真っ直ぐに誠を貫き、信を重んじることはいつだって光輝く意志の結晶である。
夢を抱き、願いを尊び、明日を乞う。涙を光へと変えよう。
世界はきっとほんの少しだけ優しい。誰かの為に、正しさの為に行動できる人間は確かにいるのだ。
この殺し合いに巻き込まれるまでは、その泡沫の言葉を信じれた。
手を取り合い、皆で一緒に戦えるんだ、と。

「………………うそ、で、あります」

 そして、これがその結果だ。まだ間に合うと手を伸ばしたら、何も掴めない。
優しさを信じた末路。自分という存在を曲げなかった一つの結果だ。
西絹代は物言わぬ骸と成り果てて此処にいる。命を散らした無様な敗北者。それだけが、残ったものだ。
想いで護れたものは確かにある。しかし、護れずに壊れてしまうものもまた、あるのだ。

「うそ、うそで、うそ、あり」

 奮起するか。それとも、絶望に膝を屈するか。
当然、死者が成した意味を受け入れるかは生者次第だ。
知波単学園で後輩であった福田の口から吐き出される言葉は断続的な否定であった。
西絹代の救出に向かった四人を待っていたのは行き止まりの絶望だった。
快活な笑顔はどこか物悲しげではあるが、勇壮に戦った跡が滲み出ている。
彼女もまた、戦うことを選び、貫いた者であった。

「…………嘘じゃないわ」

 もう、認めるしかなかった。背負うしかなかった。
西絹代は殺し合いを肯定した誰かに殺された。
彼女が貫いた生き様を見届けることすらできずに、別れを告げなければならない。
彼女の骸を踏み越えて、進まなくてはならない事実が重くのしかかる。  

「死んだのよ、命は一個だけ。死者は蘇らない」
「そーだねぇ。覚悟はしていたけど、直面したらこいつは堪える。そんで、もう一つ理解しなくちゃいけないことが増えた」

 淡々と。カチューシャと角谷杏は内面に渦巻く恐怖を抑え込みつつ言葉を紡ぐ。
彼女達とて、目の前の光景に何も感じていない訳ではない。
恐怖と悲嘆を表の態度に出してしまっては呑まれてしまう。
這いよる絶望が四肢へと巻き付き、動きが鈍くなる。絶望とはそういう類いのものだ。
少しでも付け入る隙を与えてしまったら骨の髄まで染み込んでしまう。

「戦わなくちゃ、生き残れない」

 それに抗う為の決意を。戦うことへの覚悟を。
平和な世界で生きてきた少女達には辛すぎるモノを、持たなければならない。

「開始から数時間でこれなんだ、苦労するねぇ、全く。仲間を集めるにも一苦労になりそうだ」
「中には後ろから刺し殺す愚鈍な人間もいるでしょうし。そんなことをしたら、シベリア送りじゃ済まないんだから」

 銃で撃てば、人は死ぬ。そんな、簡単な現実が今は重い。

「……ちょび」
「わから、ないよ」

 そして、一人。その重さに耐えきれず押し潰されそうな少女は、蒼白な顔色で微かに声を上げた。

「わかりたくない……! ここまでする理由はなんだ!? 
 私達はこんなことを強いられる程、悪いことをしたのか!? どうして!!! 殺し合わなくちゃいけないんだよ!!
 どうして…………っ!!!こんなにも簡単に受け入れられるんだよ!?」 

 アンチョビとして、安斎千代美として。不合理が蔓延る世界はおかしい、と。
叫び、嘆き、呻く。嗚呼、本物の戦争とはここまで人を追い詰めるものなのか。
越えてはいけない境界線など、とっくになくなっている。

