作詞:[[ハチ]] 作曲:[[ハチ]] 編曲:[[ハチ]] 唄:初音ミク &font(#999999){地を覆う大きな傘。} &font(#999999){中央に塔が一本建ち、それが機械の塊を支えている。} &font(#999999){当然 真下にある集落には陽が当たらず、機械の隙間から漏れる「雨」に苛まれている。} &font(#999999){人々は疑わない。} &font(#999999){それが当たり前だったから。} &font(#999999){何て事はない。} &font(#999999){ただの「掟」なのだから。} あの傘が騙した日 空が泣いていた 街は盲目で 疑わない 君はその傘に 向けて唾を吐き 雨に沈んでく サイレンと 誰の声も聞かずに 彼は雨を掴み 私の手をとりあの傘へ 走るの 二人きりの約束をした 「絵本の中に見つけた空を見に行こう」 刹那雨さえも引き裂いて もう悲しむ事も忘れたまま &font(#999999){降り頻る雨と共に、二人は傘の塔へとたどり着いた。} &font(#999999){閉ざされていた両開きの扉は、押せば呆気なく開き、二人を拒みはしない。} &font(#999999){誰も入ろうとはしないのだ。} &font(#999999){鍵などあってもなくても同じだろう。} &font(#999999){その扉の向こうの、} 崩れ出し何処へ行く螺旋階段は 煤けて響いた滴り雨 泣きそうな私を そっと慰める様に 君は優しく 私の手を 白い影に追われて 逃げた先に檻の群 理由を探す暇も無く 気も無く 震えた手を 君が支えて 私はそんな背中を ただ見守るの 闇に溶けた 歯車は笑う ホラ微かに風が頬を撫でる &font(#999999){「風が、流れてるわ」} &font(#999999){女の子は言った。} &font(#999999){男の子は小さく相槌を打った。} &font(#999999){足を止める事はなかった。} &font(#999999){とても遠くまで来た様な、或いはまだ走り始めて間もない様な。} &font(#999999){絶望的に小さな二人を、誰が見つける事も無かった。} &font(#999999){誰が見つける事も無かった。} 白い影はもう追ってこなくて とても悲しそうに消えた 錆びた匂いも煤けた黒さえも やがて色を淡く変え 何処からか声が聞こえた様な 気がした様な 忘れた様な 螺旋階段の突き当たりには とても小さな扉が 埃を纏い待っていた &font(#999999){「開けるよ」} &font(#999999){「うん」} そこには何もかもがある様に見えた 色とりどりに咲いた花 深い青空 滲んだ世界に二人きり もう何もいらないわ 絵本の中 とじ込んだ空を 在るべき場所に返した 忘れない様に 君がくれた 拙い花束を 笑いながら そっと肩を寄せた 世界の最後に傘を差す ずっとこんな世界ならば よかったのに 悲しくないわ 君の側で... 花の咲いたその傘の上には とても幸せそうな顔で 小さく眠る二人がいた