崩壊学園wiki
3-5 別々の道
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最後の物語、すべての記憶、すべてが1つにまとまった。屋上で真相が告げられた。
空には太陽が輝いている。
再び屋上。
二人は向かい合って立っていた。数カ月前と同じように。
再び屋上。
二人は向かい合って立っていた。数カ月前と同じように。
エーリヴァーガル
……やっぱりうまくいかなかったよ。
シィルのようなかわいい子は、1日中依頼をこなし、くだらないことや人の闇に接すれば、きっと黒く染まると思っていたのに。
意外だったよ。あの子、探偵としての素質はないけど、粘り強さがあるなんてね。
彼女が門前払いをくらうように、あたしが小細工したのに、それでもすべてを受け入れ、自分の力で事態を打開して、生徒を1人ずつ苦境から救い出したんだから。
まったく……こんな挫折は初めてだよ。さすがはあたしの一番好きなシィルだね。
ペルセポネー、あんたは最初からこうなることを見抜いていたから、安心して彼女をバビロンに一人残したの?
……やっぱりうまくいかなかったよ。
シィルのようなかわいい子は、1日中依頼をこなし、くだらないことや人の闇に接すれば、きっと黒く染まると思っていたのに。
意外だったよ。あの子、探偵としての素質はないけど、粘り強さがあるなんてね。
彼女が門前払いをくらうように、あたしが小細工したのに、それでもすべてを受け入れ、自分の力で事態を打開して、生徒を1人ずつ苦境から救い出したんだから。
まったく……こんな挫折は初めてだよ。さすがはあたしの一番好きなシィルだね。
ペルセポネー、あんたは最初からこうなることを見抜いていたから、安心して彼女をバビロンに一人残したの?
エーリヴァーガルはかすかな笑みを浮かべながら、ペルセポネーに尋ねた。
ペルセポネー
……。
この世界には2種類の優しさがある。
1つ目の優しさは、壺のようなもの。受けたストレス、目にした「悪」をすべて中に入れ、それを毎日繰り返す……そして、もう耐えきれなくなると、完全に崩壊してしまう。
2つ目の優しさは、丸い水晶のようなもの。どんな汚れであろうと、表面につくだけで、本質まで汚すことはできない。やがて、その汚れはきれいに洗い流される。
シィルは後者よ。
……。
この世界には2種類の優しさがある。
1つ目の優しさは、壺のようなもの。受けたストレス、目にした「悪」をすべて中に入れ、それを毎日繰り返す……そして、もう耐えきれなくなると、完全に崩壊してしまう。
2つ目の優しさは、丸い水晶のようなもの。どんな汚れであろうと、表面につくだけで、本質まで汚すことはできない。やがて、その汚れはきれいに洗い流される。
シィルは後者よ。
エーリヴァーガル
フッ……。
フッ……。
エーリヴァーガルは含みのある笑みを浮かべながら立ち去った。
その場にはペルセポネーだけが残った。
ペルセポネーは手すりのそばに立ち、遠くを眺めながら、手に持った携帯電話でどこかに電話をかけた。
晴れ渡った青空に見えるのは、鳥が飛ぶ姿だけだった。それはすぐに小さな点となり、空のかなたへと消えていった。
そして、電話がつながった。
その場にはペルセポネーだけが残った。
ペルセポネーは手すりのそばに立ち、遠くを眺めながら、手に持った携帯電話でどこかに電話をかけた。
晴れ渡った青空に見えるのは、鳥が飛ぶ姿だけだった。それはすぐに小さな点となり、空のかなたへと消えていった。
そして、電話がつながった。
???
……もしもし。
……もしもし。
ペルセポネー
私です。
シル……
……ファリア先輩。
もしくは——初代「銀の謎解き人」。
私です。
シル……
……ファリア先輩。
もしくは——初代「銀の謎解き人」。
シルファリア
……
ペルセポネー……電話をよこした理由は、まさかシィルちゃんと関係があるの?
……
ペルセポネー……電話をよこした理由は、まさかシィルちゃんと関係があるの?
