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TERRITORY


《スタンド名―『セツボウ・ギジレン』

 本体―江ノ島盾子
 破壊力―A
 スピード―A
 射程距離―C
 持続力―A
 精密動作性―C
 成長性―測定不能
 能力―『自分の取り込んだ全てのヒグマの能力を使う能力』を持つ、巨大な獣人型のスタンド。
    スタンド『エニグマ』をベースに、江ノ島盾子が吸収した様々な要素を受けて変質し続けている。
    現時点でのセツボウ・ギジレンは、目を離した瞬間に存在を見失ってしまいそうな土留め色の全身に、右腕は赤黒く燃え続ける幣束を風と共に纏い、左腕は空間を引き裂くほどの暗いエネルギーを湛え続けている。》


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「江ノ島盾子が、周囲に詳細不明のチャフを展開――!」
「あれは、何――? 球磨の『マンハッタン・トランスファー』と同様の、『スタンド』……!?」


 C-6に聳えるグリズリーセイバーエンジンの木陰で、四宮ひまわり暁美ほむら黒騎れいが慄いていた。
 協力魔法(コネクト)でB-8の江ノ島盾子への狙撃を敢行していた彼女たちは、突然その周囲に展開された謎の紙束により、初撃以降の攻撃を全て防がれていたのだ。

 暁美ほむらの視界には、江ノ島盾子が発生させた謎の現象の正体が、遥か遠くからでも見えていた。
 ドドメ色のおどろおどろしい色彩で立ち昇る巨大なその生霊――スタンドビジョンは、江ノ島盾子の凶悪な精神そのものを映し出しているかのようだった。

 オーラのように立ち昇るその生霊は、体高数メートル。
 おぞましい色味を蠢かせるその総身は、右腕として赤黒く燃え続ける紙と炎の渦を、左腕として昏い空間の裂け目を携えている。
 球磨の持っていた『マンハッタン・トランスファー』と同じ種別の能力だとしたら、そのビジュアルの差は圧倒的だ。
 どれほど異常で、どれほど強力なのか。想像もつかない。

 だがもはや、自分たちにここで手をこまねいている選択肢はない――!
 暁美ほむらは、赤縁の眼鏡を上げ、喪服のワンピースの裾を払い、第二種軍服のような翼を翻す。

「羆嵐はもう打ち止めになってる……! 私たちも行くわよ!!」
「ええ!」
「うん!」

 黒騎れい、四宮ひまわりと共に頷き合い、3人は急ぎ、B-8の戦場へと飛行した。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『――うおおお、アタシらのテレパシーを、誰か早く流せ!! 相田マナを助け出した!! アタシたちは成し遂げた!!』

 ヒグマ島希望放送に、佐倉杏子からのテレパシーが響いた。
 彼女の叫びに続いて、そこには、誰もが待ち望んでいた少女の声が届く。

『みんな……、とても、とてもご迷惑を、ご心配をおかけしました……! でも、みんなのおかげで、戻ってこれた……!
 あたしは大貝第一中学生徒会長! 相田マナよ!』
「きゅぴらっぱ~!!」

 メルセレラの固有武器のスピーカーから流れてきた声は、間違いなく、相田マナのものだった。
 布束砥信に抱かれたアイちゃんの反応が物語っている。

「野郎どもドキュメンタリーだ!! ドキュメンタリーが好きなんだろ!? 聴け!! ドキュメンタリーだよ!!」

 間桐雁夜が興奮し、生放送で叫ぶ。
 ガッツポーズをして、初春飾利と共に島外とのやり取りに奔走する。


「政府に繋いでくれ!! あとトランプ共和国に!! すぐに! 国家間で動いてくれ!! アフリカと中東圏優先で!!」
「佐天さん! 相田さんにコメントもらってください!! 政府が正式派遣メンバーからの見解を求めてるんです!!」
『相田マナです……! ヒグマさんたちは、みんなとても理性的です……! 冷静じゃなかったのは、むしろ私たち人間の方!
 そして、この島で一番ジコチューな、諸悪の根源は、私の体を操りまでしていた、江ノ島盾子――!!
 彼女の思い通りにだけは、させちゃいけない――!!』
『だってよ初春! 要するに、愛は伝わるんだってこと!!』


 相田マナからの正式なコメントが提示されたことで、島外の状況は一気に好転した。
 日本政府を始めとした国家が、正式に動き出してくれたのだ。
 全世界へ『対江ノ島盾子用駆除プログラム』が、加速度的に拡散されてゆく。

 島を狙うミサイルは発射されてしまった。
 だが、後はここで江ノ島盾子を斃し、島外に脱出するか、ミサイルを迎撃できれば、生還できるのだ。
 江ノ島盾子の復活を阻止するためのライブにも、俄然やる気が満ち溢れた。

 巴マミ黒木智子星空凛、メルセレラ、那珂――『ヒグマ島とりマなメ』の5人が頷き合う。


「行けるわ! いよいよラストスパート……、フィナーレね!!」
「日付が変わるまででもノンストップで歌ってやらぁ!!」
「メルちゃんの魔法もある今なら! μ'sの歌、全曲メドレーだってしてやるにゃ!」
「良いわ! 凛でも那珂でも! 次の歌アタシに投げなさい!!」
「了解、那珂ちゃん行きます!!」

 燃えるような気勢の中、センターの名乗りを上げたのは那珂だった。

 ――那珂ちゃんがアイドルとしてこの島で生きるには、この場の全員に、そして全世界の人々に、『艦娘の面目』、『アイドルとしての那珂ちゃん』、『那珂ちゃん自身の歌唱力』、『歌のチカラ』を、それぞれ認めてもらうことしかなかった。
 それこそ、御坂美琴高級技官殿が、武田プロデューサーが、イソマ陛下が、ただ一つ那珂ちゃんに残してくれた希望の道。

 今の那珂ちゃんには、それらを認めてもらった、最高の舞台がある。
 天龍ちゃんが、龍田ちゃんが、『艦娘の面目』を示し、戦い続けている。
 星空凛ちゃんと一緒に、『アイドルとしての那珂ちゃん』は堂々とこのライブで並び立った。
 威子ちゃんが『那珂ちゃん自身の歌唱力』に聞き惚れていたのは、舞台からでもわかったし。
 『歌のチカラ』は、この生放送で、全世界に示されている――!

 手に握るのは、ヒグマの皇帝陛下から、この島の希望そのものから、下賜された那珂ちゃんのマイク。

 その期待に、みんなの期待に応えるため、もう一度那珂ちゃんは、身一つで挑む。
 自分自身を改修して。
 自分自身を改造して。
 最後までファンである自分の先へ帰る道。
 その航路を作り上げよう。

 今こそ、この歌を歌う時だ。
 ファンのみんなに、愛しいあの子に――、きっと新しい始まりを届けられる、この歌を――!!