「私達は昨日まで普通のじょしこーこーせーだったんだそ、人を殺すなんて、すぐにできるはず、ないだろ……っ」

 本当は心のどこかでは気づいていた。自分達はもう詰んでいることも。
生き残って、この地から脱出して。元通り、切磋琢磨の戦車ライフなんてありやしない。
本物の戦いを味わってしまった以上、心には歪みが生じるだろう。
少なくとも、アンチョビは帰れたとしても、普段と同じように戦車に乗れるとは到底思えない。
無くしてしまったもの、置いてきてしまったもの、諦めてしまったもの。過去は拭えぬまま底に降り積もっていく。
いつまでも、どこまでも、この命を終える瞬間までバトル・ロワイアルは追い縋るだろう。
理想が、何の役に立つ? その希望の礎にどれだけ死ねば煌々と輝くのか。
全員で脱出するなんて、できもしないことを望んだのは、はたして罪であったのか。
叶いもしない願い事を後生大事に持つ愚か者はいつになったら理解できるのだろう。
決まっている、満足するまでさ、と。
所詮、理想は儚き紙風船。ぷすりと暴力の針を刺せば呆気なく散るのだ。

……死ねよ役立たず、と怨嗟の声が轟く、響く。

 浮かんだ表情には翳りあり、解決方法は未だ見つからず。
首に嵌められた枷に殺しにかかってくる参加者への対処。
問題はアンツィオの宴会で出される料理並みにある。

――改めて、問う。

《正しさとは、何だ? このろくでもない世界で、成せることなどあるものなのか》

 その答えにアンチョビはわからない、と答えた。落第と評価されるだろうが、これはアンチョビの素直な気持ちである。
できる限りの大多数、救えるものなら救えるだけ。
皆一緒に日常へと帰りたいと目的を定めた当初の決意は今となってはアンチョビを蝕む痛みとなって表面に表れていた。
間違いではないと信じたい。
この痛みは正しさの代償だ。正しいことは痛いから。
履行し続けるにはいささか難題であり、アンチョビの良心をいつかは粉々にしてしまうだろう。
彼女は優しすぎた。このバトルロワイアルを認められない常識を持ち合わせてしまった。
故に、適合ができない。死体を見てもなお、嫌だと叫べるのだ。
何故、自分の周りには不条理が満ちているのだろう。
嘆き、問いかけても、それに答えてくれる者は誰もいないというのに。
だからこそ、全ての事柄を自分で決めるしかない。生きる為に、始める為に、終わる為に。目の前の少女も、そう決めたのだろう。知波単学園の福田も。
目に宿った赫怒の焔が、目に映る。
事態が、動く。アンチョビを置き去りにして、大義名分という名の下に復讐譚が幕を上げる。






 こうなることは最初から決まっていたのかもしれない。
掌に握られる銃は未来の重みだ。銃口を相手へと向ける、引き金を引く。
それだけの動作で、人を殺すことができる。
あっけなく、人間は死んでしまう。
尊敬している隊長――西絹代も例外ではない。
視界を下ろすと、そこには夢の残骸が崩れ落ちている。
亡霊のごとく生気が失せた顔を見た瞬間、漏れそうになった嗚咽を懸命にこらえる。
そんな我慢、簡単に決壊してしまうというのに。
眼前の光景を偽りだと塗り固めようと、嘘だ、と。間違いだ、と。
脳内で溢れ出た絶望を押し留める為の言い訳を並べ続けた。
己の罪深さと隊長への哀れみが激痛となって胸を抉る。
西絹代が死んだ時点で、福田が求めた日常はどう足掻いても返ってこない。
最大多数の生存? その中に西絹代が含まれていない時点で、もう気力は欠片も湧いてこない。
あの笑顔を、あの言葉を。彼女と一緒に戦車に乗れないという現実は容赦なく、福田を打ち砕いた。

――正義はいったい何処にある? 生きる理由はこの胸に響いているか? 

 問いかける相手はもうない。頼るべき隊長は死んでしまった。
ここから先は、福田が自分で考えなくてはいけないのだ。
何をするか。否、何がしたいか。他の誰でもない自分が本当にしたいことを選び取る。
いつのまにかに、しっとりといった表現が出るまでに発汗していた手が乾いていた。
それは彼女の内に広がる風景のように。
かつては瑞々しい理想が生い茂っていた森は冷たい現実が蔓延る荒野に成り変わった。
其処ではシンプルに、単純明快な論理だけが残る。

 やられたら、どうする? 大切な人を奪われて、何もせずにいられるか?

