数秒前まで自分が居た空間とは打って変わって、そこには満開の夜桜が咲き渡っていた。桜の樹の下には死体が埋まっているとは言ったものだが、とりあえずは殺し合い開始早々に見た桜、ここまで死体が埋まることができるタイミングは無かったのだろうが……強いて言えばこれからこの下に埋まる最有力候補がこの私、小林というわけか。いやはや笑えない。
何故最有力候補なのか、それは自分がただのいちシステムエンジニアに過ぎないからだ。魔法も超能力も使えない。せいぜい会社独自のプログラミング言語に扮した魔法文字が分かるくらいの一般人だ。
とはいえこんな奇特な催しに招かれる原因はなくもない。本人曰く終焉をもたらすような奴と日常を共にしているし、ドラゴンの勢力争いの枠組みから外れながら二大勢力の両方の輩とコネクション持ってるし。何なら終焉帝などという奴を殺される寸前まで怒らせたこともある。
そんなこともあってか、もはや大概のことでは動じないと自負していたのだが……いやいや、殺し合いってなんだよ。トールやらエルマやらと殺し合うとか、倫理的な問題以前に一方的な蹂躙にしかならないのが目に見えている。狙うまでもなく優勝などハナから不可能だ。
となると、あとはもう大人しく死ぬしか無いわけだ。優勝を諦めることそれ即ち、遅かれ早かれ死ぬということ。悪足掻きなどせずザックに入っていたナイフを自分に突き刺し、桜の樹の下で眠りにつくのも選択肢のひとつだ。
(まあ、それは面白くないわな。)
一瞬頭をよぎった結末をバッサリ切り捨てる。デスマーチ中に死にたいが口癖になることはざらであっても本気の自殺願望を抱いたことはない。皆で生き残れる道にアテはなくとも協力すれば探せるかもしれないのだから、ドラゴンに比べれば風前の灯にも満たない命であってもせいぜい足掻かせてもらおう。
と、何となく方針を決めたはいいのだが―――
(ここ、前に皆でお花見したとこだよなぁ……)
辺り一面に広がる草葉の原。シンプル極まりない緑色の光景には不釣り合いな桜色の一角。間違いない、ここはかつてトールがカンナとじゃれあっていた草原だった。
この場違いな桜の木はルコアさんの知り合いのドラゴンの肉片で作ったという極めて特殊な産物であるはず。見覚えのある腕相撲の台までご丁寧に配置されていることから考えても、偶然この場に似たような景観の場所があったのだとは考えにくい。
知ってる場所が知らない場所にある。文字に起こすだけでも奇怪であるそんな状況は、実際に体感してみるとより奇怪なものである。肝心の風景が既知のものである現状、如何せん未だ日常の範囲内にいる気がしてならない。気が付けばベッドで目覚めて夢オチで終わらないものだろうか。
(まあ、現実逃避しててもしょうがないよね。)
とりあえず皆で生還すると決めたからには目指すは知り合いとの合流だ。
トールは『小林さん以外は皆殺しです』とか言い出しかねない。自殺願望は無いとは言ったけどさ、40人以上もの人たちを見殺しにしてでも生きてこうって思うほど図太くないよ私は。
カンナちゃんはまだ子供だ。こんな時にはきっと不安でいっぱいだろう。……まあ、仮にもドラゴンだ。私なんかよりよっぽど頼りにはなるんだろうけどさ。こういう時にちょっとくらい親心発揮してもバチは当たらないよね。
エルマは合流できたらシンプルに心強いよ。調和勢ってくらいだから安易に殺しに走ったりはしないと思うし。……でもあの子、ちょっとそそっかしいとこあるからなあ。不安は消えない。
ファフッさん……彼は分かんないなあ。私がどうこうできる部類の人(ドラゴン)じゃない。だからっていうと本人の心配してないみたいで語弊あるけどさ、彼担当の滝谷くんとも合流したいところだよね。
さて、問題はどうやって合流するかだ。
地図には固有名詞らしき地名もちらほら見られるが、どこも聞き覚えはなかった。既知の場所が知り合いと共通であれば暗黙の了解的にその場所で合流を臨むこともできたかもしれないが、自分の知り合いたちが『花見会場』の名を地図で見てそこが合流を臨める地点であるとの認識を共有できるか?答えはノーだ。仮に花見会場という単語からこの草原を連想したとしても、同じ思考を相手方にまで求めるのは無理があると考えるに違いない。
(じゃあ会えるかどうかは運任せってことかな。はぁ、やってらんないな……。)