「『艦隊アイドル改二宣言』――!!」


 その気合はテレパシーに乗って、全島に響く。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「オマエラと、この島と世界に終末をもたらす力の名は……」

 B-8では、江ノ島盾子が異形の両腕を広げ、悠然と一帯の人々を睥睨していた。

「――『絶望擬人論(セツボウ・ギジレン/SETSUBOU GIJIREN)』だ」


 天龍、龍田、司波深雪百合城銀子たちは、武器もなく、傷つき倒れ、みな絶望の表情を浮かべることしかできなかった。
 その様子を、江ノ島盾子は味わうように眺めまわし、そしてトドメを刺そうと、その燃える腕を振り上げていた。


「――『黄金回転の丸太』!!」


 その時、突如北から、ドリルのように回転する丸太が飛来する。

「――!?」
「させねぇんだよぉー!!」
「皆の者、無事か――!?」
『皆さん! 助けに来ました!!』

 戦艦ヒ級をエリア越しに狙撃したこともある、宮本明による丸太の投擲。
 隻眼2、李徴、そしてその背に跨った状態で丸太を投げた宮本明たちが、ヒグマ島希望放送から駆け付けていた。
 江ノ島盾子は、振り上げた炎の右腕で、飛んできたその丸太を受け止めた。

 丸太が、燃える紙に吸収される。
 だがその回転は、丸太を吸収した紙から周囲に広がる。
 回転が紙を捻じ切り、バツンと勢い良く粉砕した。
 江ノ島盾子の右腕を形成している火焔の、掌部分が消し飛ぶ。
 紙の中から、砕けた丸太がバラバラとこぼれ、燃え落ちた。

 宮本明の黄金の回転は、江ノ島盾子にも完全には防ぎきれない――。
 それは確かだと言えた。


「チッ……、うぜえな」


 だが、ほぼ無限に出て来る紙の何枚かと丸太一本の交換は、明らかに割に合わない。
 江ノ島盾子は、宮本明が次の丸太を構える前に、右腕の炎の渦を復元していた。
 そして燃える紙の群れが揮われる。
 紙からは、先ほど吸収していた超高速の『偽街の針』たちが、さらに火焔を纏った状態で宮本明たちに向けて撃ち返されていた。

「うわあぁぁぁぁぁぁ――!?」

 衝撃波と共に地面に着弾し、岩盤が抉れ返る。
 炎が飛び散り、吹き飛ばされた宮本明を、李徴を、隻眼2を焼いた。


 その間に、3人の少女たちが空を飛び来る。
 総合病院跡から急ぎ来た、黒騎れい、四宮ひまわり、暁美ほむらだ。
 パレットスーツの2人は息を合わせて木刀を鴉羽の弓に番え、喪服の軍神はその翼から連装砲を出して射出する。

「『ネイキッド・レイヴンボウ』――!!」
「『ネイキッド・グリズリーセイバー』――!!」
「『14cm侵食砲』――!!」

 だが、童子斬りの木刀を矢として撃ち出す2人の攻撃も、球磨の砲塔で撃ち出す呪いの弾丸も、空間の裂け目に呑み込まれてしまう。
 裂け目自体が、江ノ島盾子の左腕のように振るわれ襲い掛かった。

「危ない――!」

 四宮ひまわりと黒騎れいを庇って、暁美ほむらが彼女たちを突き飛ばす。
 暁美ほむらの右の翼が、空間の断裂に斬り飛ばされる。

「ぐぁ――!」

 バランスが崩れる。
 暁美ほむらは逆さまに、ぐるりと回転する。
 その反転した視界の中で、燃えて渦巻く紙の竜巻が、自分たちに迫るのが見えた。

「きゃあぁぁぁぁ――!?」

 江ノ島盾子の右腕から放射された火炎旋風が、暁美ほむらたちを包み、吹き飛ばしていた。


「……ま、まるで焚書坑儒だ……!」

 吹き飛ばされた彼方で、李徴が呻いた。
 月夜の草原は今や、あちこちの岩盤がめくれ返るほどに破壊され、そこここで火の手が上がる、地獄のような光景だった。


「我らの歩みを、記憶を、全て焼き滅ぼし、我らの心を、望みを、誰にも顧みられぬ時空の狭間へ埋めようというのか……!」


 その場の全員が、満身創痍であった。
 武装を奪われ、左腕の無い龍田が、天龍の背中の傷を押さえながら地に転げている。
 全身を銃弾に穿たれた司波深雪が、かろうじて百合城銀子の右腕の断面を掴み、止血しながら喘いでいる。
 李徴も、隻眼2も、宮本明も、凄まじい衝撃で地面に叩きつけられ火傷を負い、呻いている。
 四宮ひまわりと黒騎れいは火炎旋風に巻かれて気を失い、彼女たちを庇ったまま、翼と背に大火傷をして倒れ伏す暁美ほむらと共にピクリとも動かない。

 絶体絶命かと思われたその時、上空の月光が翳る。
 ヒグマ島希望放送から何か巨大な砲弾が撃ち出され、江ノ島盾子の上に、空から落下しようとしていたのだ。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 提督のみんなー! いっつもありがとー!
 いっくよー!!


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 北から飛んでくる砲弾に江ノ島盾子は気づき、空を振り仰ぐ。
 その表情は、不敵な笑みを浮かべるだけだ。

「……なんだァ? 大砲かなんかで私様を狙ってたワケか? 甘いなぁ~」

 砲弾を吸収しようと、江ノ島盾子はエニグマの紙を広げた。
 だが、吸収できない。

 ――それはヒグマの肉塊だった。


「なぁ――!?」


 轟音を立てて、巨大な砲弾が紙を突き破って地にクレーターを穿つ。
 衝撃で江ノ島盾子は跳ね飛ばされ、地に転げる。


「ここかァ――!? 祭りの場所はァ!!」


 その時響いてきたのは、弾けるような幼女の笑い声だった。
 肉塊の砲弾を破いて、紫のライダースーツの女の子がそこに現れる。

「待ちきれねぇからよぉ、来ちまったぜぇ!!」

 ――浅倉威子だ。

 彼女が使ったのは『南斗人間砲弾』である。
 彼女は自分自身を砲弾として、獣艇・ジェノドレッドサバイバーの肉と共に南斗列車砲に詰め、自分の魔力で発射してここに着弾していたのだ。

 ヒグマ肉でできた砲弾から悠然と降り立ち、彼女はその場の一行に聞かせるでもなく、ハイテンションに喜びの声を上げる。


「この体に産んでもらってから、全くイライラしねぇ!! ヒグマってのは本当素晴らしいな!!」


 そして彼女は、尻餅をついている江ノ島盾子を指さす。

「だが俺をワクワクさせんのは、やはり戦いだ!!」

 観柳に着けてもらった金のテレパシーブローチからは、那珂の歌がしっかりと聞こえていた。


♪あなたの近くに居たくて
♪アイドル 生まれ変わります――!

♪着替えもメイクもバッチリね
♪新しい私 こんにちは――!


