉のロックを解除する。
「ミランダさん! ミランダ・ウォン!!」
クランの叫びは届かない。
(さよなら、調査隊として過ごした日々。さよなら……ヴァイスさん)
ミランダは、開いた扉の先に、消えていった。
(ここでCM。アイキャッチは寂しげなミランダ。そして彼女の想い人の後ろ姿)
(CM終わり。アイキャッチはヴァイスと、ノーマルスーツを着た誰かの後ろ姿)
内側の気密扉が閉まり、気密の調整が終わると、外側の気密扉が開く。
目の前には、広大な火星圏の宇宙が広がっていた。
ヘルメットに搭載された通信機が鳴る。
『ミランダ・ウォンか』
「回収お疲れ様です」
ギデオンの言っていた、コロニー下方に向かっていたローズ。
乗っているのは、ディランだ。
コックピットが開き、差し出されたディランの手を取り、ミランダが乗り移る。
「あんたは……」
「あの時のことは気にしないでください。貴方は貴方の任務を全うしただけ」
ヘルメット越しに映る顔でも、誰だかは覚えている。
記憶力がいいのは、お互い様だった。
「ドルダ……いえ、コードネームガンダムの破壊任務は、まだ継続中でしょうか」
「いや。だが、可能ならばこの場で破壊を優先したい」
淡々とした会話だった。
一分一秒が短く過ぎていくような。
「では、頼み事があります。アレの破壊は、私に任せてください」
淡々とした口調の中に、少しだけ感情が加わる。
すぐにその変化に気付いたディランは、多少の間を置いて口を開いた。
「それは上が決めることだ。だが今は、あんたの回収を優先させよう」
「感謝します。必ず、アレを討ちます」
ミランダは決意に、燃える。
ドルダの破壊は、ディランだけの任務ではない。
追撃部隊だったマイケル・ミッチェル隊もその任に就いている。
だが、ミランダの意志はそれをも押しのけてしまいそうな、執着にも近かった。
「俺からも一つ、訊いていいか」
「なんでしょうか」
「ガンダムのパイロットが誰なのか、知りたい」
何故そんなことを訊くのだろう。
ミランダは疑問に思う。
シートの脇に移動したミランダの位置からでは、ディランの顔色を窺い知ることはできない。
別に隠すこともないと、ミランダは素直に答えた。
「火星の地下で、あの機体は発見されました」
言葉だけで思い出してしまいそうになる自分を、心の中で叱る。
「その時に乗っていたのは正体不明の謎の少女で、今もそれは変わりません」
「……そうか」
抑揚なく、ディランは言う。
ミランダは心なしか、その声が安心しているようにも聞こえた。
ディランとミランダが乗るローズは、コロニーを離れ飛び去っていく。
コロニー中間部付近の宙域では、未だにマイケル・ミッチェル隊が
ローズを回収した地球圏連合軍の部隊と交戦中だった。
マイケル・ミッチェル隊。
隊の一員であるターニャ・ソブロフもまた、この物語の中で、誰かと家族になろうとした一人だった。
目の前には、広大な火星圏の宇宙が広がっていた。
ヘルメットに搭載された通信機が鳴る。
『ミランダ・ウォンか』
「回収お疲れ様です」
ギデオンの言っていた、コロニー下方に向かっていたローズ。
乗っているのは、ディランだ。
コックピットが開き、差し出されたディランの手を取り、ミランダが乗り移る。
「あんたは……」
「あの時のことは気にしないでください。貴方は貴方の任務を全うしただけ」
ヘルメット越しに映る顔でも、誰だかは覚えている。
記憶力がいいのは、お互い様だった。
「ドルダ……いえ、コードネームガンダムの破壊任務は、まだ継続中でしょうか」
「いや。だが、可能ならばこの場で破壊を優先したい」
淡々とした会話だった。
一分一秒が短く過ぎていくような。
