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古泉一樹の憂鬱

古泉一樹の憂鬱 ◆mfN0eC9miI



 カタカタカタカタカタカタカタカタカタ――

 はぁ……いい加減、この音にも飽きてきたぞ。
 ハルヒは何をそんなに弄繰り回してるんだか。どうせまたよからぬ事を企んでいるんろうが、俺を巻き込むなと言いたい。
 だが、どうせ俺は巻き込まれるんだろうなぁ。もうわかりきってるさ……ハルヒだし。
 ったく、楽しそうに笑いやがって。アイツは人が死ぬのを見てそんなにも楽しいのだろうか?
 俺も、目の前の画面に映るシーンを見てみたが……全く楽しくなかったぞ。寧ろ不快感しか残らない。
 俺が見たのは、どこか可愛らしい雰囲気をした男――言っておくが俺はゲイじゃないぞ――が銀髪のロリ少女を毒殺している所だった。

 ――可哀想にな

 純粋にそう思う。
 俺にも妹がいるからかも知らんが、やはりあんな小さな女の子が殺されるのを見るのは忍びない。
 ズーム機能とやらで、その死顔を見てみるが……正直やめておけばよかった。
 キメ細やかな銀髪は汚い床に舞い落ち埃に汚されている。
 透き通るような白い肌も、苦しみに掻き毟ったせいか赤く染まっていた。
 美しい碧眼の瞳はカッと見開かれ、薄く開いた唇からは汚らしい泡が漏れている。

 ……いかん、吐きそうになってきた。

 とりあえず画面から目を離して、楽しそうなハルヒ以外のSOS団員を観察してみる。

 おぉ、長門は相変わらずだな。
 全くの無表情で、一心不乱に何かを打ち込んでいる。つーか、さっきから煩かったのはお前もだったのかよ! 
 お前の不思議パワーでハルヒを止めてくれれば、こんな胸糞悪いモノに参加させられずに済んだってのに。
 なんて、心の愚痴が聞こえたのか顔を上げた長門とばっちり目が合う。

「………………………………………………」

 10秒ほど見つめあっていただろうか。何事も無かったかのように長門は視線をパソコンへと戻す。
 うむ。毎度思うが、あの奇抜な行動さえなければ長門は普通に可愛いと思う。
 まぁ、人間ではないから仕方いんだがもう少し――っていかんいかん。
 そんな事を考えてる場合じゃない。首を振って雑念を払って視線を移すと、今度は古泉。

 こいつも、相変わらず何を考えているのかわからない表情を浮かべてやがる。
 何やら考え事でもしているのか、顎に手を当てジッと画面を見つめている。
 そういや、こいつもこいつで大変なんだろうなぁ。
 こんな状況だし機関とやらからの命令もあるだろう。それに加えてハルヒのご機嫌取りもしなくちゃいかんとはな。

 ご愁傷様、ってやつだ。

 大体、ハルヒのご機嫌取りって時点で中々に無茶がある。
 山の天気のように変わりやすい機嫌なうえに言い出す事は無茶苦茶だし、何より常識ってやつをどこかに忘れてきてやがる。
 いや……ハルヒの事だ自分からどこかに置いてきちまったんだろう。
 アイツも顔は良いんだから、常識さえ持てばモテるだろうに……勿体無いこった。


 あぁ、可愛いといえば朝比奈さんは大丈夫だろうか?
 さっきから何だかフラフラしてるけど、キツいのなら無理してお茶を淹れてくれなくてもいいのに。
 と言うか、無理せず休んでていただきたい。
 SOS団の清涼剤兼癒しの存在に倒れられたら俺はどうすればいいんだ!!?
 正直、ここまで落ち着いていられるかは微妙なところだ。

 だが、朝比奈さんが弱るのも無理はないよなぁ。
 いきなりこんなモノに参加させられたんだ。ハルヒの力を知ってたからこそ俺は平静を保っていられたが、何も知らない状況で巻き込まれたら熱出してぶっ倒れるかもしれん。
 それにあんなスプラッタシーンを目の前で見せられちまって……朝比奈さんが未来人で、多少は耐性があるとは言えアレはキツいだろう。

 それでも頑張ってお茶を淹れてくれる朝比奈さん、なんて健気なんだ。
 こんな状況とは言え――いや、こんな状況だからこそ惚れてしまいそうだ。

 なんて、どうやら俺も疲れてるみたいだな。
 さっきからなんか思考がおかしい気がする。
 いや、朝比奈さんに惚れそうなのは紛う事なき事実だが、流石にそんな事を考えているのは不謹慎だろう。

 一通りSOS団の面子を見回し、もう一度画面を見てみるとまた誰かが死んでいた。

 おいおい……こいつらどんだけノリノリなんだ?

