銀の意志・金の仇 ◆F3/75Tw8mw



「参ったな……これは」


かつて古代に栄えた戦闘民族グロンギが眠っていたとされる、古めかしい遺跡にて。
古代よりホラーを狩り続けてきた魔戒騎士、その現代における一人―――凉邑零は、現状に小さくため息をついた。
悩みの種は、無論加頭という男のことだ。
つい先程まで自分は、愛する者と師の仇である黄金色の魔戒騎士を追跡していたのだが、気がつけばあの広場に拉致されていた。
そして宣告されたのは、殺し合いへの強要だ。


(変わり種のホラーの仕業……ってところか?)


これを零は、ホラーの仕業であると考えていた。
ホラーは皆例外なく人を食らう化け物だが、中にはわざと人の恐怖心を煽ってから食らおうとする変わり種もいる。
恐らくあの加頭も、そんなホラーの一体ではないだろうか。


(それにしては少々、不自然な点が多いのは気になるけどな……)


しかし、ここまでの考えはすべて、あくまで憶測にすぎない。
もしかしたら、仇敵同様に凶行に走った魔戒騎士の仕業かもしれないし、案外、ホラーや魔戒騎士とは関係無いテロリストの仕業かもしれない。
事実、広場にいたのは魔戒騎士や魔戒法師とは何ら関係性のない者達が殆どだった。
それに加え、ガイアメモリという未知の魔道具―――かどうかは流石に分からないが―――の存在などもある。
兎に角、単にホラーの仕業と考えるには、不自然すぎる点が多すぎるのだ。



(だけど……シルヴァを奪われてしまった以上、可能性はあるな)


しかし、それでも零はこの一件に、ホラーが噛んでいると考えていた。
根拠はただ一つ……相棒の魔導輪シルヴァが、ここにいない事。
加頭に没収されている可能性が極めて高い事にある。
シルヴァは戦場を共に駆ける相棒として、自分を鼓舞し、時には勝利へと導く策を授けてくれる存在だった。
そして何よりありがたい点は、彼女にはホラーの気配を察知でき、それを知らせてくれる事にある。
そんな彼女を、加頭は奪った……自分と切り離したのだ。
こんな事をするメリットなど、どう考えても一つしかない……ホラーの気配を悟られないためだ。
ならば恐らくだが、この会場には何かがある。
ホラーに関係している、魔戒騎士に悟られてはまずい何かが。
だったら、今後の行動方針は決まりだ。


(まずは、そいつを確かめないとな……
こんな悪趣味に付き合うつもりなんかこれっぽっちもない。
シルヴァは必ず取り戻す、このゲームも潰させてもらうよ)


魔導輪を奪ってまで隠したい『何か』を見つけ出し、この殺し合いを止めるまでだ。


(俺も、魔戒騎士だからね)


零は端から、こんな殺し合いに参加するつもりなどなかった。
正式な称号こそ授けられていないとはいえ、仮にも魔戒騎士を名乗る身である以上、当然だ。
相手がホラーであるにせよないにせよ、悪党を見逃すつもりなど毛頭ない。
殺し合いに乗るものは倒し、それ以外の者達は極力保護するつもりである。






ただし……一人の例外を除いて。



(それでも、牙狼……お前だけは殺させてもらう。
必ず……この手で……!)



この状況下においても、零の中にある復讐心は微塵も揺らいではいなかった。
誰よりも尊敬していた、父親同然の師―――道寺。
誰よりも愛していた、かけがえなき婚約者―――静香。
大切な二人の命を、黄金色の魔戒騎士はその刃で奪いさったのだ。
奴だけは……牙狼だけは、絶対に許せない。
この手で必ず仇を討つ。
そうしなければ……この憎悪は決して晴れない。
何より、二人の無念を晴らせないのだから。



(加頭、お前のやった事は絶対に許せない。
だけど……あいつを、俺と一緒に呼んでくれた事。
それだけは、素直に感謝するよ)







―――この時、零は知る由も無かっただろう。




―――己が仇と呼ぶ鋼牙は仇ではなく、後に唯一無二の友になれようとは。



―――この会場にいる鋼牙が、零を信頼できる仲間だと思っていようとは。



―――そして本当の仇敵である黒騎士が、この殺し合いの場に呼ばれているとは。




―――僅かな時のすれ違いが……金と銀の魔戒騎士に、大きな思惑の違いを起こしていたなどとは。


【1日目/未明 D-6 グロンギ遺跡】


涼邑零@牙狼─GARO─】
[状態]:健康
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:加頭を倒して殺し合いを止める。
1:牙狼を見つけ出し、この手で仇をとる。
2:殺し合いに乗っている者は倒し、そうじゃない者は保護する。
3:会場内にあるだろう、ホラーに関係する何かを見つけ出す。
[備考]
※参戦時期は一期十八話、三神官より鋼牙が仇であると教えられた直後になります。
 その為、鋼牙が恋人と師の仇であると誤認しています。
※魔導輪シルヴァは没収されています。
 他の参加者の支給品になっているか、加頭が所持していると思われます。
※シルヴァが没収されたことから、ホラーに関係する何かが会場内にはあり、加頭はそれを隠したいのではないかと推察しています。
 実際にそうなのかどうかは、現時点では不明です。


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最終更新:2013年03月14日 22:20