最初は病院かな、と思ったけど、どうやら違うらしい。
「サナトリウム」と門の所にあった。サナトリウムって確か、療養所とかそんな感じだったか。
支給品の双眼鏡――多分そんなに高価な物では無い――をたまに覗いては、
誰かいないかどうか確認する。
今の所誰もいないように、見えるけど。
(武器、手に入れないとしょうが無いよな)
数時間前、どれぐらい前だったかちと忘れたけどまあ良い、俺こと
高原正封は
稲垣葉月と言う女性を殺そうとした。
だけど、邪魔が入って失敗した。俺は額と後頭部を痛めた上武器のカッターナイフも折れてしまった。捨てたよ。
邪魔した奴の顔は見ていない。誰だか知らないが、
正義の味方気取ってるなら嗤ってやる。くそ。
カッターナイフぐらいだったらこのサナトリウムにあるかもしれないけど。
どうせならもっと強い武器の方が良い。出来れば鋭利で頑丈な刃物や銃が良い。
(ん……)
噴水がある遊歩道を歩いていると、人を見付けた。
黒いシャツに青いジーンズの、ちとドキュンっぽい多分俺とほぼ同年代の人間の男。
俯き加減でぶつぶつと何か呟いて……あれ、何か服、血塗れじゃね?
「!!」
「いっ」
突然顔を上げて、俺の方を見る男。
やばい、明らかに正気じゃねぇ、手にでかい包丁持ってるし、やばいんじゃないか、おい。
「いぃーーーたぁああーーーーー!!!!」
男は叫ぶと包丁を振り翳しながら俺に突進してきた。
「うわああぁあ、おい、待っ……!」
「死ねえぇえええええーーーーーーーー!!」
ビュン!!
有り得ない程の風切り音が聞こえ、俺の顔の数センチ横に斬撃が振り下ろされた。
半端無い、こんなもの食らったら本当に洒落にならない。
だが俺だって黙って殺される訳にはいかないんだよ。
「らああぁっ!!」
「があっ!?」
持っていた双眼鏡を男の顔面に向け力一杯叩き付けた。
恐らく双眼鏡は壊れただろう、だけどそんな事はどうでも良い。
「痛えええぇええっ、て、めぇええええ!!!」
顔を押さえ苦しむ男を尻目に俺は駆け出した。
俺は武器を持っていない、だからでかい包丁持ってるあいつと正面から戦うのは危険過ぎた。
とにかく一度どこかに隠れて体勢を立て直した方が良い。
「糞狐野郎、殺してやるううあああああぁ!!」
追ってきやがった。やべぇよ、マジでキチガイじゃねーか、ついてねぇ、どうしてこんな奴に遭っちまったんだ。
殺されてたまるか、たまるかよ……!
◆
気付けば僕こと、
香坂幹葦は病院のような建物の敷地内に入っていた。
「……」
精神状態は、さっきと比べれば大分落ち着いてはきている。
落ち着けば落ち着く程、今までの僕のやってきた事が本当に愚かしく思えてならない。
どうして僕は今まで「悪人になりたい」などと馬鹿な事を思っていたんだ?
どうして僕は、ブルースさんを撃ってしまったんだ?
どうして、どうして、どうして――――。
「……!」
「……!!」
「何だ……」
男同士が言い争うような声が聞こえてくる。
いや、もしかしたら殺し合っているのかもしれない。
それとも片方が片方に襲われているのか。
「……行こう」
放っておく訳にはいかない、目の前で誰か殺されるかもしれないなら。
良い事をすると決めたんだ、ここで一番考え得る良い事――殺し合いを止める事、
誰かが誰かに襲われてるなら、助ける事、だ。
ブルースさんを撃った事への罪滅ぼしだとは思っていない。
でも、それが僕が為さなければならない事だと、思っている。
僕は拳銃を持って声のする方向へ、警戒しつつ進んで行った。
声は段々と大きくなる。
「ぬあああぁあああ!! しつけぇえええよ!!」
「殺す殺す殺す殺す!!! コロス!!!」
「!!」
建物の陰、歩道の曲がり角から二人の人影が飛び出す。
一人は……狐? 狐の頭の青年、もう一人は茶髪の人間の青年。
どうやら人間の青年が狐の青年を襲っているようだ。
だけど、あの狐の青年は……獣人……? 変身でもしているのか? いや、今はそれどころじゃない。
「動くな!」
僕は大きな包丁を持った青年に銃を向け言い放つ。
「え? あ、あんた」
「僕の後ろに下がって下さい」
狐の青年を僕の後ろに行かせる。
「何だてめぇ、俺の邪魔、すんじゃねぇええ!!!」
包丁を持った青年は非常に興奮しているらしい、銃を向けられているのにも関わらず、
大声で喚きながら包丁で威嚇してくる。
良く見れば衣服は血塗れだ、もしかしたら何か恐ろしい目に遭ったのかもしれない。
それでここまで追い詰められ、我を失い暴れているのかもしれない。
「落ち着くんだ、殺し合いなんて馬鹿げてるぞ……」
「何だよ……ああ?」
「優勝すれば本当に生きて帰れると思っているのか? 主催者の口だけの約束を信じるのか?
