Rider's Assemble(前編)



その声を聞いて久しぶりに感じたのは、意外にも安堵だった。
記憶と寸分違わない穏やかで優しく、それでいて自然と背筋が伸びるような威厳を伴った不思議な声。
耳にこびり付いたそれは修二がずっと求めていたもので、だからこそこんな凄惨な状況で彼が話しているのが不思議で仕方なかった。

何度も何度も瞬きを繰り返しながら、修二は画面越しに話し続ける父の姿を見やる。
いつもと同じ服装、いつもと同じ視線。
けれど父が紡ぐ言葉だけは、決して修二の記憶のそれとは一致することはない。

困惑し、何度も内容を理解しようとする修二を待つことなく父の言葉は紡がれ続ける。
待ってくれ、待ってくれよ父さん。
心の中で呼びかけても、父は修二を待ってはくれない。彼の気持ちに気付いてはくれない。

そしていつの間にか、修二が自身の中の感情を整理し終わるより早く、放送は終わった。
驚愕の内容を少しでも分かち合おうと、周囲が喧噪に呑まれ始める。
しかしそんな光景を前にしてもなお、修二はただ一人だけ違う世界にいるような心地で、ただ父の言葉を思い返していた。




一台のトレーラーが、病院という目的地への到達を受けて勢いよく停車する。
だが通常停車後に消灯するだろうヘッドライトの明かりが未だ眩くその前方を照らし続けているのは、万が一の状況を考えての判断なのだろう。
抜け目ないな、と士は思う。

遠方から偵察を行っていたために既にこの到着は承知していた為、病院内の仲間たちは全員トレーラー内からも一瞥できる場所に立ち並んでいる。
それでもなおまだ隠し球の存在を危惧し、いつでも逃げられる状況に自分を置いているそんな運転手の存在を、疑り深いと思いこそすれ不快に思うこともなかった。

「……ハッ、俺らのことも敵扱いか」

だがそうして相手の抜け目なさを好意的に受け止めることが出来ない仲間も、隣に一人。
分かりやすく苛立った様子で眉を顰める帽子の男、翔太郎を一瞥して士は小さく笑った。
以前共に戦った時にも少し感じたが、やはり彼は感情を隠しておけない性質(タチ)らしい。

続けて翔太郎の隣にいる一条にも視線を移す。
彼にはいずれ、話さなくてはならない。
東病院での戦いで自分が犯した、許されざる罪について。

幾度となく過ぎった忌むべき記憶のフラッシュバックに士が顔をしかめるのと同時、Gトレーラーの助手席から一人の影が舞い降りる。
大凡100mほど先でゆっくりと立ち上がる青年の姿に士が既視感を覚えるのと、今まで斜に構えていた翔太郎が駆け出すのはほぼ同時だった。

「フィリップ!」

隠そうともしない弾んだ声で、翔太郎は唯一人の相棒の名前を呼ぶ。
それを受け少し呆れたような、しかし歓喜を含んだ様子で髪をかき上げたフィリップもまた翔太郎に向け歩を進めていく。
こうして、この24時間余り心の底から幾度も再会を望みあった二人の探偵の邂逅は、意外に呆気なく果たされたのだった。

「フィリップ、お前無事だったんだな……」

「君の方こそ、僕抜きでよくここまで生き残れたねぇ?」

「ハッ、言うじゃねえか」

フィリップの軽口を小さく鼻で笑うように息を吐き出して、翔太郎は小さく小突くように彼の胸を突いた。
まるで相手に直接触れられることを確かめるようなその動作に、フィリップも嫌悪を示す様子もない。
悪戯っぽく笑い合ってから、フィリップはふと徐ろに懐へと手を伸ばした。

いつでもそこから取り出せるようにしてあったのだろう。
さして苦労する様子もなく、彼は目当ての代物を探し当てそのまま翔太郎へと差し出していた。

「翔太郎、これを」

どこか仰々しく差し出されたそのドライバーを、翔太郎が忘れるはずもない。
翔太郎とフィリップの絆の証であり、愛する街を守り戦い続ける為に得た彼らの力の象徴――ダブルドライバー。
サンキュ、と小さく礼を呟きながら受け取って、翔太郎はこれでようやく本領発揮だとばかりに帽子を被り直した。

「……久しぶりだな、ジョーカーの男」

だが瞬間、相棒との再会に沸く彼の熱を冷ますような、涼やかな声がその場に響く。
その声の主を、翔太郎が忘れるはずもない。
木場という善良な青年を躊躇なく殺しておきながら、何食わぬ顔で自分と行動を共にした面の皮の厚い男。