「今の俺の戦いは、単なるイラつきの発散じゃねぇ……。この島を勝ち取るってェ、目的があんだよ!!」

 浅倉は顔の前に手を掲げ、勢い良く引き戻してポーズを決める。

「変身――!!」

 艤装が展開される。
 紫のライダースーツだった被服が光となり、濃いオレンジのドレスに変わる。
 白い半袖パフスリーブ。
 手にはブレスレットと白手袋が嵌る。
 フリフリの白いスカートが華やかに風に舞い、浅倉のポーズを彩る。


「あれは那珂と同じ……、川内型の戦闘制服――!?」

 変身した浅倉威子の姿を見て、龍田に抱えられた天龍が呻く。

 それは自己改造を繰り返してきた浅倉の、浅倉威子としての真の変身――。
 いわば『浅倉改二』であった。
 ゆったりと首を回して、浅倉威子は衣装にかかったウルフカットの茶髪を払う。

「ハァ~……――、フン」
「なんだテメェは……!? まさか、私様と同じタイプの能力――!?」

 幼女の正体がわからずに、江ノ島盾子は身構えた。

 浅倉威子という存在を、江ノ島盾子は知らない。
 浅倉威なのかもしれないという予感はあれど、確証はない。

 だが、この複数の全く違ったように見える能力を複合し、全く違和感なく活用する――。
 その性質は、今の江ノ島盾子とほとんど同じだ。
 最大限の警戒をして、然るべき相手だった。


 ――シュートベント。

 戦闘開始の掛け声もなく、浅倉はその腕に構えた連装砲を乱射しながら江ノ島盾子に襲い掛かっていた。

「チッ――!」

 江ノ島盾子はその弾幕を燃える紙の渦で吸収し、炎を纏わらせた状態で浅倉に向けて撃ち返す。

 ――ガードベント。

 浅倉は駆け寄る足の運びを一切緩めることなく、撃ち返された弾幕を巨大なヒグマの頭蓋骨の盾で防ぐ。
 盾の影から、艤装の霧笛が構えられる。

 ――ナスティベント。

「ギアアアアァァァ――!?」

 狙いすまされた高周波の霧笛が、江ノ島盾子の内耳を揺らす。
 高まったヒグマの感覚に叩きつけられた強烈な不快感が、江ノ島の構えと、その能力で形作られた両腕の統合を乱す。
 その間に浅倉は、彼女の程近くにまで接近していた。


「悶え死ねぇ――!!」

 狂喜する浅倉はそして、叫びながら江ノ島に向けて、投網のように何かを広げ投げつけた。

 ――ホールドベント。

「夕立さんのハンモック――!」

 司波深雪が驚く。
 不快な霧笛が響く中、江ノ島盾子の全てを拘束して余りあるほどに広げられた丈夫な帆布が、その視界を覆う。
 江ノ島盾子は苦悶に顔を歪ませながら、なんとか体勢を立て直した。


「クソうぜぇ――!!」

 空間の断裂が、江ノ島を覆う帆布を切り裂く。
 だがその時、もうその場に浅倉威子はいなかった。


♪スキだから ダイスキだから
♪セカイイチ アナタガスキ!

♪伝えたい 想い届いた!
♪今輝く戦場(ステージ)へ――!


 ――アクセルベント。

 浅倉は、急点火する全速力で、江ノ島盾子の死角となる側面から後方へ、くるくるとスピンするように回り込んでいた。
 天龍と龍田が驚く。

「那珂の、『今和泉式高速転舵』――!?」
「――まだだァァッ!!」

 そして浅倉は、そのまま江ノ島盾子の背後から、回転の勢いを乗せたまま蹴りを見舞った。
 カタパルトがその上に載せた艦載機を一瞬で飛び立たせるように、浅倉の右脚の煙突が、高圧の蒸気を吹いて急加速する。
 呉キリカと那珂が協働して開発した必殺の蹴り。カタパルトの勢いを有した零距離ライダーキック。

 そのステップの名は、『呉式牙号型鬼瞰砲』――!!

 凄まじい衝撃が、江ノ島盾子の胸郭を、背骨から胸骨まで砕いていた。
 服の背に靴底の形が刻まれる。
 全ての肋骨が、圧力に耐えかねて胸から華のように弾け出た。


「もっと――、もっとだァァ――!!」


 だが、浅倉の攻撃はそれで止まらなかった。
 那珂たちから受け継いだ『呉式牙号型鬼瞰砲』をさらに発展させる――。
 浅倉は、さらに左脚の煙突をも吹かせていた。
 吹き飛ぼうとする江ノ島盾子を、まるで蛇の噛み突きのように、さらに左で蹴る。右で蹴る。

 ――『呉式牙号型鬼瞰砲・改』。

 ベノクラッシュのような加速しながらの連続ライダーキックが、江ノ島盾子の全身を背後から何度も蹴り砕いた。
 腹部が張り裂け、内臓が弾け飛ぶ。

「ギェエエェェェェ――!?」

 江ノ島盾子が絶叫した。
 同時に、砕け散りかけていたその全身が、水蒸気と共に膨れ上がる。
 浅倉はその衝撃に吹き飛ばされる。


「巨人化! ヤツに巨人化の手札を切らせました……! ここを凌げば、ヤツに後はない――!」

 百合城銀子を抱えた司波深雪が叫ぶ。

「ヴォオオオオォォ――!!」

 ヒグマ型巨人となった江ノ島盾子が、雄叫びを上げて、草原に残る重油の炎から、その身に再び火を巻き上げる。
 炎を纏ったヒグマ型巨人が、浅倉に向けて突っ込んでくる。

 その威容を前にして、浅倉はなおも不敵に笑う。
 立ち上がり、口の端に、カードを噛む。
 足を踏みしめ、真っすぐに手を伸ばす。

「……いいなテメェら、この祭りは、全員の全力で行こうぜ――!」


♪憧れの改二になったから
♪もっと私のこと見ててよね!

♪アイドルなだけじゃないってところ
♪魅せてあげる――!


 ――ユナイトベント。

「『獣艇・ジェノドレッドサバイバー』!!」


 浅倉の号令と共に、彼女の背後から広がった光景は、まるで地獄の窯の蓋を開いたかのようだった。
 獣艇・ジェノドレッドサバイバー。
 それは数多の、ヒグマの肉で出来た死の河。獣の曼荼羅――。
 地下のヒグマ帝国で浅倉が捕食してきた百頭を超える全てのヒグマの怨霊が重合したような、おぞましい奔流が、津波のように江ノ島盾子を呑み込む。

「ヴォオオオオォォ――!?」

 江ノ島盾子の驚愕が、身に纏った炎ごとヒグマ肉の水面に沈む。
 次の瞬間、獣艇・ジェノドレッドサバイバーの巨体が、盛大に内側から爆散した。
 爆裂したヒグマ型巨人の残骸から、五体を再生させた江ノ島盾子が必死に這い出してくる。


「クソがぁ~……!! バニラヒグマの盛り合わせ質量攻撃……!?
 何十……、いや、何百体ヒグマ喰ってやがったんだコイツ……! ふざけやがって……!」


 ヒグマを取り込んだ頭数だけでいえば、間違いなく江ノ島盾子より浅倉威の方が多かった。
 そのことを察して、江ノ島盾子は背筋に冷や汗を流す。
 能力持ちヒグマの質を選んで回収してきた江ノ島と、出会いと運に任せ、好き放題に数多くのヒグマを捕食し続けて来た浅倉。

