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瓦解

灰色の狼の姿となっている、香坂幹葦は、デパート周辺の草むらにて放送を聞く。

「……え?」

放送で呼ばれた名前の中に、少し前まで一緒だった「白崎ミュートン」の名前を確認し、幹葦の顔色が変わる。

「な、何だって……!?」

自分がデパート周辺の見回りを白崎に命ぜられてそう時間は経っていない。
自分が見回りに出た後、何かあったのは間違い無い。
誰かに襲われたのだろうか、愛崎一美と酒々落々の名前は呼ばれなかったから二人はまだ生きていると思われる。
――まさか、二人の内どちらかが、或いは二人が裏切って白崎を殺害した?

「……戻らないと!」

獣の前足で苦労して記録した名簿と地図をデイパックにしまい、幹葦は立ち上がる。
見回りを命じた白崎は死んだ、今は一刻も早く仲間の元へ戻るべきだ。
幹葦は駆け出した。

「……」

その駆ける姿を目で追う一人の男がいたが、急いでいた幹葦は鋭くなった五感も役に立たず気付かなかった。

幹葦は大急ぎでデパート内の待ち合わせ場所に向かう。
そして辿り着いた彼が見たものは、物言わぬ屍と化した白崎ミュートンの姿。
足と腹と頭から血を流し、横たわっていた。

「香坂か」
「! 酒々落々さん……一体、何があったんだ、何で白崎さんが死んでるんだ」

昂る気持ちを抑え幹葦は酒々落々に問う。
酒々落々は特に悲しんでいる様子も動揺している様子も無く、あっけらかんと答えた。

「あー、簡単に言うとな、愛崎の奴が裏切った」
「何だって?」
「俺にも襲い掛かってきやがったから、俺の能力でどこかに『落として』やった。
まあ、ワープさせたって言った方が分かりやすいか、名前は呼ばれなかったからどっかで生きてんだろうよ」
「……何て事だ」
「ああ、だが、止めを刺したのは、俺だがな」
「え?」

驚いた様子で幹葦は酒々落々の顔を見る。
不敵な笑みを浮かべているように見えた。

「な、何で……」
「ああ? 足と腹刺されて動けねぇ奴なんて足手纏いにしかなんねぇだろ?」
「で、でも、僕達は……」
「『悪人教団の仲間』? おいおい、『仲間』なんて何善人みてぇな事言ってんだ? 俺達ゃ『悪人』だぜ?」
「……っ……」

幹葦は明らかに動揺していた。
確かに自分達は「悪人教団」、悪人のみで主催者を打ち倒す教団。
だが、悪人ではあるが、あくまで教団のメンバーは「仲間」であると思っていた。
「悪人同士」の「仲間」であると。
だから、協力し合い、共にこの殺し合い生き延びるものだと幹葦は思っていた。
しかし。

「お前、白崎に言われたろ?
『お前の悪にはまだ躊躇い、迷いが残っている』ってよ。
つまりな、こういう事なんだよ、お前にはまだ『誰かを信じる』『誰かと協力する』なんて気持ちが残ってやがんだ。
悪を極めるってのはな、そういうもんを全部捨てちまえって事でもあんだよ」
「そ、そんなの」
「『違う』って言うつもりか? ったく、口だけでその覚悟は無しか、半端なヤローだな、香坂君よ……ん?」

この時、酒々落々は何かを発見し、香坂の向こうへと視線を向ける。


ダァン!!


酒々落々の胸元に穴が空いた。

「!!」

幹葦は背後を振り向く。
そこにはライフルらしき物を構えた青年の姿が。
酒々落々とのやり取りに夢中になって足音にも気配にも気付けなかったらしい。
青年は銃口を今度は自分の方に向けた。

ダァン!!

「っ!」

間一髪、横に跳んで銃弾を避けた。
そして脇目も振らず全速力で駆け出す。

ダァン!!

すぐ頭上を風を切って銃弾が飛んで行った。

ダァン!!