彼こそは自身の因縁の存在、相川始その人であったのだから。

「相川さん……いや、こう呼んだ方がいいか?仮面ライダーカリス、そして……ジョーカーアンデッド」

翔太郎の言葉を受けて、始の眉がピクリと動く。
だがそれは動揺と呼ぶにはあまりに薄い反応で、彼にとっては元より正体がばれていることも織り込み済みだったのだろうと思えた。
だがそれならそれで構わないとばかりに、翔太郎は矢継ぎ早に続ける。

「まさか、あんたが木場さんを殺した張本人だったなんてな。気付かなかったぜ」

「ならどうする?また俺と戦うか?」

お手上げだ、のジェスチャーを示すように腕を広げた翔太郎に対し、始は取り合う様子もなく懐からハートのAのカードを取り出す。
それはまさしく、あの時木場を殺した仮面ライダーが用いていたのと同じ規格の、同じハートスートのカード。
分かっていたはずなのに、改めて本人から示された彼の正体に、翔太郎はその拳を握り締め肩を怒らせる。

「残念だがあんときと同じ結果にはならねぇぜ?今の俺には相棒もいるからな」

「なら……試してみろ」

ダブルドライバーを握る手に、思わず力が籠る。
木場を殺した憎むべきあの黒い仮面ライダー。
それが目の前の男であるのが確かなら、木場の無念を晴らすのが自分の仕事ではないのか。

見知らぬ異世界の住人である自分を庇い命を散らした、あの心優しき異形の分まで、正義を果たすために。
そんな青臭い義憤に駆られて、彼はドライバーを胸の高さに掲げて……しかしそこから自身の腰に装着することなく、その腕を力なく垂らした。

「……やめだ」

「何?」

始の困惑を前に、しかし翔太郎は罰が悪そうに視線を逸らす。
怖気づいたようにも見えるその挙動に覚えた苛立ちを隠そうともせず、始はその瞳を鋭く尖らせる。

「木場という男の仇はどうした。お前の怒りはその程度か」

安い挑発だ、と始自身分かっている。
だがそれでもここで翔太郎が敗北の可能性に怯え折れるくらいなら、この程度は幾らでも吐いてやるつもりだった。
だが翔太郎は動じない。ただ心苦し気に拳を握りしめて、今度は始に対し向き直る。

「俺は正直、木場さんを殺したあんたのことを……そう簡単に許すことは出来ねぇ」

「なら――」

「だけど、それ以上に俺は……あんたの事を信じてぇ」

続けられた翔太郎の言葉に、始は思わず顔を上げる。
思わず衝撃に染まったその表情にしかし躊躇いもせず、翔太郎は続けた。

「あんた俺に言ったろ、世界が崩壊する運命を変えて見せろって。あんたが本当に悪人なら、あんなこと言う必要ねぇはずだ、違うか?」

翔太郎の問いに、始は答えない。
それを答える義理もないとばかりに沈黙を貫いて、しかしその間こそが、翔太郎にとっては何よりの答えに思えた。

「それに木場さんは、敵かもしれねぇ俺のことを心から案じてくれた。そんなあの人が、例え自分を殺した奴だとしても、今のあんたの死を望むわけねぇって……そう思っちまうんだよ」

告げてから翔太郎の表情が、僅かに歪む。
死者の言葉を自分に都合よく代弁することに、心苦しさを感じているのだろう。
だが、それを撤回する様子は見られない。

例え綺麗事だとしても、自分の信じたいものを信じぬく。
それが彼という人間の在り方であり、魅力であり、同時に愛すべき欠点でもあった。

「……好きにしろ」

翔太郎の言葉を受け止めて、始はゆっくりと病院に向け歩みを進めていく。
その背中は変わらず飄々としているようで、しかしどことなく憑き物が落ちたようでもある。
果たして彼にとってこの許しが救いであればいいが、と願うように見送った彼の隣から、まるで指定席に収まるようにフィリップが顔を覗かせた。

「……ハーフボイルド」

「うっせぇ」

言葉少なに交わした会話は、しかし彼らにはもうそれだけで全てが伝わるような心地だった。
だが居心地が悪そうに帽子を被り直し視線を反らした翔太郎に対して、フィリップが続けたのは意外にも安堵を含んだ声だった。

「いや、安心したよ翔太郎。君が、君のままでいてくれて」

「え?」

フィリップの言葉の意味を捉えきれず、彼に向け振り向いた翔太郎はしかし、すぐに彼の意を汲むこととなる。
その視線の先、虚空を見つめるフィリップの瞳が、あまりにも悲しみに暮れていた為だ。

「……そうだな」

全てを察したように呟いた翔太郎を横目に見ながら、フィリップはどうしてもその胸にこの状況に呑まれ変わり果ててしまった女性のことを思い浮かべる。
鳴海亜樹子。葦原涼から告げられた彼女の変貌の末路は、彼にとってあまりにも信じがたい事実だった。
だがそれでも彼が嘘をついていると糾弾する気になれなかったのは、自分自身この場で再開した彼女にどことなく違和感を覚えていたからかもしれない。

