殺し合いが怖い。
真っ当に生きてきた中学生、影山律にとってそれは当然の話である。
暴力が怖い。
殺し合いは様々な暴力行使の形式の中のひとつであり、自分たちは暴力行使をする側になったと言える。また、望まぬ行使を強いられているこの状況ではあの姫神という男から暴力行使された側であるとも言える。しかし律の恐れる暴力はそのどちらでも無い。
律が恐れるのは、暴力を行うことでも受けることでもなく、暴力がもたらし得る『結果』であった。幼い頃、暴力を受ける自分を庇ったことで代わりにその暴力の向かうところとなった兄の影山茂夫。その結果、兄さんの中の何かが目覚めた。理性を失い、周りにいる者全員に等しく害悪を撒き散らす存在と化したあの時の兄さんの姿が事ある毎にフラッシュバックする。
そしてここでも、配られた名簿に兄さんの名前を認めた瞬間、あの時の光景を思い出さずには居られなかった。今回は、より直接的に兄さんと殺し合えと言われている。喧嘩にならないよう一般的な兄弟よりも気を遣う必要はあったが、敵対しようと思わなければせずに済むこれまでの日常とは違うのだ。
(……無理だ!勝てるわけが無い!!)
超能力が身につき、同じ土台に立ったからこそ分かる。兄さんの心の奥底に眠る何かの力は圧倒的だ。
そしてこの世界では―――その力が周りに対して牙を剥く可能性が高い。
その力は兄さんが無意識状態に陥った時に暴走する。例えば先の例は兄さんが電柱に頭をぶつけ、気を失ったためにその人格が現れたのだろう。
暴力こそ推奨されるこの世界。そして超能力を人に向けないことをポリシーとする兄さん。そうなれば必然、花沢さんの時のように一方的に攻撃を受けて気を失う事態になることだって起こりうる。
さらに他にも、大きな感情の起伏に身を委ねることで暴走した例もある。例えばエクボ曰く、『空気を読め』と口走るのは兄さんの感情を揺さぶる地雷であったらしい。
兄さんが死ぬことはまず無いだろう。しかし超能力の無い霊幻さんを筆頭に兄さんの周りの人間が死ぬことは充分にありうる。そうなった時、兄さんは感情を抑えることができるのか?
(……身を守らなくては。)
暴走した兄さんを前にしても立ち向かえる手段がほしい。
そのために兄さんの力までは超えられずとも、暴走する兄さんを最低限食い止められるだけの超能力を身に付けなければならない。
もっと長い時間を与えられ、そのための訓練を重ねられるならそれも可能かもしれないが、今は早急なパワーアップが必要だ。
(だけど毎日超能力の訓練にある程度の時間は費やしているけど、それでもそこまでの結果は出ていないんだ。ここ2、3日で急激なパワーアップなんて、そんなの不可能に決まって……)
そこまで考えた時、律は思い出した。
(待てよ……そういえば……僕の力は急激に目覚めたんだった。)
覚醒ラボに通えど通えど芽吹くことの無かった自分の超能力はとある事象をキッカケに、ある日突然その片鱗を見せた。
そのキッカケとは、マイナス感情―――とりわけ『罪悪感』や『背徳感』によるものだった。
勉学・スポーツの両面に優れた『優等生』として生きてきた自分にとって、誰もが抱くことのあるそれらの感情は特別マイナスの意味を持つようだった。
その時にも兄さんに適うほど強い力には目覚めなかったが―――しかし言い換えれば当時以上の強いマイナス感情に晒されれば急激なパワーアップを果たせる可能性もあるということだ。
(殺し……合い……?)
ふと律の耳に、悪魔が囁いた。
罪悪感・背徳感を得るために、そして兄さんの能力の暴走から身を守るために、他者を殺せと。元の日常ではまず思い至らなかったであろう発想だ。
仮にも自分は超能力だ。能力のない一般人相手なら殺すことだって不可能ではないだろう。
(……!僕は今、何てことを……!)
