アットウィキロゴ

DESERT MOON


『ハハハハハハハ!! やった、やったぜ! オイ、勝ったぞ武田ァ――!!』
「――! 浅倉さんが、やったと! 勝ったと連絡が来ました!」
「――威子ちゃんは!? 威子ちゃんは無事なの!?」

 武田観柳たち、ヒグマ島希望放送の元に、勝ち誇る浅倉の快哉が届いていた。
 だがその後すぐに、浅倉威子のテレパシーは途絶し、呼びかけへの応答も無くなってしまう。
 『艦隊アイドル改二宣言』を歌い終えた那珂が、その白いスーツのプロデューサーの元に舞台から駆け下りる。

 半壊していた人形遣いの魔女が、魔力を受けて修復されていることから、浅倉がドッペルを発現させたことは間違いなかった。
 だがそうして順当に勝ったにしては、以降の連絡に、あまりにも時間がかかりすぎている。

「どなたか! 私のてれぱしぃに応答してください! 一体どうなったんですか!?」

 観客席の観柳を中心にして、ヒグマ島希望放送に残っていた一同は、固唾を呑んでB-8からの返事を待った。
 その時ようやく、天龍からの静かな報告が入ってくる。

『――天龍型一番艦、天龍より、ヒグマ島希望放送に報告。我ら、江ノ島盾子の全勢力を殲滅セリ。
 繰り返す。我ら、江ノ島盾子の全勢力を殲滅セリ――』

 ヒグマ島希望放送に歓声が上がる。
 だが、続く戦闘詳報に、一行は静まり返った。


『――被害報告。シャオジーおよび李徴、四宮ひまわり、黒騎れいは小破。天龍および龍田、暁美ほむらは中破。
 天津風は4隻の江ノ島棲姫を道連れに自沈。百合城銀子司波深雪を守り戦死。司波深雪は江ノ島盾子の拘束と引き換えに聖杯化……。
 浅倉威子は江ノ島盾子と相討ちにて戦死。宮本明は、江ノ島盾子を完全消滅させた際に行方不明――。
 総員、勇猛果敢に戦い抜きしことをここに報告す――』

 12名中、5名の戦死およびMIA(作戦行動中行方不明)――。
 激戦を物語る、甚大な被害報告だった。
 部隊の三割以上の損耗で、通常、組織的な戦闘力は喪失される。
 既にこの状態で、江ノ島盾子に対抗していた参加者とヒグマの部隊は、『全滅』という評価になる。
 彼らは、自らも全滅しながら、江ノ島盾子を欠片も残さず『殲滅』していたのだ。

「わ、私が、迎えにいきマス――!!」

 ビショップがそう叫び、奔った。
 程なくして、ビショップに連れられ、隻眼2と李徴が天龍と龍田を背に乗せ、暁美ほむらと四宮ひまわりと黒騎れいが支え合って戻ってくる。
 龍田の手には、司波深雪だった、大きな金のトロフィーカップがあった。

 持ち帰られたその金色の聖杯は、テディベアのようなクマの姿が、レリーフになっている。
 それは司波深雪から聖杯が形成された時に溶かし込まれた、百合城銀子の姿だった。
 ――ヒグマ島の聖杯。
 名実ともにそう呼んで差し支えないだろう。

 ほぼ同時に、ヒグマ島希望放送には、復活した相田マナを連れて佐天涙子佐倉杏子、シャイニングドリームたちも戻ってくる。
 体を一から再生され裸だった相田マナには、佐天涙子が、自分の着ていたゴシックロリータの衣装を着せている。
 佐天自身は、ボディースーツのように素肌に密着したヒグマの体毛包帯一丁の状態だった。
 その包帯も、既に足元で破け、能力を酷使した影響で特に腕の周辺から焼け焦げ、ボロボロになってきている。

「回復魔法使える皆さん! 急いで負傷者の救護にあたってください!」

 小屋の中に、武田観柳の号令が飛ぶ。
 魔法少女たちを中心として、体液操作魔術を使用できる間桐雁夜とビショップ、精神科が専門ながら医学知識もある布束砥信などが救護に奔走した。
 那珂が顔を覆って嗚咽を漏らし、夢原のぞみ黒木智子星空凛たちにその背をさすられていた。
 相田マナが、御坂美琴に深々と頭を下げ、美琴は彼女を抱きしめていた。
 そのさなか、生放送の画面にアイキャッチを入れて打ち切る準備をしながら、初春飾利が声を上げる。
 23時をとうに回っている現在、この島に向けて発射された核ミサイルの被害を避けるには、もはや一刻の猶予もなかった。

「ミサイルの着弾まであと30分くらいしかありません! 急いでみんなで脱出しましょう!」
「いいえ~……、それはダメよ~……」

 だが、初春のそんな呼びかけは、龍田の言葉で即座にさえぎられる。

「私は『水能秋乎婆、誰加知萬思(みずのあきをば、たれかしらまし)』で、この島の周囲に、大量の敵性存在を確認しているわ」

 江ノ島盾子との戦闘自体の損傷は比較的軽微だった龍田が、治癒魔法を掛けられていた身を起こし、指摘する。
 脱出すべき方向、西の海を指差し、彼女はその『敵』の姿を思い出す。

「その存在は、私がこの島で、初めて食べさせてもらった『龍田揚げ』と同じもの――」
「……I see! ミズクマね!」
「アレかよ! 司波深雪が死の河でぶん投げてた、増えまくる毛玉みてえなヒグマ……!!」