 それはまるで、『K戦略』と『r戦略』だ。

 同じタイプの能力を持った者同士の対決において、それは果たしてどちらが秀でているという結果になるのか――。


「商人さんは、金持ちだ~――……」


 江ノ島盾子が巨人の残骸から這い出してきたのと同様に、獣艇の残骸からも、立ち上がる影があった。
 爆発で衣装についてしまったすすを払いながら、幼女が歌っている。


「力をく~れた、投資した~――♪」


 コガネムシの歌の節をつけて、浅倉威子は心底楽しげに嗤っていた。
 那珂の耐久力は、全軽巡洋艦の艦娘たちの中でもトップクラスである。
 浅倉威に襲われた際の無理な出産に那珂が耐えられたのもこのおかげであり、そしてそれは、今や那珂の娘である、浅倉威子についても同様だった。
 江ノ島盾子が怒りに震える。


「……火グマと、ヒグマ型巨人の全能力での爆発だぞ!? クソアニメよろしく爆死しとけよテメェぇぇ――!!」


 江ノ島の絶叫を意に介さず、母親の姿を真似る娘のように、あの那珂の舞台を真似するかのように、浅倉は歌った。


「そ~れな~ら~、お~れで~も~、応え~にゃあなぁ~――!!」


♪そう! 改二になったけど
♪ずっと私のこと好きでいて

♪あなたの気持ちで
♪今日も私 出撃できるから――


 ひゅうるいいい。と、牙の隙に笑みが湧く。
 ブローチについたヒグマの血のイヤリングが、回転する。
 HIGUMA細胞が、湧き立つ。
 爆散した獣艇・ジェノドレッドサバイバーの残骸が、再び重合し、変形してゆく。

 ――ファイナルベント。

 浅倉を囲むように聳え立ったそれは、巨大なガラス細工のコブラであった。
 ステンドグラスのような、モザイクタイルのような、色とりどりのいびつな鱗で彩られた巨体。
 月光を照り返すその煌めきは、アイドル然として立つ浅倉威子の、舞台演出のように輝いていた。


《ひび割れのドッペル Crack of Dawn(クラック・オブ・ドーン)
 その姿は、王蛇。
 この感情の主は、割れて欠落した自分の一部を探してイラ立ち、目につくものを捕食し続けていた。
 食べたものでいびつに自分の体を繕い続けた結果、主もこのドッペルも歪み続けたが、奇跡的なバランスで存在を保っている。
 クラックガラスのように、むしろヒビが入り続けたためにその強固さと独特の美しさを増したその姿を、主は割と気に入っている。》


 浅倉はそして、月の輝く夜空に向けて指を上げる。

「爆死なんかしねぇよ……! 俺は、大商人サマに投資してもらってんだぜェェェ――!!」

 江ノ島盾子と浅倉威子に差をつけていたのは、『K戦略』と『r戦略』の違いだけでもなかった。
 浅倉に今力を貸しているのは、捕食してきたヒグマたちだけではない。
 むしろ、捕食してきたヒグマの力だけを比較するならば、どれだけ大量の無能力ヒグマを寄せ集めたところで、強い能力持ちのヒグマには敵わないだろう。
 だが、浅倉が拾ってきた出会いの数々は、捕食したヒグマや浅倉自身の力を、今や何倍にも何十倍にも高めている。

 その出会いにて為された『投資』の一つが今、特大の『値上がり益(キャピタルゲイン)』を打ち出していた。


 ――ドゥームズデイ・ドレッドノート。

 巨大な蛇が、その口を開く。
 その奥には、全ての絶望を呑み込もうとする空間の裂け目が覗いている。
 浅倉の繰り出したドッペル――、ひび割れのドッペル・クラック・オブ・ドーンが展開するブラックホールの規模は、江ノ島のものよりもはるかに大きく見えた。
 江ノ島盾子は慄いた。


「ふざけんな! ふざけんな!! なんでオマエまで!! 私様は、最高品質のヒグマを回収していたハズだ――!!」
「俺は質も量も最高級なんだよ!! 俺に喰われた奴も、投資してくれた奴もなぁぁ――!!」


 浅倉が指を振り下ろすと同時に、巨大なコブラが江ノ島盾子に向けて飛びかかる。

「うおああぁぁぁあぁぁ――……!!」

 江ノ島の絶叫の音すら、空間の裂け目に呑み込まれる。
 江ノ島盾子が全力で展開した空間の断裂が、クラック・オブ・ドーンのブラックホールと打ち消し合う。
 対消滅による凄まじい閃光と突風が、一帯に吹き荒れた。
 極大のエネルギーの激突。
 その余波が収束するまでには、ゆうに1分近くを要した。


「ぐあっ……、ガハッ……、があぁ……」


 風が収まった時、江ノ島盾子は傷だらけになり、地に倒れ伏していた。
 彼女は髪留めも呑み込まれて乱れ髪を晒し、鉤裂きだらけのボロボロの制服が土と血にまみれていた。
 周囲に展開されていた空間の断裂は、消え去っている。
 エネルギーを使いすぎて、もはや彼女に、『ブラックホール』を開くことはできなかった。

 砂煙の奥から、肩で息をする江ノ島盾子に、幼女がゆっくりと歩み寄ってくる。
 眼を爛々と光らせ、肉食獣のような暴虐の笑みを浮かべて、アイドル姿の幼女は問う。


「お前には、『帰る場所』はあるのか……?」
「な、にぃ……?」

 息を荒げ、よろよろと立ち上がる江ノ島盾子の反応に、幼女は勝ち誇ったように笑みを深めた。


「俺にはあるぜ……! 『帰る場所』がなァ!!」

 ――ソードベント。

 ベノサーベルを振りかぶり、浅倉は江ノ島盾子に斬り掛かっていた。

 紙片を溢れさせ、江ノ島盾子は浅倉の猛攻を捌こうとする。
 浅倉のサーベルを、艤装を、江ノ島の紙が喰らい取る。
 だが、その紙は浅倉の素手に、爪に、次々と引き裂かれてゆく。
 浅倉威子に、恐怖などなかった。

 無生物を吸収し、恐怖した生物をも取り込むことのできる強力な能力『エニグマ』であっても、もはや浅倉には通用しない。
 むしろ恐怖しているのは、江ノ島盾子の方だった。
 喉を引きつらせ、江ノ島は呻く。

「オマエ……! 私様がこの実験を面白くしてやったのに……!」
「知らねぇな! 俺はこの島に移住しようとしてんだ!!」

 浅倉の手刀が江ノ島盾子の体を切りたてる。
 防御のために、江ノ島の前に大量の紙が展開される。

「それを邪魔する……、お前が悪い!!」

 そのタイミングを、浅倉は逃さなかった。
 口の端に、カードを噛む。

 ――コンファインベント。

 それは相手が発動させたカードの効力を、ファイナルベントであっても無効化するカード――。

 江ノ島盾子が展開していたエニグマの紙が、霞のように消え去る。
 無防備な江ノ島盾子の、驚愕の顔が晒される。
 その時浅倉は、既に江ノ島の目の前に走り込み、次のカードを噛んでいた。