 全く、ハルヒと言いこいつらと言い俺の理解の範疇を超えた奴等が多すぎる。
 始まって数時間でもう8人も死んだのかよ。
 自分の思い通りに行って、ハルヒはさぞかしご機嫌なんだろうな。

 そう思ってハルヒを見てみると、こっちを見ていたアイツと目が合った。
 ……なんだろう、長門とはまた違った威圧感を感じる。
 特に喋る内容も思い当たらず黙っていると、不機嫌そうにハルヒが口を開いた。

「何よ、キョン! そんなつまらなそうな顔しちゃって!!」

 いや、お前はこんな状況で楽しめと言うのか?
 俺はそこまで神経が太くないんだ。お前と一緒にするな。
 何てことは言えるはずも無く……と言うか聞いてくれる様子もなく、ハルヒは一人ベラベラと喋りだす。

「まぁ……アンタの気持ちもわからないでもないわよ? 確かに、エンターティメントとしては派手さが足りないわよね!」

 俺はそんな事一欠けらも思っていない。つーかお前はこれでも派手さが足りんとぬかすのか。

「そ・こ・で!! この団長様がいい事を考えたわ! 聞きたい? 勿論聞きたいわよねぇ」

 にやにやするな。そして誰も同意してないのに気付け。

「ずばり、支給品を追加するのよ!!!」

「ハルヒ……頼むから、俺達にもわかるように説明してくれないか?」

 ポカーンとした顔をしているハルヒ以外の団員を代表して、俺が口を開く。
 悪いが、全く意味がわからなかった。
 派手さが足りない=支給品の追加。この方程式はどこからやってきたと言うのだ。

「ンもう! 少しは考えなさいよね、この馬鹿キョン!! いい? 今ここには最初に殺した3人のデイバッグが余ってるわ
 その内1つは、こっそりと会場に隠しておくの。ソレを見つけた参加者はきっとこう思うはずよ! 何て自分は幸運なんだろう
 もしかしたら、優勝できるかもしれないってね」

「………………………………………………」

「そしてもう1つ、これは、ちゃんと殺し合いに乗った人にご褒美としてプレゼントしてあげるのよ!
 今でさえきっちり殺しあってるんだもん……また何かあげれば、もっと激しくなる筈ってわけね」

「………………………………………………」

「最後にもう1つ。これは、放送でご褒美の説明をしてからプレゼントするの!!
 そうね、1番早く3人殺した人には武器の追加がありますよってね。これなら、殺し合いもじゃんじゃん進むわよぉ!!!」

 ……いかん、頭が痛くなってきた。
 コイツは一体何を考えて生きてるんだ?

「なによ! 私の考えに何か文句でもあるの!?」

 ある。大ありと言っても過言ではいだろう。
 まず、こんな餌で釣るような作戦に引っ掛かる馬鹿がいるとは思えん。
 それに……会場に隠すって言っても誰が隠すんだ?
 俺は絶対嫌だぞ! 断固として拒否する。いいか、ハルヒ! 全てがお前の思い通りに行くと思ったら大間違いなんだからな!!

「いやはや、流石は涼宮さんです。ナイスアイデアだと思いますよ?」

「……右に同じ」

「ふぇ? わ、私も古泉君や長門さんと同じですぅ」

 おいおいおいおい。
 俺だけ仲間外れかよ。それとも何か? 俺がおかしいってのか?

「ほーら見なさい! やっぱり私は正しいのよ!! じゃあ……早速実行よ!!!」

 くっ……百歩譲って、この案を可決するとしよう。
 だが、一体全体誰が支給品を持っていくんだよ!