 誰に問う訳でもないが、答えは多種多様にある。
まだ、福田は選ぶことができる立場にいる。
選び取ってしまう恐怖が、体に染み付いているのだ。
心はとっくに決まっているというのに。やらなくてはいけないと思いながらも、躊躇がある。
再び、考える。声は聞こえない。周りの気遣う声やら、展望を考える声やらは蚊帳の外。

 西絹代を殺した誰かを、福田は許せるのか。

 知波単学園の日常を壊した見知らぬ誰か。
どんな理由があったにしろ、福田の世界を大きく削り取った少女に銃口を向けないでいられるのか。
何も考えずとも、答えは明白だった。
湧き出る赫怒の焔が、許せないと証明してくれる。
自分にとって代え難い隊長を殺した人間がのうのうと日常へと戻る可能性を考えただけでも、怒りで頭がおかしくなりそうだ。

 恐怖はある、されど覚悟はできた。

 未だ震える指は果たして本懐を遂げれるのか。
そんな先の未来はわからないけれど、この道を征くと確かに決めた。
諦めも、甘えも、踏破してみせる。目尻に浮かんでいた涙は振り払い、動き出そう。
決めたのは復讐。置いていくのは、抱けるはずだった理想、導いてくれるかもしれなかった王の如き少女。

「……ごめんなさい」

 謝る必要なんてない。
これから自分勝手に動く福田にそんな甘えは許されない。
誰に憎まれようとも。誰に悲しまれようとも。
生まれた怒りを収めるべく復讐の道を進むと決めたのだろう。
ぶら下げたカービンを手に持ち、少女は選択肢を確かにする。
その悲壮な様子に他の三人も気づいたのだろう、表情を顰めて言葉を失う。

「予め、言っておくのであります。止まるつもりはありません」
「…………私は言ったはずよ。カチューシャの目が届く所で、勝手なことはさせないって」

 こうなることは最初から予定調和として定められていたのかもしれない。
カチューシャがどれだけ優れた素質を持ち合わせていようと、福田にとっての隊長は西絹代ただ一人である。
その彼女が死んだ今、福田が現状のままでいる方がおかしいのだ。

「それなら、力づくでも通ります」
「三対一なのに?」
「はい。カチューシャ殿が望まぬことを自分はする以上、もはや道は別たれました」

 彼女達は自分とは違い、理性で情を抑えられる人間だ。
一時の荒れがこれからの道程を左右するなんて愚は犯さない。

「こうすることでしか、開けない道であります。自分は、西隊長を殺した誰かを許せない」

 それは彼女達との決定的な断絶だ。
例え、この殺し合いからの脱出方法を知っていたとしても。
やむを得ず西絹代を殺したといった理由があろうとも。
もしも、彼女達の大切な仲間が標的であっても。
どんな事情を抱えていようが、関係なかった。
西絹代を殺した人間を、福田は絶対に許さない。
言い訳も、懺悔も必要ない。殺してやる、必ずだ。

「――――殺します。この《戦争》は知波単学園が始末をつけるものであります」

 さあ、夢を終わらせた人への逆襲を。
個人的な私怨を果たしにいこう。

「カチューシャ殿は無関係。故に、此処から先は自分一人で征きます」
「そう……それをこの私が許すと思って?」
「思いませんとも。短い間でしたが、貴方と語らい、わかったことでもあります。
 なので、そう、なので……押し通るまでです」

 どう在っても、福田は抱いた焔を捨てやしないだろう。
譲れない、違えない、と安寧から飛び出す程に。
カチューシャの庇護下で戦うよりも生存率が低いであろう絶望に、福田はこれから飛び込んでいく。
選び取れと突き出された選択は確かに受け取った。
次は、彼女達。当然、カチューシャはその選択に否定を打ち付ける。
一度取り込むと決めた部下を黙って死地へと向かわせるなんて願い下げだ。
このまま福田を行かせたら間違いなく、彼女は死ぬ。
三時のおやつを賭けたっていいぐらいに確信がある。
ふざけるなよ、そんな自殺行為は認めない。
カチューシャは福田を引き留めるべく、脳内で理論を構築しようとする最中――場に一石が投じられる。



