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長門有希の憂鬱II未公開シーンエピローグ

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新しい朝倉とクラスメイトたち
当初朝倉が帰還する予定だったのだが
三月というタイミングなのでみくるの卒業シーンを採用したほうがいいというkisekiの意向に従った

一度パー速の長門朝倉スレに貼った断片
朝倉の帰還についてはいつか機を改めて書いてみたい


長門有希の憂鬱Ⅲ(帰ってきた朝倉)

その後のことを、少しだけ話そう。

次の朝、岡部がいつになく楽しそうに教室に入ってきた。
「あー、みんなちょっと。我がクラスに転校生がやってきた」
もう二年の三学期も終わり、この時期にかよとみんなは不思議がっていた。岡部は廊下に顔を出し、誰かに手招きしていた。
「驚くかもしれんが、朝倉がカナダから帰ってきた」
「ええっ!?」教室全体が歓喜に沸いた。無論、俺は驚かなかったが。
「……朝倉涼子です。よろしくお願いします」
深々とお辞儀をする彼女は、俺たちの知っている元の朝倉とは少し雰囲気が違っていて、みんなもそれに気がついたようだった。だがいきなりいなくなって惜しんでいたのは間違いなく、女子はもちろん、谷口をはじめとする野郎共も喜んでいた。
「ほんとに戻ってきたんだ……」
ハルヒが唖然としていた。あのときの事件はいったいなんだったのかと、いぶかしんでいるようだ。
「あー、空いている席はどこだ。涼宮の隣でいいか?」
俺は自分がいることを目で合図しようと朝倉をじっと見ていた。だが、朝倉は下を向いたまま誰とも目を合わせようとせず、音もなく移動し自分の席に座った。そしてまっすぐに黒板を見つめていた。ハルヒは何と声をかけたものか考えているようだった。
 昼休みになっても、朝倉はじっと前を見ていた。あの頃親しかった高遠が話し掛けても、うんとかええとか、曖昧な返事しか返さなかった。俺は弁当を食いながら朝倉のほうをチラチラと気にしていたのだが、いっこうに動く気配がない。
「朝倉、腹減ったろ。学食でメシ食ってこいよ」
「……いいの」
昼飯代持ってないんだったら貸してやろうと、財布を取り出そうとした。それまで黙っていたハルヒが話し掛けた。
「朝倉、あんた変わったわね。なにがあったの?」
「……ちょっと、いろいろあってね」
困ったような照れたような表情で言う。詳しく説明するのは無理だろう。
ハルヒは少し考えて、「まあいいわ。あたしが歓迎会やってあげる」と言った。
そんなことを言うハルヒに俺もちょっと驚いたが、次のひとことでクラス全員が驚いた。
「ちょっとみんな!今日SOS団主催でパーティやるから、来れる人は来て!」
これだけの人数を集めてどこでやるんだと言おうとしたのだが、
「キョン、あんた、放課後までに場所を用意しなさい」の一声に口を封じられてしまった。
「いくらなんでも急すぎんだろ!」また俺の役回りかよ。
 こういうときは古泉か長門に頼むしかないだろうな。俺は新川執事と森メイドによるケイタリングを想像した。
ハルヒの突発的イベントに機関を酷使するのもちょっとかわいそうな気もするな。彼らは仕事でやってるわけだし。
俺は長門に相談するべく隣のクラスに行った。
「長門、ちょっと」俺は二年六組のドアの前で手を振った。
「……分かった。うちでやればいい」
「お前んち、2LDKだろ、クラス全員入るのはちょっと無理がないか」
「朝倉涼子の部屋も使う。空間をリンクさせればいい」
「そんなことできるのか」
「接続は可能」
「分かった、じゃあ朝倉に聞いてくる」
俺は自分の教室に取って返し、朝倉に耳打ちした。
「……いいわ。家具もなにもないし」そうか。そうだよな。
というわけで会場は決まった。
「ハルヒ、長門んち借りれそうだ」
「有希の部屋?この人数じゃちょっと狭くない?」
「この突然のパーティにほかにどこを用意しろってんだ」
「分かったわ。まあなんとかなるでしょ」
それから、さして付き合いが深いわけでもない女子を数人集めて買い物に行く算段をしていた。ハルヒがクラスのメンバーを集めてなにか催すというのも、これが初めてかもしれない。
 朝比奈さんに連絡を入れ、朝倉の歓迎会をやることになったと伝えた。俺と古泉はケーキを買いに行かされた。
「涼宮さんがクラスで先頭だって歓迎会を催すなんて、非常に珍しいですね」
「前代未聞だな。それに主賓が朝倉だし」
「涼宮さんと朝倉さんって、あまり親しいとはお見受けしませんでしたが」
「ハルヒにしちゃあまり好きなタイプでもなかろう。優等生嫌いだからなあいつ」
「それが今回は突然の歓迎ぶり、と」
「今の朝倉はちょっと頼りなさげというか。苦労したっぽい影が見えるからじゃないかな」
お前の記憶にはないだろうけど。