 龍田の発言で、布束砥信と黒木智子がその敵の正体に思い至る。
 田所恵が屋台で龍田揚げにし、司波深雪がその娘を使役し、浅倉威も江ノ島盾子も食べていた、この島で最大数を誇るヒグマ。
 『ミズクマ』という単語に、夢原のぞみと呉キリカも反応する。
 海食洞で邂逅したあの黒い威容が、脳裏にフラッシュバックしていた。

「そ、そうだ! みんな、海に出ちゃだめだ! あたしも食べられかけたもん!」
「ああ、アレはダメだ! 今すぐ海に出るのは自殺行為だ……!」
「ミズクマは、有冨が実験完遂のためにこの島の周囲に放った強大な防衛網よ! 参加者は、少なくともこの島の海上1キロ以遠には脱出できなくなっている!
 空を飛べる者が後30分で全員を連れ出すのもimpossibleだわ……!!」

 穴持たず39・ミズクマは、『水嶋水獣』の民話にもあるように、この島の海上防衛の要衝となっている強大なヒグマだ。
 凶悪な貪食能力と、幼生生殖(ペドゲネシス)によるほとんど無尽蔵の増殖能力で、この島の周囲を海域を事実上封鎖してしまっている。
 そしてミズクマの完全な支配権は、既に亡き有冨春樹しか有していない。制御不能だ。

 しかも現状の彼女は、シーナーが感覚を狂わせて命令を変更し、『周辺海上を通るヒグマと研究員以外の生命体は、全て捕食』するように仕向けられている。
 彼女は、ただ道具として、実験完遂のための制御装置として、使われ続けていただけの哀れなヒグマだ。
 だがそれでもミズクマは今、生存者たちに対する最後の障害にして最大の敵性存在となっていたのだった。

 佐天涙子が拳と掌を打ち合わせた。
 御坂美琴が頭を抱える。


「……じゃあ、ミサイルを撃ち落とすしかないわよね!」
「STUDY関連のミサイルを撃ち落とすのはこれで2回目ね……」

 友人二人の言動に、初春は青ざめた。

「何言ってんですか佐天さん!? 御坂さんも! 相手は核ミサイルですよ!?」
「そもそも時間内の脱出が厳しい上に、ミサイルを放置してたら、結局この島は破壊されちゃうんでしょ!? ならやることはそれしかない!」

 小屋の中で、佐天涙子はその腕を振り広げる。
 その瞳は、熱く燃えていた。

「私は、浅倉さんの住みたかったこの島を、守りたいよ……!」
「……那珂ちゃんからも、お願い! この島には、ヒグマさんたちがいるんだよ!」
「スミマセンが、ヒグマ帝国要職の最後の生き残りとしてモ、平にお願いイタシマス……」

 目を泣き腫らした那珂と、ビショップヒグマが、初春達に向けて深々と頭を下げる。
 初春は口をへの字にした。
 クマーが描かれた『ヒグマ島希望放送』の旗の絵で止まっている、生放送の映るパソコンを指す。
 コメントには今も次々と、世界中の心配する声や、雑多で胡乱なアイディアがとめどなく流れている。

「――撃ち落とすにしても弾道計算は!? こんなノートパソコンじゃとてもできませんよ! 特にロフテッド軌道ですよ!?
 あの時だって、御坂さんと布束さんのお知り合いの外部協力者がいたからどうにか間に合っただけなのに……!」
「……演算装置が、いるってか?」


 その時立ち上がっていたのは、黒木智子だった。
 彼女の衣装のアクセサリーとなっていた水銀が見る間に蠢き、巨大な球体となってその足元にわだかまる。
 『月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)』だ。
 その挙動を目の当たりにした間桐雁夜が、一目でそこに込められた魔術的技術の高さと、それ自身の性能を理解する。

「うおっ!? なんだこの礼装! すごいな!? え、これお嬢ちゃんの作った礼装!?」
「この月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)は、かの魔術師の総本山、時計塔のロード・エルメロイ謹製の礼装にして高性能演算装置だ。
 雁夜おじさん、お前の属性水だろ? 私の代わりにこれに供給してやってよ。で、他の魔力使える連中も協力して計算して」
「なんで俺のこと知って……。というか、智子ちゃんだっけ、なんでお嬢ちゃんがロード・エルメロイのこんなすごい礼装持ってるの?」
「私のサーヴァント……、キャスターが、最後に『引き当てて』きてくれたんだよ」
「そうか……! 君も、このヒグマ島の聖杯戦争の参加者だったわけか! 道理で……! これなら弾道計算も楽勝だろうな……!」

 思わず治療の手を止めて、しげしげと水銀球を眺めまわしていた雁夜は、納得した様子で何度も頷く。
 魔術師からも太鼓判を押された智子は、改めて自信を持ち、初春飾利に向けてガッツポーズを見せた。

「――んでもって、魔術的に計算した軌道を、砲撃手に伝えりゃいい!」
「砲撃手って誰ですか!?」

 初春の叫びに、佐倉杏子と、その治療を受けていた暁美ほむらが、揃って一人の人物に目をやる。

「……そりゃあなぁ」
「……あなたしかいないでしょう」
「……そうよね。ボンバルダメント(砲撃)と言ったら、私よね」

 その注目が集まる人物、巴マミが、杏子と共にほむらの治療をしていた手を止め、頷く。
 彼女はそのまま、やきもきする初春飾利の手を取った。


「初春さん。私ならできると思うわ。正直、外のカノーネ・フェロヴィアーリオ(列車砲)、とても気になってたの。撃ってみたいなぁって」
「うぅ~……、かといって、この島や地球上に核汚染の被害を及ぼさないようにするには、単純に撃ち落とす迎撃ではダメです!!
 一体どうするつもりで……!」