「うーん、そうね。じゃあ古泉君言ってきて頂戴」

 その瞬間の古泉は、確かに人間らしい表情を浮かべていた……ような気がする。

「ちょっと待ってください涼宮さ――

 最後まで言わせて貰う事無く、古泉の姿が消えさる。
 アイツも参加者と同じく会場に飛ばされたんだろう。
 なんて可哀想な奴なんだ……。

「あら、ご苦労様」

 ハルヒの奴が長門を見ながらそんな事を言う。
 長門……せめて最後まで言わせてやれ。あれじゃ哀れすぎる。
 ご丁寧に、デイバッグは二つ消えている。

「後は、そうね。放送は私がするから、残りは各自好きに過ごしてもいいわ

 ……あんまりパソコンの画面を見すぎると疲れるって言うしね」
 ハルヒにしてはまともな事を言い始める。

「それじゃあ私はちょっと用事があるから」

 とか何とか言って、ハルヒは部屋から出て行く。
 ふぅ……とりあえず、一安心か。

「キョン……君」

 いや、まずは朝比奈さんに風邪薬を飲ませないといかんな。


【?/1日目・黎明/?】
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:楽しい。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:主催者として大いにバトルロワイアルを楽しむ。
1:放送の原稿を書く
2:何か用事がある???


【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:ちょっとした違和感。諦観してる。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:なるようになるだろう。できれば現状維持。
1:朝比奈さんに風邪薬を飲ませないと
2:古泉、ドンマイ


【朝比奈みくる@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:頭に鈍痛。ちょっと悲しい。
[装備]:メイド服
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:涼宮さんが望むなら仕方ないのかな。
1:鈍痛なんて感じないわ。
2:ごめんなさい嘘です。痛いです。
3:鈍痛を治したい。
4:できれば平和に終わってほしい。

【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:涼宮ハルヒの観察。
1:とりあえずハルヒの指示に従う。




 一方その頃。
 長門によって会場に飛ばされた古泉は、薄暗い森の中にいた。

「全く……あの二人は無茶をしますね」

 ため息混じりに呟きを漏らす。
 彼女は、1つは隠せと言った。これはまだ大丈夫だ。
 適当に置いていけばいい。

 だが、殺した人へのご褒美というのが難しかった。
 まず、これまでに殺人を犯した参加者は8人だが、そのどれも1人だけしか殺していない。
 これでは誰に渡していいかわからないではないか。
 それに、だ。
 殺した所までは確認しているとは言え、移動している可能性もある。
 ここから、パソコンの情報を頼りに進んでも遭遇できないかもしれない……と言うか、そっちの可能性が高いだろう。

「はぁ……とりあえず首輪がついてなかったのと、帰る方法があるのが幸いですね」

 二つのデイバッグを抱えながら、ポケットにある機械を手に取る。
 長門さんの綺麗な字で書かれた説明書によると、この機械のスイッチを押すとあの部屋に戻れるらしい。
 本当なら今すぐにでも帰りたかったが、そんな事をしては涼宮ハルヒの機嫌を損ねる事はわかりきっている。
 どうやら、長い工程になりそうだった。

「まずは、このデイバッグを隠す場所をさがしましょう。それから、最初に出会った1人でも殺した参加者にもう1つを渡す。
 あぁ……こんな物騒な所からは、早く出たいものです」

 古泉一樹の憂鬱は、まだ始まったばかり。

【D-4/1日目・黎明/森の中】
【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:精神的ショック(小)。健康。首輪無し。
[装備]:主催者の部屋に帰るための機械
[道具]:デイバッグ×2
[思考・状況]
基本:とりあえずさっさとデイバッグを処理してあの部屋に帰る。
1:適当な場所にデイバッグの1つを隠す
2:殺人を犯した参加者を見つけたらそいつにデイバッグを渡す

【主催者の部屋に帰るための機械@HOTロワオリジナル】
文字通り主催者の部屋に帰る事の出来る機械。
薄いカードの形をした機械で。
真ん中にある赤いスイッチを押すと主催者達のいる部屋に帰る事ができ、青いスイッチを押すと連絡を取り合える。
意外と頑丈でちょっとやそっとで壊れない。


32:壊す者、壊れる者 時系列順 35:Quo Vadis
33:殺しあいDo-Dai? 投下順 35:Quo Vadis
06:The Joy of Haruhi Suzumiya 涼宮ハルヒ :[[]]
06:The Joy of Haruhi Suzumiya キョン :[[]]
00:オープニング 長門有希 :[[]]
06:The Joy of Haruhi Suzumiya 朝比奈みくる :[[]]
00:オープニング 古泉一樹 42:交錯~crosspoint~


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最終更新:2009年12月05日 11:43