『キッズ・リターン2(ガキがきた)』
昔さ。
カップヌードル食おうとして。
三分待ってたら、フタの上にハエ止まったんだよ。
「あー」って思って見てたらさ。
……そのままスッて隙間から入ってった。
オレ、カップヌードルだけはフォーク派なんだよ。
昔YouTubeで見た、日清の懐かしCM集あるじゃん。
子供の兵隊が妹と海見ながらズルズル食ってるやつ。
あれがなんかカッコよくて。
だから高校入った今でもフォーク。
意味わかんねぇだろ。
オレもわかんねぇ。
で。
三分経った後、フタ開いたわけ。
すげえいい匂いすんじゃん。
謎肉とか、エビとか、まぁ汁の匂い。
でも、オレすげぇ青ざめたんだわ。
は?
なんでって?
ハエ止まってたんだよ。
グズグズになって。
仲間入りしてた。
マジでオレ。
それがおかしくておかしくてさ。
すげぇ笑ったら、時間、十二時で。
すげぇ虚しいけど、ハエ入ってて。
マジ思うじゃん。
【Lemon / 米津玄師【歌ってみた】Covered by メムメムちゃん】
……あぁ違うよな。
今は『オレ』じゃなくて、『わたし』だ。
だって、お湯かかったんだし。
……水だっけか。どっちでサキュバスになんだっけ。
いや誰に聞いてんだよ。キッッッモ。
不意に再生された……アイツの動画を、反射みたいに閉じる。
もう聴きたくないアイツの歌声が流れてる中、そのまま、鏡の中のわたしへキスをした。
………………
…………
……
◆
「ねえ~~!! きりえお姉ちゃんは? さっちゃんは~~?」
「……」
「ねえねえ、お姉ちゃん……だぁれ?」
「…………」
「ねえったら~~~!! どこいくの~~~?? ねえ~~~!!」
「………………。──」
「──……安心していいわ。『いいところ』だから」
「いいとこ?? お菓子とかある??」
「…………」
……私は、北条。
浜口っていう幼馴染がいる。
そいつとは、一緒に帰ることもある。
別に好きじゃない。……だからって、嫌いってわけでもない。
そんな距離。
家では、その……眼鏡をかけてる。
子供っぽく見えるのが本当に嫌だから、学校では絶対にかけない。
これは家族と、あとは……何故か浜口くらいしか知らない。……知られてない、つもり。
あと、あの時のこと。
西片くんにちょっとした秘密を相談された時……あの時だけは、少しだけ。
高木ちゃんって……なんて言うか、ちょっと怖いなって思った。
それだけ。
取り柄なんてない。
運動も、勉強も、特別すごいわけじゃない。
誰かを倒せる力も、世界を救える才能も、何かあるわけじゃない。
ただの。
背伸びしたい年頃の、どこにでもいる普通の中学生。
「まだぁ~~~~? ねえ~~~~!!!」
「…………」
確か、そんな『設定』──、だったはず。
「ねぇ、お姉ちゃん、お名前はぁ~~?」
「…………………」
……哲学っぽい話になるけどさ。
『生きてる』っていう定義が、例えば……『明日も普通に、毎日を生きられること』なんだとしたら。
……私は、一体何なんだろうね。
アシストフィギュア。
誰かに呼ばれて、その人のために戦って、言われた通りに動いて。
役目が終われば、そのまま綺麗に消える。
心臓の音だけは聞こえる、ただの消耗品。それ以上でも、それ以下でもない存在。
なんだろ。
全文点字のWeb小説くらい、価値がなくて。
八月に渡すバレンタインチョコくらい、居場所がなくて。
そんなものより、私の方が少しだけ目立たない。
別に病んでるわけじゃない。
ただ、神様ってちょっと……意地が悪いなって思う。
モノならモノらしく、最初から何も考えられないようにしてくれればよかったのに。
こうやって悩む力だけは、ちゃんといっちょ前にくれたんだから。
あと五分。消えるまでの五分。
私はその五分で、自分が何だったのかを今、考えてる。
……まぁ、チョコは別だけど。
二月でも八月でも、美味しいものは美味しいし。
結局、溶かして固めるだけなんだけどね。
「…………夏菜ちゃん、だったかしら」
「え? うん! 折口夏菜!! カナね、パパがだーい好きなんだけど、マイクもすっごく好きなの!!」
「……マイク?」
「歌うやつじゃないよ!? 動物! えっと……クマさんみたいな、おっきい親戚さん!!」
「……」
「カナダって国から来たんだけどね、カナ、毎日学校に自慢してたんだから!!」
「…………。──」
「──……“学校『に』”じゃなくて、“学校『で』”じゃない?」
「え?」
「……。あんまりよくないと思う。自慢も」
「? なんで??」
「……マイクが、すごい『モノ』みたいになっちゃうから」
「えぇ~~?」
「家族なんでしょ?」
「うん!」
「だったら、なおさら」
「…………わかんないってばぁ~~~!!」
「…………」
……分かんない、か。
少し羨ましい。
私も、オウムみたいに『分からない』って返すだけで済むなら、どれだけ楽なんだろう。