「では、頼み事があります。アレの破壊は、私に任せてください」
淡々とした口調の中に、少しだけ感情が加わる。
すぐにその変化に気付いたディランは、多少の間を置いて口を開いた。
「それは上が決めることだ。だが今は、あんたの回収を優先させよう」
「感謝します。必ず、アレを討ちます」
ミランダは決意に、燃える。
ドルダの破壊は、ディランだけの任務ではない。
追撃部隊だったマイケル・ミッチェル隊もその任に就いている。
だが、ミランダの意志はそれをも押しのけてしまいそうな、執着にも近かった。
「俺からも一つ、訊いていいか」
「なんでしょうか」
「ガンダムのパイロットが誰なのか、知りたい」
何故そんなことを訊くのだろう。
ミランダは疑問に思う。
シートの脇に移動したミランダの位置からでは、ディランの顔色を窺い知ることはできない。
別に隠すこともないと、ミランダは素直に答えた。
「火星の地下で、あの機体は発見されました」
言葉だけで思い出してしまいそうになる自分を、心の中で叱る。
「その時に乗っていたのは正体不明の謎の少女で、今もそれは変わりません」
「……そうか」
抑揚なく、ディランは言う。
ミランダは心なしか、その声が安心しているようにも聞こえた。
ディランとミランダが乗るローズは、コロニーを離れ飛び去っていく。
コロニー中間部付近の宙域では、未だにマイケル・ミッチェル隊が
ローズを回収した地球圏連合軍の部隊と交戦中だった。
マイケル・ミッチェル隊。
隊の一員であるターニャ・ソブロフもまた、この物語の中で、誰かと家族になろうとした一人だった。
それは数時間前に遡る。
第33コロニーの軍事ドックは、作業に追われたていた。
先日届いた武装の取り付けが、急ピッチで進められている。
そんなドックで、タオとマオは、じーっと自分達のローズを眺めていた。
二人が搭乗する2機の装備が、ビームライフルからビームガンブレードに交換されていく。
左肩部にはシールドが取り付けられた。
レイピアは、対ガンダム戦のためにそのままにされている。
「あんた達、ここにいたのか!」
聞き慣れた小気味よい女の声に、二人は振り返った。
「ミッチェル隊のパイロットは全員ミーティングだってさ」
ニッと笑って、ターニャは出口に向かって歩き出す。
それを追うタオとマオ。
「それにしてもあのオッサンはアホだね。帰ってきて早々出撃って」
オッサンとはもちろんマイケルのことである。
「鷲がすばしっこくなったことへの牽制と、新型装備の慣らしだってさ」
一方的にターニャは喋る。
彼等は声を出すことができない。返事がないことは、百も承知だ。
しかし、ターニャはどこがで期待していた。
いつか二人が一言でもいい。言葉を発してくれるのではないかと。
彼等は幼少時のトラウマで声を出すことができなくなったという。
つまり声帯や喉には異常はないのだ。
だから、ターニャは信じていた。
かつて自分が、マイケルによって変われたように。
火星コロニー群の中には、性風俗に特化したコロニーがいくつかある。
そのコロニーの一つに、幼い頃のターニャはいた。
貧しかった家庭事情のせいで、ターニャはその身を娼館に売られてしまった。
泣こうが喚こうが叫ぼうが、親は冷たい目のまま。
信じていた、唯一の肉親だというのに。
その時、彼女の中で何かが壊れてた。
己の境遇に絶望し、死を望んだこともある。
そんなある日、彼女の元に、彼はやってきた。
床に無造作にばらまかれる札束。
ペコペコと頭を下げる娼館のオーナー。
『……アンタ、なに?』
『僕は火星圏に新天地を創る男さ』
オーナーがいなくなり二人きりになった部屋で会話が始まる。
『ハッ。何言ってんの? この火星圏にそんなとこありゃしない! ましてや創ることなんて……』