自分の中の悪魔を振り払うように、首を思い切り横に振った。人殺しなんて、そんなこと許されるわけがない。
『―――僕を突き放そうとしたって無駄だよ。兄弟なんだから。』
そんなの、あの時そう言ってくれた兄さんの優しさにも背くことになってしまう。
(そうだ、忘れるところだった。)
兄さんが本当に強い理由。それは超能力の圧倒的な出力なんかじゃなくって、力を私欲のために利用しないところだ。
自分の目指す力の形は兄さんにある。それを忘れてはいけない。
(決めた。殺し合いなんかしない。兄さんと一緒に姫神をやっつけて脱出しよう。)
敵に回すのが恐ろしいのは重々承知だが、味方になれば心強いことこの上ないのが兄さんだ。
それならばやる事は簡単。兄さんの心を乱さないように、超能力の無い霊幻さんを守ればいい。決意を新たに、一歩を踏み出す。
―――チリリリリ……
そんな律の耳に、金属の擦れる音が聴こえた気がした。
「ッ……!?」
何ということはない、ただの金属音。しかしそれに応答するがごとく身体の全細胞が警鐘を鳴らす。おそるおそる、その音の方向に目を向ける。
―――身体の芯に刻み込まれた恐怖がそこにあった。
例えば、誰が語り始めたかも定かではない都市伝説、口裂け女。誰もがそれを虚構(フィクション)として楽しみつつ、されど現実性(リアリティー)を伴うそのエピソードはどこか恐怖を沸き起こす。そしてその恐怖には、具体的なイメージとなる姿かたちが伴うものだ。
そしてそれは、虚構の中に視る『死神』があたかも物語の中からそのまま顕現したかのような、おぞましい姿をしていた。長身の拳銃を両手に携え、全身に鎖を巻き付けたその姿は、一切の誇張なく己の命が刈り取られる様を想起させた。
「うっ……うわぁっ!!」
弾かれたように、刹那の反応であった。相対した死神『刈り取るもの』に対して放たれた念動弾。刈り取るものは出会い頭の一撃に一瞬、怯む様子を見せる。
先手を取られ、即座に律を敵と認識した死神は反撃体勢へと移る。対する律、出会った次の瞬間には敵の底力を察している。一刻も早く逃げ出したいところであるが、しかし同時に理解もしている。敵の二丁拳銃が逃げようと背中を向けた瞬間に自分を撃ち抜くであろうことを。
(銃、か。まずいな……。)
兄さんほどでなくても、島崎レベルのエスパーであれば銃弾くらいなら生身で受け止めることが可能だ。だが生憎それほどの力は律にはない。刈り取るものの持つ拳銃が、律へと向く。
(とにかくまずはあの銃を何とかしないと……!)
刈り取るもの本体には超能力がどこまで通用するか分からないが、少なくとも銃は動かせる。銃口を逸らそうとする力に気付いた刈り取るものは力ずくで律の方へと銃口を向けようとするが、それが長銃であることも幸いして律に向けられていた銃口はてこの原理で容易く向かう先を変えた。
そのまま引き金が引かれる。文字通り的外れの方向に放たれた銃弾が周辺民家の窓ガラスを撃ち抜く。その方向に人がいれば無事では済まないかもしれないが、そんなことを気にしている暇は無い。右手の念力で右の銃を、左手の念力で左の銃を押さえ込みながら、じりじりと後ずさりする律。前方から力を加えているため、元々移動速度は遅い刈り取るものの動きが更に遅らされている。よってじわじわと両者間の距離は離れていく。
(よし、このまま射程外まで逃げ切れば……!)
