崩壊学園wiki
3-2 依頼の継承
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シィル
まずは工作部に行こう。
まずは工作部に行こう。
「シィル!」
「おはよう!」
部室棟に入って工作部に向かう途中、すれ違った人たち全員が、シィルに元気よくあいさつした。
「おはよう!」
部室棟に入って工作部に向かう途中、すれ違った人たち全員が、シィルに元気よくあいさつした。
シィル
お、おはよう……。
……みんな……。
お、おはよう……。
……みんな……。
シィルは頑張って返事をしているが、やはり誰が見ても慌てた様子だった。
ようやく工作部までやってきたシィルは、ほっと息をついた。
ようやく工作部までやってきたシィルは、ほっと息をついた。
シィル
はぁ……。
はぁ……。
工作部の生徒
——部長、おはよう!
——部長、おはよう!
シィル
おはよう……。
おはよう……。
工作部の生徒
この数日、ずっとシルバーのチェーンペンダントを作っていたんだけど、ついに完成したの。部長、見て——
この数日、ずっとシルバーのチェーンペンダントを作っていたんだけど、ついに完成したの。部長、見て——
シィル
うわぁ……か、かわいい……。
本当によくできてるね……。
うわぁ……か、かわいい……。
本当によくできてるね……。
工作部の生徒
エヘヘ。部長がいろいろ教えてくれたおかげだよ。
エヘヘ。部長がいろいろ教えてくれたおかげだよ。
シィル
そんなことないよ——
そんなことないよ——
工作部の生徒
そうだ、部長。入口の掲示板を見たんだけど、あれって、部長が依頼を引き受けるために設置したって聞いたよ。いなくなったペルセポネー先輩の代わりに、部長が新たな学園の探偵になるって話は本当なの?
そうだ、部長。入口の掲示板を見たんだけど、あれって、部長が依頼を引き受けるために設置したって聞いたよ。いなくなったペルセポネー先輩の代わりに、部長が新たな学園の探偵になるって話は本当なの?
シィル
た、探偵なんて……シィルにはそんな自信ないよ。
でも、他の生徒の助けになれるなら、彼女たちの困りごとを解決するお手伝いをしてあげたいの……。
た、探偵なんて……シィルにはそんな自信ないよ。
でも、他の生徒の助けになれるなら、彼女たちの困りごとを解決するお手伝いをしてあげたいの……。
工作部の生徒
そうなんだ。本当に立派な志だね。
でも、今日見たんだけど、もういくつか掲示板に依頼が書き込まれていたみたいだよ。
そうなんだ。本当に立派な志だね。
でも、今日見たんだけど、もういくつか掲示板に依頼が書き込まれていたみたいだよ。
シィル
ええっ……。
部活が終わったら、す、すぐに見てみるよ——
ええっ……。
部活が終わったら、す、すぐに見てみるよ——
……。
しばらくして、工作部の活動が終わった。
掲示板に書かれた依頼のことで頭がいっぱいのシィルは、工具を片付け、工作部の部室から出て掲示板に向かった。
しばらくして、工作部の活動が終わった。
掲示板に書かれた依頼のことで頭がいっぱいのシィルは、工具を片付け、工作部の部室から出て掲示板に向かった。
掲示板には様々な依頼が貼られている
(模型部の依頼を受ける)
シィル
こんにちは、あの……
シィル
こんにちは、あの……
模型部の生徒
また会ったね、シィル!
また会ったね、シィル!
シィル
うん……あなたたちが掲示板に書いた依頼を見たの。入口に置いてあった模型が壊されたって……。
うん……あなたたちが掲示板に書いた依頼を見たの。入口に置いてあった模型が壊されたって……。
模型部の生徒
えっ?ああ、あれのことね——
えっ?ああ、あれのことね——
シィル
もう少し詳しく状況を説明してもらえる?
もう少し詳しく状況を説明してもらえる?
模型部の生徒
——先に私たちの新しいゲームを試してみない?
——先に私たちの新しいゲームを試してみない?
シィル
えっ?数カ月前にも似たようなことを聞いた気がするけど?
あと、依頼は……。
えっ?数カ月前にも似たようなことを聞いた気がするけど?
