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オラクルキリング 神殺しと戯言遣いの邂逅

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匿名ユーザー

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「……おや?」
目を覚ました。特に前置きもなく、面白みもなく。どうやらぼくは背後にある巨大な石造りの壁に背を預けて眠りこけていたようで、背中のあちこちが固くなっている。ボロボロの体でどうにか立ち上がり、周囲に目を向けるが、周りは暗くてよく見えない。しかし遠くからはまばゆい光が明滅を繰り返しているのが見えるので、それによってぼくの周囲はその輝きによって見づらくなっているらしい。上を見上げると、まっくろな雲と群青色の空がマーブル模様を形成していた。おそらく時間帯としては真夜中なのだろう。
「どう見ても天井ってわけではなさそうだし……うん、屋外だよな、ここ」
光が射す方向からは人々のざわめきが聞こえてくる。

さて、情報を整理しよう。まず、ぼくは大学から帰ってきて骨董アパートの一室にいたはずだ。布団に潜り、目を閉じてじっとしていた(つまり眠ろうとしていた)のだが、なにか仰々しい声が頭の中に響いていたような気がする。多分寝ぼけて幻聴が聞こえていたのだろう。そして目を覚ますと、ここにいた。
「つまり、これは現実世界のぼくが見ている夢の世界ってことか」
うん、早く起きて大学に行かないとな。夢から目を覚ますにはどうしたらいいのだろう。とりあえず壁に背を預けて体育座りし、目を閉じてみる。「それじゃあおやすみ……なんてね」
ぼくはそう呟いて、眠りにつくことにした。



「いや、寝てんじゃねえよ気づけって!?」
「え?」
暗闇から謎の声が聞こえたので顔を起こす。逆光で顔がよく見えないが、目の前にはいつのまにか少年が立っていた。
「やあ、おはよう。きみ、いつからいたの?」
顔面をグーで殴られた。
「ぐふっ」
「死体みたいな顔したやつが眠りこけてたからさあ、何度も声かけたり揺さぶったりして、ようやく目を覚ましたかと思ったら……こっちを無視してなんか独り言を呟いたり……あんた一体なんなんだ?悪魔か?それなら叩っ切るぞ」
「気づかなかったのはすまない、ぼくは鈍いんだ。だがぼく自身は悪魔でもなんでもない、どこにでもいるような弱い人間なので叩き切るのはやめてほしい」
「わかってるっつうの。あんた別に戦うタイプってわけでもなさそうだしな。立てるか?」
少年はこちらに手を差し伸べる。
「いや、大丈夫」
ぼくは手を取らず、自力で立ち上がった。目の前の少年をじっと見てみる。アシンメトリーな髪型に、「NO WAR」と白い文字が書かれている緑色のスーツ。耳にピアスを開けているのと、ぼんやり緑色に光る頬と手の模様が印象的だ。なんとなく、あどけない表情と噛み合わないアナーキーな装いをしている上に、刀のようなものを背負って銃をベルトに付けている。
少年はこちらを一瞥して、口を開いた。
「んで、あんた名前は?」
もちろんぼくの返事は決まっている。
「人に名乗らせるなら、まず自分から名乗るのが普通じゃないか?」
「……あー、うん。そうだな。僕はナナシ。なんか違う名前も名乗ってた気がするが忘れた。……で、お前は?」
「ナナシくんか、うん。よろしく」
「いや、あんたの名前はって聞いてんだけど」
「期待してくれているところですまないが、ぼくは人生で1回しか名前を名乗ったことがないのを誇りに思っていてね。それでもぼくの名前を知っている人間は、皆、もうまともに生きていないのさ。……結局これも、戯言なんだろうけど」
「なんか親近感を感じる話だな……でもそれだったらあんたのこと、なんて呼べばいいんだよ」
「スプーキーe」
「ウソつけ」
またグーで殴られた。
「戯言なんだけどな……」
「んだよ、戯言戯言って喧しいな。じゃあ、あんたのこと戯言クンって呼ぶから」
「おや、なかなかいいセンスをしているね。人はぼくのことを戯言遣いと呼ぶ」
「だったら最初からそう名乗れよっ!?……あー、まあ、とりあえずよろしくな。戯言遣い」
「ああ、よろしく。ナナシくん」
ぼく達は、互いの友情を想って固く握手をする。ことは別になかった。



それぞれの家に帰る方法とか、ここは一体どういう場所なのか、とか。色々話し合った(と言っても半分以上はナナシくんの話に頷いているだけだったが)結果として、ナナシくんとぼくは宛もなく深夜の繁華街を歩き回っていた。
「なあ、戯言遣い」
「なんだい?」
「あんたさ、いかにも弱そうな顔してっけど、ああいうの気にならないタイプなのか?」
「ああいうの?」
ああいうの、とは一体。彼が何を疑問に思っているのかいまいち掴めなかった。
「いや、だから僕らが目を覚まして、それからあんたが寝ようとしたあの場所だよ」
「え?」
とすると、さっきの路地裏だろうか。あの空間には特に問題も疑問も、何もなかったはずだ。
「あの時、あんたの側に人型の悪魔が居たんでちょっと手持ちの武器で切り捨ててやったんだが」
ああ、確かに。あの場所には人間の死体みたいなものが地面に転がっていて、僕はその血溜まりの側で眠っていたのだった。ナナシくんに言われてようやく思い出したが、目の前に広がるものが夢の中の景色だとすっかり思い込んでいたので気にならなかったのだ。まあ、それでも。うん。
「……そうだね、猟奇的な殺人事件と死体には見慣れている。これでも色んな修羅場を颯爽と潜り抜けてきたんだよ」
「本当?」
「ああ、この首に賭けたっていい。ぼくが嘘を吐いていたら死神のデスサイズがぼくの首を切り落としにくるだろう。……とまではさすがに言わないけどね」
「ふーん」
「それにしてもナナシくん、きみはよく喋るよね」
「あんたが喋らなさすぎるから困ってんだよ。普段はもっと黙ってるけどさ、非常時において情報の整理や共有は大事だろ?」
「なるほどね……」
さっきから疑問に思っていたのだが、ナナシくんの言う『悪魔』という言葉はいったい何なのだろう。何らかの固有名詞を指しているような気はするものの、彼はぼくがそれを知っているのを当たり前のように話すので質問するタイミングを見失っていた。しかしこのまま疑問を放置していたらロクな事にはならないと、今まで遭遇した事件によって、ぼくにしてはとても珍しく学習していたので聞いてみることにした。
「ナナシくん。きみの言う、その————」
その刹那、ランタンやネオンの輝きとは比較にならないほどまばゆい光がすぐ近くの空に見えた。あまりにも強い光だったからか、ナナシくんもぼくの話よりそちらを優先したようで、一緒に空を見上げる。
光は繁華街の中心にある塔から、街に降り注いでいる。その光はまるで、天使の背から伸びる後光のようだった。と言えば詩的なのだろうけど、実際のところぼくは眩しいなあ、としか思わなかった。

自慢でもなんでもない戯言だが、ぼくはある策士に「なるようにならない最悪」と呼ばれたことがある。今にして思えば、“それ”はその言葉がぴったりと当てはまるような出来事だった。

【D-2/ナナシ(真・女神転生IV Final)/一日目・午前0:25】
【D-2/戯言遣い(戯言シリーズ)/一日目・午前0:25】

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