 ――コピーベント。


 その瞬間の浅倉威子の姿は、大舞台のクライマックスのように美しかった。
 周囲で倒れ伏しながら戦闘を見つめていた人々も、対峙する江ノ島盾子自身も、その時、彼女の姿に見惚れていた。

『目からビーム、手からパワー、毛穴からオーラ』

 星空凛の語るように、一流になるための条件として、アイドルの界隈にはそのような格言がある。

 野生と希望に満ちた輝く眼差し。
 躍動する、情熱のオレンジの衣装。
 駆ける、しなやかな脚の筋肉。風に舞う白いスカートのフリル。
 目が離せない。
 存在感だ。存在感の格が違うのだ――。

 月光に鋭く、浅倉の爪が煌いた。

 それはグリズリーマザーの『活締めする母の爪』、そして黒木智子の『神経締めする娘の爪』を見ていた浅倉の、この島で得た最大にして必殺の武装。
 どんな小さな傷でも、その傷を致命傷にする呪いの爪――。


「『野締めする羆の爪(キリング・フレッシュ・フレッシュリィ)』――!!」


 左脇腹から右肩まで、逆袈裟に駆け上った浅倉の一撃が、江ノ島盾子の胸板を、三本の赤い線で深々と切り裂いた。
 江ノ島盾子が、一瞬にして白目を剥く。
 不可避の絶命――。
 仰向けに倒れた江ノ島の顔を踏みつけ、浅倉威子は高らかに快哉を上げた。


「ハハハハハハハ!! やった、やったぜ! オイ、勝ったぞ武田ァ――!!」


 何度も何度も江ノ島の頭蓋を踏み潰し、完膚なきまでに砕ききる。
 そして浅倉は、傷だらけのまま呆然としている司波深雪へ、にっこりと振り向いた。

 それは本当に年頃の幼女らしい、とても無邪気で、可愛らしい笑顔だった。


「おい、主催さんよ? 良いんだよなこれで? それじゃあ俺は約束通りこの島に――」


 そう言いかけて、浅倉の言葉は不自然に止まる。
 どん、と、背中に衝撃があった。
 胸元が、熱い。

「あ……?」

 見ればそこには、自分の心臓が、誰かの手に貫かれ、胸から飛び出していた。
 ぼたぼたと血がこぼれて、スカートに赤くシミが広がった。

 ――なんだよ。せっかく那珂と同じ衣装だったのに、汚れちまうじゃねぇか。
 ああ、しまったな。
 そういえば俺の体はずっと、戦いの返り血で真っ赤だった。
 血の落とし方、那珂に教えてもらわねぇとな……。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――森の中で一人静かに立っている(Ein Männlein steht im Walde ganz still und stumm,)
 ――すっかり赤いマントをまとって(Es hat von lauter Purpur ein Mäntlein um.)
 ――はてさて、この小さい人は誰?(Sagt, wer mag das Männlein sein,)


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「……ちょっとだけ、危なかったわ。今のは」

 浅倉の体から流れる血で、すっかり赤く染まった人物が、そこには立っていた。

 殺された江ノ島盾子の腹部から、新しい江ノ島盾子が産まれていたのだ。
 浅倉の体は、背中から彼女の手刀に貫かれ、ぶらぶらと力なく宙に吊られていた。

 彼女は死んだ浅倉の腹部を抉り、浅倉威子の子宮や卵巣をぐちゃぐちゃに挽き潰す。
 浅倉威子に成長しようとしていた胎児をいくつも握りつぶし、江ノ島盾子は喰らう。


「……マジで、ミズクマの能力をゲットした上で、私様と同じ『完璧な人間型のヒグマ』……、『自分の取り込んだ全てのヒグマの能力を使う能力』に目覚めてやがったのかコイツ……?
 ただの参加者が、身一つで、自然にその境地にまで至れるモンだとは恐れ入ったわ……」


 ぼりん、ぼりん、と。
 浅倉の総身を喰らいながら、全裸の江ノ島盾子は感慨深げに呟く。


「でも、『唯一にして絶対の、最後にして究極のHIGUMA』は、2人いらない……。私様だけだ……!!」


 浅倉威の唯一の敗因は、女性としてのミズクマの能力を把握していなかったことだけであった。
 元々男性であり、初めて女性の肉体となっていた彼には、無理もないことだった。
 その一瞬の判断の遅れが、彼の存在を終わらせ、江ノ島盾子を生き延びさせた。

 全身に弾痕が刻まれた状態で、司波深雪がふらふらと立ち上がる。

 ――浅倉さんの戦いを、無駄にするわけには行かない……!

「この時を、逃すわけには……!」

 今の江ノ島盾子は、浅倉との戦いで、ほとんどのヒグマの能力を使い果たし、使用できなくなっているはずだった。
 司波深雪は力を振り絞り、江ノ島盾子を攻撃しようと踏み出す。
 だがそんな彼女に、江ノ島は絶望的な笑みを浮かべて、振り向いていた。

「……絶望のアイドル、江ノ島盾子ちゃんだよー! ……ってかぁ!?」

 口を浅倉威子の血で濡らした江ノ島盾子には、早くも軽巡洋艦の艤装が生じていた。
 絶句する司波深雪に、連装砲の砲口が向けられる。


「全ての希望が潰えた今……、オマエラはもう、終わりだよ!」


 砲撃が、司波深雪に向けて放たれる。

「深雪――!!」

 その瞬間、彼女の前に、百合城銀子が飛び出していた。
 司波深雪を庇って幾つもの砲弾を受けた銀子の胸から、赤々と血が噴き出た。
 深雪の目の前で、百合城銀子は、いやにゆっくりとのけぞり、吹き飛んだ。

 白い百合の肌に跳ねる赤が、星座を描くようだった。
 まるで絵画のように、美しく亡骸になってゆく百合城銀子は、微笑んでいた。
 その唇は最後に、司波深雪に向けて音もなく呟いた。

 ――撃ち抜いてよ、マイガール……。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ――開廷。

 司波深雪が目を開けた時、そこは裁判所だった。
 断絶のコート。
 四元数環の異次元が、ユリ裁判のフォーマットで現出した時に形成される領域だ。
 それは百合城銀子が最後の力で提訴した、この島で最後となる裁判――。

 被告人席に立つ司波深雪に、壇上から声がかかった。

「被告人、司波深雪。キミは自分の罪を認めますか? がうがう」
「百合城さん……」

 裁判長の席で彼女に微笑んでいるのは、百合城銀子だった。
 ――いや、厳密には違う。
 それは、ほぼ完全に聖杯と化し、自我も消失した穴持たず50・イソマが、最期に自己に転写した、残留思念であった。

 司波深雪は、この最終決戦に臨んだ時から、ずっとこの時を待ち続けていた。
 百合城銀子も、それをわかっていた。
 深雪は覚悟を決め、息を整えて裁判長の問いに答える。


「……認めます。私はかつて、傲慢の罪を犯し、お兄様をヒグマにしてしまいました」

 あの王道楽土で行われた質疑の失敗を、もう彼女はしなかった。

 群れに鳴く影に背を向け、血に飢えたエゴを叫んでいたあの頃。
 この島を昏迷に陥れ、江ノ島盾子という透明な嵐を呼び込んでしまった主犯。それが司波深雪だった。
 罪を認めた被告人に、裁判長は優しく微笑む。