『できるさ! 僕が創る!』
『アタシと年も変わらないガキが!?』
『年なんか些細なことさ。未来を創るのは老人かもしれないし、
若者かもしれない。要するにその意志があるかないかだよ』
なんという夢想家だろう。
ターニャは呆れ返ってしまう。
だがその反面、不思議と、その言葉に実現性があるように思えた自分がいる。
この男は何故、荒んだ火星圏で、こんなにも明るく振る舞えるのだろう。
絶望に満ち溢れていたターニャに、少しずつ希望が生まれていく。
(アイツがアタシをあの娼館から連れ出してくれた時から、
ずっとアタシは、アイツの創る新天地を信じてきたんだ)
だから、ここまで来れた。
生きるために、様々なことを覚え、何度も死線を乗り越えてきた。
ターニャは振り返る。
そして、タオとマオを抱き締めた。
「あんた達も、アイツの創る未来には欠かせない。だから死ぬんじゃないよ」
タオとマオは、突然のことに驚いた様子だったが、感情の起伏は余りにも薄かった。
この兄弟は、何を思うのだろう。
第33コロニーの軍事ドックは、作業に追われたていた。
先日届いた武装の取り付けが、急ピッチで進められている。
そんなドックで、タオとマオは、じーっと自分達のローズを眺めていた。
二人が搭乗する2機の装備が、ビームライフルからビームガンブレードに交換されていく。
左肩部にはシールドが取り付けられた。
レイピアは、対ガンダム戦のためにそのままにされている。
「あんた達、ここにいたのか!」
聞き慣れた小気味よい女の声に、二人は振り返った。
「ミッチェル隊のパイロットは全員ミーティングだってさ」
ニッと笑って、ターニャは出口に向かって歩き出す。
それを追うタオとマオ。
「それにしてもあのオッサンはアホだね。帰ってきて早々出撃って」
オッサンとはもちろんマイケルのことである。
「鷲がすばしっこくなったことへの牽制と、新型装備の慣らしだってさ」
一方的にターニャは喋る。
彼等は声を出すことができない。返事がないことは、百も承知だ。
しかし、ターニャはどこがで期待していた。
いつか二人が一言でもいい。言葉を発してくれるのではないかと。
彼等は幼少時のトラウマで声を出すことができなくなったという。
つまり声帯や喉には異常はないのだ。
だから、ターニャは信じていた。
かつて自分が、マイケルによって変われたように。
火星コロニー群の中には、性風俗に特化したコロニーがいくつかある。
そのコロニーの一つに、幼い頃のターニャはいた。
貧しかった家庭事情のせいで、ターニャはその身を娼館に売られてしまった。
泣こうが喚こうが叫ぼうが、親は冷たい目のまま。
信じていた、唯一の肉親だというのに。
その時、彼女の中で何かが壊れてた。
己の境遇に絶望し、死を望んだこともある。
そんなある日、彼女の元に、彼はやってきた。
床に無造作にばらまかれる札束。
ペコペコと頭を下げる娼館のオーナー。
『……アンタ、なに?』
『僕は火星圏に新天地を創る男さ』
オーナーがいなくなり二人きりになった部屋で会話が始まる。
『ハッ。何言ってんの? この火星圏にそんなとこありゃしない! ましてや創ることなんて……』
『できるさ! 僕が創る!』
『アタシと年も変わらないガキが!?』
『年なんか些細なことさ。未来を創るのは老人かもしれないし、
若者かもしれない。要するにその意志があるかないかだよ』
なんという夢想家だろう。
ターニャは呆れ返ってしまう。
だがその反面、不思議と、その言葉に実現性があるように思えた自分がいる。
この男は何故、荒んだ火星圏で、こんなにも明るく振る舞えるのだろう。