 そして絞り出された初春の最後の反駁に、スッと挙手する人物がいる。

「――私が、行く」
「佐天さん! 言うと思った!! すっごい嫌な予感がしたからここまで止めてたのに!!」

 佐天涙子の予想できた挙動に、初春が頭を抱えた。
 彼女たちを見やりながら、佐天涙子は意を決した表情で、静かに言葉を繋ぐ。


「この前は御坂さんだった。今度は、私が行く。『南斗人間砲弾』で」
「いや、行くにしても宇宙空間で、地球から正確に弾き返しながら破壊しないといけないのよ……!? 佐天さんにそんな演算が……」
「御坂さんこそ、今そんな演算できないでしょ。全然本調子じゃないの、見てわかるよ」

 御坂美琴が止めようとするが、逆にその声は佐天涙子に遮られる。
 既に本日、一度宇宙空間から出戻っており、津波の中を命からがら生き延び、左肩を『H』の矢で破壊され大量出血し、今の今も全世界への生配信で電力を使い続けている御坂美琴は、既にいつ燃え尽きてもおかしくない出涸らしの状態だった。
 不安げな美琴と初春に向け、佐天涙子は胸を張って言い切る。


「私は浅倉さんと一緒に、説明書を読んだから。実際動かしたし。砲弾側でも、イケる!」
「そんな無茶苦茶な……! そんなことができる保証なんて……!」
「できるさ! 涙子なら! 私はコイツの戦いを間近で見てたんだぜ!? あのアーカードを斃した女の戦いをよ!!」

 その時、黒木智子の叫びが、佐天を援護した。
 駆け寄って佐天の肩に手を置き、ゴスロリ衣装の智子は小屋の一同にふれまわる。
 2人は、あの109号区の氾濫を生き延びた戦友だ。
 その経験以上に、説得力のあるものはなかった。


「私は……、この島に来るまで、明日も同じ昨日が続くばかり……、そんな無駄な日々ばかりを過ごしてきた。
 だが、コイツは違う! 私たちに、絶対に違う明日と、違う自分を連れてきてくれる――!!」

 過去の記憶を、噛み締める。
 言いながら、叫びながら、黒木智子は震えた。


「見ろ! 私は変わったぞ!! こんな冴えない、喪女の私でさえも!
 フリフリの服着てアイドルだってできて! 魔術師になってヒグマをブッ倒せたんだぜ!!」

 この島での出会いと戦いは、彼女を大きく変えた。
 20%どころでは済まない。
 恐らく純粋な一般人としては、一番進化し、進歩したのではないかという自負すらある。
 智子はそして佐天涙子に向き直り、その両肩を掴み、唾を飛ばすほどの勢いで激励した。


「いいか涙子! お前は、私よりもさらに美しくて、可愛くて、格好良くて、強い!!
 だからお前は、北斗のアニオリ奥義だって習得できるし、ミサイルにだって、勝てる――!!」


 一同が呆然とする中で、治療を受けていた天龍が立ち上がり、初春飾利の肩を叩いていた。
 彼女もまた、佐天涙子のあの炎を間近で目撃した証人だった。

「ああ……、今の涙子なら、できる。俺も、保証するよ、飾利……」
「天龍さんまで……」

 天龍の言葉に続き、夢原のぞみと、佐倉杏子からも声援が飛ぶ。

「大丈夫だよ! 涙子ちゃんなら!! 『焼くべきものだけを、焼き尽くせる』!!」
「そうさな。今のアタシや、ほむらと同レベルの力を感じるから、それくらいできるだろうさ」

 そして最後に、御坂美琴と相田マナが、顔を見合わせ、涙子の手を取った。

「……息苦しいから、極力息は止めてた方がいいわよ」
「私にくれた、みなぎる愛があれば、絶対にやり遂げられるよ!!」
「……ありがとう、御坂さん! 相田さん! みんな――!」


    ○○○○○○○○○○


 雪の中、HIGUMAアスレチック跡の東端に鎮座する南斗列車砲が、月光を照り返している。
 一同は、雪の降る島の夜に歩み出していた。
 大きな列車砲に触れながら、巴マミが呟く。

「このカノーネ・フェロヴィアーリオ(列車砲)……、すごく使いやすく整備してくれているわ。魔力がとてもよく馴染む……」
「そりゃあ、浅倉さんはすごい仕事人だったもの……! 頼んだわ、巴さん……!」
「ええ。私も、この浅倉さんの仕事に恥じない結果を、出すわ……!」

 巴マミと頷き合い、列車砲の砲身へ昇ろうとする佐天涙子の手が、引っ張られる。
 初春がずっと、彼女の左手を握りしめ続けていた。
 佐天はそんな親友へ、優しく微笑みかける。

「初春……、大丈夫だよ。もう、そんなに心配しないで……?」
「佐天さん……。私の『定温保存(サーマルハンド)』は、宇宙までは持たないでしょう。それはわかってます。
 でも、せめて少しでも佐天さんが、『佐天さんのままの状態であり続けられますように』……。
 これが、私からできる、せめてもの『バトンタッチ』です……」
「ありがとう、握力強くなったね、初春……」

 初春の指の痕が、じんじんと痛むほどに、佐天の掌に残っていた。
 目を伏せて涙を零す親友を今一度抱きしめ、佐天は列車砲に駆け上がる。

 『砂漠の月(デザートムーン)』の銀色の金属が、佐天涙子の周りに浮かび上がる。
 巨大な銀色の金属球に包まれ、佐天涙子が列車砲の砲身に収まる。
 その様子を見届けて、黒木智子が、月霊髄液の水銀球を南斗列車砲に接続した。
 水銀の導線が、次々と人々の手に繋がれる。


