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第二十二章-第三幕- 激戦のドラゴン





多数のイグジスターを率いる特殊個体、イグジスター五滅将の一体、
ミズチ・イグジスターの襲来により戦局は大きく悪化していた。
それでもシャトルを死守していたものの、肝心の勇者軍メンバーが
彼一体に専念せざるを得ないため、
その他の者が危機を迎えていたのである。
「……いくら何でもデカ過ぎるだろうが、この野郎!」
竜族特有の巨体と、それに伴うパワーに舌を巻くロバート。
確かに実家の愛猫も遺伝子調整動物で、しかもやたらデカいが、
それ以上の体躯の上、愛玩動物のそれとは比較にならない凶悪さだ。
本格的な巨大生命体相手の経験が全く無い
ロバートには頭痛の種だった。
(これが、かのカーティス=ワイズマンだったらどうする!?
 彼や、その仲間はこんなのとは
 比較にならん化け物と戦ったはずだ!)
昔の偉人にふと思いを馳せるが、彼等もまた実際、
オーバースペックウェポンをもって戦っていた。
もしストレンジャーソードが使えていたなら勝機は大きかったはずだ。
それが、こんな無様な苦戦をしなくてはならない事に、
ロバートは焦燥と怒りを感じざるを得なかった。

「きゃああ!」
エナがおたおたと慌てふためく。急にミズチ・イグジスターが
ターゲットをエナに変えて、踏み潰そうとしてきたのだ。
「いけない、エナ!」
ウォルフ王子は愛馬ターミネーターを猛ダッシュさせ、
やや乱暴に引っ張り上げてエナを救助、緊急離脱した。
「す、すみません!」
「気を付けて下さい! 私もロブも、そしてあなた自身も
 十メートル級の生命体との戦闘経験は皆無!」
「は、はい!」
エナが返事するや否や、ロバートは既に追い詰められていた。
「うおおお!?」
「ロブ!」
巨大な爪で押し込まれている。純粋なパワー勝負では
流石にシャレにならなかったりする。
タングステンソードが折れる事は無いが、そのままでは
押し込まれたソードで自らを斬ってしまいそうである。
「離れなさい、ロブ!」
「出来るなら……やっとるわぁぁぁ!」
「ええい! フリーズバスター!!」
氷の呪文を連打してミズチ・イグジスターを牽制する。
一瞬怯んだ隙に、何とかロバートは強引に離れてのけた。

「こうなったらやるっきゃねえだろ!
 封神封魔流『攻』の秘剣! 四大精霊元素爆裂剣!」
ずぼどぉぉぉぉぉん!
凄まじい爆風と衝撃がミズチ・イグジスターを包んだかに見えた。
実際、奴の傍にいたイグジスターは多数消滅している。
だが、当のミズチ・イグジスターはその爆風を利用して飛翔。
難なく、とは言わないが、回避してみせた。
「なっ、なんて野郎だ、この……」

ごがすッ!
ロバートが悪態を言い終わらない間に、
ミズチ・イグジスターの真横から巨大な影が現れ、
ミズチ・イグジスターを轟然と蹴倒した。
「なんだ!?」
「ガアアアアアアアアアッ!」
憤怒の咆哮をあげ、一頭の飛竜が翼を広げた。
その上には一人の女性が乗っている。
「ローザ=カレン参上! 野郎共、待たせたな」
ニヤリと笑うと、ローザは飛竜から飛び降りた。
「来たか、ローザ!」
「ローザだけじゃねぇぞ、この俺が来たからには、
 ただでは済まさねぇぞ、イグジスター!!」
そう、飛竜は竜王ヴァジェス=バハムートⅡ世である。
「俺の嗅覚に感謝するんだな。のんびり来るつもりでいたら、
 いきなり硝煙やら何やらの匂いがするもんで、急いで来たぞ」
「はい! 本当の本当に助かりました!」
素直にお礼を言うエナ。

「さて、お前達は小物を相手していろ。
 デカブツの相手はデカブツが担当してやる」
ヴァジェスはそう言うなり、イグジスターにいきなり噛みつく。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
ミズチ・イグジスターは竜族そのものの声で悲鳴をあげ、
暴れて周囲に被害をもたらしてしまう。
「その竜族そのものの声も容姿も、存在する理由も因果も、
 何もかも根底から気に入らねぇ、自然生命族のみならず、
 竜族にも手を出した事、死をもって贖え、この野郎!!」
ロバート達や直衛兵、エリミノイドが死闘を繰り広げる中、
ヴァジェスはミズチ・イグジスターのみに専念する。
「こちら管制塔! カウントダウン開始だ!
 あと60秒、なんとか戦線を維持してくれ!」
しかしヴァジェスは聞いてもいない。それどころではないのだ。
「うおッ!」
いきなりミズチ・イグジスターが爪で反撃してきたのだ。
「野郎! まだ抵抗するか!」
「万物の摂理も、自然の生態系も我々には不要。
 生き物の垂れ流す負の念そのままに、我等は全てを滅す」
「俺一頭に勝てない分際でほざくな! 死ねぇぇぇッ!」
またもミズチ・イグジスターに噛みつくヴァジェス。
頭を振るい、ミズチ・イグジスターの巨体を真上に振り上げる。
瞬間、口を放し、チャージしていた魔力を一気に解放する。
「汚物は消毒だ……! ファイアブレス!」
晒された傷口から内部へ直接、超絶高温のブレスを叩き込む。
これでは生命維持どころではない。
「ぐぎゃあああああああ!」
あっさりとミズチ・イグジスターは撤退の暇も無く消滅。
いつも通り不気味な音を立て、
気味悪く黒い塊となって飛び散り、消える。

「おらぁ! 続けていくぞ!」
ヴァジェスは人間のほぼいない方面に向けて
高火力のブレスを次々叩き込む。
それが契機となり、両者のパワーバランスは一気に崩壊。
すぐに連合軍側が優勢となり、イグジスター部隊は壊滅し始めている。
「カウント、ゼロ! 行けぃ!」
その時、シャトルが人工衛星を載せ、轟音を立てて飛び去った。
「ようし、これで最後だ!」
ローザが最後のイグジスターを叩きのめして、作戦終了となった。
随分と辛い勝利だったものの、これは戦略的勝利だ。
今後のイグジスターの中・長期的討伐システムに必要な要素を
確立したという点においては、むしろ前回の戦争より意義は大きい。

「よし、作戦終了だ……! 各員、この施設をただちに放棄。
 各自帰るべき場所へ戻り、
 各々イグジスターへの対策を立てて下さい!
 勇者軍予備役部隊はアーム城へ戻り、周辺の警戒を続行!
 メインメンバー及びサブメンバーも、これに随行し、一旦帰還!
 ……よろしいですね? ロブ、ヴァジェス王」
「おう」
「ま、ローザもいるし、ついてってやるか」
二人共了承したので、ウォルフ王子はようやく安堵した。
「またよろしくお願いしますね、ローザさん!」
「おうよ。どうもややこしい状況だが、任せな!」
ローザは豪快過ぎる肉料理を兵士達に振る舞いながら、返事した。
これで戦力は大きく増強され、少なくとも自衛する分には
大きな前進となったであろう事は間違い無い。

そして一同はメイン・スペースポートを一旦放棄して、
アーム城に帰還するのであった。



<第二十三章-第一幕- へ続く>
最終更新:2012年07月02日 20:20