「……それで、透明な嵐の中、キミの望むものは、見つかったのか?」
「はい……。あるヒグマ……、そして人間たちが、私に教えてくれました」

 佐天涙子。夕立提督。ビショップ。そして百合城銀子たちの顔が次々と思い浮かぶ。
 百合城銀子の問いに司波深雪は、豁然と目を見開いて叫んだ。


「私は、私の望むもの、本物のスキを見つけました!!」


 そして裁判長は、被告人の導き出した結論を、問う。

「司波深雪、キミのスキは、本物――?」
「はい、本物です!!」


 司波深雪は――、いや、このヒグマ帝国の指導者にして庶務班長、穴持たず46・シロクマは、胸を張って答える。


「ご照覧あれ!! 私は、スキを諦めません!! 私は、今生のこの身の全てを、ヒグマに捧げます!!
 身を捧げてこの島を救った英霊として、お兄様と共に、『英霊の座』に登ります!!」


 大スキなお兄様を手に入れるには、お兄様を捨てる必要があった。
 そして、お兄様と自分自身と、スキだという執着の全てを捨てる必要があった。

 全てを捨て去り、ヒグマ島を救った先にのみある『英霊の座』にて、お兄様とひとつになる――。

 それが司波深雪に提示された、最後の展開図。


「百合城さん、いえ、イソマ様、いえ、この断絶の壁の神とあらゆる英霊よ――!!」


 司波深雪は言いながら、被告人席の柵を乗り越え、百合城銀子の姿をしたイソマに飛びかかっていた。
 熟れた月と眠る森を断絶した境界が、今、破られる。


「――どうか私を、『ヒグマ島の聖杯』にしてください!!」


 百合城銀子と司波深雪の唇が、キスのように重なる。
 この島の龍脈が、聖杯が、死者たちの魂が、蜜のように溢れ出す。
 約束のキスを通じて、全てが司波深雪に流れ込む。

 その一瞬――。
 Funeral(葬列)から。
 Grave(墓穴)から。
 Gehenna(地獄)から。
 ――FGGから。

 彼女の雇い主だった男の叫びが。
 彼女を追認する祈りが、この断絶のコートのジャッジガベルを、鳴らした。


《託したぞ!! ヒグマでも人間でも参加者でもいい!!
 気づいてくれ!!
 僕ら『スタディ』の目的を、達成してくれ――!!》


 ユリ、承認――。


【穴持たず50(イソマ) 司波深雪に捕食】


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「エントロピー逆転――! 『氷炎地獄(インフェルノ)』!!」


 その時、連装砲を放っていた江ノ島盾子の体が、凍結していた。
 江ノ島盾子の周囲全体が、一瞬にしてツララと氷原に覆われる。

 崩れ落ちた百合城銀子の影から、右手を伸ばし構える司波深雪の姿が見えた。
 彼女の体からは、一瞬前とはまるで隔絶したレベルの、莫大な魔力があふれている。

 魔法演算領域を破壊された司波深雪は、もう魔法を使えないはずだった。
 しかしユリ裁判のもたらした変革は、彼女に最後の奇跡と希望を与えた。
 彼女は今、ヒグマ島の聖杯・イソマを捕食し、彼女自身を聖杯と同化させている。
 龍脈から流れ込む莫大なエネルギーが、彼女に元の自分以上の魔法を使わせているのだ。

 それに江ノ島盾子が気づいた時は、既に遅かった。


「『コキュートス』」


 江ノ島盾子は、司波深雪のその呟きを聴くこともなかった。
 その瞬間に、江ノ島盾子の精神は、一切の活動が停止していたのだ。


「……あなたは、死んだことさえ気づかない……!!」


 それは、司波深雪が切り札としている、先天的に保有していた魔法。
 それは覚めることのない永遠の孤独。
 精神活動を永続的に停止させる魔法であった。

 この魔法を行使された人間の精神が蘇ることは無い。
 凍りついた精神は死を認識できず、縛られた身体は最後の姿勢のまま彫像と化す。
 『コキュートス』を浴びた精神は、完全に停止し、二度と動き出すことは無い。
 肉体という確固とした存在とのつながりを持たない精神は、情報体を保つことが出来ずに霧散する。

 シーナーの『治癒の書(キターブ・アッシファー)』の最終段階や、左天の『第六波動』にも似たこの攻撃は、まさに必殺の一撃だ。
 それはヒグマ島の聖杯・イソマを取り込み、聖杯と同化した今この瞬間の彼女だからこそ放つことのできた、最終攻撃であった。

 身も心も氷漬けになった江ノ島盾子の前で、司波深雪はしばし立ち尽くしていた。
 自分の荒い息遣いだけが聞こえる。
 十数秒もたってから、ようやく彼女は、自分たちの勝利を確信した。


「やっ……た……、やりました……」


 だが、彼女が緊張の糸を切りそうになった瞬間だった。
 江ノ島盾子を覆っていた氷に、ヒビが入る。
 氷漬けになった眼が、動く。
 その爪が、バキバキと氷を割ってゆく。


「……お……し……かっ……た、なぁぁぁぁぁぁ――!!」


 司波深雪の精神と肉体は、既に聖杯化を始めていた。
 ウィニングモードのエプロンドレスの腹部からは、金色の聖杯が形を成し、今にも彼女の肉体を吸収して産まれ出でようとしている。
 意識も乱れ始めている深雪の放った『コキュートス』は、完全ではなかった。
 江ノ島盾子の凶悪な自我と精神を、完全に停止させ凍結粉砕するには、足りなかったのだ。

 氷を砕き、あたかも冬眠から醒める熊のように出てくる江ノ島盾子の姿に、司波深雪は呆然と立ちすくむことしかできない。

「そ、んな――」


 だが、氷の中から降り立った江ノ島盾子は、ふらついた。
 千鳥足のように、脚をもつれさせ、地にへたりこむ。

「な、何だ……? 何だコレは……!? 私様の中で、何が……!?」

 江ノ島盾子の肉体が、突如痙攣を始めていた。
 がくがくと震える彼女の肩口の肉が盛り上がり、人面瘡のように顔を形成する。

「グッハッハッハッハァ――!!」

 それは、浅倉威子の顔だった。
 江ノ島が、悶えた。


「――俺は、俺だ!! 食った食われた程度で、俺は揺らがねぇぇ!!
 俺は今も、これからも、何があっても、どんな姿になっても、俺自身だぁぁぁ――!!」
「や、め、ろぉぉぉぉ……! 私様を、食うな……! 喰うんじゃねぇぇぇぇ――!!」


 転生を繰り返し、呉キリカのソウルジェムさえも弾き返した浅倉の強靭な精神は、江ノ島盾子に捕食されても、まだその胃の中に消化されず残っていた。
 司波深雪のコキュートスは、不完全ではあったが、確かにその効果を発揮していた。
 コキュートスによって重篤な損耗を受けた江ノ島盾子の精神は、その肉体の支配を大きく乱した。
 その隙に今、その肉体を浅倉が内側から喰らい返そうとしているのだ。

 浅倉威は、江ノ島盾子と同じ『自分の取り込んだ全てのヒグマの能力を使う能力』を、身一つで自得していた。
 同じ能力を持つ両者が喰らい喰らわれ、その均衡が崩れた時、果たしてそれは、どちらがどちらを捕食し取り込んだと言えるのか――?