彼女の全てを知ったつもりになって、照井という心の支えを失った彼女の心に触れるのが怖くて、フィリップはその違和感を見ないようにした。
その結果が、矢車と乃木を彼女に殺させてしまうという最悪のものになるとも知らずに。
愛すべき仲間の、それもかつて自分が生み出したガイアメモリによる暴走の果ての死は、フィリップの心に深い傷を残していた。

故に彼は始と対峙した翔太郎の決断に、一切の口を挟まなかったのである。
彼がまだ自分の信じる半人前であるのかどうか、それを見極めたいという、その一心で。
だがこれで、その杞憂も晴れた。

今は亡き彼女の分まで、街のため戦わなくてはならない。
もちろん彼女が最終的に選んでしまった修羅の道ではなく、他者と手を取り合い共に進む道を、歩む形で。

「おい翔太郎!久しぶり!」

重く苦しい決意を固めた二人のもとへ、場違いなほど能天気な声が響く。
振り向けば、茶髪に青いジャンパーを着た人懐っこそうな笑みを浮かべた城戸真司の顔がそこにあった。
全く良い意味で、この男はやはり馬鹿なのだなと苦笑を浮かべながら、翔太郎は肩から一気に力が抜ける心地だった。

「なんだよ、俺の顔になんかついてる?」

「いいや、助かったよ。それよりお前以外にはその車ん中には乗ってないのか?」

「いや、三原が気絶してる小野寺って奴を見てる」

「小野寺……か」

真司から飛び出した名前に、翔太郎は思わず病院の前の一条に視線を向ける。
彼はこちらのやり取りが気になるのか、或いはトレーラー内の残り人数が気になるのか不安げな瞳をこちらに向けていた。
果たしてあれほど力を渇望した理由の一つでもある小野寺との再会に、彼はどう振舞うのだろうか。

そんなことは考えても仕方ないとわかっていても、翔太郎にはどうもそれが心掛かりに感じられた。

「小野寺さん!まだ歩いちゃダメだって!」

ふと、トレーラーの方向から叫び声が聞こえる。
三原の声だ、と瞬時に理解すると同時、彼が呼び掛けている人物が幽鬼のような足取りでこちらに近づいてくる視線の先の青年だと気づく。
これが小野寺ユウスケか、と知っているはずなのに身構えてしまったのは、ひとえにその身体に刻まれた隠しようのない痛ましい傷の数々故だ。

こんな状況で人は歩けるものなのか、とさえ感じてしまうその満身創痍の風体で、ユウスケはゆっくりとしかし確実にその足を進めていく。
だがそんな惨状を補い余りあるほどに彼の瞳に宿る命の炎は燃え滾っていて、そのギャップが何より彼に今の異様な雰囲気を齎していた。

「小野寺君!」

背後から、一条が彼を呼ぶ声が響く。
刹那、それを待ち望んでいたように表情を明るく一変させたユウスケは、そのまま一条のもとへ足を進めようとして――。
――そこで思い切り、前のめりに倒れこんだ。




―――――どうしたの、もう一人のクウガ。

―――――もう終わりなの?

―――――もっともっと強くなって、もっと僕を笑顔にしてよ。

―――――待ってるよ。

「……ッ!」

誰かに気安く肩を撫でられるようなそんな悪寒を全身に感じて、ユウスケは飛び上がるように身を起こした。
全身はうだるほど熱いようでもあり、一方で凍えるほど寒いようにも感じるし、頭の中は絶えずキンキンと耳鳴りのような音が響いている。
端的に言って最悪の目覚めにそれでも彼が顔を歪めないのは、今見た悪夢が自分の妄想に過ぎないとは到底思えなかったからだ。

自身を二度も究極の闇に染めた忌むべき悪魔、ン・ダグバ・ゼバ
彼はもう死んだと頭では理解しているはずなのに、どうしてもその考えを受け入れられない自分がいる。
これは自分のトラウマが生み出した強迫観念に過ぎないのか、それともアマダムが放つ危険信号の一種なのか。

どちらにせよどうしても自分は、ダグバが未だ生きていて自分を殺しに来るというその思考から逃れられないでいる。

それこそそう、今も自身の肩にポンと手を乗せて――。

「うわっ!」

まさに自分の中に浮かんだ考えに追従するように肩に置かれた手を、ユウスケは勢いよく撥ね退ける。
だがその先にあったのは彼が恐れを抱いた白い悪魔のそれではなく。
こちらを案じるような表情を浮かべた、一条薫が伸ばした手だった。

「一条さん……」

「大丈夫か、小野寺君」

待ち望んだはずの、一条との再会。
第二回放送前の時は自身の背中の上で今にも死にそうな顔色をしていた彼であるが、今は随分生気が戻ったらしい。
だが、自身の足で立ちベッドに横たわる自分を案じる余裕すらある一条の姿を前にしてもなお、今のユウスケは素直に喜ぶことすら出来なかった。