絶望に満ち溢れていたターニャに、少しずつ希望が生まれていく。
(アイツがアタシをあの娼館から連れ出してくれた時から、
ずっとアタシは、アイツの創る新天地を信じてきたんだ)
だから、ここまで来れた。
生きるために、様々なことを覚え、何度も死線を乗り越えてきた。
ターニャは振り返る。
そして、タオとマオを抱き締めた。
「あんた達も、アイツの創る未来には欠かせない。だから死ぬんじゃないよ」
タオとマオは、突然のことに驚いた様子だったが、感情の起伏は余りにも薄かった。
この兄弟は、何を思うのだろう。
ミランダのいなくなったドックに、ギデオンとヴァイスが入ってくる。
力無く床に座り込んでいるクラン。
シンシアと再び歩み始めることのできた感動の涙は、突然の別れへの悲しみの涙に変わっていた。
シンシアはそんなクランを不安そうな面持ちで見つめている。
「何があった!?」
啜り泣くクランにヴァイスが訊く。
顔を上げたクランの顔は、涙で濡れていた。
「ミランダさんは……火星コロニー独立派だった……」
「なん……だと……」
クランの言葉に、茫然自失となるギデオン。
ヴァイスも、動揺のあまり目が震え、愕然と立ち尽くす。
「そんなことってあるか……あってたまるかよッ!!」
来るもの拒まず去るもの追わずのジャンク屋精神も、この時ばかりは意味がなかった。
つい先刻まで話していた彼女が。
火星の調査のために、何ヶ月も寝食を共にした仲間が。
眼鏡の奥の冷たい両眼を、時より細めて優しく笑うミランダが。
自分達を執拗なまでに追っていた火星コロニー独立派の、火星コロニー義勇軍の一員だったとは。
クランも、ギデオンも、ヴァイスも、そこにある事実を受け入れられない。
「追おうぜ、ミランダを」
静かに、ヴァイスが言う。
「ヴァイス……」
クランがヴァイスを見る。
「仲間じゃなかったのかよ! 俺達は!? なんでこんな突然……何も言わないで……」
「裏切ることに突然も何もないとは思うがな」
「ッ! 隊長!!」
「落ち着けトロニクス君」
驚きはしたものの、ギデオンは冷静さを取り戻していた。
リーダーシップを執らなければならない立場として、一瞬の焦りも禁物なのだ。
「隊長だって信じられねぇだろ! ミランダはこの戦いのことを俺に訊いたんだ……」
紛争を案じていたミランダがこんなことをするはずがない、と。
「それに、あいつは何か言いたげだった。あいつは……」
ミランダは何を言おうとしたのか。
ヴァイスは、ハッとなる。
(止められなかったのか、俺は!?)
ミランダは酷く思い詰めたような表情だった。
ヴァイスは後悔する。
何もかも遅すぎる後悔。
「彼女は独立派だった」
「隊長、あんた……!」
「だが、我々火星調査隊の一員でもある」
「!」
ギデオンの顔はしっかりと何かを見つめていた。
ヴァイスはその視線を追う。
視線の先には、ドルダではなく、ヴァイスが改修作業を進めていた3機のモビルスーツがあった。
「我々は軍人ではないが、成すべき事のために戦わねばならないのかもしれない」
「成すべき……」
「事?」
ギデオンの言葉に、ヴァイスとクランが聞き返す。
「この3機のモビルスーツは、元はステーションにあった火星コロニー義勇軍のローズだ。
だが今は、一部を残し完全な別物へと変貌を遂げた。EA-001グワッシュ・モビルスーツだ」
まじまじと眺めながら、ギデオンは語る。
「ジャイアントマン。彼は我々に地球圏連合軍と火星コロニー義勇軍の休戦協定の会談の場を用意してくれた。
そして、それがもし無になった時のために、彼はもう一つの“和平への道”を用意してくれたのだ。それがこれだ」
「私達に、戦争をしろと?」
怪訝そうに眉を顰め、クランはギデオンに尋ねる。