もしそう思っているのなら、信じているのなら、それはあの人無とか言う奴の思う壷だぞ。
殺し合いを促そうとしているだけの、方便なだけかも――――」
「うるせえ、うるせえよ! 俺は死にたくない、死にたくないんだよ!
だから殺すんだ、殺される前に殺してやんだよ!! そうすりゃ、俺は死なない!
……邪魔する奴は許さねぇ、誰だろうと、よおおおおおぉおおおぉお!!!!」
青年が包丁を振り翳し僕に突進してくる。
「くっ……」
説得して収める事が出来るならそうしたかったがこうなったらやむを得ない。
ダァン!!
「があ、あ、ああああぁあ!!?」
青年の足に向け、僕は発砲した。
銃弾は青年の右足太腿を掠めたようで、青年が苦鳴をあげる。
「て、め、え……!」
「……」
「……糞ったれがああああぁああああぁあ!!!」
青年は戦意を喪失したのか、負傷した足を引き摺りながら去って行った。
止めを刺そうと思えば、刺す事も出来た。
だけど出来なかった――どんなに狂ってしまった奴でも、命まで奪う気にはなれない。
あそこまで青年が狂ってしまったのにも、きっと理由がある、そう思うと尚更。
そうだ、狐の青年は……僕の後ろに下がらせていたけれど。
後ろを振り向こうとした時、僕は背後から口を塞がれた。
毛皮に覆われた茶色い手。
そして、首筋に小さな痛みを感じた。
「――――――!?」
何かが僕の体内に流し込まれる感覚。
「…………ッ」
そして、僕の意識は途絶えた。
◆
助かった。この男のおかげで俺はあの包丁男に殺されずに済んだ。
恩を仇で返すような真似をして悪いけど、これも生き残るため。
包丁男を撃退してくれたこの男を、俺は背後から、俺の最後の支給品、妙な薬が入った注射器で襲った。
この注射器の中に入っている薬は「獣性活性化薬」と言う名前らしいが、
説明書にも詳しい事が書いていなかったので良く分からない。
ただやばげな薬だと言うのは予想出来た。
「武器だ……」
男が持っていたリボルバー拳銃、そして男の荷物を物色し、予備の弾も頂戴する。
これで武器は確保出来た。もうこの男にも用は無い。
俺はリボルバーの銃口を倒れて意識を失っている男に向け――――たが、すぐに下ろした。
正体不明の薬を投与したのだから、無事ではいられまい。
放っておけばこのまま死ぬかもしれない。限られている銃弾を無駄にする事も無いだろう。
「……行くか……」
強力な武器を入手出来た。もうこのサナトリウムにも用は無くなった。
さっきの包丁男がまだ近くにいると思うし、さっさとここは離れよう。
そうだな……人気の多い場所……町の方へ行ってみようか?
「ごめんな、あんたに恨みは無いけど……助けてくれてありがとう。じゃあな」
地面に倒れた男にそう言うと、俺は足早にその場を去った。
◆
痛ぇ。あの野郎、よくも俺の足を撃ちやがったな。
ここはサナトリウムらしくて、多少なら治療する道具もある。
血の噴き出す右足の太腿に包帯を巻き付ける。
「い、て、え……畜生があ……」
あの、俺を撃ちやがった野郎、そしてあの狐野郎、
一軒家で殺し損ねたガキ二人、絶対に、今度会ったら殺してやる。
「……出し惜しみなんか、するんじゃなかった」
俺の支給品は、肉切り包丁だけじゃない、もう一つある。
だけど、これは最初見た時、使いこなせないと思って、敢えて包丁にしたんだ。
だけど、やっぱり駄目だ。そんな悠長な事は言っていられない。
デイパックから「それ」を取り出す。
説明書によるとこれは「シュミット・ルビンK31」と言う、大昔の軍用ライフルらしい。
予備弾も十数発用意されていた。
俺は銃に関しては素人だから、重いし取り回し難いこれはさっきも言ったように使いこなせないと思っていた。
だけどそうも言っていられないよなぁ。
「ククッ……ふへへへへへへっ」
大丈夫だ、俺はまだ生きてる、まだ生きている。
俺は絶対に生きてやる。
誰を殺しても。何人殺してもなぁ……。
◆
「ウ……グウ」
ここは……ああ、そうだ、僕は気絶させられたんだった……。
意識が朦朧とする、後頭部が傷む、身体が熱い。
「グル……痛っ……」
ゆっくり立ち上がる。
だけど、ここで僕は違和感を感じた。
二本足で立てない。いや、立てない事は無いんだけどどうも上手くバランスが取れない。
逆に四本足だと安定する。おかしいな、こんな事になるのは狼に変身した時ぐらいしか、
――――――え?