あと、依頼は……。
模型部の生徒
大丈夫だよ。あの壊された模型は、もう私たちが直したから。
たぶん、通りがかった生徒がうっかり壊しちゃったんでしょう。
「犯人」探しなんて、一番重要な事じゃないよ。シィル、私たちの新しいゲームをやってみてよ。いっそのこと、これを今回の依頼内容だと思ってくれればいいよ!
今回のゲームは、難易度もマップも前回よりグレードアップしているからね!
大丈夫だよ。あの壊された模型は、もう私たちが直したから。
たぶん、通りがかった生徒がうっかり壊しちゃったんでしょう。
「犯人」探しなんて、一番重要な事じゃないよ。シィル、私たちの新しいゲームをやってみてよ。いっそのこと、これを今回の依頼内容だと思ってくれればいいよ!
今回のゲームは、難易度もマップも前回よりグレードアップしているからね!
シィル
えっ……うぅ……。
わ、分かったよ……。
えっ……うぅ……。
わ、分かったよ……。
模型部の生徒
やった!
要領は前回と同じだよ——
フィールド内の恐竜の模型を選択すると、選択した恐竜は退場させられ、隣り合うマスの恐竜はそれまでの「登場」「退場」の状態が変化するよ。限られた回数内で、すべての恐竜を退場させられたらクリア!
やった!
要領は前回と同じだよ——
フィールド内の恐竜の模型を選択すると、選択した恐竜は退場させられ、隣り合うマスの恐竜はそれまでの「登場」「退場」の状態が変化するよ。限られた回数内で、すべての恐竜を退場させられたらクリア!
(うーん……試してみる。)
(挑戦失敗)
模型部の生徒
本当に残念……。
どう?シィル、もう1回やる?
模型部の生徒
本当に残念……。
どう?シィル、もう1回やる?
シィル
うん……。
うん……。
(諦める)
模型部の生徒
シィル、どう?
模型部の生徒
シィル、どう?
シィル
たしかに前回よりもずっと難しくなってるね……。
たしかに前回よりもずっと難しくなってるね……。
模型部の生徒
うーん、障害物に遭遇したみたい。このラウンドは諦めて、考え方を変えてみる?
うーん、障害物に遭遇したみたい。このラウンドは諦めて、考え方を変えてみる?
(挑戦成功)
模型部の生徒
やったね、クリアだよ!
模型部の生徒
やったね、クリアだよ!
シィル
本当にしんどかったよ……。
本当にしんどかったよ……。
模型部の生徒
アップデート後のゲームなのに、シィルがこんなに短時間でクリアするなんて思いもしなかったよ!
アップデート後のゲームなのに、シィルがこんなに短時間でクリアするなんて思いもしなかったよ!
シィル
そ、そんなにすごいことじゃないよ……。
そ、そんなにすごいことじゃないよ……。
模型部の生徒
アハハ。でも、シィルのおかげで、またゲームの問題点がいくつか見つかったよ——安心して。今度は改良して、もっと面白いゲームにするから!
そのときには、また遊びに来てよね——
アハハ。でも、シィルのおかげで、またゲームの問題点がいくつか見つかったよ——安心して。今度は改良して、もっと面白いゲームにするから!
そのときには、また遊びに来てよね——
シィル
えっ……。
(やっと完了した……。)
えっ……。
(やっと完了した……。)
掲示板には依頼が2つ残っている
(新聞部の依頼を受ける)
シィル
はぁ……。
(新聞部の依頼を受ける)
シィル
はぁ……。
シィルは小走りで新聞部の入口までやってきた。しかし、そこで彼女を待ち受けていたのは——
シィル
あれ!?
ド、ドアに鍵がかかってる……
あれ!?
ド、ドアに鍵がかかってる……
「コン、コン……」
シィルはドアを軽くノックした。
シィルはドアを軽くノックした。
シィル
……誰かいませんか?
……誰かいませんか?
ドアの向こうから返事はなかった。
シィル
本当に誰もいないみたい……。
本当に誰もいないみたい……。
……じゃあ、依頼はどうすればいいんだろう?