一条もまた、沈むユウスケを前に何事もないように振舞えるほど器用では無い。
故に必然生まれた重苦しい沈黙の中で、一条は突如意を決したように口を開いた。

「フィリップから聞いたぞ。また、凄まじき戦士になったと」

一条の言葉に、ユウスケは答えない。
そうだ。あれだけ仲間を傷つけておいて、あれだけ皆に迷惑をかけておいて、ダグバを倒すことすら出来なかったくせに。
さっきの戦いでまた自分は、究極の闇にこの身を染めた。

自分の目の前で誰も傷ついてほしくないなんて甘えたことを言って、結局他ならぬ自分が誰かを傷つけてしまうと、わかっていたはずなのに。
あの戦いで死んだ間宮麗奈という女性だって、自分のせいで死んだわけでないと仲間は言ってくれたが、果たして本当にそうだろうか。
もし自分ではなくもっと強い仮面ライダーがあの場にいてくれたら、彼女はまだ生きていたのではないか。

「……君が無事で良かった」

考えるべきではないと分かっているはずなのに無数に去来するそんな思考に苛まれるユウスケを尻目に、一条が紡いだ言葉はしかし意外にも安堵だけを示すものだった。
口調や声音はどうであれ、自身が暴走したという事実を咎めるだろうとばかり思っていた一条が放った赦しとも言える言葉は、ユウスケに確かな驚愕を齎していた。
そして、そんな彼の驚きは一条にも容易く伝わっていたのだろう。

少し言葉を選ぶように逡巡してから、一条は続けた。

「勿論俺も、理想を言うなら君が凄まじき戦士にならなくて済むのが一番だと思っている。
だが、第0号……ダグバを始めとして、この場にはあの姿にならなくては対抗できない相手が多々いることも、もう承知しているからな」

それは、一条なりに多くの妥協を積み重ねた結果なのだろう。
中途半端をしない一条が、かつて五代がクウガとして未確認との戦いに参加することを認めたのと同じように、ユウスケにその覚悟があると認めたのかもしれない。
ダグバの変身したブレイドとの戦いで大敗を喫してから、一条の中にもまた心境の変化があったのだろうか。

そんな風にユウスケが一条の心の内を慮る一方で、当の一条はだが、と言葉を続けた。

「だがそれはあくまで、最悪の可能性として、だ。俺はずっと、君が究極の闇にならなくて済むように……少なくとも君に守られるだけの俺じゃなく、共に戦える力を得たいとそう考えていた、だから――」

勿体ぶるようにそこまで告げて、一条は懐からストップウォッチのような機器と一体化したガイアメモリを取り出した。
初めて見る形状のそれにユウスケが困惑を示す中、一条は確たる意思で続ける。

「これは、トライアルメモリというアクセルの強化アタッチメントだ。勿論これがあったからと言って俺があのクウガほど強くなったとは思わないが……しかし少なくとも、もう君に守られるだけの俺じゃないと、そう言い切ることは出来る」

断言した一条の瞳に、迷いはなかった。
事実彼にとって今の言葉に一切の嘘はない。
少なくとも単身でモンスターを打破せしめたこのトライアルの力は、一条が元の世界において五代雄介と並び共に戦う為欲していた力として不足なかった。

もしこの力がこの地に連れてこられる前に手元にあったなら、などとそんなIFを夢想するつもりはない。
ただ照井から受け継ぎ、翔太郎が鍛えてくれた今のアクセルならば、きっと前よりもうまく戦える。
半ば確信にも近い自信を抱いて、一条はユウスケに向けてゆっくりと手を伸ばした。

「だから……小野寺君。もう一度俺と、一緒に戦ってくれ」

揺ぎ無く真っ直ぐに伸びた腕と、その先にある迷いない一条の瞳。
正面から見据えれば射抜かれてしまいそうなそのひたむきさに、ユウスケは思わず顔を背ける。
彼らしくもない不自然な消沈に一条が気付くのと、ユウスケが口を開くのはほぼ同時だった。

「……無理ですよ、もう」

予想していなかった意外な言葉に、一条から驚愕の嗚咽が漏れる。
だがユウスケの口から続けられたのは、更に驚くべき内容だった。

「俺はもう……長くないんです。これ以上クウガとして戦いを続けたら死ぬ。アマダムが、そう警告してくるんです」

「アマダムが……?」

言って一条は、ユウスケの腰あたりを見やる。
当然臨戦態勢ではない今彼の腰に霊石は出現していないが、それでもほぼ反射的に一瞥せずにはいられなかった。

「ブレイドに変身したダグバと戦ったとき、多分アマダムに傷がついたんです。それが戦うたびに広がって……そのたびに『これ以上戦いを続ければ死ぬぞ』って、頭に声がするんです」