しかし律のその企みは直後に水泡と帰す羽目になる。
「―――ぐっ!!」
ぐらり、と。唐突に律の視界が揺れた。体勢を崩して倒れ込みそうになったのを何とか踏ん張る。
刈り取るものが命を刈る手段は銃撃に限らない。たった今律に放った念動系のスキル、『サイダイン』もそのひとつだ。洗練された精密射撃の技術に多彩な属性攻撃。とある世界の最強の殺し屋が『死神』と呼ばれたのと同じく、刈り取るものの称号は万に通ずるその技術に由来する。
まるで脳に直接念波を……それもテレパシーのようなものではなく、鮮明な害悪を送り込まれたかのような感覚。この死神もエスパーなのか?それとも第三者による攻撃?霞む視界の中、律は"無駄な"思考に労力を費やした。
「―――しまっ……!」
そのために、現状がかつてない命の危機であることに気付くのが一瞬遅かった。サイダインに意識をやってしまったことで僅かに逸れた律の念力は、すでに敵の拳銃を捕らえていなかった。律が立ち直った時には、既にひとつの銃口が律を真っ直ぐにターゲットに据えていた。
―――ダァンッ!
今度こそ律に向けて、乾いた銃声が鳴り響く。
「―――ハァ……ハァ……」
硝煙の先。息を切らしながらも律はまだ立っていた。攻撃に回していた超能力を全て防御に転じさせたことで銃弾の威力を殺し、耐え抜いた。
されど銃弾。相応の痛みが全身を駆け巡る。金属バットが生身に打ち込まれたような鉛の痛みだ。少し前まで超能力戦闘とも無縁であったいち中学生には到底受け入れ難い衝撃が、更に何発も、何発も撃ち込まれた。多くのエスパーは攻撃と防御を同時に行うことはできない。才能、あるいは努力でその壁を超えるエスパーもいるにはいるが律はその高みには達しておらず、超能力を防御に使っている今、刈り取るものの拳銃を抑え込むことは出来なくなっていた。
「う……」
死神がゆっくり、近づいてくる。それにしたがって大きくなっていく銃声も耳の奥まで響いてくる。銃弾を防御しきることが出来ず全身が痛い。口内から血の味が、そして匂いが、じんじんと伝わってくる。
「うわああああああああああああああああああああああ!!!!」
『恐怖』
律の五感すべてから、ひとつの感情が沸き起こった。その"マイナス感情"は僅かに―――されど確かに、戦局を動かすこととなった。
律の叫びに呼応するかのように大地が揺れ、空気が震える。まるで大自然すべてを味方につけたかのような、確かな手応え。
半ば無意識に、その実感のする方に向けて手を伸ばす律。
その先にあったのは、刈り取るものの隣にあった、住宅街エリアを構成するひとつの名もない建物。
「うおおおっ!」
溢れ出んばかりの律の力が流れ込み、その建物は容易く倒壊した。基盤を失った瓦礫の雨が刈り取るものの頭上より降り注ぐ。
多大なマイナス感情の負荷がかかったことにより、この時の律は超能力のひとつの壁を乗り越えていた。攻撃と防御を同時に行えない律だったが、建物を倒壊させるだけの出力で念動力を放出しつつ、片や鳴り止まぬ銃弾を食い止めていた。
そして刈り取るものは瓦礫の山に沈み、何度も何度も繰り返された銃撃がようやく止まる。家一戸分の重量の下に沈んだのだ。殺し切ったかは定かでないが、少なくとも無事では済むまい。
(ハァ……ハァ……何とか、助かった……!)
考えが甘かった―――律は思う。例えば、超能力者だからと自分が殺される可能性を低く見積もっていた点。例えば、兄さんレベルの敵が現れることを考えすらしなかった点。
(殺すしかない。自分を守れる力を手に入れるために、他の人を……!)
刈り取るものとの戦いを通じて、律の覚悟は決まった。
マイナス感情で急激なパワーアップが可能なことは先ほど立証された。罪悪感のために。背徳感のために。何より、生き抜いてあんな恐怖とは無縁の元の日常に帰るために。
殺人だって、やってやろうじゃないか。
―――ガラッ。
その瞬間、立ち去ろうと背を向けた律の背後から瓦礫が動く音がした。
「っ……!!」
音の主は当然、刈り取るもの。律の限界を超えた一撃は足止めにすらなっていなかった。
(嫌だ……!僕はこんなところで……!)