ペルセポネー
はい。
今日、バビロン学園に戻り、情報をつかみました。
シィルにはあなたが期待するような素質はありません……彼女は名探偵にはなれません。
はい。
今日、バビロン学園に戻り、情報をつかみました。
シィルにはあなたが期待するような素質はありません……彼女は名探偵にはなれません。
シルファリア
……それは私の予想どおり。あの可愛い姪っ子には、事件の真相を解き明かすことよりも、工作部でトンカンやっている方が似合う。
……それは私の予想どおり。あの可愛い姪っ子には、事件の真相を解き明かすことよりも、工作部でトンカンやっている方が似合う。
ペルセポネー
ですが、シィルには自分の道があります。
今の彼女は、人と接することすら苦手だった苦境から抜け出しています。
彼女は多くの人を助け、単なる「謎を解く人」ではなく、「頼られる人」になっています。この点は、あなたも、私自身もできなかったことです。
ですが、シィルには自分の道があります。
今の彼女は、人と接することすら苦手だった苦境から抜け出しています。
彼女は多くの人を助け、単なる「謎を解く人」ではなく、「頼られる人」になっています。この点は、あなたも、私自身もできなかったことです。
シルファリア
……
それなら結構。今度ルナを連れて長空市に戻ったら、あの子、いとこの変貌ぶりに驚くでしょうね……フッフッフ。
さすがは私の跡を継いだ2代目「銀の謎解き人」。ペルセポネー、私の最後の依頼を完璧にやり遂げてくれたのね。
……
それなら結構。今度ルナを連れて長空市に戻ったら、あの子、いとこの変貌ぶりに驚くでしょうね……フッフッフ。
さすがは私の跡を継いだ2代目「銀の謎解き人」。ペルセポネー、私の最後の依頼を完璧にやり遂げてくれたのね。
ペルセポネー
……
……
シルファリア
……
……
少しの間、二人は沈黙した。
しばらくして、シルファリアの声が再び聞こえてきた。
しばらくして、シルファリアの声が再び聞こえてきた。
シルファリア
ペルセポネー、あのとき、私がいなくなったことをまだ恨んでいるの?
ペルセポネー、あのとき、私がいなくなったことをまだ恨んでいるの?
ペルセポネー
……そうです。
……ですが、恨んでいるだけではありません。
……あなたがいなければ、私は今もバビロン中等部で独りぼっちのまま、冷淡なふりをする臆病な子どもでいたでしょう。
今回、私はわざとシィルの前から姿を消し、彼女に一人で依頼を受けさせ、そして解決させました——あのときのあなたも私と同じように、私があなたに頼ることなく成長し、自分の人生を歩むことを望んでいたのですね。
……そうです。
……ですが、恨んでいるだけではありません。
……あなたがいなければ、私は今もバビロン中等部で独りぼっちのまま、冷淡なふりをする臆病な子どもでいたでしょう。
今回、私はわざとシィルの前から姿を消し、彼女に一人で依頼を受けさせ、そして解決させました——あのときのあなたも私と同じように、私があなたに頼ることなく成長し、自分の人生を歩むことを望んでいたのですね。
電話の向こうから返事はなく、ただ静かな息づかいが聞こえるだけだった。
ペルセポネー
ですから、先輩……。
シルファリア先輩。
——あなたを恨んでいます。
そして……。
……感謝しています。
ですから、先輩……。
シルファリア先輩。
——あなたを恨んでいます。
そして……。
……感謝しています。
電話が切れた。
晴れ渡った遠くの空を眺めながら、ペルセポネー——大人しい少女は、二人が出会ったときのことを思い出していた。
あの頃、彼女——シルファリアは、学園の心理カウンセラーで、生徒たちにとっては心のよりどころだった——彼女は鋭くて賢く、それでいて優しくて愛情深かった。
いつからか、カウンセラー室は多くの生徒の悩みを解決する場所となり、「銀の謎解き人」も生徒たちがシルファリアに贈った称号だった。
ある日、彼女は、自閉傾向が強く、自分の世界に閉じこもりたがるペルセポネーを見つけた。
「こんにちは。私はシルファリア、この学園の心理カウンセラーをしていて、生徒たちを助けて難事件を解決することもあるの」
彼女は少女に優しいほほ笑みを見せた。
「でも、私もこの学園の卒業生だから、私のことは先生ではなく先輩と呼んでちょうだい——あなたはいつも一人でいて、何もしていないみたいね。どう?私の助手をやってみない?」
そして、ペルセポネーに新しい世界が開かれた。
