「北高新聞号外です、宜しくお願いします。」
毎朝おなじみのハイキングコースを踏破してやっとこさ校門にたどり着くとそこにはビラらしきもの配っている連中がいた。彼らの腕には新聞部と書かれた腕章を装備されている。
腕章といえば某団長さまの標準装備であり、某団長とビラと校門といえば朝比奈さんのトラウマとなった例のバニーでビラ配りなわけだが……。
新聞部の面々は普通に制服だった、ちょっとつまらない、まぁもっとも北高生でバニーが似合うなんてのは数えるほどしか居ないわけだし……。
などとどうでもいいことを考えながら歩いていたら、新聞部の女子と目があった。
「こちらが号外です。あっ、おめでとうございます。」
一体なにがおめでとうなんだろうな、おっとコレが号外だな、なになに…
『緊急速報！ 北高生人気投票結果発表！』
……学食後援、北高新聞部主催で行われた人気投票の結果が発表されました。
結果は下馬評通りの部分もあれば予想外の入賞者ありと波乱にとんだ……
気になる投票結果は次のページで……なお入賞者さまの喜びの声及びプロフィール、写真などは明後日発行の北高新聞通常号にて詳報の予定……、上位入賞者には副賞として一週間分の学食無料券を進呈……と。
なるほどこの間ちょっと話題になったヤツの結果発表か。
女子の部なんざどうせ朝比奈さんがぶっちぎりで優勝なんだからやらなくてもいいのにな。
で肝心な次ページだな…。
……女子の部は下馬評通りに朝比奈みくるさんがダントツで一位…と、まぁ当然過ぎる結果だよな。
コメントは『文句なし』か、まぁそうだな。
おっ、二位が鶴屋さんで、三位が長門かぁＳＯＳ団関係者で上位独占だな。
しかし長門が三位ってのはちょっと複雑だな、なんとというか応援してたインディーズバンドがメジャーになって……みたいな感じだろうか。
四位以下はと……おっ喜緑さんが五位かまぁ確かヒューマノイドなんちゃらは美人揃いではあるよな……統合思念体とやらの趣味かね。
おまけに九位に今は居ない朝倉の名前が入っているのはご愛嬌ってところだな。
大体朝倉へのコメントが『もう一度あの匂いをかぎたい』ってなんだ一体？
あぁ10位涼宮ハルヒだぁ？ 我らが団長様もランクインか、まぁ確かに外見だけみれば超美少女なわけだしな……。
コメントは『性格さえまともなら…』か、まぁそうだな(w。
次が男子の部か……、男子の一位は…げっ！ 古泉じゃねーかよ。全くどういうことだ、機関が根回ししたのか？
で二位が生徒会長か……まぁ男のランキングなんてどうでもいいな、それより女子だ女子……。
おっともう教室についたらしい、……あぁハルヒおはよう。10位だってなおめでとう。
「はぁ？ 一体何の話？」
号外読んでないのか？ 人気投票でＳＯＳ団勢が上位独占だぞ、ほらここ。
「あー下らないお遊び企画よね。だから読まなかったけど………確かＳＯＳ団で上位独占だったみたいね」
……て、しっかり読んでるじゃねーか。
「それよりキョン、あんたもランクインしてるじゃない、男子で30位よ、それに…」
何っ俺が30位？ どれどれ……って30位キョン(本名不詳)って一体…orz。
……コメントは『鈍感、間抜け面』ってなんだそりゃ？
さっきおめでとうと言われたのはこの所為だったのか。
まぁ、なんだ意外とこの学校にも見る目があるやつがいるってことなのか？
それにしては下駄箱にラブレターとか素敵なイベントにはお目にかかってないがな。
しかし一体だれが俺に投票してくれたんだろうな、なぁハルヒお前はどう思う？
「そりゃあたっ……い、いえなんでもないわ……と、とにかく同情票じゃないかしらあんたの間抜け面につられたとか……みんな油断も隙もないわね…きっと有希やみくるちゃんが……鶴屋さんだって…」
ん？どうした長門達がどうしたって？ おっと担任の岡部がやってきたのでこの話は打ち止めだな。