ひとつ、律の失敗を挙げるのなら。それは刈り取るものに先手を取ってしまったことだろう。
メメントスに住まうシャドウは、刈り取るものを前にしてその恐怖から逃げ出すか、或いは自ら首を差し出す。刈り取るものが真の力を見せるのは、己に対し迷わず牙を剥く者にのみである。律は反射的とはいえ、攻撃してしまった。そのために、死神の本性を垣間見てしまった。
さすれば、その結末は『死』以外に有り得ない。律の意識は、そこで途絶えた。
「―――ペルソナッ!」
その時、何者かの声が聴こえて、その直後に腕に刺すような痛みが走ったような気がした。
■
気絶してしまったためにその時何が起こったのかはよく分からなかったが、気がつくと自分は誰かに背負われていた。
「気がついたようね。」
そこには全身を武装し、仮面をつけた1人の女性がバイクを運転していた。おそらく自分を背負った際、その女性が肩に着けたスパイクが腕に突き刺さっており、先の鋭い痛みの正体はこれだったようだ。
「ええと、これは……」
銃撃されるのに比べれば受け入れるべきとも言える程度の痛みだが、さすがに耐えきれずスパイクの無い腰に手を回す。
「待ってて、ひとまず落ち着けるとこに向かうわ。私が最初に転送された場所よ。」
どうやら危機一髪のところでこの人に助けられたようだ。
名簿を記憶している限りでは、助けてくれた人の名前は新島真。律は感謝すると同時に、ふと頭を過ぎった考えがあった 。"恩人"を殺せば罪悪感も背徳感も他の人を殺すよりもよほど大きいのだろう、と。
「すみません。でも、殺し合いの世界なのにどうして……。」
そんな悪魔の所業を考えてしまう自分がどこか嫌になりながらも尋ねる。
「私ね、優等生として大人の言いなりになるばかり、そんな毎日を過ごしてきたの。」
律は一瞬、真の言ったことが信じられなかった。助けてもらっておいてこう言うのも何だが……真はどう見てもアウトローと言わんばかりの出で立ちであった。名簿の顔写真によると仮面をした姿は元々のようであるし、ライダースーツの肩パッドは邑機のそれと違って立派な凶器だ。
「でもね、それは間違いだって教えてくれた人がいた。だから決めたの。私はもう誰の言いなりにもならないって。」
そして真は続ける。
「だからね、私は姫神の言いなりにもならない。」
真の話を最後まで聞いて、律は思う。この人と自分は真逆だ、と。
自分もかつて、優等生の仮面を外したことがあった。だけどその行いは間違っていたと今は思う。理由は明確で、その結果が他者への攻撃だったからだ。
悔しい。自分と真、行いの本質は同じはずなのに、何故真はこうも晴れ晴れとしていられるのか。何故、こうして優等生であることを捨て去った真は人助けをしたというのに、行いを悔いて優等生に戻ったはずの自分が目の前の人を殺そうとしているのか。
「ふう……。ここまで来ればあのシャドウも追って来れないと思うわ。」
シャドウ、という単語が気になったが文脈的に刈り取るもののことを指しているのは明らかなので追及はしなかった。そこは地図によると『マグロナルド幡ヶ谷駅前店』。刈り取るものと戦った地点から結構離れている。さすがバイクの移動速度―――そう考えていると、突然目の前のバイクが消失した。
「驚いた?ふふっ、この手品の仕掛けは後で教えてあげる。」
はぐらかしながら真は店内に入って行った。律もそれに続く。
「―――いらっしゃいませーっ!」
その時、真とは違う声が聴こえた。
「店員がいるのか!?」
「それは認知存在よ。参加者とは違うみたい。」
「認知……存在……?」
知らない単語に首を傾げる。
でも姫神が、『認知』という単語を使っていたのは覚えている。
「……そうね、その辺りも説明すると長くなるわ。看板に書いてある通り、1人1個はハンバーガーを注文できるみたい。食べながら、向こうでゆっくり情報交換しましょう。」
