第二十三章-第三幕- 試される勇者軍
勇者軍主力部隊は、
ザン共和王国民政部のサブ・
リーダー
そしてかつての敵であった
レオンハルト=サイクスと
何の因果か、再び敵対し、そして正面からの小競り合いを
展開せざるを得ない状況に陥っていた。
「撤退だ、撤退ーッ!!」
敵
ナイト部隊の前衛の大半が負傷し、大きく退いていく。
「さて、では我輩達の出番だな」
レオンハルトと愛馬
エルトリオン、そして後衛の部隊が出てくる。
その姿を見て、勇者軍は改めて態勢を立て直した。
準備不充分で受けるわけにはいかない攻勢が始まるのだ。
「
ブレイド・オブ・アイシクル!」
レオンハルトの槍が氷柱を纏い、更に強固なものと化す。
「勇者軍とて人の子よ、恐れるな! 突撃!!」
レオンハルト自身の号令で、後衛が突撃を開始する。
思えば、ユイナ姫を除くメンツはレオンハルトとの
直接対決を経験していない。ほぼ全員が
レオンハルトの実力を未知数と見なしていた。
敵ナイト部隊が突貫してくる。
どうやらユイナ姫の相手を格下にさせるようだ。
レオンハルトとしても知己であるユイナ姫以外の実力を
見ておきたい、という心境があったのだろう。
とりあえず、彼自身も初見であるフローベールに仕掛けてきた。
「てぇぁぁりゃぁぁぁぁ!!」
レオンハルトが渾身の一撃を叩き込むが、
フローベールと愛馬
ベアトリスはひらりと上空へ逃れる。
「そんな力任せの一撃で!」
フローベールも真っ向から受ける覚悟を見せたため、
ほとんどのメンバーはユイナ姫の援護に回った。
フローベールがお返しとばかりに空中からの急襲をかけて、
槍での一撃を叩き込もうとする。
ガキィン!
しかし容易く弾き返された。
当然、パワーでは向こうの方が遥かに上である。
「いい筋をしている。習熟度もまずまずだ。
だが、新兵の域は出んな、娘!!」
レオンハルトがカウンターを叩き込もうとしたところで、
ルシアの弓がそれを遮った。盾にヒットしている。
「
ネイルキャットか。久しぶりだな」
「お互いにコードネームを捨てた身で、今更!」
「ふむ、確かに野暮か。だが弓の腕が変わるわけでもない。
相変わらず見事な狙いをしている。部下なら直撃コースだな」
と、事も無げに盾から矢を引っこ抜いて捨てる。
この二人は
ウィルスユーザーズとして勇者軍の敵に回っていた頃の
同僚的な関係であったという事実があるが、
お互いその因縁は払拭されている。今は敵と味方だ。
「そう言えばウィルスユーザーズの幹部同士で
手合わせをする事も無かったか……面白い!」
「私は面白くないです!」
ルシアが仏頂面のまま、容赦なく矢を撃ち込んでいく。
いずれも常人なら致死級の狙いで精密な射撃をするルシア。
レオンハルトは巧みな制動と防御で見事に凌いでみせる。
その間に、フローベール、ルシア以外のメンバーが
敵のナイト部隊を同じような要領でことごとく駆逐していく。
ジルベルトも途中から
砲剣ストレンジバスターの砲撃は
直撃させなければいい事に気付いて、
威嚇射撃代わりに空中に発砲する。
それだけで敵が大勢落馬してくれるのだから楽なものだ。
また、魔法攻撃に優れたシルヴィアやリゼルの攻撃も
事態の優勢化を大いに助けていたのであった。
ユイナ姫も機動力を生かして撹乱し、
一方的な攻撃で敵を壊滅状態に陥れていた。
「……やはり分が悪いか。
今日のところはこれぐらいが限界だろう」
レオンハルトはあっさりと判断すると、
馬首を返して撤退の態勢に入った。
「逃げるの!?」
フローベールとルシアが異口同音に言葉攻めをする。
「逃げるさ。それくらいで部下が死なずに済むなら、
安すぎてお釣りが来る程度だろう……総員撤退!
我輩達は遺憾ながらこの戦場を放棄する!」
「りょ、了解!!」
散々に追い立てられていた敵ナイト部隊は
待ってましたとばかりに撤退を行う。
機動力に優れるナイト部隊なだけに追撃は無理があった。
その様子を見ていたユイナ姫は呟く。
「見事な退き際ですね、さすがはおじ様。
あれだけ損害を受けて死者を出さずに撤退するとは……」
どちらかというと賞賛の意味合いで言ったのだった。
「しかし厄介になるわね。レオンハルトさんが出るなら、
これからは大幅に増員した上で妨害してくるでしょう。
サブ・リーダーが真っ先に出てきて自ら奮戦したなら、
わざわざ部下が遠慮してやる必要はどこにもないもの」
ルシアも嘆息する。
とはいえ、まずは勝利した。もっと戦局を優位に導くため、
もっともっと戦力を集めなくてはならない。
恐らく次の目的地、
妖精の森でも敵は仕掛けてくるだろう。
そうなった時のためにも、戦力は多いほどありがたかった。
集中的に狙われたユイナ姫が少々怪我をしたものの、
おおむね無事なまま、勇者軍は進軍を再開した。
一方のレオンハルトは、部下を引き連れて休憩場所に到着した。
そこには一人の男が何やら大型の竜族に騎乗していた。
「
ブレッド首相殿。わざわざお出迎えなど」
「あたら優秀な部下を失うは愚の極み。
レオンハルト。君は我等が国に欠くべきでない男だ。
故にこれぐらいの事は当然であろう」
ブレッド首相と呼ばれた男は、軽く笑ってみせた。
「して、勇者軍の強さは如何程であったか?」
「相も変わらず人間離れしております。流石にございました」
「ならば良し! 次の一手を任せる者を選ぶとしよう」
「はっ! 全てはザン共和王国の――否、この惑星の未来の為に!」
負傷者だらけのナイト部隊も、レオンハルト同様に敬礼で返した。
最終更新:2011年07月30日 21:19