というわけで朝のホームルームが始まったのだが…なにかクラスの雰囲気が変だ。
何人かは俺とハルヒの方を気にしているようだ、谷口にいたってはなにかいいたそうな感じだが……。
またハルヒがなにかやらかしたのだろうか？
そしてホームルームが終わったとたんにさっきの新聞部の一行がやってきた。
一体なんだろうな、新聞でもくばるのか？
「えー只今より北高生人気投票の表彰を行わせて頂きます」
あぁ、それね。俺は30位だから関係ないだろうが10位のハルヒは賞品でももらえるのかね。
「それではそちらの二人は前へお願いします」
そちらの二人って…えっ俺とハルヒ？ 30位でもいいのか、くれるっていうのなら一応貰っておくが……紙切れじゃなぁ。
「い、いくわよキョン。くだらない催しだけどＳＯＳ団の名を広めるチャンスだわ」
あ、あぁ……なんだろうハルヒの様子がおかしい。ひょっとして照れてる？ お遊びとか言ってた割には気にしてたのか？
ハルヒが無料チケットとやらを受け取り皆が拍手する、俺も一応拍手しておこう、あとが怖いしね。
次は俺だな……あれっ、おしまい？ おれのは？ 30位だからって呼び出して置いて何も無しはひどくないか？
「ペアチケットだからお二人で一枚ですよ、ご一緒にどうぞ」
へっ、なんで俺とハルヒがペアチケットなんだ?!
「ほらキョン、チケット貰ったんだからお礼いいなさいよ。ほら」
はぁ…どうも…。
「それでは授業の時間も迫っているのでこれで失礼します、昼休みに学食でお待ちしています」
そういうと新聞部一行は俺の頭に大量の疑問符を残して去っていった。
……なぁハルヒ……なんでペアチケットなんだ？
「あんた……北高新聞みてないの？」
いやだからここに書いてある通り朝比奈さんと古泉が一位でハルヒが10位なんだろ？
「そこじゃなくて最終面よ、その裏よ。」
えっ、裏ってここか……、何々…。
……北高ベストカップル栄えある第一位は予想通り、涼宮ハルヒ×キョン(本名不詳)……って
俺とハルヒが……その……カップル?!
……第二位の生徒会会長×書記コンビに大差をつけて堂々の一位……
コメントは『バカップル！』ってなんだそりゃ？
「おめでとうなのねん」
「やっぱり一位だったね、おめでとう」
「最初からそうに決まってたよな！」
などと声をかけてくるクラスメイト達に適当に返事をしながら俺達は席へと戻った。
ハルヒの様子を窺うとそわそわして時々まわりを怒ったように睨みつけたかと思うと今度はぼーっと窓の外を眺めたりと明らかに挙動不審だ。
授業が終わり昼休みになった、ハルヒは相変わらず挙動不審だ。適当に相手をしつつ弁当を出そうとしたところでハルヒが俺に話しかけてきた。
「……キョンお昼食べに学食いくから一緒にきなさい！」
あっ？ 俺は弁当だし、学食に用はないぞ。
「さっきの無料チケットよ今日から１週間有効なの今日からいかないともったいないでしょ」
じゃぁハルヒ、お前一人でいってくればいいじゃないか、俺は谷口達と一緒に昼飯を……
「このペアチケットはあたし達が二人で行かないと無効なのよ、ほらここに条件が書いてあるでしょ」
……確かにそうだな、でもさっきもいったが俺は弁当だしな。
「デザートでもオレンジジュースでも適当に頼んでればいいじゃない、それだって只よ」
いや……しかし……。
「いいから来なさい、団長命令よ！」
仕方がない、谷口に国木田スマンがそういう訳だ。
「いってらっしゃいキョン」
「ごゆっくりー…」
「……あ、あたし本当はひとりで食べるのが好きなんだけど…今日は特別なんだからね、それと期間中はずっと学食だから弁当持ってきちゃだめよ……」
「すいません、入賞者の方の席はこちらです」
そうですか、ありがとうございます。ハルヒこっちだってさ。
「今日は入賞者インタビューも兼ねていますので合間で結構ですので協力お願いします」
だってさ、ハルヒ。
「ＳＯＳ団の名を広めるためよ、仕方ないわね」