「頭に……それが、アマダムからの警告だと?」

問いに頷くユウスケを前に、一条は過去の五代の言葉を思い出す。
未確認生命体42号との戦いの折、深い怒りに駆られた五代は、凄まじき戦士のビジョンを見たと言っていた。
曰くそれは究極の闇にすまいとするアマダムから齎された警告ではないかということだったが、或いはそれに近しい信号を、ユウスケの霊石も発しているのかもしれなかった。

「だが、アマダムが傷ついたとしても、君にはクウガ以外にも戦う術があるだろう」

「ええ、でも分かるんです。このままアマダムの警告を無視し続けたら、俺は死ぬって」

「死……!?」

そんなことを言うな、と咎めようとした一条の脳裏に、かつて友である椿が五代の身体を診察した際の言葉が思い出される。
クウガと未確認の身体の構造は非常に似ていて、凄まじき戦士に覚醒すれば、それこそ肉体的にはその二つは完全に同一のものとなるという、彼の言葉。
それはすなわち霊石の働きによって尋常ならざる力を得ているだけで身体構造そのものはかなり人に近いと言われた未確認と、同じになるということだ。

未確認は戦いの後、霊石から爆発し死に至る。
つまりそれは霊石さえ無事なら生き延びられる彼らにとって、不可避の死を与えるにはそれが最良だと、彼ら自身知っていることに他ならない。
ならば当然、それらと肉体的に同じクウガもまた、アマダムの破壊はそのまま死に繋がることになる。

皮肉にもユウスケより遥かに長くグロンギ相手に苦しい戦いを強いられたからこそ知りえた、霊石に関する知識。
それらから齎される結論の残酷さと現実の非情さに、一条は思わず慰めの言葉すらかける事が出来なくなってしまう。
そして俯いた一条とは反対に自身の定めを悟ったように静かに、ユウスケは口を開く。

「その声を俺は、ずっと……無視してきました。それで誰かを助けられるならって、渡の時も、さっきの戦いの時も。でも……思ったんです、そんな風に俺が出しゃばっても、結局誰も助けられてないって」

「何を言う、君は何度も俺たちを助けてくれたじゃないか。俺だけじゃない、京介君も小沢さんも……君に助けられたんだぞ」

ユウスケの肩を揺すりながら、一条は必死に訴える。
それだけは、彼に否定してほしくなかった。
洗脳された小沢に襲われたあの時、もしも彼と出会えていなければ、少なくとも自分はあの時死んでいた。

或いは照井のように京介を逃す事すら出来ず、無念の中で息絶えていたかもしれないのだ。
それだけではない。牙王の時も、ダグバの時も、彼は足手纏いな自分に代わって仲間を守ってくれた。
本当は背負わなくていい厄介だというのに、それが自分の望みだと、傷つくことすら恐れぬままに。

しかし一条の叱咤を受けても、ユウスケの面持ちはなお暗く、俯き続けていた。

「でも……結局京介君も小沢さんも、俺のせいで死んじゃったじゃないですか」

「君はまだそんなことを――!」

「俺が!」

さしもの一条も、煮え切らぬユウスケを前にいよいよ怒声を上げようかという、しかしその瞬間。
それを遮るように放たれた彼の一条のものより遥かに大きい声が、その場を支配した。
空気が震え、歴戦の刑事である一条の背筋すら強張るようなその中で、ユウスケは一転囁くような声音で続ける。

「……俺が弱いから、ダグバを、キングフォームになる前に倒せなかったから……だから、あの二人は死んだんです。全部、俺のせいなんです……!」

依然として俯いたままのユウスケの拳が、ぐっと強く握りしめられる。
だが一方の一条もまた、今の彼以上に強く、強くその拳に力を込めていた。

「それは、君の本心か。小野寺ユウスケ」

小野寺君、ではなく敢えて“ユウスケ”と一条は呼んだ。
五代と同じその名前で呼ぶことに、果たして今の自分が怒っていると示す以上の意味が含まれているのかどうか。
しかし数秒の間をおいてもなお、ユウスケはその問いに肯定も否定も返すことはなかった。

「……しばらく、頭を冷やせ」

それだけを言い残して、一条はユウスケの病室から廊下に飛び出す。
ただ一人、窓から日光が差し込むその閑静な一本道の中心で、一条は耐え切れぬとばかりにその拳を壁に叩きつけた。
果たして、頭を冷やさねばならぬのは自分の方だ。

ユウスケに言ってやりたかった。
本当はその苦しみは、全て警察官である自分が背負うべきものなのだと。
京介と小沢を救えなかったことだけでなく、ユウスケを究極の闇にしてしまったことだって。