「……じゃ、予定通り頼んだぜ、雁夜おじさん、魔法少女連中!」
「ああ、任せろ! この島で生き残った俺たちは、最強なんだ――!!」


 号令に合わせて、水銀の回路に、一斉に魔力が流し込まれた。
 間桐雁夜が、暁美ほむらが、佐倉杏子が、呉キリカが、メルセレラが、ケレプノエが、ビショップが、武田観柳が、人形遣いの魔女が。
 魔力を溢れさせる。
 表面にいくつもの樹状の紋様を走らせ、月霊髄液がミサイルの予測軌道を演算する。
 その水銀の礼装に触れる巴マミに、はっきりとその詳細が伝わる。

「――これが『カルコラート・フィナーレ(最終計算)』ね!!」

 巴マミの刮目と共に、南斗列車砲が金色に輝く。
 南斗列車砲に充溢する巴マミの魔力が、砲を特盛のティロ・フィナーレに飾り立ててゆく。
 フォックスが持ち込み、武田観柳が卸し、浅倉威が整備した巨砲が今、最強の砲弾と、最優の砲撃手によって、完成する。


「……この一撃は私たちの、『プレヴェヌート・スフィラータ(葬列を阻止する)』!!」


 狙いを澄ませた極大の一撃が、島全体を揺るがすほどの衝撃と共に打ち上げられる。
 銀の砲弾は雪風を引き裂き、雲を貫き、真っすぐに高く高く、夜空へと吸い込まれていった。


「――みんな! 涙子ちゃんを応援するにゃ! 絶対に、全てがうまくいくように!!」

 その時、佐天涙子の打ち上げの様子を見つめていた星空凛が、一同に呼び掛けていた。


「マミちゃん! 智子ちゃん! 那珂ちゃん! メルちゃん! 凛はこの島でみんなと組めて、歌えて、本当に良かった!」

 目を潤ませながら、調査兵団の制服姿の凛は声を絞る。
 ジャン・キルシュタインの最期の言葉が思い出される。
 最後まで頑張る人たちを応援するために、星空凛は歌い続けて来た。そして、そうあって欲しいと願われた。
 心臓を捧げるように、凛は胸元をぎゅっと掴んだ。


「『人間』と『ヒグマ』と『軍艦』なんていう、全く違う全てを繋げられる『アイドル』という『魔法』を、凛たち『とりマなメ』は示せる!!
 私たちは、この島だからできた唯一無二の『応援団』!! だから最後の最後まで、みんなで、歌おう――!!」


 南斗列車砲の元に集っていたメンバーたちは、凛のその言葉に、顔を見合わせて頷く。

「――ええ!」
「ああ、そうしようぜ!」
「勿論だよ!!」
「そうしましょう。祀りは、最後まできちんとやるべきだわ。それが流儀……」


 メルセレラは、ケレプノエと目を見交わし、微笑んだ。
 この島に生き、旅立っていった、数多くの同胞と戦友たちを思い出し、メルセレラは空を仰ぐ。


「みんなをきちんと、カントモシリ(天上界)にイヨマンテ(熊送り)できるように……」


 イヨマンテの儀式では、神を遊ばせ、その魂を肉体から分離させた後、火を焚き、天に矢を射る。
 そして饗宴を行なって歌い祈るのだ。
 彼らの魂が、無事に天に届くように――。


    ○○○○○○○○○○


 凛からテレパシーで伝わったのは、初めての曲だった。
 だが、とりマなメのメンバーには、その歌は不思議と馴染んだ。

 しんしんと雪の降る月夜の空に、メルセレラのスピーカーから晴れやかな音が響く。
 まるでチャペルで新しい門出を祝うような、心を明るく湧き立たせるようなメロディー。
 そのイントロを聞きながら、放送機材を外に移していたクックロビンは、感極まって呟く。


「コシミズさん……。俺、アイドルに幸せな歌を、歌ってもらうことができたよ……。
 これは『雪の進軍』じゃない……。μ'sの、凛ちゃんの、ヒグマ島とりマなメの、『Love wing bell』だ……!」

 そのクックロビンの肩に、青年の手が置かれる。

「蔵人さん、どうですか。裏方で仕事をやり切ったご気分は……」

 空の高みへ登ってゆく、銀の月のような砲弾を見送りながら、武田観柳がしみじみと嘆息していた。

「ここまでやり切るのが、一流の仕事なんですよ……」
「はい……、武田さん……!」

 ただのアイドルのファンボーイ、いや、それにすら満たなかった、自他を殺す愚かなコマドリ。
 クックロビンはそんな自分が、真のプロデューサー業の何たるかを、ようやく少しだけ理解できた気がした。
 彼らの隣でスマホカメラを構える御坂美琴や、相田マナ、黒騎れい、四宮ひまわりといった観客たちの前で、『ヒグマ島とりマなメ』の、最後の舞台が始まった。


「あこがれの瞬間を、迎える時が来たよ――!」

 星空凛が、この論理空軍を率いていた暁美ほむらに掌を向ける。

「いいのかなこんなにも――、幸せ、感じてるよ――!」

 那珂が、これまで世話になり続けていた呉キリカや夢原のぞみ、御坂美琴、武田観柳たちに手を振る。

「光に誘われて、歩き出すこの道は――!」

 マミが、佐倉杏子と視線を合わせ、頷く。

「未来へと続いてる、希望に満ちてるね――!」

 メルセレラが、ケレプノエ、李徴、隻眼2、ビショップたち、ヒグマの同胞に向けて笑いかける。

「誰でも、可愛く、なれる? きっと、なれるよ――! こんな私でさえも……」

 智子が、共に戦ってきた天龍を見つめ、そして雪の夜空を仰ぐ。
 この島で戦ったヒグマたちを、人々を、神々を讃える5人の巫女の歌声が、天へと響く。


「「「「「変――身――!!」」」」」


 その声は、最大規模の『南斗人間砲弾』でミサイルの迎撃に放たれた砲弾にも、届いていた。
 金のテレパシーブローチに、振動が伝わっている。

 成層圏に打ち上がった佐天涙子が、『砂漠の月(デザートムーン)』の防護を解く。
 銀の球体が、いくつもの三日月の薄板が合わさったような翼となり、展開される。
 その翼に、遥か遠くから、ミサイルが飛び迫ってくる波動が感じられる。
 彼女の脳裏に、いつかのように響く声があった。