ジャイアントマンが用意した休戦協定以外の“和平への道”など、クランは知らなかった。
ギデオンは敢えて知らせなかったのかもしれないが、クランは納得がいかない。
火星からこのコロニーまで、数々の戦いを目にしてきた。
討たれたモビルスーツは爆発し、パイロットのほとんどは助かってはいないだろう。
クランは、そんなことをするのは嫌だった。
「確かにこのモビルスーツで戦場に出れば、こちらに攻撃をしてくる者もいるだろう」
ギデオンが、クランを見る。
クランは驚く。
その顔があまりにも真剣だったからだ。
「だが、戦場に出なければ、説得も何もできないということだ。ウォン君にしろな」
ウォン。即ちミランダの名が出たことに、ヴァイスは驚いた。
だが、すぐにその顔を笑みに変える。
「ウォン君の一件、彼女も悩み決めたことだろう。なら、その悩みを我々も共有して、解決してやりたい」
「やっぱり、あんたは俺達の隊長だ!」
「私は最初から追わぬとも止めぬとも言ってはいないさ」
喜ぶヴァイスだが、まだクランは不信感を拭いきれない。
そんなクランを見て、真剣一色だったギデオンも、困ったように苦笑する。
「戦況を変えられるとか、戦争を終わらせられるとか、そんな大それたことは考えていない。
我々は軍ではないし、武力蜂起をした過激派でもない。そのどちらも間違っていると考える者だ」
だから両軍に介入して、新たな道を模索する。
調査隊は、その力を与えられたということ。
だが、本当にそれだけなのだろうか。
「私は、解せないんです。なんだが、あのジャイアントマンという人物の掌の上で、踊らされてる気がして」
クランの中にある不安。
休戦協定締結の失敗を予期していたかのような、こんな別の方法に。
「私達の力が、要らない火種にならないでしょうか……」
「そうならないための力だとは、考えられないか?」
「それは……わかりません」
「あの男の前で言ったことは偽善か? 違うだろう」
クランは黙ってしまう。
会話に入らないでいたシンシアは、ずっと心配そうにクランを見ていた。
「ならお前は戦闘になんか出なくったっていい。このコロニーでずっと喚いてろ」
「ヴァイス……」
「テメェは自分の考えと違うから、それが間違いだと思ってるだけだろ。
そんなの、地球圏連合軍や火星コロニー義勇軍の奴等と変わんねえだろうが」
「ッ……それは」
休戦協定の交渉が絶対に成功するとはクランも思ってはいなかった。
クランは考えていた。どうすればこの戦いは終わるのだろうと。
自分達に力があると言われた今、その力を使うべきなのだろうか。
だが戦場に出てこちらも応戦すれば、犠牲が出る。自分のような境遇の者を、増やしてしまう。
そう考えると、クランは前に進めないのだ。
「シンシア、クランを連れてドックから出てろ。俺と隊長はグワッシュで出る」
「えっ……」
「今はお前も戦うより、クランと一緒にいてやれ」
「……わかった」
ヴァイスに言われ、シンシアは「行こう」とクランに声をかける。
腕を引っ張ると、力無くクランは立ち上がった。
クランは何か言いたげな目をしてヴァイスを一瞬見た後、シンシアと共にドックから出て行った。
「少し荒療治すぎやしないかね。トロニクス君」
「あれでいいんス。クランもホントはわかってるはずっスから」
「吹っ切れずにいるということか……なら、今は待つしかあるまい」
ギデオンの言葉に、ヴァイスは力強く頷く。
今は、クラン自身に時間を与えるしかない。
(それにアイツは、色々と抱えすぎだ)
己の過去も、シンシアのことも、この火星圏の和平のことも。
ヴァイスは頭を切り替える。
端末を開くと、外はまだ交戦状態にあると情報が表示された。
