ハルヒと親父 @ wiki
できちゃった その1
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haruhioyaji
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- 親 父
- できたって何が?
- ハルヒ
- 子供よ!
- 親 父
- どこの?だれの?
- ハルヒ
- あたしとキョンの、に決まってるでしょ、バカ親父!
- 親 父
- おまえらが最初にうちに来たのが×月×日だろ。ちょっと待て、計算が合わん。
- ハル母
- お父さん、それは計算が合わないというより、前提が少し違うと思うわ。
- ハルヒ
- これからはあたしたちだって親なんだから、親ってだけで威張らないでよね。
- 親 父
- 母さん、こいつの言う理屈も変だと思わないか?
- ハル母
- 後で話しておくわ。本題に戻りましょう。
- 親 父
- いいとも。で、おまえら、これからどうするんだ?
- ハルヒ
- 一人っ子だとさびしいから、男女同じ数がいいわね。あたしもがんばるから、あんたもがんばりなさい、キョン!
- 親 父
- 母さん、こいつ、大丈夫か?
- ハル母
- お産は大変だから、ハイになる脳内物質が出るそうだけど。
- 親 父
- おいおい、手に負えんぞ。キョン、おまえはどうなんだ?
- キョン
- ええ、ほんとに手がつけられなくて。
- ハルヒ
- キョン、あんたはだまってなさい!
- 親 父
- やれやれ、母さん。バカップルが、単なるバカのカップルになっちまった。
- ハル母
- まあ、おめでたいことですから。
- 親 父
- まったく、めでたい連中だよ。
- ハルヒ
- なによ、別に悪いことした訳じゃないわ!
- 親 父
- ったく、「いいこと」ばっかりしやがって。
- ハル母
- お父さん、一度、二組に分かれませんか?
- 親 父
- そうしてくれ。キョンと話もできん。
- ハルヒ
- 母さん、あたし絶対に産むからね!
- ハル母
- そうね。で、SOS団のみんなには言ったの?
- ハルヒ
- ……まだ。
- ハル母
- あらあら。
- ハルヒ
- だって……。
- ハル母
- ハル、子供を産むのは大変な仕事よ。でも育てる方はもっと大変。母さんは、とくにいろんな人に助けてもらってあなたを育てたけれど、人は人の間で大きくなっていくの。みんながお祝いも言えないというのは、母さん感心しないわ。
- ハルヒ
- うん……。
- ハル母
- ちっちゃいお式する?家族とSOS団のみんなで。近くの教会で式やって、あとはちょっとしたパーティね。
- ハルヒ
- うん。
- ハル母
- あとは、赤ちゃんが産まれた後の生活ね。住むところはともかく、進学やめて働くとか、キョン君なら言いだしかねないわね。
- ハルヒ
- そんなのダメよ! あいつ、バカなんだから、もっと勉強しないと。自分だけが責任とるとか、勘違いもはだはだしいわ!
- ハル母
- ハルはどうするの?
- ハルヒ
- あたしは……。
- ハル母
- そういうことを、キョン君とちゃんと話し合ってね。わたしたちは力は貸せるけど、借りるあなたたちが方向を決めないと何もできないの。
- ハルヒ
- うん。
- ハル母
- 私からは、とりあえずこんなところかしら。キョン君がお父さんにいじめられてないか、見ていらっしゃい。
- 親 父
- 付き合うまでは随分かかったのに、付き合ってからはいやに早いじゃねえか。
- キョン
- すいません。歯止めが無くなったというか、なんというか。
- 親 父
- 娘の色香に惑いやがって。
- キョン
- すいません。
- 親 父
- 脛かじる身だろ、避妊くらいしろよ。
- ハルヒ
- 大きなお世話よ!