全ては自分が弱いから引き起こされた事なのだ。
民間人である五代をこんな殺し合いに巻き込んで死に追いやったのも、今ユウスケが死に向かいつつあるのも。
トライアルの力を得てもなお、大ショッカーとの戦いを前にユウスケは戦わなくても良いとは言えない自分自身の情けなさも、全て全て。

結局のところ一条は、ユウスケから逃げ出したのだ。
あのままあの場にいればきっと、理不尽に彼を怒鳴りつけずにはいられなかったから。
それこそが自分の弱さ故だと知りつつも、それでもなおあの場には留まっていられなかった。
何故もっとうまくやれないのかと、自己嫌悪が沸く。

究極の闇なんかにならなくても、仲間を頼れば大ショッカーだって倒せるはずだとそう伝えて、彼らしく生きることの後押しをしてやるはずだった。
そんな風に前向きに、あの黒いクウガにならない小野寺ユウスケにも、いやだからこそ意味があるのだと伝えたかった。
だというのに結局自分は、何も変えることが出来ない。

やはり自分ではだめなのかと、押し込めたはずの疑念が頭を擡げる。
ユウスケを立ち直らせるには、自分よりもっと他に適した人間に任せるべきではないのか。
そんな彼らしくもない他力本願を抱いたその時、彼はふといつの間にやら自身の前に立っている人影に気付いた。

「そんなとこで突っ立って、何してる?」

「門矢さん……」

いつの間にかその場に突然現れていた男、門矢士は壁に傾れかかるようにして立つ自分を不可解そうに見つめている。
だが、情けないところを見られてしまったと居心地の悪さを感じるよりも、彼ならばユウスケに的確な言葉をかけることが出来るかもしれないと、そんな思いが沸く。
いやむしろ、ユウスケの笑顔を守ると宣言し、共に旅を続けてきた彼を前にしてはやはり、自分など出る幕がなかったに違いない。

不思議と肩の荷が下りるような心地を抱きながら、一条は一礼しつつ病室への道を譲るようにして退こうとする。
だがそうしてこの場から掃けようとした一条を呼び止めたのは、士の呑気にも聞こえる声だった。

「お前確か、一条薫……だったか。ユウスケが世話になったらしいな、礼を言う」

「いえ、自分は何も……」

「謙遜するな、あいつは俺がいないと何をしでかすか分からないからな。アルティメットフォームになったって聞いた時は、流石に驚いたが」

聞き覚えのない単語に一条は生返事しか返せないが、士はそれを意に介す様子もない。
だが、一見すると傍若無人に見えるその振る舞いの裏には、確かにユウスケを気遣う一面が存在していることを一条は見抜いていた。
きっと彼らの間には、深い理解と信頼があるのだろう。

二人のやり取りを直接見たわけでもないのに十分感じられる彼らの絆を目の当たりにして、一条はただただ深く安堵の籠った溜息をついていた。
それに対し、不可解を示した士の目線を前にして、一条は身体ごと彼にしっかりと向き合い直した。

「安心しました。あなたがいればもう、小野寺君は心配なさそうです」

「まぁな」

謙遜することなく、士はその言葉を受け容れる。
だがそんな不遜にも思える彼の態度が、一条は嫌いではなかった。

「俺は、羨ましいですよ。あなたのことが」

だから、だろうか。
信頼できる相手に出会い、そして自分の抱えていた不安を預けて良いと思えた安心感からか、一条は自身の心中を吐き出していた。
ユウスケからずっと聞いていた、頼れる仲間である門矢士。

自分自身、クウガの横に並ぶ男として、彼のように支え合えるほどの信頼感を築けていたら。
幾度となく夢想した理想の関係を築く彼本人に対して、一条は自身の思いを押さえられなくなっていた。

「皆の笑顔を守ろうとする彼自身の笑顔を守る為、共に肩を並べて戦う。五代にも、そんな存在がいれば……いえ、俺自身が、そうなれていれば……そう、思わずにはいられないんです」

かつてユウスケにも吐露した、自分がずっと抱き続けてきた後悔。
ただの冒険野郎に過ぎなかった五代を苦しい戦いの道に引きずり込み頼るしか出来なかった自分。
もし自分に五代の笑顔を守って見せると断言できるだけの強さがあったなら。

「羨ましい、か」

士に言ってもどうしようもないと分かったうえでどうしても漏れた心の声に、士はしかし意外にも己の掌を開き見ていた。
単に感慨だけではないその動作に一条が呆気にとられる中、士は不意に視線をこちらへと戻し、続ける。

「薫。ユウスケのこと以外にもう一つ、お前には言っておかなきゃならないことがあった」

「俺に、ですか?」

訝し気な瞳を向ける一条に対し、士は迷うことなく頷く。
その眼に一切の迷いは見られず、どころかその鋭さは、まさにこちらを見定めんとするかのようだった。

「……五代を殺したのは、俺だ」

「え?」

士の言葉にその場の空気が、凍り付く。
時さえも止まったような錯覚すら覚えるその空間の中で、一条はひたすらに困惑しか示せない。
まさか五代を殺したのがあのユウスケの仲間であり、今目の前にいるあの門矢士だというのか?一体何のために。