ミランダはまだこの宙域にいるだろうか。
否、いなくとも、今は自分達の存在を示さねばならない。
ジャンク屋として他者の争いに関しては不干渉を決め込まなければならないのだろうが。
「シドーのオッサンにも笑われちまうぜ」
そう、自嘲した。
ヴァイスはグワッシュのユニット換装作業に移る。
EA-001グワッシュ。
その名はGeneral Operation Unit And Carbon Hybrid-armour Equipment
(広範囲活動ユニット並びカーボン複合装甲装備)の略であり、
広範囲活動ユニットことGOユニットはあらゆる用途に対応するために複数存在し、
今後も新たなユニットが開発されていく予定である。
「隊長、GOユニットはタイプAとタイプBのみが装備可能っス! って、今はこの2基しかねえっスけど」
急拵えだったため、グワライダーの作業用アームを丸々ユニットとして改修したタイプA(Arm)。
そしてタイプB(Booster)はブースターユニットであり、高出力での活動が可能になる。
グワッシュ自体の武装は、元のローズの武装であるビームライフルとレイピアがそのまま流用された。
「他のユニットはC.B.F.B.社が開発を急いでくれている。
君はタイプAを使いたまえ。私がタイプBで戦場まで送ろう」
C.B.F.B.(Cherry Blossoms Full Bloom=桜花爛漫)社。モビルワーカーの製造メーカーだ。
その上層部にもまた、ジャイアントマンの協力者がいたということだろう。
しかし、全面的に善意で協力したというわけでもなさそうだった。
(向こうの開発責任者は私の改修プランを簡単に承諾したが……売り込むつもりか)
この第29コロニーには駐留軍の司令官とハーフムーンから退避してきた艦隊がいる。
力無く床に座り込んでいるクラン。
シンシアと再び歩み始めることのできた感動の涙は、突然の別れへの悲しみの涙に変わっていた。
シンシアはそんなクランを不安そうな面持ちで見つめている。
「何があった!?」
啜り泣くクランにヴァイスが訊く。
顔を上げたクランの顔は、涙で濡れていた。
「ミランダさんは……火星コロニー独立派だった……」
「なん……だと……」
クランの言葉に、茫然自失となるギデオン。
ヴァイスも、動揺のあまり目が震え、愕然と立ち尽くす。
「そんなことってあるか……あってたまるかよッ!!」
来るもの拒まず去るもの追わずのジャンク屋精神も、この時ばかりは意味がなかった。
つい先刻まで話していた彼女が。
火星の調査のために、何ヶ月も寝食を共にした仲間が。
眼鏡の奥の冷たい両眼を、時より細めて優しく笑うミランダが。
自分達を執拗なまでに追っていた火星コロニー独立派の、火星コロニー義勇軍の一員だったとは。
クランも、ギデオンも、ヴァイスも、そこにある事実を受け入れられない。
「追おうぜ、ミランダを」
静かに、ヴァイスが言う。
「ヴァイス……」
クランがヴァイスを見る。
「仲間じゃなかったのかよ! 俺達は!? なんでこんな突然……何も言わないで……」
「裏切ることに突然も何もないとは思うがな」
「ッ! 隊長!!」
「落ち着けトロニクス君」
驚きはしたものの、ギデオンは冷静さを取り戻していた。
リーダーシップを執らなければならない立場として、一瞬の焦りも禁物なのだ。
「隊長だって信じられねぇだろ! ミランダはこの戦いのことを俺に訊いたんだ……」
紛争を案じていたミランダがこんなことをするはずがない、と。
「それに、あいつは何か言いたげだった。あいつは……」
ミランダは何を言おうとしたのか。
ヴァイスは、ハッとなる。
(止められなかったのか、俺は!?)