(ドアを蹴破ってみる。)
シィル
ドアを蹴破ってみよう……うーん、やっぱりそんなことはやめておこう。
この前、ペルセポネー先輩の前でやらかしちゃったし……。
シィル
ドアを蹴破ってみよう……うーん、やっぱりそんなことはやめておこう。
この前、ペルセポネー先輩の前でやらかしちゃったし……。
(近くにいる生徒に聞く。)
シィル
やっぱり近くにいる生徒に聞こう——
シィル
やっぱり近くにいる生徒に聞こう——
(通りすがりの生徒)
シィル
あ、あの……。
シィル
あ、あの……。
通りすがりの生徒
何か用?
何か用?
シィル
あ、あの……新聞部のドアに鍵がかかっているみたいなの。中の部員に会いたいんだけど、誰もいないみたいで……。
あ、あの……新聞部のドアに鍵がかかっているみたいなの。中の部員に会いたいんだけど、誰もいないみたいで……。
通りすがりの生徒
……うーん、そう言えば、今日は新聞部の人が出てくるところを見てないね……。
……うーん、そう言えば、今日は新聞部の人が出てくるところを見てないね……。
シィル
えっ?
えっ?
通りすがりの生徒
情報ありがとう。そのことをノートに記録しておくよ。
情報ありがとう。そのことをノートに記録しておくよ。
シィル
えっ、ど、どうして……?
えっ、ど、どうして……?
通りすがりの生徒
どうしてかって……そんなの簡単よ。だって私は「校内メディア新勢力部」の部員だもの。私たちにとって、新聞部は不倶戴天の敵なの。だから毎日ここに来て、新聞部の動きを探ってるんだよ!
どうしてかって……そんなの簡単よ。だって私は「校内メディア新勢力部」の部員だもの。私たちにとって、新聞部は不倶戴天の敵なの。だから毎日ここに来て、新聞部の動きを探ってるんだよ!
シィル
でも……あなたもニュース系の部活なら……ニュースを探し回って記事を書かなくていいの?
でも……あなたもニュース系の部活なら……ニュースを探し回って記事を書かなくていいの?
通りすがりの生徒
もうっ、ニュースなんてものは、あちこちからパクって、ちょっとオーバーな見出しを付けて、いろいろなサイトやアプリにアップすればいいのよ。わざわざ自分で探しに行く必要なんてないんだから!
それよりも、頑張って同業者の悪い情報を探して、あいつらを全部やっつけた方がいいのよ!
もうっ、ニュースなんてものは、あちこちからパクって、ちょっとオーバーな見出しを付けて、いろいろなサイトやアプリにアップすればいいのよ。わざわざ自分で探しに行く必要なんてないんだから!
それよりも、頑張って同業者の悪い情報を探して、あいつらを全部やっつけた方がいいのよ!
シィル
うーん……。
なんだか本末転倒な気がする……。
うーん……。
なんだか本末転倒な気がする……。
(通りすがりの生徒)
シィル
あ、あの……。
シィル
あ、あの……。
通りすがりの生徒
ん?
ん?
シィル
あの……どうして新聞部のドアに鍵がかかっているのか知ってる?中には誰も部員がいないみたいで……。
あの……どうして新聞部のドアに鍵がかかっているのか知ってる?中には誰も部員がいないみたいで……。
通りすがりの生徒
ごめんなさい。今ここに来たばかりで、知らないわ。
ごめんなさい。今ここに来たばかりで、知らないわ。
シィル
うぅ……ありがとう……。
うぅ……ありがとう……。
(通りすがりの生徒)
シィル
あ、あの……。
シィル
あ、あの……。
通りすがりの生徒
何か用?
何か用?
シィル
新聞部の生徒を探しているんだけど……ここに来たら、ドアに鍵がかかっていたの。
何があったのか知らない?
新聞部の生徒を探しているんだけど……ここに来たら、ドアに鍵がかかっていたの。
何があったのか知らない?
通りすがりの生徒
えっ、知らないの?今日は創立記念日で、新聞部の生徒はみんな取材に行ってるから、部室には誰もいないはずだよ。
えっ、知らないの?今日は創立記念日で、新聞部の生徒はみんな取材に行ってるから、部室には誰もいないはずだよ。
シィル
創立記念日……。
そうだったんだ……でも、あたしの依頼は……。
創立記念日……。
そうだったんだ……でも、あたしの依頼は……。
通りすがりの生徒
依頼?
