『自分のことを殺し屋だと思われてる一般人』
──“………オーイ…”
──“オーイッ!!! オイッ!!! 隠れてないで出てこいッ、新田ァッ!どうせ見てんだろッ?!”
──“さっさと出てきてケリ付けようぜッ!!! オイッ、オーイッッ!! どこだッ!!!”
──『………』
…タ、タ、
タ、タ、タ、タ、タ、タ、タ、タ──
タッ
──『……は、ははっ』
──『………ははははっ、ははっ…。すげぇや…お前』
──“……あっ…!”
──“……いやテメェ………。…おい……なんで………、”
──“笑ってやがんだ………? おい……。
──『いや、…もう呆れて笑うしかねぇって…。はは………信じられん』
──『なんだよこの惨状……。シラフじゃできねぇだろうが。お前さぁ酔ってんの?』
タ、タ、タ、タ──
タッ、
──“………【血と金と暴力に飢えた外道】……、おでましだな………ッ…”
──『……はは、おいおい…………。……ま………、』
──『参ったよ………。おいっ………─────』
………
……
…
◆
プオオオォォ────…
ガタン、ゴトン──
ガタン、ゴトン──
ガタン、ゴトン──
バクンッ、バクンッ────
「…………っ……」
電車内のドアにもたれ、流れる景色を眺めることかれこれ一時間。
残り四十八時間という僅かなタイムリミットを、俺はただ汗を滲ませ、痛む胃を耐えながら立ち尽くすだけに浪費してしまった。
車内に客は一人もいない。
窓の外は真っ暗で、時刻は超ド深夜。
普通の観点からすりゃ、今の俺は残業帰りの疲れたサラリーマンに見えるんだろうが、
────状況が違え…ッ。
…何が違ぇって、この電車の動向を見りゃ一目瞭然だが、コイツはさっきから往復しているだけなんだよ。
つまり、『渋谷駅』から『新宿駅までの区間』を行き来してるんだ。
ガタン、ゴトン……ガタン、ゴトン……。──まるで山手線のシャトルランってな。
馬鹿みてぇに同じ道を行ったり来たりしてやがる狂った鉄道路線、当然疑問に思うことだろう。
何故こいつは、こんな異常な挙動をしているのかとな。
そいつは全て、線路に立ち塞がる『バリアー』だかのせいなんだよ。
────バアアアァァァンッッッ
………
………………
…ガタン…、ゴトン……
ガタン、ゴトン──
ガタン、ゴトン──
「………」
…この通り、バカみてェに巨大なバリアーへ突っ込んでは、反対方向へ発進し、またバァァァンとぶつかる。
──そして、また何事もなかったかのように折り返し……の無限ループだ。
一応、渋谷駅で折り返した時には律儀にもアナウンスとドアの開閉がされるが、さっきからこのエンドレス渋谷区間は止まりを見せねえ。
したがって、銀ドア越しの河川敷はもう二十回目の景色となる。
あぁ…訊きたいだろうよ。
Q.『何故そんな電車から降りないのか』
Q.『車掌や他の人間は、この異常を見て何も思わないのか』
Q.『そもそもバリアーって何なんだ』
────Q.『それ以前にお前は誰だ』
そら、突っ込みどころ満載だわな。
自分でもさっきからめちゃくちゃな状況説明をしているのは分かっているさ。
だが、全て見たまんまの事実なんだから困ったもんだよ。
……一応。
最後の質問だけは簡単に答えられるから、まず明かしておく。
俺の名前は新田義史。──裏社会でセコセコあぶく銭を稼ぐ非カタギなんだが、…まぁ素性なんか今はどうでもいい。
で、一番目から三番目の質問までまとめて答えさせてもらうが、これに関しては全部……──、
──『状況が違えから』、としか言いようがねぇんだわ………。
………
……
…
▽
ざわ… ざわ……
ざわ……
『おかけになった電話番号は、現在電波の届かない場所にいるか…………、』
「チッ…!」
──ピッ
「……親父も、カシラも、アニキも、サブも………。どいつもこいつも雁首揃えて『電波の届かない場所に~』って……。──」
「──…なんで? 全員山奥に埋められてんの?」
主催者がボンクラっぷりを露呈したお陰で、あっという間に活気づいたバス車内。
殺し合いだか何だか知らねえが、現状俺は拉致られてるわけで。
上層部からアホの若手まで、片っ端からヘルプコールを掛けたが、誰一人とて使い物にならない。
示し合わせたように、決まって聞こえる『お掛けになった電話番号は~』にはもう耳タコものだ。
…どうせ、皆して地下おっパブに嵩じてらっしゃるんだろうが、…サブ共の淫靡な笑い声を想像したら腹が立って仕方がなかった。
「俺はこんな目に遭ってるつうのによ…………」
「むにゃむにゃ………」
……。
「いや、──『俺らは』こんな目に遭ってるつうのに………ッ」
「むにゃむにゃ……。もう…イクラは食べれないよ~…………」
「………」