「なっ……何で!?」
僕は狼形態にいつの間にか変身していた。
気絶している間に勝手に変身してしまったとでも言うのか?
「……っ……! も、戻れない!?」
しかも、何故か人間に戻る事が出来ない。
いつもやっている通りにやっても全く何も起こらない。
何でだ!? どうして……そう言えばさっき、首筋に何かを注射されて、その後気絶したんだよな。
まさかあの注射のせいか!?
いや、そもそもあの注射は誰が……あの時僕の後ろにいた人は、狐の青年。
「銃が無い……!」
僕の銃が無くなっている。
狐の青年が僕を気絶させて銃を奪って去った。
これが一番考えられる可能性だった。
「何てこった……くそっ」
命を懸けて守った相手に裏切られるなんて。
悔しい気持ちで一杯になるがもう今更どうしようも無い。
狐の青年の姿はもうどこにも無い。追う事も出来ない。
それにしても、身体が妙に熱い、その上頭が熱っぽい、どうなってるんだ。
「ハッ……ハッ……ハッ……どこかで……休もう」
一度どこかで横になった方が良いのかもしれない。
僕は自分のデイパックを持って、休めそうな所を探す事にした……。
【C-4/サナトリウム/一日目/午前】
【高原正封@新訳俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:額にたんこぶ、後頭部に痛み、肉体疲労(中)
[服装]:少し汚れている
[装備]:S&WM19(4/6)
[道具]:基本支給品一式、.357マグナム弾(12)
[思考]
基本:殺し合いに乗る、優勝を目指す。
1:武器は手に入った。町の方へ行ってみたいと思う。
2:さっきの後ろを襲った奴は……?
[備考]
※新訳俺オリロワ21話「友」終了後からの参戦です。
※稲垣葉月の名前と容姿を記憶しました。また、
石川清隆、香坂幹葦の容姿のみ記憶しました。
※
浅倉翔の容姿を見ていません。
※折れたカッターナイフ、双眼鏡は捨てました。
※石川清隆、香坂幹葦から離れた場所にいます。
※香坂幹葦はその内死ぬと思っています。
【石川清隆@個人趣味バトルロワイアル】
[状態]:腹部にダメージ(中)、精神崩壊気味、右足太腿に擦過射創(応急処置済)
[服装]:血濡れ
[装備]:シュミット・ルビンK31騎兵銃(6/6)
[道具]:基本支給品一式、7.5mmGP11弾(12)、肉切り包丁@現実
[思考]
基本:死にたくない。
1:だから殺す。
[備考]
※個人趣味ロワ死亡後からの参戦です。
※普通の人間に戻っていますが、屍人の時の記憶もあります。
※高原正封、香坂幹葦の容姿を記憶しました。
※高原正封、香坂幹葦から離れた場所にいます。
【香坂幹葦@夢オチだったオリロワのキャラでロワ】
[状態]:スタンス反転、狼化、後頭部に鈍痛、身体能力向上、催淫(軽度)
[服装]:狼化の為現在無し
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:悪い事はしたくない、いいことはしたい。
1:どこかで休もう……。
2:身体が熱い……。
[備考]
※夢落ちロワ参加前からの参戦です。
※
大崎年光、高原正封、石川清隆の容姿を記憶しました。
※
心機一転の能力でスタンスが反転している最中です。
※「獣性活性化薬」の影響により強制獣化、身体能力が向上、軽度の催淫状態になっています。
強制獣化は個人の意思では解けませんが時間が経過すると自動的に解けます。
強制獣化がいつ解けるか、身体能力の向上度合、催淫状態の推移(軽くなるか重くなるか)は次の書き手さんにお任せします。
※高原正封、石川清隆から離れた場所にいます。
≪支給品説明≫
【双眼鏡】
高原正封に支給。
望遠鏡の一種で、遠方の物を両眼で拡大して見る光学器械。
【獣性活性化薬】
高原正封に支給。オリジナル支給品。
日本風異世界国家において裏で流通している違法ドラッグの一つ。
普通の人間、或いは変身能力のある人間に投与すると数時間~3日程の強制獣化、身体能力の向上、催淫の効果をもたらす。
獣人や獣に投与すると身体能力の向上と催淫の効果。強制獣化は個人の意思ではどうにも出来なく時間の経過を待つしか無い。
強制獣化の期間、能力の向上度合、催淫の度合は個人差がある。
【シュミット・ルビンK31騎兵銃】
石川清隆に支給。
スイス製の旧式軍用小銃で、ストレートプルアクションと言うボルトアクションの一種を機構に採用している。
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最終更新:2012年05月16日 20:53