「ちーちゃん…」
断崖絶壁に立つ男は、一人の女の子の名を呟く…
男の名前は「サタン・ジャコブ」
エンテ・イスラにて魔界を統一した魔王。
とある理由の為、苦渋の決断をして人間界へ侵略したが、勇者エミリアとの戦いに敗れ、現在は真奥貞夫の名で東京渋谷区笹塚「ヴィラ・ローザ笹塚」201号室で生活を過ごしている。
ブチッ!
真奥は咲いていた花を摘むと崖下の海へ投下する。

「絶対にちーちゃんに対するケジメはとらせるよ…」

真奥の脳裏に浮かぶのは、ちーちゃんこと佐々木千穂との思い出…

☆彡 ☆彡 ☆彡

「なんか変なお客さんでしたね?なんかブツブツ暗いし声も聞き取りにくいし…いまの女…の人?」
「なんかかっこいいですね真奥さん!社会人って感じで!」
「もしかして真奥さんの元カノですか?」
「私は自分で真奥さんを好きになったんです。だから、好きじゃなくなるときも自分で決めます」
「わたしもぜぇぇったいに負けません!」
「真奥さんのゴハンは私が作ります!」
「真奥さん!敵の塩なんか受ける必要ありません!お母さんに教えてもらっていっぱい作ってきましたから!」
「どっちのゴハン食べるんですか!」

…~…

「……」
ドカァァ!!
真奥は右腕をグーへと固く握ると自分の頬を勢いよく殴る。
「ッ!!…こんなんじゃ足りねぇけど…」
それは、守るべき部下(クルーの後輩)を守れなかった自分への戒め。



☆彡 ☆彡 ☆彡

「さてと…」
簡単ではあるが、佐々木千穂への弔いを済ませると、真奥は己の首についてある忌々しい首輪に触れると考察を開始する。
(禁止エリアに留まると爆発するということは、この首輪には爆発機能の他に「位置探知」することが可能のはず)
(そして、俺が向こう側(姫神)なら盗聴機能も備える。あるかわからねぇが、正義の味方が嫌いなヤツのことだ…【ある】と思っていた方が無難だな)

首輪について考察を終えると次は自分の両手を見つめる。

(魔力を外気から得ることができる…ということは、この【パレス】といわれる空間は、エンテイスラの何処かか、それに近い異世界だな…」
真奥が現在住んでいる地球では、魔力の概念は【人の心】なため、空間の場所を予測する。
(姫神は【パレス】を聞き覚えのある者ならピンとくるといっていたから、殺し合いの参加者には【パレス】について知っているはず…)
(とにかく、まずは【パレス】について知っているやつに会わねーとな)
真奥は行動の指針を立てると、さらに考察を続ける…

☆彡 ☆彡 ☆彡

「ちッ…やっぱりB級じゃないようだな」
魔力を得ても、真奥の表情は険しいままだ…
魔力を得たことから、真奥は、どこまで力を行使できるかためしてみた。
結果は、空間転移は視覚の範囲までの移動。
ゲートは開けられるみたいだが…
(殺し合いをさせるんだから、あくまで、地図内の何処かだろーな…禁止エリアに繋がれば死に繋がる。…だめだ、首輪がある状態では、リスクが高すぎる…)
(と…なると元の姿になっても力を制御されている可能性は高いな…)
(魔力が得られるといっても、ここでは、一瞬の油断が死に繋がると思っていいな…)

自らの魔力について考察を終えると、最後に参加者について考察する。

(名簿には、俺の名前が「サタン」ではなく地球名義の「真奥貞夫」と記名されていることから、天界が関わっている可能性が高いな)
サリエルが失敗したから、他の大天使がエミリアの聖剣・もしくは天銀を持ち帰り…あわよくば、俺の命も…ってことで計画を立てたんだと思うが、どうして、俺と関わりがない参加者まで集められているのかが、わからねぇ…)
(それに、ドラゴンの力を有しているのもいた。奴らの目的はなんだ…?)
真奥はこの殺し合いに【天使】が関わっているのではないかと予想するが…
(~~~やっぱり、情報が足りねぇ…こりゃ、他の参加者との情報交換が必要不可欠だな…姫神についても知っているやつが要るかも知れねぇからな…)

(おそらく、芦屋は俺を優勝させようと考え、漆原は…勝ち馬ねらいだな)
真奥は、部下の動向を予測する。

(鈴乃はちーちゃんが殺されたことで俺らを様子見する意味がなくなったから、乗ってもおかしくない。エミリアは…殺し合いには乗らないが、俺を斬るべきか悩み中ってところかな?)
次に真奥は、エンテ・イスラでは、敵対していた2人の動向を予測した。

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大方の考察をいったん終えると、真奥は先ほどの光景を想起する……
(反抗した坂本とかいう金髪ではなく、ちーちゃんを見せしめとしたのは、おそらく2つ…)
(反抗者を殺すことでは、行動を縛れない参加者がいること。そして、俺への挑発…!!)
ギリッ…!!と真奥は唇を噛む。

(ちーちゃんを殺せば、確実に俺やエミリアはゲームに乗らず敵にまわることは、わかっていたはず!)
(そうでなくても、ちーちゃんを殺させないために俺の行動を縛ることができた!つまりこの俺、真奥貞夫は【問題ない】という回答だということ…!!)

「なぁ、姫神…ちーちゃんの命を奪い、俺を舐めている罪は重いぜ?」

真奥の低く、冷たい声は大地と大気を激しく震わす……

☆彡 ☆彡 ☆彡

「さて…と、そろそろ動きますか」
真奥は着ていたマグロナルドの制服を脱ぎ、丁寧に畳むとデイバックへ収納する。
「お~、本当に、無尽蔵に収納できる便利なバッグだな~♪」
制服を無事に収納できたことに安堵する真奥。
「マグロナルドの制服は貸与制。業務に関係ない理由で破損させると弁償しなきゃならなくなるからな」

「よしッ!そんじゃあ、まずは、情報収集だな!へへッ!!見てろよ…お前ら含めてこの俺が支配してやるからなッ!!」

格好つけているが、今の真奥の服装は、Dとプリントされた黄色のTシャツにパンツ…
繰り返すが、Tシャツにパンツ…

「あー…とりあえず、服も調達しねぇとな…」

魔王の反逆が始まった!!

【A-6/断崖/一日目 深夜】

【真奥貞夫@はたらく魔王さま】
[状態]:健康 右ほほ腫れ 
[装備]:Tシャツにパンツ
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3(本人確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:姫神にケジメをとらせる
一.パレスについて知っている参加者を探す。ついでに服を調達するか…
二.坂本に会ったら、一発殴る
※参戦時期はサリエリ戦後からアラス・ラムスに出会う前
※会場内で、魔力を吸収できることに気づきました。
空間転移…同一エリア内のみの移動 エリア間移動(A6→A1)などはできない。
ゲート…開くことができるが、会場内の何処かに繋がるのみ。
魔力結界…使用できない。
催眠魔術…精神が弱っている場合のみ効果が効く。

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021:運命は、英語で言うとデスティニー 時系列順 024:牝豹と竜
投下順 023:僕たちの居場所
真奥貞夫 031:温泉は殺し合いでは戦場。油断すると死ぬ
最終更新:2021年07月29日 21:55