店内のイートインスペースを指さす真。察するに、真はこの世界や殺し合いの裏側について何か知っている気がする。
律は暴走する兄さんや刈り取るもののような強敵から身を守れるだけの超能力を得たら、あとは兄さんと一緒にこの殺し合いを打破して元の世界に帰ることも考えなくてはならない。真を殺す手順を踏む前に、情報交換くらいしておくべきだろう。
「え、ええ。分かりました。」
とりあえず律は言われた通りに、認知存在とやらの店員にハンバーガーを注文してみた。まさにマニュアル通りといった店員の対応に違和感を覚え、雑談を吹っかけてみたが返事は返ってこない。
そして僅か10秒ほどが経過。律の元にひとつのハンバーガーが届けられた。
それを受け取ると、真の待つイートインスペースに向けて歩みを進め始める。
律が進むは、修羅の道。
されど己の身を守るために他者を殺す、典型的な弱者の道。
だけどそれでも構わない。
他者に優しく生きるのを選択できるのは、強者の特権なのだから。
【E-6/マグロナルド幡ヶ谷駅前店/一日目 深夜】
【影山律@モブサイコ100】
[状態]:ダメージ(中) 全身に銃撃跡
[装備]:
[道具]:基本支給品 不明支給品(1~3)
[思考・状況]
基本行動方針:罪悪感のために、背徳感のために、人を殺す。
1.真から情報を得たら殺す。
2.兄さん(影山茂夫@モブサイコ100)と一緒に生還する。
――――――ペルソナ。
声にならないほど弱々しく。されど確かな叫びが聴こえた気がした。
「えっ……」
『金剛発破』
何が起こったか理解するよりも先に、律の全身は突然現れた例のバイク―――『ヨハンナ』によって轢き裂かれた。
そしてそのまま、律が目を覚ますことはなかった。
【影山律@モブサイコ100 死亡】
【残り 42人】
(これは……スカルなら使えるかしら。この服は防具として使えそうだわ。)
律の死体から支給品入りのザックを回収し、中身を改める真。
スカル向きの鈍器は自分のザックに入れ、サイズの合いそうな法衣はその場で着替え、ライダースーツの下に着込んだ。更には律のザックも自分のザックの中に入れる。無限に物が収納できるとは聞いたが、同じサイズのザックが収納できるのはやはり認知世界ならではの技術だろうか。
律が注文したハンバーガーまで漏れなく回収し終えた真は急いでその場から離れる。
「……アイツから助けようとしたけれど、連れ出してみればすでに手遅れだった。うん、そういうことにしましょう。」
自分の手で男の子を殺してしまった罪悪感・背徳感から目を逸らすように呟く。殺すつもりだった律を助けたのは刈り取るものを前に支給品の回収が難しそうだったことと、仮にアギ系のスキルなんかで殺されたりして支給品が欠損しては困るからだ。
『―――私は姫神の言いなりにもならない。』
律に語ったこの言葉に嘘偽りは無い。真は自分の意思で、怪盗団のメンバー以外を切り捨てていく道を選んだ。
放送ごとに3箇所が禁止エリアとなることと、地図は6×6の36マスから成ることを考えれば、この殺し合いのタイムリミットは大体3日だ。配られた食料が3日分であることから見ても、向こうの意図もそれで間違いないだろう。
3日以内に、首輪から舞台まで綿密に準備された殺し合いから脱出する目処を探す―――言葉にすると難しいが、希望は他ならぬ怪盗団の一員、スカルこと坂本竜司が見出してくれた。
最初の会場で姫神に逆らった竜司。そのせいで見知らぬ女の子が殺されて、軽率な行動と非難されているかもしれない。しかし、そのおかげで分かったことがいくつかある。