再び発砲、だが当たらない。
幹葦はひたすら走った。

青年、矢部翼は狼を追うのを止める。
狼の足はかなり早く、追うのは徒労だと判断した。
最初に銃撃した男の元へ戻る、男はまだ辛うじて息があった。

「……」

男の頭に、矢部は銃口を向ける。
男は血を吐きながら、矢部の顔を見上げた。
そして、ふっ、と笑う。

「……良い目だぜ……とびきりの……悪人の目……だ」


ダァン!!


男の頭は弾け飛び、頭蓋骨と脳漿が飛び散り、男の生体活動は完全に停止する。
得物であるGew41(W)自動小銃に目をやるとボルトが後退したままロックされている。
丁度弾倉が空になったらしい。
矢部は予備の弾倉を取り出し、付け替えた。
そしてボルトを前進させいつでも発射出来るようにした。

「……悪人、か……まあ、そうかもな」

矢部は男が死の直前に自分に言い放った言葉を反芻する。
自分は妹のために殺し合いに乗っている。
傍から見れば自分勝手極まり無いだろう。
それで、今、この殺し合いにおいて二人目の殺人を決行した。
自分は、自分勝手な理由で殺人を犯す、立派な「悪人」だろう。

「……」

男の所持品を漁る。
しかし役に立つ物は見当たらない。

「行くか」

矢部は更に上の階へ向かうため、エレベーター或いは階段を探し始めた。


【酒々落々@四字熟語バトルロワイアル  死亡】


◆


アルソンズ・ベイルはデパート裏の従業員用の入口より中に入る。
取り敢えず休憩室を見付け、扉を開けて中に入り椅子に座って一息つく。

「……流石にこの建物には誰かいると思うが」

アルソンズは最初の六時間、誰とも会う事無く終えてしまった。
それはある意味では、幸運だったのかもしれない。
放送で彼は、この殺し合いで既に21人の命が散った事を知った。
自分が誰とも会わずうろうろとしている内に、21人も死んだ事に彼はショックを受けた。
禁止エリアは自分がいる場所からは遠いようなので今はまだ気にする必要は無さそうだった。

「行くか」

休憩も済み、アルソンズは仲間になりそうな参加者及び医療品を探し始める。

しばらく歩くと従業員用エリアからの出口が見えた。
そこに向かって歩き出した時、その出口の扉が開いた。

「……!」

姿を現したのは、一匹の巨躯の狼。
デイパックを背負っている事から参加者の一人だと予想出来た。
ここに来てアルソンズはようやく他の参加者と出会えたのである。

「あ、ああ、ちょっとすまんが……」

だが、良い出会いとは言えなかった。
狼に話しかけようとした直後、アルソンズの喉笛に狼は食らいついていたのだから。
そのまま押し倒され、首筋を噛み裂かれ、アルソンズは呆気無く最期を遂げた。
血溜まりを作り動かなくなった男を吐き捨て、狼――香坂幹葦は歩き始める。

「……誰も信じちゃいけないんだ……」

幹葦が心の中で反芻するは先程の酒々落々の言。

――お前にはまだ『誰かを信じる』『誰かと協力する』なんて気持ちが残ってやがんだ。
悪を極めるってのはな、そういうもんを全部捨てちまえって事でもあんだよ。

本当の「悪」とは「信じる心を持たない」。
本当の「悪」とは「協力する事などしない」。
本当の「悪」とは「役立たずは切り捨てる」。
本当の「悪」とは。
本当の「悪」とは。
本当の「悪」とは。
本当の「悪」とは。