『よう、涙子。もう、ひとりで運転できそうか?』
 ――アダムおじさん。
『ま、最後の高速教習だな。お前が試験に合格できるかどうか、心配で見に来た奴が大勢いるみてぇだぞ』


 感じる。私の背中を支えてくれる、数多くの暖かな手を。
 それはブローチから伝わる、歌声のためか。
 佐倉さんの『真・赤い幽霊』の効果か。
 私が何度も『第六波動』で訪れていたビジョン・クエストのおかげか。
 尾骶骨の奥底で回る、熱い大輪の華が、咲き誇る。
 赤いジャムのように、人々の甘やかな想いが、私に満ちてくる。


 ヒグマの体毛包帯が、宇宙空間にさらされてぽろぽろと崩れ落ちてゆく。
 まるで蝶が、サナギを破るように。
 包帯の取れた私の体は、全身を覆っていた火傷が、完全に治癒していた。

 それは、皇さんにもらった『独覚兵』としての力が為したものか。
 ウィルソンさんにもらった『波紋疾走』の呼吸が導いたものか。
 何人もの人々とヒグマからもらった『HIGUMA細胞』が再生したものか。
 それとも、私と最初から共にいた、私自身が思い描いたものか――。
 いずれにせよ。
 一片の傷跡も無く。
 全き私として、私は宇宙に在った。

 虹色のアルター粒子が、崩れた包帯を組み換え、私の体を覆う。
 そしてその粒子がほどけた時、私は銀の糸で織られた、艶やかなドレスを纏っていた。
 まるで天女の羽衣のように、その衣装は月明りを受けて静かに輝いていた。

 長いスカートを宇宙にはためかせ、銀の観音像のように、三日月の女神のように、私は翼を広げた。


「今夜の私たちは、月にも手が届くわ――!」


 銀の三日月が集まって、髪飾りとなって咲く。
 艶めくガントレットが、両手首を覆う。
 三日月のナイフのような鋭い鉤爪が、手の甲から伸びる。
 月の芯だったバットが、くるくると回転して、私の右手に収まった。

 手に持った銀のバットが、歪む。
 自分自身の力で、叩き上げられ、鍛造され、ガンガンと振動しながら歪み切る。

「これが! これがみんなの教えてくれた『月の炎』――!」

 歪んで歪んで、偃月刀となったバットの刃先に、青い炎が灯る。
 もう、私はその想いに身を焦がすことは無い。

「――『月の心』――!!」

 私は熱く燃えながら、冷たく凍る。
 私は私本来の温度で、ここに在る。
 万感の思いを込めて、私はその炎の刀を耳の横に構えた。

「『月の恋』!!」

 そうだ。私たちのこの胸に去来し続ける感情は何だ?
 生きたい。
 行きたい。
 あなたと共に。
 あなたたちと共に、在りたい。
 そう皆が、皆に願い続ける、星を熔かすほどの、燃え滾る魂の華。
 それは名付けるならばきっと――。


「私たちは永遠に託し続ける!! この『片想い』を、未来へ――!!」


 迫り来るミサイルの弾頭に向けて、全力で蒼い炎を振り抜く。
 そう。
 私は。私たちは。
 この想いを伝えるために、生きたんだ――!!


「『月・炎・心・恋(ブルー・ブルー・ブルー・ラヴ)』!!」


 その時、光がはじけた。
 ほほえんで、みんなが、いた――。


【ヒグマ島を狙う核ミサイル 消滅】


    ○○○○○○○○○○


 だからね あげるよ元気 そのままの笑顔で
 歌おう歌おう あげるよ元気
 悩まないで 夢を見よう

 大好きな みんなとならば 新しいことできる
 生まれ変わろう これからもっと 広がるはず

 さあ 明日が見えてくる
 Love wing…… love wing……


    ○○○○○○○○○○


 地上からも、宇宙の彼方で吹き上がる、蒼い炎の噴流が見えていた。
 そしてアイドルたちの歌が響く中、反動で大気圏へ突入する佐天涙子が、流星のように蒼く輝いていた。


「……布束さん。この島が今後、きちんとヒグマの国として認められた時。この国は外交問題に立たされるわよね?
 その時に、やはり例の『ミズクマ』さんは、居てはいけないものではないのかしら~……?」
「……Exactly。私も、そのための方策を、考えていたところだわ」


 その輝きを見上げながら、龍田と布束砥信が呟いていた。
 穴持たず39・ミズクマ。
 それは今、彼女たちの脱出の妨げになっている以上に、これからヒグマ帝国が日本や諸外国に向けて国交を開くにつけては、存在だけで敵対的と取られてしまう代物でもある。
 コントロール不能の生物兵器であるミズクマが生き残っている限り、この島の平和は、ありえない――。
 島の未来を憂う冷静な者たちの間では、その想定は、既に共通認識となっていた。
 龍田が、微笑んだ顔を崩さぬまま、布束砥信に呼び掛ける。


「……全てのミズクマを、この海岸の直下に集めてもらうことは、できるかしら~?」
「絶対命令の変更はできなくとも、それぐらいの指示は、できるはずだわ……。
 ……それは、あなたに、頼んで良いということ?」