- 親 父
- おいおい、もう戻って来やがった。
- ハルヒ
- 別に計算間違いじゃないわ。むしろ狙い打ちよ!というより、ほんとは絨毯爆撃よ! キョンが「なか」にいなかった日なんて数えるほどしかなかったもの。
- 親 父
- 何言ってんだ、こいつ? こんなの投下していいのか? 中学生だって読んでるんだぞ。
- ハルヒ
- キョン、こっちの話はついたわよ! さっさと終わらせなさい! 親父、キョンをいじめるなら、あたしが相手よ。
- 親 父
- まあ、いいや。おまえも座れ。くっつくな。空気読んで、ちょっとは離れろよ。
- ハルヒ
- やだ。
- 親 父
- やれやれ。こんな役回り、俺だって嫌なんだぞ。
- ハルキョン
- ……。
- 親 父
- でだ、おまえら高校生だろ。実際、どうしてくつもりだ?
- ハルキョン
- ……。
- 親 父
- 世間体みたいなのは、この際、うっちゃるにしてもだ。おまえらの高校、託児所があるほど進んでないだろ?
- ハルキョン
- ……。
- 親 父
- おいおい、黙るなよ。なんだかおれがいじめてるみたいじゃないか。ハルヒからキョンに言いたいことはないのか?
- ハルヒ
- あるわ。キョン、あんたは大学に行きなさい。バイトとか就職とかお金の問題とかはとりあえず考えなくていいから。
- キョン
- そういう訳にはいかんだろ。心配すんな。おまえともうひとりの食いぶちぐらい、なんとかなる。
- ハルヒ
- あまい。カレーの王子さまもびっくりの大甘よ。いくら心がけが殊勝でもね、浮かばれるとはかぎらないのが現代社会なの。
- キョン
- カレーの王子さまがでてきた時点でびっくりだ。ハルヒ、だったら、おまえはどうするつもりなんだ?
- ハルヒ
- しばらくは出産と育児を最優先するわ。それから、できるようになったときに、借りは返すわよ。だから当分の間、たくさんの人の手と助けを借りるつもり。迷惑もかけるし、厄介にもなるわ。もちろん、キョン、あんたのも含めてね。
- キョン
- 学校はどうするんだ?
- ハルヒ
- 高校も育児休暇があればいいんだけどね。行けるだけは行って、お産近くなったら、後は休学でも中退でもどっちでもいいわよ。大検受けて入学資格ができたら、1年遅れであんたがいる大学に入るわ。これで完璧ね。
- キョン
- ハルヒ、お前他にやりたいことはないのか?
- ハルヒ
- 何をいまさら。あたしがやりたいことはあんたの嫁になること、あんたと一緒に暮らすことよ。やってみて、他にもやりたいことが見つかったら、そのときやればいいわ。簡単なことじゃない。それより、あんたはしたいことないの?
- キョン
- ……特にないぞ。というか、言葉にすると、ほとんどお前と同じになる。
- 親 父
- はあ。三者面談とか、おまえらどうやり過ごしたんだ?
- ハルヒ
- あたしはやり過ごしてなんかないわ。第1希望から第3希望まで、ぜんぶ「キョンの嫁」って書いたもの。
- 親 父
- はー。キョン、おまえさんは?