依頼?
シィル
あっ、な、なんでもないの。ありがとう。
あっ、な、なんでもないの。ありがとう。
掲示板には依頼が1つ残っている
(文芸部の依頼を受ける)
文芸部の生徒
老いてもなお、研鑽を積む。ヘーゲルとか、カントとか……。
(文芸部の依頼を受ける)
文芸部の生徒
老いてもなお、研鑽を積む。ヘーゲルとか、カントとか……。
シィル
あ、あの……。
あ、あの……。
文学部の生徒
浅い小川の水が流れていき、時間が流れてくる——ソローは本当に素晴らしい……。
浅い小川の水が流れていき、時間が流れてくる——ソローは本当に素晴らしい……。
シィル
あの、ちょっと——
あの、ちょっと——
シィル
——ちょっと!
——ちょっと!
文芸部の生徒
……誰?
……誰?
シィル
あたしは工作部のシィル。あの、あなたたちが掲示板に書いた依頼を見たの……。
あたしは工作部のシィル。あの、あなたたちが掲示板に書いた依頼を見たの……。
文芸部の生徒
依頼?なんの依頼?
依頼?なんの依頼?
シィル
最近、文芸部で起きた作品集に関する事件の……。
最近、文芸部で起きた作品集に関する事件の……。
文芸部の生徒
えっ……あっ、そのことだったのね!
えっ……あっ、そのことだったのね!
シィル
詳しく教えてもらえる?あなたたちの力になれるよう頑張るから……。
詳しく教えてもらえる?あなたたちの力になれるよう頑張るから……。
文芸部の生徒
……その必要はないと思うよ。
……その必要はないと思うよ。
シィル
えっ?
えっ?
文芸部の生徒
「すべてのものには時の定めがあるが、時だけは滅びない。しかし、だからこそ、滅びるのは時だけなのだ」
これは誰が書いた名言か知ってる?
「すべてのものには時の定めがあるが、時だけは滅びない。しかし、だからこそ、滅びるのは時だけなのだ」
これは誰が書いた名言か知ってる?
シィル
……誰なの?
……誰なの?
文芸部の生徒
フランクフルトに住む作家、フォーレフ・ゴーゴフよ。私が一番好きな作家なの。彼の作品を読んだことある?
フランクフルトに住む作家、フォーレフ・ゴーゴフよ。私が一番好きな作家なの。彼の作品を読んだことある?
シィル
読んだことないよ……でも、あなたがそんなに好きなら、きっととてもすごい作家なんでしょう?
読んだことないよ……でも、あなたがそんなに好きなら、きっととてもすごい作家なんでしょう?
文芸部の生徒
フフ……アハハハハ——外れ。大外れ。全然違うわ。涅槃に入る凡人のように愚かね!
それは私がたった今作り出した作家にすぎないの!
フフ……アハハハハ——外れ。大外れ。全然違うわ。涅槃に入る凡人のように愚かね!
それは私がたった今作り出した作家にすぎないの!
シィル
えっ……じゃあ、今の言葉は……。
えっ……じゃあ、今の言葉は……。
文芸部の生徒
それも私が今考え出した「名言」よ!
それも私が今考え出した「名言」よ!