「別にいいんじゃない、行かせても」




 くるり、と場が動転する。






 これまためんどくさいことになった。角谷杏は現状の危うさに俯瞰的な視点から思考する。
敵襲がないのにバラバラのこの四人組、どうまとめるべきか。
全員が全員、我が強いのでまとめるにも一苦労だ。

(まあ、まとめるなら、だけど)

 もっとも、杏としてはこのグループに愛着なんてない。
瓦解するならしてしまえばいい。復讐、統率ご勝手に。
自分の目的に適さぬようなら使い捨ててしまえばいい。何なら、ここでこのまま解散でもいいぐらいだ。
彼女達は身内ではない。勝手に死んでくれるなら、それはそれで大助かりだ。
協定を結ぶとはいったが、今の彼女達と組んでメリットはない。
我が強いカチューシャ一人を抱え込んでも、統率するには一苦労である。

「いいじゃん、復讐。動く理由としてはお誂え向きだと思うけど?」

 回せ。果てなく頭を回せ。
この場を掌握し、自分の思うがままに捻じ曲げろ。
削ぎ落とせる部分があるならとことん削って、自分達の優勢を決定づける。

「引き留めるなんて無理でしょ。ねー、福田ちゃん」
「は、はい」

 思いもよらぬ所ならの援護に福田も少し驚きを見せるが、すぐに表情を戻し、肯定の意を再び示す。
まさか、カチューシャも杏が福田の側に立つとは思っていなかったのか、言葉に詰まる。

「……どういうことかしら」
「どーもこーもないっしょ。理だけで人は動かんよってやつ? たぶん、彼女はもう止まんないよ。
 だったらさぁ、背中を押して後腐れなくお別れ~ってのがいいっしょ」

 こんな極限状況なのだ、全員が理を重んじて行動できるはずもなく、ある程度は予想外も含めて行動しなくてはならない。
杏は情で動く愚か者の一手を含めて、思考する。ありとあらゆる不測の事態を含めて、戦況を読み切るのだ。
悪手と呼ばれるものであっても、時間が経てば妙手となりえるかもしれない。
戦場の奥深くまで切り込み、強く成り得る将棋の駒の如く。あえて、ここは情動を是として動く。

(まあ、カチューシャに釘を刺しとくって意味でも悪くはない。この場でイニシアチブを取ろうと策謀を練っていたんだろーけど、ごめんねぇ。
 ここは一つ――――踏み台になってもらうよん)

 角谷杏は身の振り方を見極めつつ、策謀を練り続けていた。
さあ、誰を拾って誰を捨てるか。
言い方を変えるならば、“どいつを死地へと送って見捨てる”か。
正直言って、この中で拾い上げるならば、アンチョビだけだ。
それ以外は強い繋がりもなく、死んでもご愁傷様と一言吐き捨てるような仲である。

《カチューシャという人間は強すぎる》

 彼女の振る舞いを間近で見て、杏は確かに感じたのだ。
カチューシャは絶対に我を曲げない。
心の中に毅然とした信念を持っている王である、と。
嗚呼、それは平常時――このような事態でなければ頼もしい限りだ。
大学選抜チームとの戦いではノンナが敗れて尚、立ち上がれた強さ、実に素晴らしいものだと思う。
しかし、この場面ではその強さが重りとなる。
折れない信念とは、逆に言えばそれ以外の道を取れないということだ。
例えば、使えぬ誰かを見捨てたり。もう余命幾許もない末期の参加者を助けようとしたり。
彼女は頂点にて立てる王であるが故に。

――何も切り捨てずに前へ進むという覚悟がある。

 それは奇しくも、横にいるアンチョビと同じものだ。
綺麗で優しくて、気高い理想と称せられる意志はきっと、誰かを救うことができるだろう。
しかし、杏にとっては特段に誰かを救いたいという気高い理想は必要ない。
極論を言ってしまえば、自分の高校だけが無事ならそれでいい。
身内と他の区別をしっかりと付けているのだ。あれもこれもと欲張ることで、身内が死んでしまうならば話にならない。
早い話、彼女はシビアな現実を見て妥協を見つけている。
その妥協への道程で、邪魔になるファクターは排除するつもりだ。
カチューシャは放置していたらその内に、強大な集団を築き、理想の旗の下に、進軍を開始するだろう。
彼女は英雄だから。王として、上に立つものとして、必要なものを兼ね備えているから。
出来る限り、力は削いでおいた方がいい。