- キョン
- はあ。偏差値的になんとかなりそうなレベルよりちょっと上の大学で、なんかつぶしが効きそうな学部を、適当に。
- ハルヒ
- 困ったものね。
- 親 父
- お前が言うな。
- 親 父
- あー、おまえらにその気があるんならな、バイトくらいは紹介してやる。
- 親 父
- ハルヒはとりあえず在宅な。スポーツ番組の字幕翻訳くらいなら、なんとかこなせるだろ。くれぐれも言っとくがスポーツのルールはつくるな、覚えろ。あとは、うちと、キョンのところの、家事手伝いな。今はとても嫁に出せるレベルじゃない。迷惑かけるだろうが仕込んでもらえ。ちゃんと二人で行って頼むんだぞ。
- 親 父
- キョンには、そうだな、足と口を使うような仕事を探しとく。おまえさんは、なんのかんの言って、なんでもやっちまいそうだがな。
- ハルヒ
- えらく評価が違うじゃないの。
- 親 父
- ひいきはどっちもしてないぞ。タイプの違いってやつだ。たとえばハルヒに仕事を頼んだとする。おまえは「完璧」な、言いかえれば自分が満足できるレベルの成果を持ってこようとするだろ。一方、キョンに仕事を頼んだとする。こいつは今の状況や制約条件、無論使える時間やなにかも含めてだ、その状況の中で出せる、相手にとって一番ましな結果を持ってこようとするだろう。まあ、そういったことだ。
- ハルヒ
- なんか納得いかないわ。
- 親 父
- うちで言えば、母さんがハルヒのタイプ、俺がキョンのタイプだな。
- ハルヒ
- ますます納得いかない。母さんの方はわかるけど。
- 親 父
- なぜかというとだ、おれは本来自分が面白ければなんでもいい人間だが、母さん限定で相手の満足を考える。娘相手には地まるだしで対応する。うまれた時代が悪かったな。
- ハルヒ
- ちっとも悪くないわ。キョンがいるもの。
- 親 父
- やれやれ。ツンデレにそこまで切れられちゃ、お手上げだ。
- ハル母
- なるほど、家事を、ね。
- ハルヒ
- うん。
- ハル母
- どっちかっていうと、うちの主婦はハルって感じがするけど。
- ハルヒ
- 親父にはレベル低いって言われたわ。
- ハル母
- そうねえ。いま、「うちの主婦はハル」って言ったけど、じゃあ母さんは何だと思う?
- ハルヒ
- え? えーと、なんだろう?
- ハル母
- 母さんはね、女主人なの(笑)。
- ハルヒ
- えーっ?
- ハル母
- その違いは、ゆっくりとね。さて、家事といってもいろいろあるけれど、じゃあ、まずキョン君の好物でもつくりましょうか。
- ハルヒ
- うん!それならね、@@でしょ、@@でしょ、@@でしょ、それから・・・
- ハル母
- ストップ。ハルは毎日キョン君のお弁当を作ってるでしょ?
- ハルヒ
- うん。
- ハル母
- 最初は横から食べたり、キョン君のお母さんに教わったりして、作り方とか味付けとか覚えたのよね。
- ハルヒ
- うん、そうよ。
- ハル母
- でも、それはハルヒの味じゃないわね。
- ハルヒ
- え、でも。
- ハル母
- キョン君はやさしいから何作っても「おいしい」って言ってくれない?
- ハルヒ
- うん。でも食いつきが全然違うというか、本当に好きなものは食べているのを見れば分かるわ。
- ハル母
- そうね。……うちのお父さんは実家をケンカして飛び出してきたような人だから、最初ずっとね、母さん、お手本がなかったの。どうしたと思う?
- ハルヒ
- ……。
- ハル母
- ふたりで、うちの味を作ったのよ。母さんも一生懸命工夫したし、お父さんも脂肪肝になるくらい食べてくれた。お父さんも「まずい」って絶対言わない人だから、最初は苦労したわ。……レストランのシェフは、自分が絶対においしいと思うものを出すべきね。お客さんはわざわざその店を、そのシェフを選んでやって来て、お金を払ってくれるのだから。でも、私たちは、相手がおいしいと思うものを作りたいとは思わない?
- ハルヒ
- うん。
- 親 父
- という訳で、おれはじじいになる。おまえが親父だぞ、キョン。
- 親 父
- そうだ、これを渡しとこう。
腕章だった。バカ親父と書いてあって、バカのところを×で消して「ただの」と書き加えられている。
- 親 父
- 今日からお前のもんだ。
- キョン
- そんなのいつ作ったんですか?
- 親 父
- いまさっき。
- キョン
- そっちのは?
- 親 父
- ああ、俺用だ。
- キョン
- 「超親父」と、真新しい腕章には書いてあった。
- 親 父
- あの、じじい、では?
- キョン
- よくみろ。
「超親父」の上には小さな文字で「じじい」とふりがなが振ってあった。
できちゃった その2へつづく