シィル
えっ……。
えっ……。
文芸部の生徒
だから作家なんて存在しないし、名言も存在しないの。そしてあなたも私も存在せず、この部室すら存在しない。当然、依頼も存在しないし、破られた作品集も存在しない。何もかも存在しない。だからすべてが存在するの。
だから作家なんて存在しないし、名言も存在しないの。そしてあなたも私も存在せず、この部室すら存在しない。当然、依頼も存在しないし、破られた作品集も存在しない。何もかも存在しない。だからすべてが存在するの。
シィル
……。
……。
文芸部の生徒
無、名無し、名無しの名無し、名無しの名無しの名無し。あなたが私と会話しているの?それは私の想像の中のあなた。私があなたと会話しているの?それはあなたの想像の中の自分。
意味、まったく意味がない、無意味、意味の意味、意味の虚空、すべては虚空、文学上の虚空、精神上の虚空、物質上の虚空、依頼の虚空……。
無、名無し、名無しの名無し、名無しの名無しの名無し。あなたが私と会話しているの?それは私の想像の中のあなた。私があなたと会話しているの?それはあなたの想像の中の自分。
意味、まったく意味がない、無意味、意味の意味、意味の虚空、すべては虚空、文学上の虚空、精神上の虚空、物質上の虚空、依頼の虚空……。
シィル
あ、あの……。
あ、あの……。
文芸部の生徒は悟りを開いたかのように、一心不乱につぶやきながら笑っている。
シィル
はぁ……。
はぁ……。
長い時間をかけながらも骨折り損に終わったシィルは、ようやく部室に戻ってきた。
疲れ果てた彼女は、完全に意気消沈していた。
疲れ果てた彼女は、完全に意気消沈していた。
シィル
1人で依頼をこなすのがこんなに難しいなんて……。
ペルセポネー先輩はとてもスムーズにこなしていたのに、シィルには最初の一歩すら難しいよ。
先輩……。
1人で依頼をこなすのがこんなに難しいなんて……。
ペルセポネー先輩はとてもスムーズにこなしていたのに、シィルには最初の一歩すら難しいよ。
先輩……。
コツコツ——
急に鳴り響いた足音がシィルの思考を遮った。
急に鳴り響いた足音がシィルの思考を遮った。
工作部の生徒
あっ、部長、戻ってたんだ——
あっ、部長、戻ってたんだ——
シィル
はぁ……。
ただいま……。
はぁ……。
ただいま……。
工作部の生徒
アハハ。今日の部長はいろいろなことをしたみたいだね!
でも……なんて言えばいいんだろう……。
アハハ。今日の部長はいろいろなことをしたみたいだね!
でも……なんて言えばいいんだろう……。
シィル
どうかしたの?
どうかしたの?
工作部の生徒
あのね、さっき、ミステリー同好会の生徒もここに来たの。彼女たちも部長にお願いしたい依頼があるみたいだよ。どうする?断ろうか……?
あのね、さっき、ミステリー同好会の生徒もここに来たの。彼女たちも部長にお願いしたい依頼があるみたいだよ。どうする?断ろうか……?
シィル
そ、その必要はないよ……見に行ってくる——
そ、その必要はないよ……見に行ってくる——
シィルは慌てて立ち上がり、教室から出て行った。
シィル
ミステリー同好会……。
……また依頼が来るとは思わなかったよ。
はぁ、どんな依頼なんだろう——
ミステリー同好会……。
……また依頼が来るとは思わなかったよ。
はぁ、どんな依頼なんだろう——
……。
ミステリー同好会の生徒
アハハ。シィル、さっき行ったばかりなのに、もう来てくれたんだ——さすがは「銀の謎解き人」の後継者だね!
アハハ。シィル、さっき行ったばかりなのに、もう来てくれたんだ——さすがは「銀の謎解き人」の後継者だね!
シィル
し、シィルはまだ違うよ……。
し、シィルはまだ違うよ……。
ミステリー同好会の生徒
エヘヘ。謙遜しないでよ——そうだ、シィルが来てくれたってことは、私たちの依頼内容も知っているはずだよね?
エヘヘ。謙遜しないでよ——そうだ、シィルが来てくれたってことは、私たちの依頼内容も知っているはずだよね?
シィル
うん……知ってるよ。あなたたちが学校の超常現象の謎を解く手助けをするんでしょう?
うん……知ってるよ。あなたたちが学校の超常現象の謎を解く手助けをするんでしょう?
ミステリー同好会の生徒
ピンポーン!
ピンポーン!
シィル
それで、学校の超常現象って、どんなものなの?
それで、学校の超常現象って、どんなものなの?
ミステリー同好会の生徒
エヘヘ……まだ具体的にどんな超常現象なのか知らないの。
エヘヘ……まだ具体的にどんな超常現象なのか知らないの。
シィル
——えっ!?
じゃ、じゃあ、どうしてあたしに依頼するの……。
——えっ!?