 布束砥信は、少し考え込んだ後に、そう問い返す。
 布束の中で、ミズクマを掃滅するための手段は、ある一つのやり方しかないと結論付けられていた。
 問題は、『誰が』『どう』その手段を取るかだった。
 その言外の意図を全て理解して、龍田は笑顔のまま、頷いていた。

「ええ、結局誰かがしなくてはならないのだから。私以上の適任はいないわ」
「All right。この島の全てに代わって……、感謝するわ、龍田……」

 布束砥信は、龍田に深く頭を下げて、踵を返す。

 そんな龍田の瞳を見て、隣にいた間桐雁夜はハッとした。
 その眼は、雁夜が蟲蔵で見た、全てを諦めた桜のようだったからだ。


「もしかして、龍田さん……!! あなたは、自爆する気か……!!」
「そうよ、間桐さん。この聖杯が完全になるには、私の魂が必要なの」


 海中に散らばったミズクマを全滅させるには、彼女らを一か所に集め、その上で一撃で葬り去る必要があった。
 龍田はそのために、自ら自爆特攻の名乗りを上げたのだ。
 天津風が行なったのと同じように、ヒグマ製の強化型艦本式缶をオーバーヒートさせれば、周囲一帯を巻き込むほどの大爆発を起こせるはずだった。
 どうせ聖杯を完成させるためにいつか死なねばならぬ身ならば、今自分がその役目を引き受けるのが最善――。


「だから私は、この命を遣って、みんなをこの島の外に帰すわ」


 龍田はそう言って、間桐雁夜に金色の聖杯を手渡す。
 雪風と月明かりの中、隻腕の龍は髪をかき上げ、何でもないことのように微笑んでいた。

 研究員として認証されている布束砥信が、その間に海食洞に降り、海中のミズクマに向けて呼び掛ける。
 HIGUMAアスレチックの崖から流れ落ちる滝の下の水面は、たちまち一面真っ黒に染まっていた。
 数万、いや、数億数兆にも及ぶかと思われる、この島の周囲に散らばっていた全てのミズクマが、そこに集結していたのだ。


「龍田……! お前……、今更良いじゃねえか、何も自沈する必要なんてねぇ……! そのままのお前で、生きたって良いんだ……!!」

 天龍は妹を引き留めようと、完治していない背の痛みに耐えながら、彼女の元に歩み寄っていた。
 頭では、龍田の特攻こそが最善の手段なのだと、わかってはいた。
 だがあまりにも多すぎる別れの最後で、もう少しで一緒に生還できる妹まで失うことに、天龍は耐えられなかった。
 旗艦として、最後の最後まで耐えてきた弱音が、涙と共に漏れた。


「……天津風ちゃんは弁えてたわ。それは私もよ、天龍ちゃん。ヒグマで出来た私たちなんて、3割は狂ってるんだから」

 羆製艦娘という歪み。
 彼女たちはその身体能力も、ボイラーの火力も、通常の艦娘とは比べ物にならないほど高く、その精神は多かれ少なかれ破綻している。
 それは天龍も身をもって体感したことだ。
 元から白兵戦闘に秀でた天龍ですら、そのボイラーの性能に順応するには幾度もの実戦経験が必要だったのだ。
 例え生き残っても、同じ羆製艦娘同士ですら作戦行動を共にできないだろうほどに、彼女たちの力や精神構造は乱れている。
 龍田も、天津風も、この島をおいて他に自分の死に場所は無いと、初めから悟っていたのだ。


「生き残るのは……、本当に真っすぐに、何があっても路線変更しないように全身全霊の10割で狂えた、あの子くらいでいい……」

 龍田はそう呟きながら、雪のアスレチック跡で朗々と歌う僚艦の姿を、眩しく見つめた。

 今の那珂は、さながら歌うバーサーカーだ。
 那珂の中のヒグマは、アイドルとして狂った。
 解体ヒグマやイソマとの出会いを経て、ランスロットに操られようと、呉キリカに乗っ取られようと、浅倉威に犯されようと、アイドルとして、彼女は数多の人々をローレライのようにその熱狂の渦に呑み込み進んできたのだ。
 ヒグマ島希望放送も、この舞台も、那珂が居なければ成立することはなかった。
 ともすれば、浅倉威子が江ノ島盾子を討ち取ることもできなかった。

 負の深海でも、速さの極限でも、偽りの幸運でもない。
 それは正の偶像に、眩しく狂い切った外れ値――。


「龍田……!」
「天龍ちゃん……。どうか間桐さんと一緒に、私を送り出して……」


 自分に抱き着いて泣きじゃくる姉を片腕で抱き返し、龍田は声を絞る。
 天龍は滂沱の涙を流しながら身を引く。
 そしてそのまま、北方海域ヒグマ島方面に展開された水雷戦隊を今日一日率い続けて来た旗艦は、背筋と指を伸ばして敬礼していた。


「我が妹、龍田の武運長久なるを祈る!! 汝の煙はわだつみの、龍かとばかり靡くべし――!!」


 ヒグマ島とりマなメの5人も、舞台からその様子を見ていた。
 星空凛の眼には大粒の涙が浮かんでいた。
 真っすぐに立ち、心臓に右手を当て、それでも彼女は歌い上げる。

