ハルヒと親父 @ wiki
一人旅に必要な事 エピソード4
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haruhioyaji
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参観日
(登場人物)
- キョン:バツ1。前妻と離婚後、ハルヒと結婚。
- アキ:キョンと前妻の子。連れ子。ハルヒに懐いてる。
- ナツキ:キョンとハルヒの子。
- オヤジ:ハルヒの父、アキ、ナツキの祖父
- 母さん:ハルヒの母、アキ、ナツキの祖母。
- オヤジ
- アキの参観日?
- ハル母
- そう。
- オヤジ
- 母さんが俺にその話をするってことは、あいつら忙しいのか?
- ハル母
- ありがたいことにね。
- オヤジ
- キョンが無職だった頃は一日中一緒だったからな。で、母さんが替わりに行くのか?
- ハル母
- ふふふ。
- オヤジ
- ……何故だか、母さんの考えてることが分かる。
- ハル母
- 長年連れ添った夫婦ですもの。『参観日』って、おとうさんにとってはレア・アイテムでしょ?
- オヤジ
- 仕事が忙しかったし、ハルヒが死ぬほど嫌がったからな。
- ハル母
- それだけじゃないですけど。
- オヤジ
- はて?
- ハル母
- お父さんのことだから、自分のしたことは忘れてるのね。
- オヤジ
- 俺、何かやったか?
- ハル母
- 一度だけ、ハルヒの参観日に行きましたね。そこで先生を質問責めにして、そのうち授業ジャック。
- オヤジ
- ほう。
- ハル母
- 『このままじゃ学校が乗っ取られます』って電話をいただいて、タクシーで出たのを覚えてます。
- オヤジ
- ガキどもには好評だったんだけどな。
- ハル母
- ええ。悪いことに父兄の方にも評判が良くて、PTAの方が講演依頼に来られて。
- オヤジ
- 別に教師の悪口を言った訳じゃないんだけどな。
- ハル母
- 次に、教育委員会の方が、研修の講師依頼に来られて。
- オヤジ
- 罰ゲームだと思って引き受けたんだ。
- ハル母
- で、アキの参観日、一緒に行きませんか?
- オヤジ
- アキはともかくハルヒは死ぬ気で妨害して来ないか?
- ハル母
- ひるんでるの?
- オヤジ
- わくわくしてる。
- ハル母
- じゃあ、決まりね。
- アキ
- え、参観日、おばあちゃんと親父ちゃんが来てくれるの! アキ、すごいハッピィだよ! でも、ハルヒはメチャクチャ怒るよね、きっと。
- ハル母
- そこはおばあちゃんが話しておくわ。
- ハルヒ
- ちょっと、母さん、それ本気?
- ハル母
- ええ。
- ハルヒ
- あの親父は、参観日に乗じて、学校を乗っ取りかけた奴よ。全校生徒と父兄を先導して学校の外に連れ出して。
- ハル母
- 伝説になってるみたいね。その時の感想文をまとめたものが市立図書館にあったの。母さんも見たかったわ。
- ハルヒ
- マジ?
- ハル母
- けっこう本気よ。
- ハルヒ
- 母さん!
- ハル母
- さすがに初孫の授業参観で、それはやらないと思うけど。
- ハルヒ
- 娘の授業参観でも、普通はやらないの!
- ハル母
- 普通じゃないお父さんでごめんね、ハル。でも愛しているの。
- ハルヒ
- ぐっ。
- ハル母
- おもしろがってもいるけれど。
- ハルヒ
- 母さん!
- ハル母
- 大丈夫よ、今回はあくまであなたたちの代理。出過ぎた真似はしないし、させないわ。
- ハルヒ
- ……まあ、母さんは信用してるけど。
- キョン
- なんだか、すみません。お義母さん。
- ハル母
- いいのよ。アキちゃんの参観日に行けるんだもの。今から楽しみ。
- アキ
- ふんふんふん♪
- ナツキ
- アキちゃん、ごきげん?
- アキ
- そうだよ。参観日にね、おばあちゃんと親父ちゃんが来てくれるんだ!
- ナツキ
- アキちゃんは、親父ちゃん好き。
- アキ
- おもしろいもん。時々おもしろすぎるけどね!
- ナツキ
- 参観日って何?
- アキ
- 授業参観日って言ってね、子供が普段学校でどんなことやってるか、親が見に来る日。最近は両親とも働いてることが多いから、日曜日にやるんだ。
- ナツキ
- 見てどうするの? ダメ出し?
- アキ
- どうするんだろう? でも、わくわくしない?
- ナツキ
- パパもママもいそがしいの?
- アキ
- そうみたい。ハルヒはね「クライエント倒してでも行くわ!」って最初言ってたんだけど、倒しちゃまずいだろうって、パパが説得したみたい。
- ナツキ
- パパ、やるときはやる。
- アキ
- そうだね♪
(参観日当日)
- 担任
- え? まさか? いや、まちがいない!
- オヤジ
- そこで、おれがワニの腹から時計を取り出すと……
- ハル母
- ふふ、どこのネバーランドですか。
- 担任
- すみません! 涼宮先生でいらっしゃいますか?
- オヤジ
- 母さん、意外と有名だな。俺と結婚してからは演奏してないのに。
- 担任
- いや、そちらではなくて。
- ハル母
- お父さんみたいよ。
- オヤジ
- すまん。どこかで会ったんだろうが、人の顔を覚えるのが苦手なんだ。
- 担任
- いえ、覚えてらっしゃらないのも当然です。その頃、私は小学生でしたから。
- オヤジ
- へえ。そんな昔に。でも、俺は先生じゃないぞ。
- 担任
- ええ。もう二十年以上前になります。わたしはこの学校に通う小学生でした。わかってもいないのに教師の質問に全員が手をあげるような、いつもの退屈な参観日になるはずだったんです。涼宮『先生』が父兄席から手をあげて、一つの質問をするまでは。あの一日に起こったことで、忘れたことはありません。私、あの時のことが忘れられなくて、教師を目指したんです!
- オヤジ
- そりゃ悪いことしたな。
- 担任
- 私だけじゃありません。あの日の「授業」を受けた何人もの人が教職を目指しました。やがて横のつながりができて、今でも定期的に集まってるんです。ぜひ一度、いらして下さい。詳しくは改めてお願いに上がります。今日は、つたない授業ですが、一生懸命やりますので、ぜひ観て帰って下さい。
- オヤジ
- いや、参観日だし、そりゃ観るけどな。
- 担任
- それでは準備がありますので、失礼します!
- オヤジ
- ……こういう時はなんて言えば良いんだろうな、母さん? Good grief(やれやれ)か?
- ハル母
- ふふ。やっぱり私も見たかったわ。お父さんの学校ジャック。もう一度、やりません?
- オヤジ
- やめとこう。アキが教師になると言い出したら、ハルヒに言い訳が立たん。
- ハル母
- それも素敵じゃありませんか。
- オヤジ
- やれやれ。The Sigh of Oyaji Suzumiya(涼宮オヤジのため息)だ。
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