なんと問えばどんな答えが返ってくるのか。
あまりにも唐突なその告白に一条が二の句を告げずにいる一方で、士は痺れを切らしたように続けた。

「あいつは地の石の力に操られて、仲間に手をかけようとしていた。だから俺は、あいつの背中に向けて……トリガーを引いた」

ただ事実を述べているだけ、という風に士は淡々と当時の状況を口にする。
刹那ほぼ反射的に、一条の脳裏にその瞬間の光景が再現される。
紅渡が持ち、ユウスケを操ろうとしたあの地の石の力で、望みもしない殺戮に手を染めさせられる五代。

その凶行と彼の心中を思えば思うほどに、一条の胸は熱く、締め付けられるように痛む。
一方で、もし自分がその場にいれば五代が目の前で殺されることなど許しはしなかっただろうとも思う。
もしそうしなければ、誰かの命を五代が奪うことに、なったとしても。

次々に沸き上がる様々な感情に翻弄される一条は、しかしそれでも一つ息を吐き出してその頭を小さく下げた。

「……ありがとうございます、門矢さん。あいつの……五代の最期を、知らせてくれて」

「それだけか?俺は、五代を殺した張本人なんだぞ?」

煽るような士の口調に、さしもの一条もその顔を強張らせる。
仲間を守るため仕方なかったとはいえ、背中から撃ち抜かれた五代のことを思えば、憤りややるせなさを感じないはずがない。
きっと士は、自分を煽ることで敢えてそのやり場のない怒りの受け手になろうとしているのだ。

だから恐らくこの衝動のままに自分が殴り掛かったとしても、士は何も弁明しないだろう。
しかしそこまで分かっていて一条が彼に手を出さないのは、その実彼の人柄が咎めるからでもなく、刑事という職業柄持っている強い理性故からでもない。
彼が手を出さないのは、ただ一つ五代の望みを知っていたからだった。

「確かに、あなたは理性を失った五代を殺したのかもしれない。でも、きっと……それは、あいつの願いでもあったはずです」

「……」

真っ直ぐな一条の瞳に、士は何も言わない。
ただ少しだけその眉をピクリと動かして、興味深そうに彼を眺め見ただけだった。

「あいつは、ずっと気にしていました。自分がもし究極の闇になって、理性を失ってしまったら、どうすればいいのかと」

思い起こされる、様々な五代との会話。
椿にグロンギとの類似性を指摘された時、桜子に究極の闇の伝説を伝えられた時、どちらも五代は言葉ではその危険性を否定して見せた。
だがその言葉と裏腹に、彼は常に究極の闇と化した自分の弱点を探し続けていた。

アマダムを砕けば倒せるというのも元を正せば、椿の話を受けて五代自身がいつもよりずっと真面目なトーンで語った分析だったのである。
故に彼が真に危惧していた聖なる泉が枯れ果てた末のものではない、地の石による自己喪失であったとしても、彼の思いは変わらないはずだと、一条は思う。
すなわち、誰かの笑顔を奪うくらいなら、自分の命を絶ってほしいという、その高潔な自己犠牲の精神は、何も変わらなかったはずだと、そう思うのだ。

「だから……少なくとも、あなたが俺に謝る必要はありません。本当はその仕事も、俺がしなくちゃいけないことだったんですから」

本来彼が背負うべきでない責任を負わせ、自分が戦いに巻き込んでしまった好青年、五代雄介。
その彼が道を踏み外したなら、終わらせるのは自分だったはず。
なればこそ、五代に無念はあったのかもしれないが、その重責を押し付けてしまった士に対し、一条が怒る資格など、あるはずもなかった。

心中で五代への思いを募らせながら、一条はもう一度士に頭を下げる。
もうこれ以上彼をここに留めておいてはいけない。
彼にはこれから、自分の代わりにユウスケを立ち直らせる仕事が残っているのだ。

「待て、一条薫」

そのままその場を後にしようとした一条に対し、士の声が響く。
意外なその声に驚き振り返れば、士はこちらに背を向けたまま、続ける。

「……十分わかってるだろ、お前はあいつのことを」

放たれた言葉が指す意味が、一条にはすぐに飲み込めなかった。
そんな困惑を背中越しに察したのか、士は続ける。

「五代はきっと、お前が思うよりずっとお前のことを頼りにしてたはずだ。自分の笑顔を守るために戦ってくれる相棒として」

「五代が俺を……?何故そんなことが言えるんです?」

死に際の五代と言葉を交わしたとして、しかしその交流はとても短かったはずだ。
しかし士の言い分は確信めいていて、それ以外の答えなどないようにすら錯覚させられる。
それが一層不可解で、一条はらしくなくそんな問いを投げていた。