…隣で、ヨダレ三昧にグースカ眠る俺の義娘────ヒナ。
「ちょっと!! み、皆さん~暴力はいけませんからね?! 暴力はっ!!」
「ぁあッ?? うっさいねん! 何も分からんくせに…ガキは黙っとれゴラッ!!!!」
「ひっ!!! …な、なんで私…怒られなきゃならないの………? 私だって…被害者なのにぃ~…………」
…主催者囲みの輪に入り込む────三嶋瞳。
恫喝一つで完全に意気消沈してるのが実にあいつらしかった。
「…………」
…とこんな具合で、どういう因果か知らねえが、俺の知り合いもチラホラ紛れ込んじまっている。
これはつまり、『陰謀』──だとか、
俺を陥れる為、敵対組織が仕組んだ『罠』──とか。
色んな可能性を考えたが──正直今はどうだっていい。ガキ二人も勿論どうでもよかった。
ただ、この混沌としたバス内にて。
俺が最も『注視』し、最も『愕然』とさせられた人物が一人いる。
それは、バスの最前で主催者に怒声をぶつけている────金髪の少女。
俺と少女との関係性を問われれば……、別に妹でも娘でもビジネスパートナーでも、彼女でもない。
…彼女だなんて言ったら、ソイツはとんでもねぇ歳の差で、俺は一躍ロリコン扱いだ。
だがアイツの。
ヤツの見せる屈託のない笑顔と、素直で純粋な心は天使そのものでな。
アウトローとして汚れ、疲れ切った俺の心を癒やしてくれる──、
──『現代社会のオアシス』だったんだ…────。
ざわっ、ざわっ……
「殺し合いなんてしないわよっ!!!」
…やめろ。
「今すぐわたし達を帰しなさいって!! そしたら許してやってもいいんだからっ!!!!」
……やめろ。
余計なことを言うんじゃない。
「……アンタ、さっきから何無視してんのよ………。もう……もうっ、許さない………っ! ただじゃおかないわ……」
……やめろ…。
…やめてくれっ………!!!
お前…、自分の命が『首輪』で握られていることに気づけ………っ。
これ以上言葉を重ねたら危ういんだよ…!
「わたしの超能力で……、あんたなんか……っ!!!」
やめろっ!!!
俺の……、俺の天使……────『アンズ』ッ……!!!
「倒してやるんだかっ────…、」
──アンズ────────────────────────ッ……!!!!!!!!
────ピカンッ
△
………
……
…
──────バアアアァァァンッッッ
『…次は渋谷駅ー。渋谷駅。お降りのお客様は、お荷物にご注意のうえ降車ください。──』
『──発車します』
…ガタン…、ゴトン──
ガタン、ゴトン────
Q.『何故お前は電車に降りないのか』。
────答えは、死にたくないからだ。
眉がピクつく。
歯がギシギシ震え、脂汗がナメクジみてえにじんめり跡を残す。
足裏の震えが電車の揺れに共鳴する。
つり革を持つ右手が、力加減を忘れて白くなる。
胃腸が排泄物ではち切れそうなくらいホロホロする。
全身が、
…俺の身体あらゆる部位すべてが、
…俺の本能が……、「動けッ」「動けッ」と精神的に追い込んできやがる…。
──(そうさ。死にたくないだろう)
──(だが動け。救え。アンズの元へ今すぐ駆け抜けろ)
────(走れ、俺…。新田……ッ)
「ぐぅうっ……グッ……………!」
裏社会じゃ数えきれない異名を背負わされ、反社の連中から畏怖される俺も、──正体はこんなチキンだ。
ビビっちまって、何十回目となる河川敷を眺めるしかできねえ。
動くことさえままならない点、俺はダンゴムシなんかよりもムシケラだ。
完全に腰抜けだった。
…だが。
男に産まれたからには、どんなに恐ろしくても、どんなに嫌でも。
…不器用ながら動かなくちゃならねえ時がある。
愛する者のために………、行動を……。
動いた場合待っているのは、自分の死──。
動かざる場合待っているのは、アンズの死──。
二つの重荷を天秤にかけて、皿は揺れに揺れ続ける。
そのユラユラっぷりが、俺の乱気流激しい精神内と似か寄っていた。
──ガタンッ
「…………うおわっ…!──」
天秤をただずっと眺めていた折、置き石でも踏んだのか電車内は大きく揺れ動いた。
石ころ一つ如きで、こんなにも強く電車にダメージが与えられたのだから面白いもんだ。
半端ない衝撃ゆえに、俺はここに来て初めて立ち尽くす以外のアクションを取ってしまったのだが──。
──尻もちをつかされた俺が、
──隣の車両にて。
「──………あっ」
──まるでビー玉みたいな死んだ眼の『危険人物』を目にしたのは、この時だった。
◆
──ガタン、ゴトン…
「くんくん…。くぅ~~~~~~~~!! うまそ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
オレの名前は野原ひろし!