じゃ、じゃあ、どうしてあたしに依頼するの……。
ミステリー同好会の生徒
もうっ、シィルったら知らないの?今はね、学校の超常現象もすごいスピードで更新されてるんだよ——この前はトイレの花子さんだったのに、数日たったら机の引き出しの静香ちゃんになってるんだから。
私たちミステリー同好会は、1日目に花壇に現れたミステリーサークルのことを知り、2日目に屋上にUFOが現れたと聞き、対処し終える前に、3日目にはプールで幽霊の泣く声がすると聞かされたの。
こうやって受け身に回ることしかできず、走り回っても超常現象の痕跡をつかめないのって、本当にバカバカしいわ。いつまでも負け犬チャンピオンにしかなれないみたい。
そこで、ある方法を考えついたの——超常現象って、どれも夜に起きるでしょう?
だから、夜に「バビロン夜間校内大探検」のイベントをやればいいのよ。地下室から屋上まで、正門から裏門まで、真夜中に校内で超常現象が起こりそうな場所をくまなく回るの。
——そしたら、本物の超常現象が起こるところを見られるかもしれないでしょ!
もうっ、シィルったら知らないの?今はね、学校の超常現象もすごいスピードで更新されてるんだよ——この前はトイレの花子さんだったのに、数日たったら机の引き出しの静香ちゃんになってるんだから。
私たちミステリー同好会は、1日目に花壇に現れたミステリーサークルのことを知り、2日目に屋上にUFOが現れたと聞き、対処し終える前に、3日目にはプールで幽霊の泣く声がすると聞かされたの。
こうやって受け身に回ることしかできず、走り回っても超常現象の痕跡をつかめないのって、本当にバカバカしいわ。いつまでも負け犬チャンピオンにしかなれないみたい。
そこで、ある方法を考えついたの——超常現象って、どれも夜に起きるでしょう?
だから、夜に「バビロン夜間校内大探検」のイベントをやればいいのよ。地下室から屋上まで、正門から裏門まで、真夜中に校内で超常現象が起こりそうな場所をくまなく回るの。
——そしたら、本物の超常現象が起こるところを見られるかもしれないでしょ!
シィル
えっ、じゃあ依頼は……。
えっ、じゃあ依頼は……。
ミステリー同好会の生徒
エヘヘ。もちろん、あなたにもミステリー同好会のイベントに参加してもらいたいの!
何しろ、私たちミステリー同好会は「部活動成立最少人数」の警戒ラインギリギリで作られた底辺部活だからね。1人増えるだけでもすごく大事なことなんだよ!
どう?どう?シィル!
エヘヘ。もちろん、あなたにもミステリー同好会のイベントに参加してもらいたいの!
何しろ、私たちミステリー同好会は「部活動成立最少人数」の警戒ラインギリギリで作られた底辺部活だからね。1人増えるだけでもすごく大事なことなんだよ!
どう?どう?シィル!
シィル
と、ということは、夜に学校の一番暗い場所に行くんでしょ?それに地下室や……旧校舎も……。
し、シィル……。
ごめんなさい……ちょっと考えさせて……。
と、ということは、夜に学校の一番暗い場所に行くんでしょ?それに地下室や……旧校舎も……。
し、シィル……。
ごめんなさい……ちょっと考えさせて……。
ミステリー同好会の生徒
えっ?そう、ならいいわ……はぁ、本当に残念ね。以前はペルセポネーを呼んでいたんだけど……。
えっ?そう、ならいいわ……はぁ、本当に残念ね。以前はペルセポネーを呼んでいたんだけど……。
シィル
ごめん……。
ごめん……。
落胆するミステリー同好会の生徒を見て、シィルの頭にペルセポネーの顔が浮かんだ。
シィル
(もし先輩だったら……きっといい方法を考えているはずだよね……)
(もし先輩なら……シィルみたいに、丸一日かけて何もできていないなんてことはないだろうな……)
(依頼……うぅ、どうして成し遂げるのがこんなに難しいの……先輩がいたときとは全然違うよ……)
(もし先輩だったら……きっといい方法を考えているはずだよね……)
(もし先輩なら……シィルみたいに、丸一日かけて何もできていないなんてことはないだろうな……)
(依頼……うぅ、どうして成し遂げるのがこんなに難しいの……先輩がいたときとは全然違うよ……)