(味方にしておいた方がいい、協定を結ぶべきだ。まあ、改めて考えるなら、だ。理性的に考えるとそっちだし、本来なら福田ちゃんを止めるべきなんだけど)

 本来なら助け舟を出してやるべき相手はカチューシャである。
ここで恩を売っておけば後先にもアドバンテージを得れるはずなのに、どうも色々と考え出すのはカチューシャの不利益になることばかりだ。
内面の隅々まで染み付いている嫌悪感は表にこそ出さないものの色濃く、隙あらば蹴落とすことばかり。
はて、ここまで彼女に対して嫌悪を抱くのは何故だろうかと数秒考える事暫く。
答えは意外なまでに安々と湧き出てきた。

(成程、私はちょびをコケにされてムカついてるのか)

 理由は単純かつ一面的なもの。
《友達》を、《チームメイト》を馬鹿にされて黙ってへらへらと下手に出ていられる程、自分は人間ができていなかったというだけだ。
そもそもの話だ。お前にアンチョビの優しさがわかるのか。殆ど面識もない癖に好き勝手に虐めてくれて、杏も割と怒っているのだ。
思い返すと沸々と怒りが再燃してくるが、それを表面には出しはしない。

(ま、腐れ縁……だからねぇ)

 もっとも、大洗のメンツが一番大切であることに今も変わりはない。
とはいえ、アンチョビが全く大切ではないと言えば嘘になる。
まだ、手元に置いておける限りは彼女を助けるつもりではあるし、大洗のことを抜きにしたら信頼も信用もできる存在なのだ。
口にこそはっきりと出さないが、角谷杏にとって安斎千代美は友人だから。
そんな友人をボロボロにしたんだ、いい気持ちをするはずがないだろう。

(お生憎様、好きでもない奴が困ってるのを助ける程、お人好しじゃないんだよ、私)

 もしも、向こうがこのまま何の障害もなければ、協定なり味方なりこちらが引くという選択も取ったかもしれないが、結果は見ての通り。
勝手に空中分解してくれるなら言うことはない。そのまま惨めに地へと這い蹲って堕ちていけ。
俯瞰した観点なんてクソ食らえである。危害を加えるとまではいかないが、カチューシャを助けるつもりは欠片もない。

(まあ、このまま放置していたら向こうは勝手に崩壊。
 人数という優劣がこっちに傾いた以上、やり用はいくらでもある)

 いつもの飄々とした笑顔を顔に貼り付けて、杏はへらへらと言葉を並べ立てる。
到底それは正義とはいえず、アンチョビからは非難を受けることであろう。
知っている、知っていたよ、そんなことは。
全員が笑って迎えるハッピーエンドがどれだけ尊いことか。それを目指すにはどれだけの苦難を打ち砕かなくてはならないのか。
理解しているからこそ、角谷杏は諦めたのだ。
全員を救い上げる力なんて、ない。英雄譚の中で勇猛に活躍する傑物はこの世界にはいない。
誰もが等しく無力な少女であることを、賢い頭は受け入れてしまったから。

(こういうあくどいことは幾らでも思いつく。全く、つくづく私は小悪党だ。
 けれど、私はこんなやり方しか知らないから。騙くらかして、万人が拍手喝采してくれるような冴えた考えなんて到底思いつかないから)

 眼前で分かたれていく少女を、杏は我欲の為に見捨てる。
感情論が先走っているというのに、それを止めることをしないなど到底上に立つ立場としては失格だろう。
とはいえ、友を侮辱されて黙っているなんてそれこそ、面白くない。

(まあ、そういう訳だ。ちびっこ隊長、お前は此処をどう切り抜ける?
 頭を垂れようが、私の嫌悪感は変わらない。ちょびを散々に切り捨てたんだ、同じことをされても文句は言えないよ?)