愛する妻と二人の子供を持つ、平凡なサラリーマンだぜ!
子供の内、長男でさえもまだ五歳児のひよっ子、妹にいたってはつい最近産まれたばからの赤ん坊だ。
このわんぱく坊主たちの成人を見届けるためにも、日々事故や病気に気をつけてきたオレなんだが……。
…最悪なことに「殺し合いをしろ」だなんて物騒なモンに、巻き込まれちまったんだぜ………。
がび~~~~~~~んっ!!!!
「黄色い麺、優しい色合いのスープ……。それもさることながら、カップ麺にしてこのもやしのクオリティ…!──」
「──美味そうだぜ!! 我慢できねえ!」
…しかし、焦りは禁物だ!
普通の人間なら「し、死にたくない~~~!!(;■д■ lllu)」とか、「こ、殺し合い……。怖いけど仕方ない🗿💦」だとか正常な判断ができなくなるところだが、…オレは違ぇぜっ!!
現に、オレは電車で席に座りながら、ゆったり『もやしラーメン』をすする余裕を見せてんだからな!
殺し合いに大事なのは、ズバリ平常心だろう。
したがって、オレは営業のプロであると同時に、バトル・ロワイアルのプロでもあるのだっ!!!
(…まぁバトロワのプロって言うのは…ちょっと語弊があるがな……)
「『平常心』……。これは殺し合いに限らずビジネスでも同じことだ。冷静な判断が成功に繋がるからな!──」
「──ま、そんじゃ。とりあえず……、──」
「──いっただきま~~~~~~~~~~~す!!!」
割り箸を口でパキッると、さっそくオレは箸をカップ麺に突っ込んだ!
湯気をまとった麺に、絡まりまとわる無数のもやしたち…。
日本の伝統調味料・味噌の赤茶色いスープが、嗅覚を刺激するぜ~…。
アツアツのそれを、オレは間髪入れずすすり込むのであった!
ふ~、ふ~、ふ~……
──ズルズルズルズル~~、ズルズル~~ガーーッ
──ゴクンッ
こ…っ、これは………──!!
「うまいぃ~~~~~~~~~~──…、」
「おい、アンタ」
「ギクッ!!!」
おいおい…、オレとしたことが…。
ラーメンに夢中で、眼前の『もう一人の乗客』──参加者に気づかなかったぜ……。不意に話しかけられてビックリしちまったよ……。
…オレはとりあえず箸を置いて、ゆったりと顔を上げることにした。
「……え~~と………、あ、どうも…、」
「アンタさ、これまで何人ぶっ殺したか、言ってみろよ」
……え? えぇ………。
渋い男の声が響くぜ…。
なんだかイヤ~な質問をするそいつは、金髪にオールバックで漆黒のスーツを着た男だった。
…一見にして、普通の社会人には到底思えねぇ~…。
そいつのオーラもさることながら、ジャラジャラした金のネックレスが威圧感すごくてよ~。
『裏社会の人間』──と印象づけられる、そんな男だったぜ。
それで、その奴さんは何を思ったか、オレに銃を突きつけて立っていたんだ。
「……いや『銃』ッ────???!!!」
「……………」
いやいやいやいや!
な、なんだよこれ!? 唐突すぎんだろ?!
…おいおい、…これって~~……。
かな~りマズいんじゃねぇのかぁ~~~…………??!