「分かった、分かったよ、ようやく分かった、悪人になる方法が!
あはははは!! なんて清々しい気分なんだ! 嬉しい! 嬉しいよ!!」

目を爛々と輝かせ、笑う幹葦。
彼はついに自分の夢を叶える方法を見出した。
それは彼にとってはとても喜ばしい事だっただろう。

――自分がもはや狂いかけている事など、気付く筈も無かった。


【アルソンズ・ベイル@個人趣味ロワ  死亡】


【C-2/デパート一階裏手従業員エリア/一日目/日中】

【香坂幹葦@夢オチだったオリロワのキャラでロワ】
[状態]:狼化、身体能力向上、疲労(中)、狂いかけ、狂喜
[服装]:狼化の為現在無し
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:見掛けた参加者を片っ端から襲う。
1:誰も信じない、誰とも協力しない、誰であろうと殺す、誰でも……。
[備考]
※夢落ちロワ参加前からの参戦です。
※大崎年光、高原正封、石川清隆の容姿を記憶しました。
※心機一転の能力でスタンスが反転している最中です。
※「獣性活性化薬」の影響により強制獣化、身体能力が向上、軽度の催淫状態になっています。
強制獣化は個人の意思では解けませんが時間が経過すると自動的に解けます。
強制獣化がいつ解けるか、身体能力の向上度合、催淫状態の推移(軽くなるか重くなるか)は次の書き手さんにお任せします。
※スタンス反転が元に戻りました。
※獣化によって五感が上昇し、聴力は特に高くなっています。
※催淫効果は消えました。


◆


「……!」

大崎年光は目を覚ます。
周囲を見渡すが人の姿は無い。

「俺は……どうしたんだったか」

なぜここで意識を失ったのか良く思い出せない。
デパート最上階のフードコートに到着した時、喫茶店風の店から話し声が聞こえ、その後は――――思い出せない。
まるで二日酔いの時の気分である。

「ダメだ思い出せない……今何時だ? 俺はどれくらい気絶してた?」

デイパックの中から時計を取り出し、時刻を確認する。
確認して、愕然とする。
第一回目の放送の時刻をとうに過ぎていた。

「しまった……! 放送を聞き逃しちまった!」

重要な放送を完全に聞き逃し、年光は狼狽する。
死者の発表や禁止エリアの放送があったはず、特に禁止エリアの情報を聞き逃すのは命に関わる。

「くそっ……仕方ねぇ、適当な奴捕まえて聞き出すしかねぇか……」

こうなれば他参加者から放送の情報を聞き出すしか無い。
幸いにも武装は誰にも奪われる事無く無事のようだ。
年光は微かに痛む頭を抑えながら、フードコートを後にした。

エレベーターで一気に一階に降りる。
そしてエレベーターを出て、しばらく辺りを探索した。

「……ん?」

そして見付けたのは男の死体。
頭部と胸を撃たれたらしく、特に頭部の損傷が激しく頭蓋骨や脳の欠片が飛び散り酷い有様だった。
詳細名簿に載っていると思うがここまで頭部が損傷していては分からない。
まだ殺されてから間も無いらしく血の臭いが辺りに漂っている。
すぐ近くには別の男の死体があったがこちらは死んで時間が経っているようだった。

「こいつ、放送前に殺されたのか? それとも放送後か? ……」

年光は一縷の望みにかけ男の所持品を漁る。
そして名簿を広げた。

「ビンゴだ……」

男は放送をしっかり聞いていたらしい、呼ばれたと思われる名前には線が引かれていた。
更に地図にも禁止エリアの情報がしっかり書き込まれている。
禁止エリアにはこのデパートのあるエリアは入ってはいないようだった。

「悪ィな、これ貰ってくぜ」

年光は男の地図と名簿を自分のデイパックの中に突っ込む。
後で書き写すなりなんなりすれば良い。

「……こいつら、見覚えあるような……気のせいか」

死体となっている男二人に見覚えがある気がしたが、思い出せないので気のせいにして、年光は歩き始めた。
デパートの正面玄関が見える。
長い間気絶していたのだ、そろそろこのデパートを後にしても良い頃だろう。
気絶する前に出会った香坂幹葦や紆余曲折、ブルースらの生死はどこか安全な場所で確認するとしよう。