「……ためらい脱ぎ捨てる、ピンと背筋をのばそう――!」

 僚艦の姿を見つめながら、那珂は目を潤ませ、声を詰まらせる。

「……いいんだね、じゃあここで、不思議を楽しんじゃえ――!」

 片太刀バサミを握りしめ、巴マミが嗚咽を漏らす。

「光に照らされた、自分が知らない自分……!」

 島に散っていった同胞たちを想い、涙を振り飛ばしながらメルセレラが叫ぶ。

「今日だけでも一番、素敵でいたいな――!!」

 爪が食い込むほどに手を握りしめ、智子はぐしゃぐしゃの顔で泣く。

「みんなもね、可愛く、なろう! 絶対なれるよ……!! だって、私でさえも……」

 今まさに、人々を守るため、未来を繋ぐため、死地へ赴こうとする英霊を送る5人の巫女の歌声が、海へと響く。


「「「「「変――身――!!」」」」」


 彼女たちの歌声を背中に聞きながら、拳を掲げ、雁夜が目を伏せたまま口を開く。

「……我がサーヴァントよ、間桐雁夜が令呪を以て命ずる。ランサーよ、必ずや、作戦を成功させろ!」
「はい」

 その手の甲から、令呪が次々と光り、消えてゆく。

「重ねて令呪を以て命ずる! ランサーよ、必ずや、一匹残らず標的のヒグマを斃せ!!」
「はい……」

 龍田はその命令を聞き、静かにうなだれる。
 体の奥底と、艤装の強化型艦本式缶に、膨大な魔力が溢れてくるのを感じる。

「さらに重ねて、令呪で命ずる――!!」

 そして最後の令呪が消えると共に、雁夜は龍田に駆け寄っていた。
 戸惑う龍田の体を、強く抱きしめる。


「龍田さん!! たとえ、お前の全てが海色に溶けても、絶対に忘れるな!! 俺が必ず探し出す!! いつの日か!!」
「は……――!?」


 言葉の上では愛など、わかってるつもりでいた。
 好きだと思った人もいた――。
 だが、今ならわかる。
 これが初めて、たった一度の恋――。

 雁夜は、金のテレパシーブローチを外し、わずかな魔力で変形させた。
 指輪のようになったそれを、彼はぎこちなく、龍田の薬指に通した。
 まるでケッコンの申し込みのようなそのアプローチに、龍田は息を呑む。

 月明かりに煌めく金の指輪を見て、龍田の眼からは、一筋の涙がこぼれた。
 そして彼女はそのまま、雁夜の唇にそっとキスをしていた。


「……ご好意は、とても嬉しいです……!」

 ゆっくりと身を離して、龍田は微笑みながら呟く。
 左腕は斬り落とされているがために、その指輪が嵌っているのは右手だった。
 切なそうに、心底嬉しそうに、彼女は何度も角度を変えて、その金の指輪を月光に照らした。


「でも~……、あんまり仲良くなっちゃうと、あなたも、天龍ちゃんも、一人になっちゃうから……」


 それでも、彼女は最後に、寂しそうにその指を再び雁夜に向けて差し出す。

「お別れが辛くなっちゃう……!」

 龍田は、その指輪を雁夜に返し、泣き笑いで、はにかんだ。
 崖へと駆け出して、最後の最後に、照れくさそうに振り向く。


「ごめんね、雁夜さん……!」

 キラキラとした笑顔から涙を零して、龍田は背中から海へと落ちていった。
 雁夜の伸ばした手が、空を切った。


「龍田さぁぁぁぁ――ん!!」
「龍田……ッ!!」

 崖の上で、雁夜が叫び、天龍が嗚咽を漏らす。

 ――ちよろずの、いくさなりとも……。

 水面に沈む前に、龍田の唇は、そう言ったように見えた。
 滝壺が、彼女の声と姿を呑み込んだ。


 強化型艦本式缶がオーバーヒートしていく。
 水底に沈んでいく龍田の体に、黒い毛皮の塊のようなヒグマが、殺到していく。
 ミズクマにその身を食まれながら、その大群の真ん中で、龍田は思った。

 ――ねえ、ミズクマさん。

 あなたもこんな厄介なお仕事をもらっちゃって、大変だったわよねぇ~。

 お疲れ様。一緒にゆっくり休みましょう……?


 あーあ……、派手にお別れしちゃったなぁ~。

 ああ、雁夜さんと天龍ちゃんの泣いてる顔が見える……。

 悲しんじゃダメよ。そう、聖杯を掲げて、お願いするの……。

 良かったぁ~……!


【龍田・改@艦隊これくしょん 死亡】
【穴持たず39(ミズクマ) 全滅】


    ○○○○○○○○○○


 そうだよ 女の子には プリンセスの日が来る
 嬉しい嬉しい 魔法みたいな
 驚きから 夢のこどう

 大好きは たいせつなんだ 素晴らしいことできる
 生まれ変わろう 次のステージ 探しにいこう

 さあ 明日はどんな私?
 Love bell…… love bell……


    ○○○○○○○○○○


 地響きと共に放送局の前に吹き上がった、巨大な水柱は、まさに海神の幣だった。
 龍田がその身命の全てと引き換えに行なった自爆は、集結していたミズクマを全滅させ、そして彼女自身の魂を以て、聖杯を完全なものとした。
 間桐雁夜の抱える、聖杯が輝く。
 魔力が溢れる。

 その魔力の奔流の中、龍田は遍くあった。
 唐紅の凍れる流れをくくり、ボクとキミとの境目もなく。

 雁夜は悟った。
 この海は凍っている。
 凍っている凍っている。
 ああ、熱く凍っている。
 人肌の温もりで、熱く凍り流動し蕩ける、広漠なうねりの大海。

 赤いジャムのような。
 大輪の華のような。
 ここはそんな想いの海のほとりだ。
 自分という船の形もなく、この海の全てこそが自分の船であり海図であり港。
 はだかる夢の最果てにある、ヒトの産んだ灼熱の氷河。