ミランダは酷く思い詰めたような表情だった。
ヴァイスは後悔する。
何もかも遅すぎる後悔。
「彼女は独立派だった」
「隊長、あんた……!」
「だが、我々火星調査隊の一員でもある」
「!」
ギデオンの顔はしっかりと何かを見つめていた。
ヴァイスはその視線を追う。
視線の先には、ドルダではなく、ヴァイスが改修作業を進めていた3機のモビルスーツがあった。
「我々は軍人ではないが、成すべき事のために戦わねばならないのかもしれない」
「成すべき……」
「事?」
ギデオンの言葉に、ヴァイスとクランが聞き返す。
「この3機のモビルスーツは、元はステーションにあった火星コロニー義勇軍のローズだ。
だが今は、一部を残し完全な別物へと変貌を遂げた。EA-001グワッシュ・モビルスーツだ」
まじまじと眺めながら、ギデオンは語る。
「ジャイアントマン。彼は我々に地球圏連合軍と火星コロニー義勇軍の休戦協定の会談の場を用意してくれた。
そして、それがもし無になった時のために、彼はもう一つの“和平への道”を用意してくれたのだ。それがこれだ」
「私達に、戦争をしろと?」
怪訝そうに眉を顰め、クランはギデオンに尋ねる。
ジャイアントマンが用意した休戦協定以外の“和平への道”など、クランは知らなかった。
ギデオンは敢えて知らせなかったのかもしれないが、クランは納得がいかない。
火星からこのコロニーまで、数々の戦いを目にしてきた。
討たれたモビルスーツは爆発し、パイロットのほとんどは助かってはいないだろう。
クランは、そんなことをするのは嫌だった。
「確かにこのモビルスーツで戦場に出れば、こちらに攻撃をしてくる者もいるだろう」
ギデオンが、クランを見る。
クランは驚く。
その顔があまりにも真剣だったからだ。
「だが、戦場に出なければ、説得も何もできないということだ。ウォン君にしろな」
ウォン。即ちミランダの名が出たことに、ヴァイスは驚いた。
だが、すぐにその顔を笑みに変える。
「ウォン君の一件、彼女も悩み決めたことだろう。なら、その悩みを我々も共有して、解決してやりたい」
「やっぱり、あんたは俺達の隊長だ!」
「私は最初から追わぬとも止めぬとも言ってはいないさ」
喜ぶヴァイスだが、まだクランは不信感を拭いきれない。
そんなクランを見て、真剣一色だったギデオンも、困ったように苦笑する。
「戦況を変えられるとか、戦争を終わらせられるとか、そんな大それたことは考えていない。
我々は軍ではないし、武力蜂起をした過激派でもない。そのどちらも間違っていると考える者だ」
だから両軍に介入して、新たな道を模索する。
調査隊は、その力を与えられたということ。
だが、本当にそれだけなのだろうか。
「私は、解せないんです。なんだが、あのジャイアントマンという人物の掌の上で、踊らされてる気がして」
クランの中にある不安。
休戦協定締結の失敗を予期していたかのような、こんな別の方法に。
「私達の力が、要らない火種にならないでしょうか……」
「そうならないための力だとは、考えられないか?」
「それは……わかりません」
「あの男の前で言ったことは偽善か? 違うだろう」
クランは黙ってしまう。
会話に入らないでいたシンシアは、ずっと心配そうにクランを見ていた。
「ならお前は戦闘になんか出なくったっていい。このコロニーでずっと喚いてろ」
「ヴァイス……」
「テメェは自分の考えと違うから、それが間違いだと思ってるだけだろ。
そんなの、地球圏連合軍や火星コロニー義勇軍の奴等と変わんねえだろうが」
「ッ……それは」
休戦協定の交渉が絶対に成功するとはクランも思ってはいなかった。
クランは考えていた。どうすればこの戦いは終わるのだろうと。
自分達に力があると言われた今、その力を使うべきなのだろうか。
だが戦場に出てこちらも応戦すれば、犠牲が出る。自分のような境遇の者を、増やしてしまう。
そう考えると、クランは前に進めないのだ。
「シンシア、クランを連れてドックから出てろ。俺と隊長はグワッシュで出る」
「えっ……」
「今はお前も戦うより、クランと一緒にいてやれ」
「……わかった」
ヴァイスに言われ、シンシアは「行こう」とクランに声をかける。
腕を引っ張ると、力無くクランは立ち上がった。
