101匹天使ちゃん? ◆Z1g6RDehVQ
「……殺し合い、か」
殺し合い。
もう一度口の中で呟いて見るもののやはりその言葉に現実感は無い。
名簿の中には、俺の知り合いの殆どが記されていて、その中には親父の名前もあった。
岡崎直幸。
俺の父親にして、俺がバスケを失ってしまった原因。
正直殺してやりたいと思ったことは何度もある。
殺し合い、というきっかけを与えられて、人を殺すための武器を与えられ、はたして俺は殺すのか?
荷物の中に入っていたこの
日本刀を、ほとんど他人になってしまった親父に突き刺すのか?
きっと殺せない、……殺さない。
こんな島に集められて、武器を渡されて、殺し合いをしろと言われて。はい分かりました、とあっさりと人を殺せる人間がどれだけいるんだ?
そんなやつは、ほとんど居ない。
どんなに人を憎んでも、人はそう簡単に人を殺せない。
手にした日本刀の重みを感じながら、そんな風にある種楽観的に考えてきた俺の期待は次の瞬間あっさりと裏切られた。
「───ッ!?」
いつの間に近づいて来ていたのか、銀髪の少女が突然斬りかかってきた。
防げたのは完全に偶然。
少し喉が渇いたので水でも飲もう、そう思って右肩に掲げた鞄に目線をやった瞬間、こちらに斬りかかって来る少女の姿が目に映ったので咄嗟に日本刀の鞘を掲げて防いだ。
もし気づかなければあっさり殺されていたこと、そして何の躊躇も無く人に斬りかかって来る眼前の少女に恐怖を覚えながらも必死に叫ぶ。
「おいあんた!何考えてんだ!こんなこ───」
銀髪の少女はこちらの呼びかけに一切答える様子も無く、ただ口元を少し歪めるのみでそのまま斬りかかって来る。
こちらも必死に日本刀で応戦するが、相手の動きが早すぎて殆ど何も出来ずに切り刻まれていく。
古傷さえ無ければ、そんな事が気にならないほどに敵は強い。
何故、俺はまだ殺されていないんだ?そんな疑問すら湧いてくる。
あるいは俺をいたぶって楽しんでいるのかもしれない。
そんな攻防とも言えない様な一方的な嬲りは永遠には続かない。
体力の限界に達したのか、傷の所為で力が入らないのか、あるいは古傷が再発したのか。
とうとう右手に力が入らなくなり刀を取り落としてしまう。
そして、その隙を少女が逃すはずも無く死を覚悟したその時───俺の前に天使が舞い降りた。
正確には、天使と見間違うような少女、だが今の俺には本当に天使に見えた。
銀髪の少女の刃が俺に迫る直前、その少女と瓜二つのもう1人の少女がその刃を弾き返す。
緊張と混乱で呆然とし、力が抜け倒れこむように尻餅をつく俺を尻目に少女2人は斬り合いを続ける。
やはり先ほどまでは本気を出していなかったのだろうか、俺に斬りかかって来た時の速さ以上の速度で斬り合う二人の速度はもはや俺の理解できる範疇を超えていた。
ぼんやりと、二人の銀髪の少女が織り成す幻想的な風景に見とれていると鏡写しのようにそっくりだと思っていた少女達の唯一の相違点に気づく。
それは瞳。
俺を殺そうとしている方の瞳は血の様に赤い。
一体何が起こっているのか、正直これは夢なんじゃないか?
そんな事を考えている間に、いつの間にか戦闘は終わっていた。
完全に互角の相手を前にこれ以上続けても無意味と判断したのか、最初に俺に襲い掛かって来た方の少女が引いた。
俺を助けてくれた方の少女もいまだに立てないでいる俺を気遣ってくれているのか無理に追いかけようとはしない。
「ありがとう、助かったよ。ところで、さっきのアレはなんだったんだ?あの、あんたそっくりの……」
「分からない。でも心当たりなら」
■■■■
「つまり、何故かは分からないけどあんたの能力が暴走してるって事か?」
こくり、と無表情に頷いている少女によると以前にも似たような事が合ったらしい。
その時はプログラムを修復してくれた人が居て問題は解決した筈だが、何故かその時と同じ解決法が使えなくなっていると。
もしかしたら、あの羽の生えた男が意図的に暴走させているのかも?との事だ。
正直何を言っているのかさっぱり分からないが、実際に剣を出したり消したりする所も見せてもらったしそう言うものなのか、と納得するしかない。
「それで、これからあんたはどうするんだ?」
「Angel Playerを探す」
Angel Player。確かこいつの力の源……だったか?
「そいつを見つければあいつを何とかできるのか?」
多分、と少女は頷く。
プログラムがどうのこうのと言っていたが相変わらず詳細は良く分からない。
とりあえず、以前解決した時と同じようにすれば多分何とかなる、ということらしい。
「そっか。なら俺もついてってやるよ。助けてもらった恩もあるしな」
「?」
そう言って見た所思いっきり首を傾げられた。お前が付いて来て何の役に立つんだ、といわれたようで少し傷つく。
確かに戦闘じゃ役に立てそうも無いが、あんたの分身に襲われた人が居た時俺が居た方が楽だろう、と説明すると納得がいったのかこくりと頷いてくれた。
なんか無表情&無口のこいつを相手にしているとことみを相手にしているようで少し調子が狂う。
「んじゃ、そろそろ行くか」
そう言って立ち上がろうとするもののいまだに右手に力が入らずにうまく立ち上がれない。
痛む体に鞭打って立ち上がろうと悪戦苦闘している俺に彼女の手が差し出された。
「よっと。ありがとな。えっと……あんたの名前は?」
「奏。立花奏」
かなで、かひらがなみっつでかなでちゃんってわけでも無いだろうが、やっぱ何と無くことみのやつを思い出すな。
ことみ以外にもこの島にはたくさんの知り合いが居る。
あいつらは大丈夫だろうか、そんなことをスタスタと歩いていく奏の背中を見ながら考える。
───ん?背中?
「っておい!俺を置いていこうとするな!」
【時間:1日目午後12時30分ごろ】
【場所:E-08】
岡崎朋也
【持ち物:日本刀、水・食料一日分】
【状況:負傷(切り傷・治療済)】
立花奏
【持ち物:不明、水・食料一日分】
【状況:健康】
立花奏のharmonicsという能力で生み出された彼女は次の獲物を求めて駆ける。
本来のharmonicsであれば立花奏での人格が反映され、例え凶暴になっても生徒のため、という方針は存在する。
しかし今現在この島に存在するharmonicsの方針はそんな優しいものではない。
その方針は、殺し合いの助長。
だからこそ、本来はすぐに殺せるはずの岡崎朋也をあえて無駄に痛めつけ恐怖感を煽った。
今回はオリジナルの介入により失敗したが問題ない。
何故ならharmonics達が招く災厄は全てオリジナルの招いたものと見做されるのだから。
遠からずオリジナルは自らの与り知らぬところで生まれた復讐の芽によって葬られるだろう。
その為にももっと多くの災厄を。
次の獲物を求めharmonicsは駆けていく。
【時間:1日目午後12時30分ごろ】
【場所:F-08】
立花奏(harmonics1)
【持ち物:無し】
【状況:健康】
※立花奏の能力の一つであるharmonicsが暴走させられています。
タイトルの通り101人居るとは限りませんがこのharmonics以外にも存在するかもしれません。
最終更新:2011年08月28日 03:50