「えー、では涼宮さん一位に選ばれたご感想は？」
「相手がアレだけどなんでも一番は気持ちがいいわね、……それにライバルも多かったし…」
「ライバルといいますと？」
「そりゃ、ゆきやみく…いや…その……会長とかよ、あいつらときたらいつもあたし達の邪魔ばかりするから」
「はぁ……それでお二人の馴れ初めは」
「か、勘違いしないでよ、コイツとはなんでも……」
すいません、ちょっとまって、おいハルヒごぼしてるぞ、ほら綺麗にしてやるから動くな…。
あ、続きお願いします。
「ちょっとキョン！余計なことしないでよ！」
＊北高新聞発行日
お、こないだの取材の奴だな。
えーと俺達の記事は…なになに『やっぱり、絵に描いたようなバカップル！』……おいどういうことだ！
……取材にあたった本誌記者もあてられっ放しのバカップルぶり……特に彼女が服にこぼしたときにすかさず彼がふき取ったときは……
…その時の彼女のツンデレぶりはまさに必見、ツンに隠れた潤んだ乙女な瞳を本誌記者は見逃さなかった！……
…また学食でのラブラブぶりにあてられた生徒たちにより今後北高では告白ラッシュにカップルの嵐が予想され…
写真は『取材中も甲斐甲斐しく世話を焼く"彼"と潤んだ瞳で見つめる"彼女"』って………おわった…orz
「キョン……」
あ、ハルヒおはよう……駄目だ変に意識して……
「キョ、キョン。あんたの所為であたしまでバカップルって言われてるじゃない！」
あー…すまん…って俺の所為なのか？
「お詫びに今度の休みにあたしを遊園地に連れてきなさい、勿論費用は全部キョン持ちよ！」
えっ、それって……
「お、お弁当はあたしがつくってあげるから、キョンは持ってきちゃだめよ」
あぁ……てかなんでおれが弁当を…
「その次の週は映画だからね、映画代はあたしがはらうからキョンはランチの美味しいお店を探しておくのよ、美味しくなかったら罰ゲームなんだから！」
ハルヒによると映画の次は動物園か水族館だそうな……仕方ない…確かに俺達は北高一のバカップルらしい…
どっとらはい
＊＊＊ おまけ ＊＊＊
「wawawa！ どうだ阪中あいつらを見習って俺達もバカップルにならないか？」
「…他をあたって欲しいのねん……あ、国木田君…映画の招待券貰ったんだけど来週…」
「くそー！ あ、鶴屋さん、ちょっとお話が……」
「おやキョン君のお友達君だね、そうだ古泉君をみてないにょろか？ 一緒に帰るって約束したっさ」
「く、くそー…確かに告白ラッシュでカップルの嵐だぜ…俺だけ除いてな……orz」
「残念でしたね、長門さん」
「残念とは？ 喜緑江美里」
「せっかくご自分に投票したのに選外でしたよね」
「……私は三位、朝比奈みくるには負けた、でも貴方や涼宮ハルヒよりも順位は上の筈それに女子部門は白紙で投票した」
「そちらではなくて涼宮さんが一位で私がニ位のほうですよ、"彼"とご自分の名前を書いて投票されたのでしょ」
「……それは何かの間違い、私は投票していない」
「あらその投票用紙には『図書館がお似合い』というコメントがあったそうですけど」
「……」
「それじゃ私はこれから会長とデートなので失礼します、二位とはいえベストカップルになると注目されて大変ですよ、お独り様がうらやましいですわ」
「わかめブッコロス！」
「あ、あたし……一位なのに独り身でしゅ…、ベストカップルもせっかく自分に投票したのに選外でしゅ、とってもさみしいでしゅ…」
「どうしたいみくる、元気出すにょろよ」
「やっぱり愛情よりも女同士の友情でしゅよね、鶴屋さん今日はカラオケでも…」」
「お待たせしました鶴屋さん」
「あたしも今来たﾄｺっさ、古泉君」
「今日は駅前のデパートでよろしいんですか」
「新しいマフラーを選んで欲しいにょろ」
「そうそう美味しいベトナム料理のお店が…」
「…友情とか愛情なんて飾りでしゅ、エライ人にはそれがわからんのでしゅ…」
