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第二十三章-第二幕- 葛藤するレオンハルト






ユイナ姫と愛馬チトセ、そして幻杖レプリアーツを加えた
勇者軍主力部隊は、続けざまにルスト家のメンバーを加えるべく、
出来るだけ速やかに妖精の森へ移動する事に決めたのであった。
勇者軍主力部隊は、速やかな移動を行っているが、
それでも陸路を地道に進む以上、ある程度時間がかかるのは
仕方の無い事であると言えるだろう。
そんな中、ジルベルトはというと、必死にサイコキネシスの制御に
苦心し、ずっとボールの相手をしていた。
「にゃーにゃーにゃー」
猫達がふよふよと浮かんでは動くボールに食いつき、
じゃれたり転がったりしているのはご愛嬌だろう。

しかし実益はともかく、見た目は非常に胡散臭い能力だ。
ボールをふよふよ浮かべて操っているというのは、
見ようによってはただの手品師か何かに見えるかもしれなかった。
……正直こんな所を敵に見られたくはないものである。
下手をすると侮られて、士気の低下に繋がりかねなかった。

そうやって、てくてくとのんびり歩いていると、
何やら前方から、ナイトらしき人物が寄ってきた。
「あれは……」
ユイナ姫が下馬して、駆け寄る。
相手はザン共和王国民政部サブ・リーダーである
レオンハルト=サイクスと、愛馬エルトリオンである。
「おじ様! どうなされたんですか!?」
「おお、ユイナ王女。実はちょうど勇者軍主力部隊に
 用事があって来たのです。突然の接触、ご容赦を」
レオンハルトも下馬して拝礼する。
「おじ様からも言ってあげて下さい。
 この非常事態に、民政部と王政部が対立しても、
 得をするのはFSノア49だけなのです、と」
ユイナ姫が懸命の説得に入る。
「我輩としてもそういう思いは同じなのですが、
 いかんせん、民政部の総意には逆らえず……」
「首相殿はあなたとも懇意のはずです。
 あなたの意見を無下に扱えるとも思えません!」
ユイナ姫は的確な意見を口にした。
「無下には扱っておられませぬ。
 ブレッド首相は公正無私の御方です。
 参考にはしていただけましたが、
 最終決定が共同作戦の拒否、ただそれだけのこと」
「そんな……ではおじ様も、
 こちらを妨害なさるおつもりですか?」
「それを問うも詮無きこと故、ご容赦を、王女」
愛馬エルトリオンにまたがるレオンハルト。
慌ててユイナ姫も愛馬チトセに乗る。
静観していた主力部隊の一同も警戒態勢を取った。

「ナイト部隊、出でませい!」
「はっ!!」
レオンハルトの指揮により、伏兵としてそこかしこに隠れていた
ナイト部隊が姿を見せる。恐らく直属の指揮下部隊だろう。
純正のナイトのみで構成された、ユイナ姫曰く、
ザン共和王国民政部唯一の正統派部隊、という事になる。
ウィルスユーザーズ時代の全盛期ほどではないにせよ、
それでも結構な数が配備されていたようである。
中にはちらほらと、上級クラスであるパラディンの姿もある。
無論、レオンハルトと比するにあたわず、というところだろうが、
それでも厄介には違いなかった。
「諸君、敵は勇者軍主力部隊だ。丁重に拘束したまえ。
 ただし諸君等の命が最優先だ。出来んならいっそ行かせろ」
「了解!!」
対して、勇者軍側も応戦態勢を取る。
「……撃退なのー」
「了解!!」
言葉少なに指示を出すジルベルトに、懸命に応えるメンバー。
ある意味、それは健気にも見えた。

「我輩は後衛に下がる。前衛、突貫!」
レオンハルトと約三分の一ほどの部隊が後ろへ退き、
前衛となった敵ナイト部隊が突貫してくる。
「手加減は忘れちゃ駄目ですよ! じゃあ突撃!!」
リゼルの号令で勇者軍も真っ向勝負を挑む。
FSノア49のように爆撃や遠距離射撃でもなく、
かと言ってロボットや戦闘機のように空中戦でもなく、
こういう真正面からの勝負は随分と久々な気がした。
単純な消耗戦になると滅法強いのが勇者軍である。
双方手加減をしなければならないので、
ネイチャー・ファンダメンタルの時の戦闘と比較すれば
むしろ牧歌的であるとさえ感じる戦闘であった。

それでも空中戦力であるフローベールが主軸となって、
幻杖レプリアーツや砲剣ストレンジバスターの力は
使わぬまま、じわじわと戦局を押し込み始めた。
「ちいぃッ、やはり勇者軍相手では不利か!
 退けぃ! これ以上は命に関わるぞ!!」
「くっ……ここまでだ、退けーッ!」
レオンハルトの命令には素直に従い、
撤退していく民政部前衛部隊。よく統制が取れている。
実に鮮やか、迅速、見事な退き際と言って良かった。

「さて、次は我輩達の出番のようだな」
「ぶるるッ!」
レオンハルトと愛馬エルトリオンが息巻く。
なんだかんだで手合わせ出来るのを喜んでいるように見えた。
政治家である前に、彼は生粋の戦闘の達人なのだ。
その態度はむしろ当然とも言えた。

いよいよザン共和王国民政部との内乱戦も
本格化の様相を呈し始めていたのだった。
本来の標的であるFSノア49の所在も、
光学ステルス装置と思しき装備のせいで、
まったく不明のままであるというのに――



最終更新:2011年07月30日 21:12