まず、姫神は自分たちが世間を賑わす心の怪盗団であると知った上で拉致していること。しかし名簿を信じるならば、怪盗団の全員が集められているわけではない。フォックス、ナビ、ノワールの3人はこの場にいない。
姫神にも全員を把握しきれなかったのか、拉致に失敗したのか。理由は色々考えられるが、その中でもナビこと佐倉双葉が敵の手中に落ちていないのは大きい。
何故なら竜司のおかげで分かったもう1つの情報―――首輪の爆発はスマホで操作すると分かっているからだ。
敵の自分たちを従わせるための切り札がスマホであるのなら双葉のハッキング能力の出番だ。3日以内に彼らが自分たちを見つけ出してくれれば、自分たちは首輪という脅威から解放され、姫神と直接対決できる。
だけどそれには大前提となる条件がある。当然、この殺し合いの世界で怪盗団のメンバーが生き残ることだ。刈り取るものがいることから見ても、それが容易に達成できる目標でないのは明らか。
また、脱出の希望が見出せたのは自分たち怪盗団が双葉のハッキング能力を知っているからだ。それを知らない他の人であれば、脱出の希望を見出せず殺し合いに乗る者が何人いてもおかしくない。
それならば話は早い。
怪盗団以外を排除して危険の芽を摘むと同時に、刈り取るものなどの強敵や姫神に対抗するための支給品を怪盗団が独占する。
食料だって、ハンバーガー1個を漏らさず回収したいレベルで足りない。首輪の爆破をハッキングで防いでから実際に姫神を倒す、または改心させるまで何日かかるかは分からないのだから。
(そうよ、私は怪盗団のブレイン。怪盗団の正義を貫くために、あらゆる策略を駆使してみせる。)
―――怪盗団は、私の居場所となった。
自分の将来のために顔色を伺わなくてはいけない相手とは違う。素の自分をさらけ出し、受け入れてくれるただひとつの居場所だ。
それが今、奇怪な催しで奪われようとしている。そんなの耐えられない。彼らが殺されるなんてあってはならない。
だから真は自ら選んだのだ。自分の居場所だけは何としても守る道を。
たとえそれが他の誰かの居場所を奪うものだとしても―――
【E-6/マグロナルド幡ヶ谷駅前店周辺/一日目 深夜】
【新島真@ペルソナ5】
[状態]:健康
[装備]:アーザードの聖法衣@小林さんちのメイドラゴン
[道具]:基本支給品×2 不明支給品(0~3) 影山律の不明支給品(0~1) さやかのバット@魔法少女まどか☆マギカ マグロバーガー@はたらく魔王さま!×2
[思考・状況]
基本行動方針:心の怪盗団のメンバー以外を殺し、心の怪盗団の脱出の役に立つ。
1.双葉……頼んだわよ……。
※ニイジマ・パレス攻略途中からの参戦です。
【E-6/住宅街エリア/一日目 深夜】
【刈り取るもの@ペルソナ5】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:刈り取るものの拳銃×2@ペルソナ5
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:命ある者を刈り取る
※住宅街エリアの中の建物がひとつ倒壊してします。
【支給品紹介】
【アーザードの聖法衣@小林さんちのメイドラゴン】
影山律に支給された防具。本来はドラゴンの攻撃を通さない性質を持つが、パレス内ではドラゴンの攻撃の軽減程度に抑えられている。
【さやかのバット@魔法少女まどか☆マギカ】
影山律に支給された武器。第2話でゲルトルートと戦いに行く前に巴マミの魔力によって強化された。
【マグロバーガー@はたらく魔王さま!】
マグロナルド幡ヶ谷駅前店で参加者1人につき1個テイクアウトできる。魚介類のマグロは入っていない。パレス内では微小なHP回復効果がある。認知存在の店員が具体的に誰の姿をしているのかは以降の描写にお任せ。
最終更新:2020年09月20日 12:10