 江ノ島盾子の肉体を構成するHIGUMA細胞の支配権が、浅倉に侵食されていく。
 既に体の半分が、浅倉威子のものに入れ替わり、江ノ島盾子は苦痛に悶絶していた。


 愛を抱いて、いま君のために進化する魂が、願っていた未来を呼ぶ――。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 私の魅力に気付いた?
 アイドルも大変なんです!

 長めのオフも取れないわ
 お疲れの私 おやすみ――!

 スキかしら? ダイスキかしら?
 セカイイチ ワタシガスキ?

 伝わるよ 想い届けて!
 この煌めく戦場(ステージ)で――!

『改二なのー――!!』

 最高の改二になったから
 もっとあなたのこと教えてね

 アイドルとしてじゃなくって好きよ
 本当だよ――?

 もう 改二になったけど
 ずっとあなたのこと見つめてる

 私の想いで あなたの心
 制圧できるかな――?


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 倒れ伏す暁美ほむらの視界で、江ノ島盾子のスタンドビジョンが、崩壊していくのが見えた。
 浅倉威の纏っていた、数多くのヒグマの魂が、そのドドメ色の醜悪な精神像を、根こそぎ捕食しているかのようだった。

 島が、怒っている。
 ヒグマの島が。
 この地の龍脈の全てが。
 阿頼耶識の奥底から湧く、生命たちの炎の華が、浅倉威の反乱を通して、司波深雪の抱く聖杯を通して、氾濫している。
 この絶望を浄滅し尽くそうと、怒りを燃やしている。

 歌が響く。
 生命の讃歌が。
 覚めない孤独に凍えていた子供たちが、想いを叫び、全力で世界を彩ろうとしている。

 この島に。
 君の奥に。
 神秘を見た全ての者たちの想いが、絶望と戦っているのだ。


「見ててくれ!! 俺はやり遂げる!! やり遂げて、俺は、那珂と、この島に住むんだ――!!」
「ふ、ざ、けんなぁぁぁぁぁ!! この、ドグサレがァァァァァァァァァァァァァァァァ――!!」


 江ノ島盾子の肉体は、細胞の支配権の奪い合いでぐちゃぐちゃの肉塊になり始めていた。
 生きながらに内臓をヒグマに喰われているかのような、江ノ島盾子の苦痛と怨嗟の悲鳴がこだまする。
 ……いや、もはやそれは、江ノ島盾子と呼んで良いものかすらわからなかった。

 口が、腕が、目が、脚が、様々な場所に生じては吸収され、乱れていく。
 女性のパーツで構成された、蠢く奇怪な肉塊と化したそれは、叫び、悶絶し続けている。


『……今です! 僕たちが生きて物語を紡ぎ続けるには、今やるしかない!!』

 隻眼2が叫んでいた。


―――その時の様子を、ヒグマは後にこう語る―――


 江ノ島盾子の攻撃で吹き飛ばされ、火に巻かれていた僕たち3名は、火傷と衝撃で起き上がれずにいました。
 ですが、あの浅倉威子さんの戦いぶりを見て、奮起しない者がいるでしょうか?
 いや、いません――!!

 僕にとっては、浅倉威子――、浅倉威さんは、街中で大量に分裂して襲い掛かってきた、恐ろしい危険人物でした。
 でもそんな彼ですら、武田さんたちとの出会いに打たれて、この島を守るために、あれほどまでに奮戦していたんですよ。
 彼がこの島で生きるために戦っているのに、自分だけ何もしないなど、生物として恥ずかしくはないのか――!?
 そんな、憤りにも似た感情が、僕の心には溢れていました。

 このまま浅倉さんの精神が、完全に江ノ島盾子の心身を制圧できる確証もありません。
 江ノ島盾子という存在にトドメを刺すには、このタイミングしかありませんでした。
 だから僕はよろよろと立ち上がり、目を決意に燃やして語ったんです――。


『僕は、ずっと李徴さんたちを、宮本さんたちを見てきました! そして、皆さんの生き様に心動かされたんです!
 この島であったことを、この戦いを、忘れてもらいたくない!! 忘れちゃいけない!!
 僕は、僕たちが生きた証を残したい! 生き延びたい! 語り継ぎたい――!
 ヒグマでも、お二人のような「作家」になりたいんです――!!』

 脳裏に、ケレプノエの笑顔がよぎる。李徴やフォックスウェカピポの妹の夫、宮本明たちとの会話が思い出される。
 自分にだって、この島で守りたいものはある――!
 そんな隻眼2のテレパシーに、宮本明が、丸太を支えに立ち上がりながら答えていた。

「お前はもう、『作家』だよ。シャオジー……! その心意気だけで……!」

 彼らの意気に、李徴が続く。

「ああ……。山月記に脳を焼かれて、本当に李徴みたいに気が狂ってヒグマになっちまったただの中国かぶれの社畜のロワ書き手に言われても嬉しくないかもしれんが……。
 明の言うとおりだ、小隻……!! お主は、もう既に、立派な文筆家だ!! 我らが保証する!!」

 自嘲交じりに語る李徴の肩を、宮本明が叩いていた。


「李徴……、もう卑下するな。お前にはそれが自然だったってことだろ。
 ……ハハッ、ある日自分が不思議な力に目覚めて変身するなんて、全物書きの夢じゃねえか、実際」
「明……!」


 宮本明は、自分の中で凝り固まっていた、無用な執着とこだわりの一切が、消え去っていることに気づいた。
 この一日の中で経験してきた、数々の出会いと別れが、こんなにも自分を変えてきたのだと、実感した。

「俺は、尊敬する……。ヒグマを、俺自身を、今まで戦い抜いてきた全ての人を、自然を――!」

 そんな吐息が、自然と宮本明の口を突いた。
 なんて遠い回り道をしてきたのだろう、と思う。
 だが今はもう、彼には自分の為すべきことが、わかっていた。


「李徴さんッ! シャオジー!! 俺を、あんたたちの背中に乗せてくれッ!!
 全員の力で! 人間とヒグマの力を合わせて! ヤツに全力で鉄球を叩き込むッ――!!」
「応ッ――!!」
『はいッッ!!』


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 みんなー! 応援ありがとー!
 ここで大事なお話があります!

 宣誓!
 ファンのみんな!
 私はアイドルとして、今も、これからも、改二になっても、何があっても
 路線変更しないことを、宣誓します――!!