 どちらにせよ、この程度の苦難を乗り越えられないような王は、必要ない。
どれだけ賢しかろうと、愚か者の予期せぬ行動がわからぬようでは、孤独になっていくだけなのだから。




【E-04/一日目・昼】

【☆カチューシャ @カチューシャ義勇軍】
[状態]頬の痛み(小)
[装備]タンクジャケット APS (装弾数20/20:予備弾倉×3) 不明支給品(ナイフ)
[道具]基本支給品一式 不明支給品(その他)
[思考・状況]
基本行動方針:最大多数での生存を図るわよ!
1:……どうしたらいいの。
2:協定の話も聞くだけ聞いてあげる! それで、どういう条件を取り付けたいわけ?
3:プラウダ生徒・みほ・ダージリンあたりと合流したいわ!
4:カチューシャの居ないところで勝手なことはさせない!
5:全部のチームをカチューシャの傘下にしてやるんだから!
[備考]
チーム杏ちょびとの間に、協定を結ぶための交渉を行っています。内容は後続の書き手さんにお任せします

【福田 @カチューシャ義勇軍】
[状態]かなり怒ってる
[装備]タンクジャケット M2カービン(装弾数:19/30発 予備弾倉3)不明支給品(ナイフ)
[道具]基本支給品一式 不明支給品(その他)
[思考・状況]
基本行動方針:仇討ち。
1:隊長の仇討ち。

【☆角谷杏 @チーム杏ちょび】
[状態]結構本気で怒ってるけど、冷静
[装備]タンクジャケット コルトM1917(ハーフムーンクリップ使用での装弾6:予備弾18) 不明支給品-ナイフ
[道具]基本支給品一式 干し芋(私物として持ち込んだもの、何袋か残ってる) 人事権
[思考・状況]
基本行動方針:少しでも多く、少しでも自分の中で優先度の高い人間を生き残らせる
1:西達を助けに行く。道中でカチューシャを味方に抱き込む……はずだったんだけど、ねぇ。私の友達を馬鹿にするのはいただけないなぁ。
2:アンチョビと共に行動し、脱出のために自分に出来ることをする。可能なら大洗の生徒を三人目に入れたい
3:その過程で、優先度の高い人物のためならば、アンチョビを犠牲にすることも視野に入れる(無意識下では避けたいと思っている)
4:カチューシャとは同じチームにはなりたくないが、敵には回したくない。勝手に自滅してくれるなら、いいんだけどさ。
5:放送まではなるべく二人組を維持したい
[備考]
カチューシャ義勇軍との間に、協定を結ぶための交渉を行っています。内容は後続の書き手さんにお任せします

【アンチョビ @チーム杏ちょび】
[状態]大きな不安と劣等感+西の死による動揺
[装備]タンクジャケット+マント ベレッタM950(装弾数:9/9発:予備弾10) 不明支給品-ナイフ
[道具]基本支給品一式 髑髏マークの付いた空瓶
[思考・状況]
基本行動方針:皆で帰って笑ってパスタを食べるぞ
1:どうして、殺し合いは止まらないのだろうか。
2:誰も死んでほしくなんてない、何とかみんなで脱出がしたい
3:例え手を汚していたとしても、説得して一緒に手を取り脱出したい(特にアンツィオの面々)
4:杏の考え方は少し怖いが、通じ合える部分はあるはず。共に戦っていけると信じたい
5:カチューシャと共に戦うというのならそれでもいい。それでもいいのだが……
6:……どうするのが正しいんだ? 私に仲間の想いを、受け止めることはできるのか?






登場順
Back Name Next
030:引き金の理由 カチューシャ 044:取り戻せ――(日常を友人を尊厳を隊長を命を大切さを大洗を誇りを、戦車道を)
030:引き金の理由 福田 044:取り戻せ――(日常を友人を尊厳を隊長を命を大切さを大洗を誇りを、戦車道を)
030:引き金の理由 角谷杏 044:取り戻せ――(日常を友人を尊厳を隊長を命を大切さを大洗を誇りを、戦車道を)
030:引き金の理由 アンチョビ 044:取り戻せ――(日常を友人を尊厳を隊長を命を大切さを大洗を誇りを、戦車道を)

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最終更新:2018年03月03日 13:14