地図によると近くに展望台とやらがあるらしい。どの程度の高度があるのかは知らないが、人探しならうってつけの場所だろう。ひとまずはそこを目的地にしようと決めた、その時。
「あのー……。」
背後から声が聞こえた。
「うわっ!?」
仮にも緊張感の巡らされる殺し合いの会場。唐突な声掛けに驚き、咄嗟に飛び退く。
「あ……すみません……。えっと、私は鷺ノ宮伊澄という者なのですが……。」
「は、はぁ……。ええと……」
どこか間の抜けた声の主は和装の似合う少女だった。こちらが向こうに気づいていないにもかかわらず不意打ちして来なかった辺り敵意は無さそうであるし、そこは良しとしよう。
しかし花見会場を中心とするエリアは遮蔽物が一切ない、見通しのきく草原である。それにドラゴンみたいに気配を読み取るような能力こそなくとも、殺し合いを命じられていることから周囲の様子へそれなりの警戒心は持っていたつもりだ。そんな自分が背後からの接近を許したこと。鷺ノ宮伊澄に不気味な何かを感じずにいられなかった。
「……あのさ、いつの間に後ろにいたの?」
―――いられなかったから聞いてみた。
伊澄はキョトンとした顔で小林を見る。あたかもこちらが可笑しいことを言っているかのような目だ。
「私は最初、たぶんこの辺りに居ました。ええ、たぶん。」
伊澄は地図の、D-2の中の一点を指さした。
「そしてこの『負け犬公園』を目指そうと思って移動を開始しましたのです。」
「ちょっと待って。」
違和感どころではない。明らかなツッコミどころを見つけて声を挙げる。
「伊澄さんこっち方面じゃなくて私の真後ろから来たよね?……っていうかそもそもこっち負け犬公園方面じゃないんだけど。」
「……。」
黙り込む伊澄。
嘘、だったのだろうか?だがそれにしては妙だ。そんな嘘をつく理由が無いし、話に明らかに一貫性が無さすぎる。
「……なぜでしょう、不思議な話もあるものですね。」
……ああ、分かった。この子アレだ、方向音痴かつド天然だ。
確かに疑問は残るけど、これはちょっとやそっとの対話では解消しそうにないと思い、そこの話は打ち切った。何にせよ、悪意が無いならそれでいい。
(どこか新鮮……そういえばちょろゴンずにはいない属性の子だなぁ。)
とにかく今はまだ伊澄と遭遇したばかりという状況だ。目指す方向もそれぞれ違っている。
「で、負け犬公園に向かうんだっけ?それなら私も同行させてほしいんだけど……。」
とりあえず目的地はスパッと譲ることにした。結局どこに向かっても知り合いと合流できる確率に大きな違いはないからだ。
「いいでしょう。それでは私についてきてください。」
「あー……先導は私がするね。」
意気揚々と逆方向に進み始めた伊澄を引っ張り、小林は負け犬公園へと進み始めた。
■
結論から言えば、少し自惚れていたのかもしれない。
伊澄と同行しようと思った理由はいくつかある。まず殺し合いに乗っていないのなら単に同行して損は無いから。他にも、殺し合いに乗っているかもしれない知り合いのドラゴンと伊澄が接触した場合、自分が同行していれば説得できるかもしれないからというのもある。
要するに、その多くは伊澄のためというところが大きかった。自分は年長者だし、人より無駄に死線を潜ってきた分いざと言う時に命を捨てる覚悟もある。
だけど、自分より一回り幼い女の子に自分が守られる側になるかもしれないという意識は全くと言っていいほど無かった。
「……止まってください。」
唐突に、伊澄が先導していた小林の前に立って言い放った。
どうしたのと口を開こうとするも、横目で見た伊澄の真剣な表情に気圧されて何も言えない。先程までのぼーっとした様子から一転、凛とした佇まいを見せる伊澄。その様子はまるで、普段は同じように人間社会での暮らしを楽しんでいるトールがたまに陰を含む顔を見せる時のようで。どうしても伊澄という少女が自分が関わってはいけない領域の世界に住む者であると理解せずにいられなかった。
「来ます。」
他の参加者の気配とやらを感知したのだろうか。そのような能力の無い小林に予兆は感じられないが、伊澄の雰囲気を見てなお疑う気にはならなかった。
居場所は間もなく例の草原エリアを抜けるといったところ。つまりまだ遮蔽物の類は無く、隠れてやり過ごすというのもできそうに無い。よって必然的に邂逅の時は訪れる。夜の闇の中から姿を表したそれは―――見たところ細身の青年男性というところであった。
(あの人そんなにヤバいの?)