「俺自身が、お前みたいになれたらと思うからだ」

士の口から発せられた言葉に、一条は耳を疑う。
未だ彼はこちらに背を向けたまま、その声は彼の背中越しにしか聞こえない。
だがそれでも、なぜか一条には士の表情が分かるような気がした。

「俺は結局、ユウスケとは旅を通じてしか関われない。いつか旅が終わり、それぞれの道を行く時が来れば……あいつと俺はもう、二度と出会うことはないだろう」

それを告げる士は、隠しようもないほどに孤独を滲ませていた。
口調だけでなく、その背中からさえも、如実に感じられるほどに。

「だが、お前は違う。もし戦いが終わっても、同じ世界で、同じ景色を見ながら生きていける。……生きていけた、はずだったんだ」

そこまで言って、士はようやく一条に向けて振り向く。
その顔に苦痛を滲ませながら、どこかに罪に対する罰を求めるような、そんな居た堪れない表情を浮かべながら。

「お前は、確かに俺にはなれない。だが俺は、決してお前のようにユウスケに関わることは出来ない」

士は、ゆっくりとその足を進めていく。
ユウスケの病室を離れて一条の方へ、いやその先に待つ仲間たちの方へと。

「――俺からすれば、お前の方がよほど羨ましいさ」

すれ違い際、士は一条にそう耳打ちする。
ユウスケに聞いた士の人柄と合致しない、あまりにも実直に仲間を思う青年の、心から漏れ出た真実の声。
ユウスケに会わなくていいのか、とそう呼び止めることすら出来ぬまま士の背を見送った一条は、そのまま自身の掌を開き見る。

クウガの笑顔を守ると宣言して見せた自身の理想の一つは、自身のような存在を羨ましいと言ってくれた。
同じ世界に生き、戦い抜いた先も当然に隣にいていい存在としてクウガの友であれる、そんな自分。
見失いかけていた自分の存在意義に気付かせてくれた士の背に、一条は今一度深くその頭を下げた。

心よりの感謝と、そしてもう二度と五代の横に立ち続けてきた自分を恥じぬことを、心から誓いながら。
くるりと翻り、今度こそはとユウスケの待つ病室のドアへ手をかけたその瞬間。
一条が力を込めるより早く、閉じられた扉は勢いよく押し開けられた。

「小野寺君……」

目の前に立つ青年に、どう声をかけるべきか。
一条がそんな逡巡をする必要すらなくなったのは、彼の頬から汗ではない滴が零れ落ちるのを、見てしまったからだった。

「なんだよあいつ……ああいうことは、直接言えっての……!」

「小野寺君、まさかさっきの会話を……」

よもや病室の壁越しでも聞こえてしまうほどに、今のユウスケの聴力が進化していたというのか。
そんな驚きを示すより早く、ユウスケはその涙に濡れ赤くなった瞳で一条を見上げた。

「一条さん、さっきはすみませんでした。俺……もう迷いません。五代さんの分まで、それに俺自身が胸を張ってあの馬鹿の横に立つ為にも……戦います、クウガとして」

宣言して見せたユウスケの顔には、さっきまではなかった芯が戻っていた。
そしてそれを取り戻して見せたのは……悔しいが自分との会話ではなく、さきほどの士の言葉なのだろう。
きっと士はユウスケに聞かれているのが分かったうえであの話を自分にし、故に彼に会うことなくこの場を後にしたのだ。

何故ならあのままユウスケに会えば、その言葉の真意を問いただされてしまうのが、目に見えているから。
そして何より、そんな士の複雑な感情を、ユウスケも理解しているのだ。
出ようと思えばいつでも出てこられたはずなのに、士が去った今になって出てきたのが、何よりその証拠だった。

「フッ……」

互いに互いが相手を十分すぎるほど理解しているのに、それをどちらも直接伝えられない。
そんな関係がどこかおかしくて、一条は思わず小さく苦笑する。
不思議に思ったユウスケの問いを軽く流しながら、彼は病室の窓から見える青空に視線を巡らせた。

(本当に、素晴らしい仲間だ。そう思わないか?なぁ、五代……)

俺たちも、そう見えていただろうかと。
亡き友に思いを馳せる一条の中にもう、煩わしい悩みなど存在しなかった。


152:第四回放送 投下順 153:Rider's Assemble(後編)
時系列順
147:Tを越えろ/疾走 一条薫
左翔太郎
149:覚醒(4) 城戸真司
三原修二
相川始
小野寺ユウスケ
フィリップ
152:Chain of Destiny♮スーパーノヴァ 擬態天道
名護啓介
門矢士
134:第三回放送 水のエル
風のエル
地のエル
152:第四回放送 ラ・バルバ・デ
オーヴァーロード・テオス


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最終更新:2020年07月30日 23:14