やったねすばるちゃん!!声が届いたよ! ◆5ddd1Yaifw
緑の木々が無数に立ち、草はぼうぼうと茂っている。
此処に一人の少女が悠然と立っていた。
「殺し合いなんて横暴なんですの!」
少女の名は御影すばる。正義を愛するすばるの手にはとある物が握られていた。
「こうなったら……」
手に持ったものを口元に寄せて、
『ぱぎゅうー、マイクのテスト中ですの!!!!』
大きな声をそれ――拡声器に吹き込んだ。
『これで大丈夫ですの! みなさん、あたしは御影すばるといいますの! こんな殺し合い、断固として認めてはなりませんの!
絶対ッッッッッ、阻止ですの!!!』
すばるの大きな声が拡声器を通して辺りに広がっていく。音量は最大、できるだけ遠くにまで聞こえるようにと思ったためだ。
『残念ながら、あたしにはこの首輪を外す手段は全く分かりませんの! ですが、多くの人が集まったらきっとなんとかなりますの!
人と人とのつながりの力があればきっと首輪だって解除できますの!』
思いを乗せた声が木の葉を揺らす。一人でも多くこの声が届きますように、とすばるは念じる。
『この声が聞こえた人は今直ぐここまで来るんですの! 誰でも歡迎なんですの!
一緒に仲間を集めて頑張ろうですの!!』
最後に大きく息を吸って。
『みなさあああぁぁぁああああぁあああん!!!!!!
正義は必ずかあああああぁぁあぁあああぁぁぁぁああああつ、悪は必ず滅びるんですのおおおぉぉおおおぉぉおおおお!!!!
だから――ふぁいとなのですのおおおおおぉおおぉぉおおおおお!!!!』
力を振り絞って、すばるは声を振るった。
◆ ◆ ◆
そしてこの呼びかけを聞いた少年が一人。
「っと……! びっくりしたなぁ……」
少年の名は日向秀樹。すばるのいる場所から幾分か離れた所に日向はいた。
「おいおいおい、あの女の子危機感なさすぎだろ。あれじゃあ危険な奴まで呼び寄せちまうじゃねえか」
確かに拡声器は離れた場所にいる人にも呼びかけを行うことが出来る。
だが、ここにいる参加者が全員が善人とは限らない。参加者を殺しまわっている者もいるはずだ。
そのような者がいるのに安易に呼びかけをするなど愚の骨頂である。
あの女の子の元へ行く必要はない。行ったら危険人物とも遭遇するぞ。
日向の頭はそう告げていた。
「はぁ……なんつうか……危険な奴が来る前に女の子抱えてトンズラこく……それで十分だよな」
それなのになぜだか足が勝手に声の震源地まで走り始めていた。何をやっているんだ、と自分に問いかけるが返答は一つ。
ほっとけない。何となくのことだが、この思いは確かだ。
「俺が行くまで変なのに捕まんなよ……!」
結局、日向は女の子を見捨てられない芯からの甘いお人好しだったのだ。
◆ ◆ ◆
「わざわざ自分のいる場所を教えてくれるなんてあほなんちゃうんか?」
日向の考え通り、この声は危険人物にも届いた。
「あほらし……何が正義や。この島でそんなん通用せえへんわ」
紫の髪を団子に束ねている少女――姫百合瑠璃はぼそっと呟いた。
目はいつもの愛らしさがどこにもなく、ギラギラと血走っている。
「さんちゃんを護れるんはウチだけや……信用せえへんで……! 」
手に持つ拳銃を強く握り締める。頭の片隅にあるのは一人の少女。
瑠璃がどんなモノよりも大切に思い、この身を煉獄に投げ出してでも護りたい、そんな少女。
少女――姫百合珊瑚を護るために瑠璃はとある決意をした。
そう、珊瑚を最後に一人にするよう血塗れの道を歩くこと。
幸いのことに支給品は当たりだった、これで大事なさんちゃんの力になれる、と瑠璃はニタリと哂う。
「決めたんや……ウチは……!」
瑠璃はしっかりとした足取りで歩き始めた。当然、目指すはあの声の元だ。ただの殺害対象、怯えることはない。
ただこの拳銃のトリガーを引けば殺せる。誰にでもできる簡単なことだ。
「みんな殺してやるって!」
この身は大切な者の為だけに。姫百合瑠璃は――ただ眼前の敵を殺すだけだ。
【時間:1日目午後14時00分ごろ】
【場所: F-5】
御影すばる
【持ち物:拡声器、水・食料一日分】
【状況:健康】
日向秀樹
【持ち物:不明支給品、水・食料一日分】
【状況:健康】
姫百合瑠璃
【持ち物:コルト S.A.A(6/6)、予備弾90、水・食料一日分】
【状況:健康】
最終更新:2011年09月06日 17:17