伊澄の反応から、見るからに化け物の類が現れるのを予期していた小林は、多少拍子抜けしつつ伊澄に耳打ちする。対する伊澄は男が姿を現したことで、よりいっそう肩肘張った様子を見せていた。
「あれは人間と妖怪、どちらの尺度から見ても違うものです。それ以上、私はあれを語る言葉を持ちません。」
どこかボーッとしているようにも見えるその男もこちらに気付いたようだ。男は背負ったザックに後ろ手を回す。その所作から武器を取り出すのかと警戒するも、それは杞憂だったようで。手に取ったザックをそのままこちらに投げつけてきた。
―――ドサッ。
生い茂る芝の上に投げ落とされたザックは軽快な音を立て、伊澄の目の前に落ちる。おそらくそれの意味するところは武装解除なのだろうが、それを前にしても伊澄は全身から汗を吹き出し、目の前の男それ自体に怯えているかの如き様相である。
「安心してください。僕は危害を加えるつもりはありませんよ。」
男が言った。たぶん自分じゃなくて、今もなお過剰なほど怯えている伊澄に対して諭しているのだろう。
「八葉六式……」
しかしそんな伊澄の答えは、その場の誰にとっても想像外のものであった。
「『撃破滅却』」
伊澄が2本指を男に向けて立てた次の瞬間、男の周りの空気が爆発した。爆心地に居た男はおそらく何が起きたのかも分からぬままに四肢を、そしてその命を散らす。小林はその一部始終を、わけも分からぬまま観測することとなった。
「ちょ……ちょっと!いくらなんでも殺すのは……!」
鷺ノ宮伊澄。彼女は代々陰陽師、あるいはゴーストスイーパーなどと呼ばれる者たちの力を継承する、由緒ある名家産まれの光の巫女である。しかも伊澄はそんな鷺ノ宮一家の中でも歴代最強の力を持つと言われるほどの才能を持っている。
霊の気配を捉えれば善性か悪性か、どちらが宿っているのか伊澄には分かる。善性の宿る霊であれば迷子になりながら成仏してもらいに行き、悪性の宿る霊―――いわゆる悪霊であれば迷子になりながら退治しに行く。それが鷺ノ宮伊澄の日常であった。
しかしその男は伊澄の常識から完全に逸脱していた。人間でないのは明らかであるのに、宿るのが善性なのか悪性なのかの判断すらも付かない。言うなればそれは、善も悪も無くただそこに在るだけで不調和を振りまく厄災が如き存在であった。
しかし伊澄が例の男に対して抱いたこれらの感覚はすべて、人一倍の霊力を持つ伊澄であるからこそのものだ。そんな力の無い小林から見れば、その男はどう見てもただの人間だった。
「いいえ―――」
しかし次の瞬間、他ならぬ小林の認識が大きく歪むこととなる。
「―――まだ生きています。」
次に小林が目にしたもの。それは四肢を散らし、臓物をぶちまけて、ついにはその活動を終えたはずの人体が、ゆっくりと再生していく様だった。
「なっ……!」
伊澄と小林の前に現れた男の名は桜川九郎という。
九郎は幼少期に2種類の妖怪を食した。他の動物の肉を食すという行為には少なからずその相手の持つ資質を我が身に取り入れるという呪術的な意味合いを帯びているのだが、事実として九郎はその2種類の妖怪の能力を手に入れた。その内のひとつが、人魚を食らったことによる『不死の身体』であった。
辺りに飛び散った血液や、爆散した身体に嵌らずに主を失ったはずの首輪までもが元あった場所に戻っていき、先ほどまでの九郎の姿を再構成する。その光景は人の常識で語れる範疇を超えていた。伊澄が恐れていたものの正体が垣間見え、一歩引き下がった小林の前に伊澄が立ちはだかる。
「ここは私が引き受けます。小林さんは先に負け犬公園へ。」
伊澄はここで、脅威の塊である九郎と単独で戦うことを選んだ。自分のような力を持つわけでも、綾崎ハヤテのような身体能力があるわけでもない小林がいたところで、戦いの局面は動かない。小林にできることといえばせいぜい共に死ぬか、無駄に死ぬかのどちらかだ。
(確かに、私には専門外の領域だよなぁ……)
それを受けて、小林は思う。あんな爆発を起こせる伊澄とあんな爆発でも平気でいられるような奴の戦いに、自分が影響を与えられるはずがない。明らかな管轄違いだ。無闇に介入してもかき乱すのがオチというものかもしれない。素直に伊澄に従うのが得策というものだろう。