……浜口から見た私はちゃんと、『北条さん』なんだろうか。
……それすら、分からない。
私が正しいのか。
私がおかしいのか。
その違いさえ。
…………こんな小さな手を、引きながら。
……夜だけが、静かに深くなっていく。
「それよりもさ~~~、どこ行くのかおしえてよ~~~!! お姉ちゃんのお名前も教えてよ~~~!!」
「……」
「ねぇ~~~~!!! 切絵お姉ちゃん心配するってば~~~!! ねえ~~~~!!!」
「……」
美馬。──あの女は私に言った。
「ガキを、どうにかしろ」って。
……あやせって意味じゃないのは、もうその目を見るだけで分かる。
ロボットでも分カリマシタとか言って、忠実にこなすだけの単純作業。
トイレの個室を、一つずつ眺めて。
意味もなく、窓に映った自分の顔を見て。
眼鏡のない私だ、なんて。どうでもいいことを思って。
“……分かった”
それだけ返した。
ロボットみたいに。
……ロボットじゃないのに。
息を吸うたび。胸の奥だけが、少し苦しかったのに。
「…………」
「ねえってば~~~~~~~~!!!」
…………やっぱり。
そういうところ。私は、『北条さん』じゃない。
北条さんなら、もっと上手に笑って。
もっと上手に受け流して。
もっと上手に、生きてる。
……じゃあさ。
────私は何なんだろうって。
……ハハハ。また哲学。
病みモード全開だ、こりゃ。
「ねえ!! 怒るよ?! ねえ、ねえってば──」
「……だから最後くらいはかな」
「え? ん??」
袖を引っ張られる。
そのたびに私の身体は、少しずつ透けていく。
「…………その気になってんならチクるから。浜口」
「え?」
うん。
最後くらい。
本当の私でいよう。
……
…………
“チョコのお返し、まだなんだけど”
『は?! ホワイトデー?! 律儀に守ってる男子なんかいねーよ!』
“……ハァ。そういうとこ”
『なんだよ?!』
“高木ちゃんは貰ったって、色々話してたのに。アンタ、ほんとそういうところよね”
『えぇえ!!? 貰った!? ……じゃ、じゃあ……。え……に、西片!? あ、アイツ…………いやありえないありえない!!』
“……何を貰ったかまで聞いた時点で、少し後悔したけど”
『んだよそれ?! ……あー、まぁ西片だしなぁ』
“で、話戻すね。そういうとこよ、浜口。ほんとそういうとこ”
『あ?』
“じゃ、帰ろ。……付き合ってよ”
“……ね。”
…………
……
「……信じられないかもだけどさ、夏菜ちゃん。このチョコ」
「んん~?」
「……ちゃんと、食べても大丈夫だから」
「え?? たべても大丈夫?? どういうこと~~??」
「…………別に理解できないなら、いいけども」
「???」
「ほんっと、殺し合いってバカみたい……」
【アシストフィギュア】
【北条さん@からかい上手の高木さん 消滅】
………………
…………
……
「児ポだぁああああああ!!!」
「児ポォオオオオオオオ!!」
「小日向くんのバカァアアアアアアアアア!!!!」
……アイツを見るたび、杏ちゃんは、決まってそう叫ぶ。
オレは。
……いや、わたし。
…………もう、どっちでもいい。
ただ、今だけは。
あの声だけは、思い出したくなかった。
メムメムのことを思い出したくない。
アイツの身体が今どこにあるのかなんて、考えたくない。
アイツに今のオレを見られたくなかった。
……それだっつうーのに……ッ。
「ねえねえ! 北条のお姉ちゃんがね、『よろしく』だって!」
「ィッ……ひッ!!!」
「……あれ? お姉ちゃん、なんで鏡ぺろぺろしてるの?」
「ぃ……ぃ、ぃぁあ……………ッ、ぁ……」
「~~……。……あ!! この曲知ってる!──」
「──lemonでしょ!! お姉ちゃん!!」
──ガキが、来やがった。
【🟠STATES🔥】
【1日目/東横ホテル周辺街/AM.07:20】
【折口夏菜@弟の夫】
【状態】健康
【装備】バレンタインチョコ@高木さん
【道具】ランドセル
【思考】基本:【静観】
1:北条のお姉ちゃん、どこいっちゃったの~~?
2:でも、新しいお姉ちゃんできた!!
3:よろしくね、お姉ちゃん!!
4:切絵お姉ちゃんたち、きっと探してるよね~~。
5:……サっちゃんにも、もう一回ちゃんとごめんなさいしなきゃ。
【小日向ひょう太@悪魔のメムメムちゃん】
【状態】サキュバス(←→人間)、精神衰弱(軽)
【装備】鉈
【道具】なし
【思考】基本:【マーダー】
1:ガキが来た。
2:メムメムじゃない。
3:ガキだった。
4:ガキはメムメムじゃない。
5:メムメムはガキじゃない。
6:……違う。違わない。
※ひょう太は冷水をかけられると男、温水なら女(淫魔)になります
7:………ィキ…………。
8:…………。
9:……とりあえず、なんか話そうかな。……なんか。
最終更新:2026年07月14日 20:43