「行くか……」

年光は正面玄関を潜り、デパートの外へ出た。


【C-2/デパート一階正面玄関付近/一日目/日中】

【大崎年光@俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:身体的疲労(中)、精神的疲労(中)、スタンス反転、二日酔いの気分(僅かな頭の痛み)
[服装]:返り血(中)
[装備]:シグプロSP2340(14/15)
[道具]:基本支給品一式、シグプロSP2340弾倉(3)、詳細名簿、グラディウス、
インベルM911(7/7)、インベルM911弾倉(3)、ランダム支給品(1)、心機一転の右腕 、ノートパソコン、
酒々落々の名簿と地図(第一回放送の情報入り)
[思考]
基本:殺し合いに乗る。
1:どこに行こうか。
2:山本? 知らん。
3:須牙襲禅、新藤真紀は最大級の注意及び警戒。
[備考]
※俺オリロワ死亡後からの参戦です。
※香坂幹葦、野村和也の名前を詳細名簿にて確認しました。
※心機一転の能力でスタンスが反転している最中です。放送前に心機一転の死を知っているためスタンスは元に戻っていません。
※第一回放送を聞き逃しましたが、第一回放送の情報が書き込まれた酒々落々の名簿と地図を手に入れました。
但し、まだまともに目を通していません。
※泥酔させられ気絶させられた影響でデパート最上階フードコートでの出来事の記憶が欠損しています。
白崎ミュートン、酒々楽々、愛崎一美と遭遇した事が思い出せません。


◆


デパート最上階のフードコートを、矢部翼は訪れる。
展望台のようになっていて下界の様子が一望出来た。
遠くには市街地や何らかの建物、海まで見える。
この島で既に21人、先程撃ち殺した男も含めると22人もの人間が犠牲となった。
しかし、矢部に感慨に耽る理由は無く、すぐに探索に戻った。

僅かに争ったような形跡や、喫茶店風の店に誰かがいた形跡はあったが参加者の姿は見付からなかった。

「いないか……」

テーブル席の椅子に座り矢部は一息つく。
このデパートは余りにも広く一階一階虱潰しに調べるのは現実的では無い。
早々に探索は切り上げて別の場所に行った方が良いかもしれない。

「……」

少し疲労の溜まった足に鞭を入れ、矢部は椅子から立ち上がった。
そして一階へ行くためここに来る時も使ったエレベーターを目指す。

矢部の乗ったエレベーターが最上階へ向かう途中、
別の場所のエレベーターが一階へ向かっていた事など矢部は気付く由も無い。


【C-2/デパート最上階フードコート/一日目/日中】

【矢部翼@需要なし、むしろ-の自己満足ロワ3rd】
[状態]:背中にダメージ
[服装]:特筆事項無し
[装備]:Gew41(W)自動小銃(10/10)
[道具]:基本支給品一式、Gew41(W)弾倉(1)、ランダム支給品(1~2、武器になりそうな物は無し)
[思考]
基本:妹の安否を知るために優勝し、主催者に会う。
1:もう迷わない。
2:目に付いた参加者を片っ端から殺すつもり。
[備考]
※需要なし、むしろ-の自己満足ロワ3rd本編死亡後からの参戦です。
※熊本潤平、香坂幹葦(狼化状態)の外見のみ記憶しました。


※酒々楽々の死体及びデイパック(基本支給品一式(地図と名簿無)、ランダム支給品(2)入り)が、
白崎ミュートンの死体のすぐ近くに、また、アルソンズ・ベイルの死体と所持品が一階裏の従業員エリアに放置されています。


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072:あくのきょーてん 香坂幹葦 :[[]]
072:あくのきょーてん 酒々落々 GAME OVER
060:帰り道のロスト 矢部翼 085:アップデート
079:行人不知 アルソンズ・ベイル GAME OVER
062:Alice Magic/ぼくだけのふぁんたじあ 大崎年光 :[[]]

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最終更新:2013年02月11日 22:51