「―――行かないよ。」
「えっ。」
しかしそれは私の性に合わない。
人間と妖怪、どちらの尺度から見ても違うもの―――あの男を伊澄はそう言い表していた。だが言ってしまえば、伊澄があの男を敵対視する理由の大部分はきっとそれだけなのだろう。
(でもさ、それならきっとあの子らだってその括りなんだよね。)
伊澄にあの男がどう見えているかなんて分からない。肉片から人へと再生していった姿なんて一生夢に出てきかねないトラウマものだ。見かけ上は人間に扮しているドラゴンなんかよりよっぽど禍々しいものなのかもしれない。
「まずは話し合おう。実力行使はその後でも遅くないと思うよ。」
それでも、異なるものを異なるとして排除してしまえばそれまでだ。互いの異なる価値観を擦り合わせるプロセスを踏んで両者の違いを楽しむ未来だって、或いはあるかもしれないじゃないか。
「で、伊澄さんは冷静にあれと話せないんでしょ。だったらここは私の出番。」
「で、でも……」
「だいじょーぶ。終焉もたらすほどじゃなければ怖くないよ。」
肝心なところでとにかく押しに弱い伊澄。しぶしぶ了承し、小林は九郎の元へと向かう。
「突然攻撃してゴメン。信じてもらえないかもしれないけど、私たちはこの殺し合いに積極的というわけじゃないんだ。」
その言葉を、キョトンとした顔持ちで九郎は聞いていた。しかし次の瞬間には、何かが腑に落ちたようにパッと前を向き、応える。
「……信じますよ。確かに殺し合いと無関係に怖がられる心当たりならありますから。」
「そっか、ありがとう。」
思った以上にあっさりと解決した。やはり思った通り、この人は安全だったのだ。正しかったのは私で、間違っていたのは伊澄さんだった―――しかしこれはこの場合に限っての結果論に過ぎない。そしてたぶん、この殺し合いの世界ってとこでは大体において正しい選択なのは伊澄さんの方なのだろう。
彼女の選択は到底責められるものじゃない。たぶんあのようなチカラを持つ伊澄の日常は人間の物差しで測れるものじゃないだろうから。伊澄から見た九郎も人間の語彙では言い表せない類のものなのかもしれないし、そこに人間の倫理観なんて当て嵌めるものじゃない。
でもね。逆もまた然り、私の価値観もまた否定なんかさせやしない。
受け入れられるかどうかなんか二の次に、声高に叫んでやろうじゃないか。
種族の差なんて微々たるものだろ、そんなので殺し合うな……ってね。
【E-2/草原エリア/一日目 深夜】
【小林さん@小林さんちのメイドラゴン】
[状態]:健康
[装備]:対先生用ナイフ@暗殺教室
[道具]:基本支給品 不明支給品(0~2)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める
1.ひとまず伊澄さんと一緒に負け犬公園に向かおう
■
「なるほど。2種類の妖怪を食べた、ねぇ……」
小林は九郎より、再生能力についての大まかな説明を受けた。つまり伊澄が恐れていたのは九郎自体ではなく、その肉体に芯から刻まれた、本来は有り得ない取り合わせの2種の怪異の性質だったのだ。
(妖怪と同じ見え方してるなら匂いまでキツいかもしれない、か。伊澄さんと同行させるのは酷だよなぁ……。)
命が懸かっているこの状況で匂いひとつに拘っている場合では無いのかもしれないが、先ほどの怯えようを見るに伊澄視点の九郎は相当な化け物なのだろう。とりあえずどれだけアプローチされてもトールの尻尾は絶対に食べないようにしようと心掛けた。
「……ってことらしいよ。伊澄さんはどうする?」
伊澄は黙りこくっていた。ただただ未知であった先ほどまでとは違って、正体が分かった今や九郎への恐怖は多少和らいだ。匂いというのも我慢できないほどのものではない。
「……すみません。同行はお断り致します。」
それでも、伊澄は拒絶した。
そもそも伊澄が負け犬公園を目指していた理由は、そこが友人の三千院ナギが目指す確率が高い場所だからだ。ナギにとって、あの公園は彼女のヒーロー、綾崎ハヤテとの思い出の場所。負け犬公園でナギと合流し、特別な力の何も無い彼女をその後も護り続けるために(迷子になりながら)そこに向かっていた。