 ああ、雁夜は思った。
 無限の今を漂うままに。

 出会いの場所は、そも、この凍結海岸だった。
 キミに驚異と敬意で考える――。

 その掌を見せぬ、幾千もの人々の手が、ヒグマたちの手が、雁夜に触れて見えた。

 あと幾つの現を思いながら溶けた海の底でキミに会えるか。
 わからねど、キミのくれたあの歌だけは、心に刻む。


『千万(ちよろず)の、軍(いくさ)なりとも、言(こと)挙げせず、取りて来ぬべき、男とぞ思ふ……』


 ――。
 独り居の夜も
 燃える日も
 心に掛けぬお前の祈念、
 俺の心よ、とく守れ。

 人間どもの同意から
 月並みな世々の快樂から
 お前は、さっさと手を切って、
 飛んで行ってしまえばいい……。

 ……もとより希望があるものか
 立ち直る筋もあるものか、
 学びて耐えて忍んでも、
 いずれ苦痛は必定だ。

 明日という日があるものか、
 深紅の燠の繻子の肌、
 それ、そのあなたの灼熱が、
 人の務めというものだ――。


 燦然と輝きを放つ聖杯を掲げ、雁夜は叫んだ。
 眩さに、涙が止まらなかった。


「ヒグマ島の聖杯よ――!! この島であった全てを、無意味にしないでくれ!! 無に還さないでくれ!!
 この島に生き残った全ての願いと希望が、未来に続いていくように――!!」


    ○○○○○○○○○○


 だからね あげるよ元気 そのままの笑顔で
 歌おう歌おう あげるよ元気
 悩まないで 夢を見よう

 ダイスキは たいせつなんだ 素晴らしいことできる
 生まれ変わろう 次のステージ 探しにいこう

 さあ 明日はどんな私?
 Love wing…… love bell……


    ○○○○○○○○○○


 午前0時が、告げられる。

 そして彼らは見つけた。
 何を?
 願った明日を。
 海と溶け合う太陽を……。


【ヒグマ・ロワイアル 生存者発表】




参【佐天涙子@とある科学の超電磁砲】最終状態:『三日月の女神』、『砂漠の月(デザートムーン)』開眼

参【初春飾利@とある科学の超電磁砲】最終状態:江ノ島盾子の全世界の拠点をほぼ完全に破壊、こうげき6段階上昇、ぼうぎょ6段階上昇

【御坂美琴@とある科学の超電磁砲】最終状態:ヒグマ島希望放送専属DJ

【布束砥信@とある科学の超電磁砲】最終状態:パレットスーツ、キョウリュウバイオレット、アイちゃんを保護中

参【黒騎れい@ビビッドレッド・オペレーション】最終状態:パレットスーツ

【四宮ひまわり@ビビッドレッド・オペレーション】最終状態:パレットスーツ、グリズリーセイバーエンジンと同調

参【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】最終状態:『記憶から来た軍神』

参【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ】最終状態:アイドル、『聖体拝領のドッペル』を習得

参【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】最終状態:石と意思の共鳴による究極のアルター結晶化魔法少女(『円環の袖』)、シーナーの肉体を元にした完全復活『復讐の女神』、『治癒の書(キターブ・アッシファー)』の魔術刻印移譲

参【星空凛@ラブライブ!】最終状態:アイドル、ゴーレム提督の泥操作能力を会得

【間桐雁夜@Fate/Zero】最終状態:刻印虫死滅、魔力充溢、ヒグマ島聖杯戦争優勝者

参【武田観柳@るろうに剣心】最終状態:魔法少女化、『激情のドッペル』を習得

参【夢原のぞみ@Yes! プリキュア5 GoGo!】最終状態:シャイニングドリーム

【相田マナ@ドキドキ!プリキュア】最終状態:HIGUMA細胞で再構成された肉体

参【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】最終状態:HIGUMA細胞で再構成された肉体、『篭絡のドッペル』を習得

【那珂・改二(自己改造)@艦隊これくしょん、ヒグマ・ロワイアル】最終状態:アイドル、キラキラ

参【天龍@艦隊これくしょん】最終状態:ヒグマ製強化型艦本式缶完全習熟、キラキラ

参【黒木智子@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!】最終状態:アイドル、魔術回路開放、『月霊髄液クロス・フォーム』習得、『神経締めする娘の爪(キリング・フレッシュ・フレッシュリィ)』開発

【虎になった李徴子@山月記?、ヒグマ・ロワイアル】最終状態:虎(熊たる精神を自分自身の中に捉えた、完全なる『羆』)

【隻眼2(小隻:シャオジー)@ヒグマ・ロワイアル】最終状態:作家

【メルセレラ(穴持たず45)@ヒグマ・ロワイアル】最終状態:魔法少女化、アイドル、『称呼のドッペル』を習得

【ケレプノエ(穴持たず57)@ヒグマ・ロワイアル】最終状態:魔法少女化、スタンド『フォックス・グローブ』発現、『世紀末のドッペル』を習得

【クックロビン(穴持たず96)@ヒグマ・ロワイアル】最終状態:武田観柳御用達左官

【穴持たず203(ビショップヒグマ)@ヒグマ・ロワイアル】最終状態:ヒグマ帝国次期指導者

参加者 :12名/約80名以上
主催陣営:3名 /約15名以上
外部勢力:2名 /約15名以上
ヒグマ :7名 /約1000名以上
合計  :24名/約1200名以上――


No.225:第四回放送:最終決戦6『TERRITORY』 投下順 No.227:Island of Hope and Tears
No.225:第四回放送:最終決戦6『TERRITORY』 時系列順 No.227:Island of Hope and Tears
No.225:第四回放送:最終決戦6『TERRITORY』   No.227:Island of Hope and Tears

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2026年08月05日 23:38