 誕生日用の箱型ケーキを数個抱えて長門マンションまで来た。このケーキ、予約しとかないとふつーは手に入らないんだが。さすがハルヒというかな。
「しょ~ねん」
長門マンションの玄関のドアを入ると声をかけられた。
「は、はい」
「朝倉さんちの娘さん、帰ってきてんだねぇ。昨日お土産を持って挨拶に来てくれたよ」
「ええ、カナダから帰ってきたらしいです」
「今日はめんこい娘さんがいっぱい来てて嬉しいよ」
おっさん、朝倉に手を出したら長門に情報連結解除されかねんから注意しろよ。
 長門の部屋のドアは開いていた。いつもの二倍の広さの居間にクラスのメンツのほとんどが集まっていた。
「これはすごいな」
集まっているメンツがじゃない、部屋をリンクさせるという長門の言葉は本当だった。
「どうやってやってるんでしょうね。不思議でなりません」
「まったくだ」
外から見たときと内側の容積が違うことに誰も気が付かないんだろうか。これ、朝倉の部屋のドアを開けてみたら同じ部屋が繋がって見えてるのか。
「長門、ぐっじょぶ」俺は親指を突き出した。
長門もまねをして親指を立てたが、その意味を考えているようだ。

「長門さんっていいところに住んでるだねえ、しかも一人暮らしなんだって?」国木田が妙に感心していた。
「長門の親は外交官で、エルサルバドルにいるんだ」
「へえええ」
国木田がめんたまキラキラさせてるぞ。もしかしてときめいたのかよ。
「ちょっとみんな注目!本日はお忙しい中お集まりいただきましてありがとう!今日は朝倉の歓迎会だから楽しんで行ってね!涼子、おかえり!」
盛大な拍手が沸いた。
「あ、それから。料理を手伝ってる女子以外は会費徴収するからね!」
集まってから言うのって詐欺じゃねえか。

 俺は隅にいる長門、朝倉、喜緑さんを見つけて手を振った。
「キョン君、いろいろたいへんでしたね」
「いえいえ。俺はいつもSOS団のパシリ役というか、特殊な能力がないんで足で走り回るしか能がないんで」
「とんでもありませんわ。こうやって涼宮さんを動かしているじゃないですか」
「そ……そうですかね」
俺が照れる番だった。やさしい言葉には弱いんだ。
 長門は思うところがあるのか、朝倉のそばから離れなかった。朝倉をこっちに連れ戻すとき、「……わたしが、面倒を見る」そう言って譲らない長門を思い出した。以前の朝倉も、任務さえなければふつうの女子高生として過ごしていたのかもしれない。
「朝倉、たまにSOS団に顔を出せよ。ハルヒがこんなに歓迎するのを見たのは、お前がはじめてだ」
朝倉の少し悲しげな表情がやがて笑顔になり、ひとこと呟いた。
「そう……こっちに来てよかった」

それは俺の知る、あの朝倉の満面の笑顔だった。

END


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