幼い頃、母親を亡くして落ち込んでいたナギを励ますために、伊澄は母親の霊の降霊術を試みたことがある。しかし当時、伊澄の霊力は降霊を行うにはまだ弱かった。それでも無理して降霊に臨んだ結果、ナギは闇を極端に恐れるようになってしまった。
それ以来、もうナギを『向こう側』の世界と関わらせまいと努力してきた。教会の地下迷宮の悪霊を退治する時に自分の力がナギにバレないように周りの人物に口止めしたり、ムラサキノヤカタに神様の力が封印されていたことが分かれば警備として屋根裏部屋を借りたりもした。
だからナギとの合流を目指している今、『向こう側』の真骨頂である九郎の同行を許すわけにはいかない。
「えっと……。」
伊澄の拒絶に、両者の調停役となっている小林が一瞬困惑を見せるとそれをフォローするかのように九郎は口を開く。
「でしたら小林さんはこれまで通り、鷺ノ宮さんについていってください。僕は先ほど述べた通り、誰よりも安全ですから。」
「ん……ごめんね。そうさせてもらうよ。」
「私も勢いで殺害を試みてしまい、申し訳ありませんでした……。」
その後、それぞれの知り合いについての情報を軽く交換して別れることとなった。完全に溝を埋めることは適わなかったけれど、互いにほんの少しだけ歩み寄ることならできた気がした。
【E-2/草原エリア/一日目 深夜】
【鷺ノ宮伊澄@ハヤテのごとく!】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品 不明支給品(0~3)
[思考・状況]
基本行動方針:三千院ナギとの合流のため、負け犬公園に向かう
1.ナギに『向こう側』の世界を見せたくない
■
(不死の身体を持つ僕を入れて殺し合い、か。茶番が過ぎるな。)
小林と伊澄と別れた後、桜川九郎は1人『真倉坂市工事現場』に向けて歩き始める。
そこは唯一、知り合いの岩永琴子や弓原紗季に縁のある場所であり―――名簿にあった名『鋼人七瀬』の噂の発生源である。
(身体がバラバラになっても再生の時に首輪まで元に戻った。つまり僕の能力を想定して造られているということだ。)
人為的に創られた想像力の怪物、鋼人七瀬。
自分の再生能力に合わせた装置を造る際に必ず必要となるサンプル。
それらを統合して考えた結果―――否、そもそも自分や岩永がこの場に呼ばれている地点で―――この殺し合いには間違いなく六花さんが関わっている。
この仮説は先ほどの2人には話していない。2人に話すまでもなく岩永や紗季さん辺りから波及するだろうし、あの2人が話さない方が良いと判断するのなら僕もそうすべきだろう。
……いや、それは言い訳だ。まだ僕はあの人のことを諦められないフシがあるだけ。庇うつもりは無いけれど、100%の確信になるまではまだ彼女を他人の心の中まで悪役に据えたくはないのだろう。
(何を企んでいるかは知らないけれど、絶対に阻止させてもらう。そのためにも……まずは岩永と合流しないとな。)
彼女の頭脳だけを目当てとするほど冷たいわけではないが、自分の手の届く範囲であれば必ず護る。伊澄に同行を断られたことについても、別行動をしている彼女らが岩永を見つけるかもしれない。彼女を保護できる可能性が上がったのなら、むしろ良かったのかもしれない。
この事態の解決には恐らく、岩永の頭脳も必要となるのだろうから。
【D-2/草原エリア/一日目 深夜】
【桜川九郎@虚構推理】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品 不明支給品(0~3)
[思考・状況]
基本行動方針:真倉坂市工事現場に向かう
1.桜川六花の企みを阻止する。
【支給品紹介】
【対先生用ナイフ@暗殺教室】
小林さんに支給された緑色のナイフ。本来は殺せんせーの細胞のみを破壊し、人体にはゴム同然で無害である対先生物質でつくられているのだが、パレス内では刃先が人・人外分け隔てなく細胞を破壊するという性質に変化している。
最終更新:2021年07月21日 01:53