ミステリー同好会の部室を出ると、太陽が西に沈みかかっていた。シィルは工作部に戻らず、廃墟となっている部室に来た。
——かつての謎解き部の部室だ。
——かつての謎解き部の部室だ。
シィル
ふぅ……はぁ……。
かつて先輩は……ここで、みんなのために依頼を完璧に解決し、「銀の謎解き人」の名をとどろかせたんだよね。
だけど、シィルは……。
ふぅ……はぁ……。
かつて先輩は……ここで、みんなのために依頼を完璧に解決し、「銀の謎解き人」の名をとどろかせたんだよね。
だけど、シィルは……。
シィルは暗い表情を浮かべた。
シィル
シィルは先輩と出会うまで、自分が他人のために事件を解決するなんて夢にも思わなかった……でも、先輩はシィルに出会う前から、もう学園の名探偵だった……。
はぁ……。
シィルは先輩と出会うまで、自分が他人のために事件を解決するなんて夢にも思わなかった……でも、先輩はシィルに出会う前から、もう学園の名探偵だった……。
はぁ……。
ペルセポネーの言葉がひとつずつシィルの心に浮かんできた。
「99パーセントの証拠があったとしても、その1パーセントが事件の全貌をひっくり返す手がかりになるかもしれない」
「どんなときでも、あなた自身の『心』を忘れないで」
「他人のことを考える『心』、他人のために尽くす『心』」
「『心』は推理よりもはるかに大切なものよ……」
「99パーセントの証拠があったとしても、その1パーセントが事件の全貌をひっくり返す手がかりになるかもしれない」
「どんなときでも、あなた自身の『心』を忘れないで」
「他人のことを考える『心』、他人のために尽くす『心』」
「『心』は推理よりもはるかに大切なものよ……」
シィル
でも、心だけあっても、先輩みたいな気概がないよ……シィル、どうしたらいいんだろう?
でも、心だけあっても、先輩みたいな気概がないよ……シィル、どうしたらいいんだろう?
カチャン——
シィルは嘆きながら謎解き部の部室の奥にある席に座った。座る時の動きでうっかり机に引っかかったのか、金属音がしたことに気がついた。
シィルは嘆きながら謎解き部の部室の奥にある席に座った。座る時の動きでうっかり机に引っかかったのか、金属音がしたことに気がついた。
シィル
これは……。
これは……。
机の引き出しを探ったシィルは、その金属音の正体を見つけた。
「銀の謎解き人」
それは、やや古びたバッジだった。表面の文字は何年も前に書かれたようだ。しかし不思議なことに、引き出しの中はほこりだらけにもかかわらず、バッジの表面はほとんどほこりをかぶっていなかった。
そしてバッジの下にはメモが置かれていた。バッジがほこりをかぶっていないのはそのためかもしれない——
「シィルへ」
たった4文字が、すべてを物語っていた。
「銀の謎解き人」
それは、やや古びたバッジだった。表面の文字は何年も前に書かれたようだ。しかし不思議なことに、引き出しの中はほこりだらけにもかかわらず、バッジの表面はほとんどほこりをかぶっていなかった。
そしてバッジの下にはメモが置かれていた。バッジがほこりをかぶっていないのはそのためかもしれない——
「シィルへ」
たった4文字が、すべてを物語っていた。
シィル
先輩は、自分がいなくなった後、シィルがこうなってしまうと予測していたんだ。だから、わざわざバッジをここに置いていったんだ……。
……先輩がまだそばにいるみたい……。
先輩……。
先輩は、自分がいなくなった後、シィルがこうなってしまうと予測していたんだ。だから、わざわざバッジをここに置いていったんだ……。
……先輩がまだそばにいるみたい……。
先輩……。
シィルは手に持ったバッジを握りしめた。
表情も引き締まっていった。
表情も引き締まっていった。
シィル
シィルは……シィルは絶対に先輩を失望させない。
先輩がいなくなっても、「銀の謎解き人」のバッジが学校の中で光り続けるように頑張らなきゃ!
シィルは……シィルは絶対に先輩を失望させない。
先輩がいなくなっても、「銀の謎解き人」のバッジが学校の中で光り続けるように頑張らなきゃ!