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「那珂! 那珂! 俺はやるぜ、俺はやるぜ!! なぁ、かあさん!! 褒めてくれよ、母さん――」

 江ノ島盾子の内側から、浅倉の希望に満ちた叫びが溢れる。江ノ島盾子の肉体を喰らい返していく。

「絶望に、落としてやる!! オマエラ全員!! 地球の全てを!! 絶望にィィィィィィ――!!」

 めろめろと怨念を吐き、江ノ島盾子が必死に肉体の主導権を取り戻そうともがく。

「――お前が、地球を絶望に落とすことなんて、『できるわけがない』!!」

 その時、浅倉たちの声に呼応するように、宮本明が叫んでいた。
 吹き飛ばされていた彼方から、ヒグマたちの背に乗って、傷だらけの宮本明が駆けて来る。

「なぜなら、我々が!!」
『僕たちが!!』
「江ノ島盾子――!! お前を滅ぼすからだッ――!!」

 『できるわけがない』と、宮本明がこの島で4度目に言ったその時。
 息を合わせたヒグマたち――隻眼2と李徴の走りは、黄金長方形の形に沿っていた。
 その背中に両脚で立つ宮本明は、彼らから伝わる振動を、エネルギーを、その全身で感じ取っていた。
 達人の山から受けてきたLESSONの数々が、宮本明の肉体に回る。

 彼らが行なっていた構えは、あたかも名画の一枚のような、超然とした美しさを見せた。
 奇しくもそれは、ネアポリス王国において、『騎兵の回転』と呼ばれる伝説の回転技術であった。


「これが、俺の、李徴さんの、シャオジーの、義弟さんの、ブロニーさんの――!!」


 二頭の背を踏み切り、宮本明が跳ぶ。
 その脚から脊柱を通り、明は全身に凄まじいエネルギーが登ってくるのを感じた。

 尾閭(ムーラダーラ)。
 丹田(スワディスターナ)。
 夾脊(マニプーラ)。
 膻中(アナハタ)。
 玉沈(ヴィシュッダ)。
 印堂(アジナー)。
 泥丸(サハスラーラ)。

 明の中の7つの結節点が、回転する。
 ヒグマたちという獣の結節点――、鬼骨(アグニ)の力を受けて。
 立ち昇る膨大なエネルギーが、黄金色に輝き、宮本明の頭上に登る。

 そこには今、まさに満月のような、存在しないはずの9番目の結節点(ソーマ・チャクラ)があった。


「この島の全てを乗せた、『穴持たずの鉄球』だぁぁぁッ――!!」


 彼が跳びながらデイパックから取り出していたのは、『HIGUMA』アスレチックに設置されていた、5トンの巨大な鉄球だった。
 宮本明はそれを両手で頭上に抱え上げ、全身の力で回しながら、江ノ島盾子へと飛びかかっていた。

 黄金色のエネルギーを帯び、猛烈な回転を伴った鉄球が、江ノ島盾子に上から激突する。
 江ノ島盾子は、回転を止めようと抵抗する。
 肉塊から何本もの腕が伸び上がり、巨大鉄球を挟んで宮本明と拮抗した。
 骨肉が削れ焦げる。
 回転が止まりそうになる。
 だがその時、江ノ島盾子の抵抗が、急速に鈍っていた。


「――『時間降頻(クロックダウン)』、――『五重停滞(クインティプルスタグネイト)』!!」

 暁美ほむらが、四宮ひまわりと黒騎れいを庇って倒れ伏したまま、誰にも気づかれぬうちに魔法を行使していた。
 ――最後のチェックメイトで、確実に江ノ島盾子の行動を阻害する。
 傷ついた軍神は全員の意識の外で、練り上げたこの手筋を打つ機を密やかに、ずっと狙い続けていたのだ。


 宮本明の耳に、ヒグマ島希望放送で聴いて来たばかりの歌が響く。

 ――進化するんだ。進歩するんだ。あと、20%くらい――!!
    You wish you could be twenty percent cooler!

 鉄球を掴む手に、ジャック・ブローニンソンと、ウェカピポの妹の夫の手が、重なるように感じた。


「うおおおおぉぉぉぉぉぉ――!!」


 江ノ島盾子の抵抗を振り切るために、宮本明は、自分自身をも回転させた。
 全身で回転し、5トンの鉄球の回転をさらに強める。
 江ノ島盾子の抵抗が、弾けた。
 鉄球が、肉塊を圧し潰した。

 空間が、渦を巻く。
 次元が、歪む。
 その歪みの穴を埋めるように、ゼロの空間の中に全てを詰め込んで圧砕するように。
 無限の、黄金の、穴持たずの意志が転輪する。

 浅倉が、江ノ島盾子の薄弱となった精神を、余すところなく貪り食った。
 回転が、江ノ島盾子の細胞の一つ一つに、無数の牙となって突き立った。
 次元の狭間に引きずり込み、その一片たりとも遺さず捕食し、食らい尽くしていく。


「私様を、喰う、な――……!!」


 絶望の悲鳴が、回転の中に、すり潰された。
 最後までその身で鉄球を回し続けていた宮本明すら呑み込んで、その場の全てが、消滅した。


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 司波深雪――いや、穴持たず46・シロクマは、最後に誰もいなくなった戦闘現場を見届け、地に膝をついた。


「……江ノ島盾子。この実験の参加者とヒグマたちは、この苦境の蟲毒の中で、必死に生き抜き、あらゆる困難を乗り越えられるよう、その知性を以て進化し続けてきました。
 ただその成果を寄せ集め、能力を身に纏っただけのあなたは、浅倉さんの足元にも及ばない……。
 あなたは実際のところ、何も変わらず、その場に胡坐をかいて停滞していただけなんですよ。愚かな司波深雪だったころの、私みたいに……」


 微笑むその顔は、まさにユリの花を思わせる、絶世の美少女のものだった。


「進化に取り残された停滞こそ、未来のない絶望……。フフ、あなたにふさわしい、末路ですね……」


 彼女はそれから、最期の力を振り絞って、百合城銀子のもとににじり寄る。
 銀子の遺体は、テディベアのように小さなクマになっていた。
 そのクマの頭を、彼女は愛おしそうに撫でた。

 ごとり、と重い金属音を立てて、彼女の体は地に崩れ落ちる。


「見てますか有冨さん……。これが私たち、人間と、ヒグマの、知性が成し遂げた、革命ですよ……」


 穴持たず46・シロクマさんは、そうして百合城銀子を抱きしめると、静かにその身の全てを、金色の聖杯に変えていた。


【江ノ島盾子@ダンガンロンパシリーズ 消滅】


【浅倉威子(三代目浅倉威)@仮面ライダー龍騎、艦隊これくしょん、魔法少女おりこ☆マギカ、ヒグマ・ロワイアル 消滅】
【百合城銀子@ユリ熊嵐 死亡】
【穴持たず46(シロクマさん)@魔法科高校の劣等生 聖杯化】
【宮本明@彼岸島 行方不明】


    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 スキだから ダイスキだから
 セカイイチ アナタガスキ!

 伝えよう 想い届いて!
 さあ ときめく戦場(ステージ)が――
 待ってるわ――!

 憧れの改二になったから
 もっと私のこと見ててよね!

 アイドルなだけじゃないってところ
 魅せてあげる――!

 そう! 改二になったけど
 ずっと私のこと好きでいて

 あなたの気持ちを
 今日も私 攻略できるから――……


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最終更新:2026年07月21日 23:20