「こ、殺してないですよ??! ひ、一人も!!」
「あぁだろうな。返り血は一滴もついてねぇし、そらゼロキルだろうよ。──」
「────あくまで『今は』だけどな」
「は、はいぃ~~~~???!」
「…アンタさ、もしタイムスリップして少年時代のヒトラーに出くわしたら………どうするよ?」
「え、え…え??! え?? ……と、とりあえず銃を……、」
「…俺なら、殺す」
「えっ?!」
「ガキだろうと関係ねぇ。…将来の虐殺を止めるために、歴史を変える決意をするよ…。俺は…」
「な、なんのはな……、」
「すっとぼけてンじゃアねえぞゴラアッ!! あぁッ?!!」
「ヒィッ!!!!」
の、野原ひろし…三十五歳……!!
今、裏社会のヤカラにロックオンされて…、人生最大のピンチ真っ最中~~~~!!!!!
「一目で分かんだよ。…その風貌、…殺し慣れたって感じの目、…殺意にまみれた雰囲気…っ! テメェがこの人生、一体何百人手に掛けてきたかがなぁ!──」
「────…バレバレなんだよ。この『殺し屋』がッ………!!」
「え、…え~~~~~~~~~~~~~~っ????!!!!!」
しかも因縁つけられたんじゃなくて、訳わかんねぇ勘違いしてきたぞコイツ!!!!
な、なんだよ!!!? 殺し屋って??!!!
オレそんなやべー雰囲気、出してねぇだろ~~~~~~っ!!!!
「この殺し合いで将来的な犠牲者を出さないためにも。…正史じゃ犠牲となる命を、一つでも救ってやる……」
「ま、待て!! 話をし…、」
「俺が未来を変えるんだ…。今………──」
ひぃい………!
「────アンタを始末してだなぁああっっ!!!!!!!!」
ひぃいいいいいいっ!!!!!!
助けてぇええ~~~~~~~~!!!!!
神様~仏様~おそっさま~~カンタムロボにアクション仮面~~~!!
しんのすけぇ~!!! ひまわりぃ~~!!!!!
…みさえぇえ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!
────パアアアァァァンッッッ
◆
…
……
………
…ガタン、ゴトン
ガタン、ゴトン──
ガタン、ゴトン────
「すみませんでしたァアアアァァァァァっ!!!!!!」
「いやいや…いいんですよ。疑心暗鬼になるのも……ね……」
…いやホントは全然よくねぇ~~けどっ!!!
「あなたが……まさかカタギの方だとは……。本当に、本当に申し訳ない…!!! どうか許してくださいっ!!!!」
「い、いやぁもう、頭上げてくださいよ~~!! 新田さん……!」
…いや、まだ許せる気はねェ~~けどよっ!!!
ズリズリズリィ~~~ッと床に額を擦りつけて土下座されちゃあ、オレだってそう言うしかねェぜ…。
サラリーマンとしての礼儀ってやつでな…。
「本当にッ、申し訳ありませんでしたァア!!!!」
「…………新田さん~…」
……ふぅ…。
まったく地獄に来たみたいだったぜ…。テンション下がるなぁ~~~~…。
あれからオレは、営業で培ったトーク力をフル稼働させて、間一髪説得に成功したわけだが…。
──どうやらこの新田という男、相当追い詰められていたらしい。
まぁ無理もないぜ。状況が状況だしな。
許してあげるのが筋ってモンだ!
…それにしても、このリアルマフィア…。
話したら分かれた、根が優しい人間でよかったぜ~~……。
ほっ……。
「まぁまぁ新田さん…。お近づきの印にこれを!」
新田が頭を擦り続けてもう数分。
もはや額から血が滲みそうな勢いの新田に、さすがに見てられなくなったオレは、バックから缶ビールを二本差しだした。
話を聞けば、新田にも娘が一人いるらしい…。
同じパパ仲間として、これは飲むしかねぇぜ…!
キンキンに冷えたやつをクイッといけば、似た者同士、親睦を深められるって寸法よ!!
「……す、……すみません。野原さん……」
オヤジ二人。
席に座り、いつものこの時間じゃ口にすることなんかない発泡酒の蓋を開ける。
プシュッ──
ゴクッ、
ゴクゴクゴクゴク……
ぷは~~~~~~~~~~っ!!
うまい~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!!!