クランは何か言いたげな目をしてヴァイスを一瞬見た後、シンシアと共にドックから出て行った。
「少し荒療治すぎやしないかね。トロニクス君」
「あれでいいんス。クランもホントはわかってるはずっスから」
「吹っ切れずにいるということか……なら、今は待つしかあるまい」
ギデオンの言葉に、ヴァイスは力強く頷く。
今は、クラン自身に時間を与えるしかない。
(それにアイツは、色々と抱えすぎだ)
己の過去も、シンシアのことも、この火星圏の和平のことも。
ヴァイスは頭を切り替える。
端末を開くと、外はまだ交戦状態にあると情報が表示された。
ミランダはまだこの宙域にいるだろうか。
否、いなくとも、今は自分達の存在を示さねばならない。
ジャンク屋として他者の争いに関しては不干渉を決め込まなければならないのだろうが。
「シドーのオッサンにも笑われちまうぜ」
そう、自嘲した。
ヴァイスはグワッシュのユニット換装作業に移る。
EA-001グワッシュ。
その名はGeneral Operation Unit And Carbon Hybrid-armour Equipment
(広範囲活動ユニット並びカーボン複合装甲装備)の略であり、
広範囲活動ユニットことGOユニットはあらゆる用途に対応するために複数存在し、
今後も新たなユニットが開発されていく予定である。
「隊長、GOユニットはタイプAとタイプBのみが装備可能っス! って、今はこの2基しかねえっスけど」
急拵えだったため、グワライダーの作業用アームを丸々ユニットとして改修したタイプA(Arm)。
そしてタイプB(Booster)はブースターユニットであり、高出力での活動が可能になる。
グワッシュ自体の武装は、元のローズの武装であるビームライフルとレイピアがそのまま流用された。
「他のユニットはC.B.F.B.社が開発を急いでくれている。
君はタイプAを使いたまえ。私がタイプBで戦場まで送ろう」
C.B.F.B.(Cherry Blossoms Full Bloom=桜花爛漫)社。モビルワーカーの製造メーカーだ。
その上層部にもまた、ジャイアントマンの協力者がいたということだろう。
しかし、全面的に善意で協力したというわけでもなさそうだった。
(向こうの開発責任者は私の改修プランを簡単に承諾したが……売り込むつもりか)
この第29コロニーには駐留軍の司令官とハーフムーンから退避してきた艦隊がいる。
そしてこのコロニーの地球圏連合軍は、ローズを回収し自軍の機体として運用するに留まっている。
そこで火星コロニー義勇軍と対等に渡り合える新型モビルスーツをアピールすれば……
(掌で踊らされる、か。ナギサカ君が不快に思うのもわかる)
ギデオンはグワッシュに乗り込んだ。
(だが、今はそれをも利用せねば、進めない……!)
機体を起動させる。
モニターが点灯し、明るくなるコックピット内。
『隊長、こっちも起動したっス。この後の作業は誘導なしっスけど大丈夫ですか?』
「あぁ、経験不足は技量でカバーする。そちらこそ大丈夫なのか」
『俺は一回、ぶっつけ本番でローズを動かしたんスよ!』
心強い返事に、ギデオンは笑みを見せた。
エアロックが解除され、機体発着用気密扉が開いていく。
奥へ進むと内側の扉が閉まり、気圧調整が始まった。
数分後、気圧の調整が完了し、外側の扉が開き始めた。
「ギデオン・マクドガル。グワッシュ、出るぞ!」
そこで火星コロニー義勇軍と対等に渡り合える新型モビルスーツをアピールすれば……
(掌で踊らされる、か。ナギサカ君が不快に思うのもわかる)
ギデオンはグワッシュに乗り込んだ。
(だが、今はそれをも利用せねば、進めない……!)
機体を起動させる。
モニターが点灯し、明るくなるコックピット内。
『隊長、こっちも起動したっス。この後の作業は誘導なしっスけど大丈夫ですか?』
「あぁ、経験不足は技量でカバーする。そちらこそ大丈夫なのか」
『俺は一回、ぶっつけ本番でローズを動かしたんスよ!』
心強い返事に、ギデオンは笑みを見せた。
エアロックが解除され、機体発着用気密扉が開いていく。
奥へ進むと内側の扉が閉まり、気圧調整が始まった。
数分後、気圧の調整が完了し、外側の扉が開き始めた。
「ギデオン・マクドガル。グワッシュ、出るぞ!」
To Be Continued...