「…野原さんは、どこからお越しで?」
「…え、あぁ。オレは春日部からです。双葉商事って会社で、冴えないながらやってまして~~」
「……双葉商事、ですか。そいつは良い。…俺なんかゴミみてェな金融で娘を食わしてやってんですから、野原さんは立派ですよ」
「いえいえ~、そんな」
「…ふう……。子育てってほんと苦労まみれですよね…。ふと我に返ったら嫌になってきますよ…。なにしてんだ俺って、とね……」
「たしかに……。うちのしんのすけも悪ガキとかそんなレベルじゃないから大変です」
「…ヒナのやつ……。飯食って便所行って寝るだけの、可愛げのないガキでして。そんなバカ相手でも毎日洗濯して、弁当作ったり世話焼いてやったのですが………」
「ははっ」
「……苦労して子育てした末路が、親子揃って殺し合い…とはね………」
………えっ?!
「え?! あ、あんた…娘さんもここにいるのかっ???!」
「…………………………」
新田はオレの問いかけに無言で頷き、そのまま頭を上げなかった……。
…おいおい……。
そら平静でいられなくなるのもそりゃ仕方ねぇって話だ…。
オレだって、もししんのすけがここに巻き込まれてるとなりゃ、呑気にラーメンなんざ食えやしねぇ…。
……ぐっ。…うう…。
同情するぜ新田さん……。
同じ父親同士としてな……。
「……まぁ、アイツが死のうが生きようが、どうでもいんですが」
…え?
「…ぁ…アンズもっ……。アンズも……ッ! 殺し合いを…させられてるんですよ…ッ!!! 娘と友達みたいな少女…………ぁ、…アンズがッ!!!」
「……はい?」
「俺…好きなんですよっ……! 恋愛感情とかそういうのじゃなく……、アンズの……あの…天使の微笑みが……好きで……好きで仕方なくて…ッ……!」
「…………え、あんたもう酔ってんの…?」
「アンズに癒やされたくて…、毎日彼女のラーメン屋に通ってるのに……、畜生…畜生ッ………!!──」
「──俺は無力だ………っ。…うっ、ぐっ……うぅっ………」
ガタン、ゴトン──
ガタン、ゴトン──
泣き上戸なのか…? こいつは……。
号泣しながらビールを震わす新田に、…正直俺は何もできねェ~。
引くだけだったぜ…。
娘の友達が大好きおじさんって………おいおい、ソレやばくね~か?!
ガタン、ゴトン──
ガタン、ゴトン──
『次は──、渋谷駅ー。渋谷駅です』
実子の命よりも血の繋がりもないガキを心配する新田を前に、先が思いやられるオレであった……。
とほほだぜぇ~……。
ガタン、ゴトン──
ガタン、ゴトン──
『お降りのお客様はお荷物を確かめになってご降車ください──。なおー、偽物のほうが圧倒的に価値があります。そこに本物になろうという意思があるだけ────、』
『────────偽物のほうが【本物】と言えるだろ。』
(西尾維新『偽物語』 貝木泥舟の台詞)
◆
………
……
…
──『…俺の人生はつまらなくなんかねぇさ』
──『ある日全裸のガキが降ってきて。そいつの父親役をさせられて。年下のガキを閣下と崇めて。壺もベントレーも超能力でぶっ壊された挙げ句、未来を変えるため四六時中走り回る』
──『そんな『幸せ』を、あんたにも分けてやりたいくらいだよ』
──“………いらねぇよ。分けんな、ンなもん。”
──『…………………』
──“…じゃ、もうそろそろいいよな? やろうぜ、『バトル・ロワイアル』……!”
──『…おいおい……。…瞬殺だよ…?』
──“…!!! 言うじゃねぇか!! 伊達じゃねぇな…テメェは…。はっはっはっはっはっはっはっ!!!!”
──“じゃあ『死ね』ッ────────────!!!!!”
▲ 偽 物 語 ▲
────ひろしテーマパーク──
以上、囘想終了。
【1日目/E1/電車内/AM.00:35】
【新田義史@ヒナまつり】
【状態】健康
【装備】AT拳銃
【道具】???
【思考】基本:【静観】
1:アンズ────ッ!!!! …アンズ────ッ!!!!
2:野原ひろしと行動。
3:ヒナは………まっ、どうでもいいだろ。
【野原ひろし@野原ひろし 昼飯の流儀】
【状態】健康
【装備】???
【道具】キンッキンに冷えた5000ペリカの缶ビール@トネガワ
【思考】基本:【対主催】
1:やべーおっさん(新田)と行動。
2:常に平静を保って行動する…これが俺の流儀だ!
最終更新:2025年09月08日 20:45