その日から、銀の謎解き人と彼女の助手——二人で一緒に多くの事件を解決した。少女はようやくこの学園で頼れる人を見つけられた。彼女は笑顔を見せることが増え、目もますます輝いて行った。
——しかしあの日、シルファリアは彼女に最後の別れを言った。
「……どうして……」
「……どうしていなくなってしまうんですか……先輩」
ペルセポネーは不安そうに知るファリアを見つめたが、相手は優しそうな笑顔で少女を見ているだけだった。
「……人はいずれ自分だけで成長しないといけないの」
「……でも、私は成長なんかしたくありません。先輩がそばにいてくれるだけで……」
「……そんなこと言わないの。ペルセポネー、あなたも自分の道を歩みなさい。ずっと私の後を追いかけているだけでは、あなたの才能を伸ばせないわよ……」
「……でも、そんなの嫌です……」
「……さようなら……私のバッジを受け取って。これも『銀の謎解き人』の一部よ。『銀の謎解き人』のすべてをあなたに託すわ……」
「……嫌です、シル、シルファリア……」
「——シルファリア先輩!」
それ以降、学園に新しい銀の謎解き人が現れた。少女はバッジを握りしめ、「謎解き」こそ、自分がこの学園にいる意義そのものだと考えるようになった。
助手を務めたことで異なる視点を持つようになったのか、あるいは生まれ持っての才能なのか、少女は「名探偵」としての道を真っすぐに突き進み、かつてのあの人をも超えていた。
ミステリー同好会の白い人影事件、文芸部の記念誌事件、そしてSF同好会、美術部、昼寝部を巻き込んだ「銀河鉄道」事件……。
しかし、どれだけ多くの事件を解き明かしたとしても、少女の心には、依然として戸惑いが残っていた。
それは……シルファリアが彼女にあげたものだった。
馬術場の片隅であの子に——かつての「先輩」と似た名前、そして傍系の血縁関係を持つ子に出会うまでは……。
晴れ渡った遠くの空を眺めながら、ペルセポネー——大人しい少女は、二人が出会ったときのことを思い出していた。
あの頃、彼女——シルファリアは、学園の心理カウンセラーで、生徒たちにとっては心のよりどころだった——彼女は鋭くて賢く、それでいて優しくて愛情深かった。
いつからか、カウンセラー室は多くの生徒の悩みを解決する場所となり、「銀の謎解き人」も生徒たちがシルファリアに贈った称号だった。
ある日、彼女は、自閉傾向が強く、自分の世界に閉じこもりたがるペルセポネーを見つけた。
「こんにちは。私はシルファリア、この学園の心理カウンセラーをしていて、生徒たちを助けて難事件を解決することもあるの」
彼女は少女に優しいほほ笑みを見せた。
「でも、私もこの学園の卒業生だから、私のことは先生ではなく先輩と呼んでちょうだい——あなたはいつも一人でいて、何もしていないみたいね。どう?私の助手をやってみない?」
そして、ペルセポネーに新しい世界が開かれた。
その日から、銀の謎解き人と彼女の助手——二人で一緒に多くの事件を解決した。少女はようやくこの学園で頼れる人を見つけられた。彼女は笑顔を見せることが増え、目もますます輝いて行った。
——しかしあの日、シルファリアは彼女に最後の別れを言った。
「……どうして……」
「……どうしていなくなってしまうんですか……先輩」
ペルセポネーは不安そうに知るファリアを見つめたが、相手は優しそうな笑顔で少女を見ているだけだった。
「……人はいずれ自分だけで成長しないといけないの」
「……でも、私は成長なんかしたくありません。先輩がそばにいてくれるだけで……」
「……そんなこと言わないの。ペルセポネー、あなたも自分の道を歩みなさい。ずっと私の後を追いかけているだけでは、あなたの才能を伸ばせないわよ……」
「……でも、そんなの嫌です……」
「……さようなら……私のバッジを受け取って。これも『銀の謎解き人』の一部よ。『銀の謎解き人』のすべてをあなたに託すわ……」
「……嫌です、シル、シルファリア……」
「——シルファリア先輩!」
それ以降、学園に新しい銀の謎解き人が現れた。少女はバッジを握りしめ、「謎解き」こそ、自分がこの学園にいる意義そのものだと考えるようになった。
助手を務めたことで異なる視点を持つようになったのか、あるいは生まれ持っての才能なのか、少女は「名探偵」としての道を真っすぐに突き進み、かつてのあの人をも超えていた。
ミステリー同好会の白い人影事件、文芸部の記念誌事件、そしてSF同好会、美術部、昼寝部を巻き込んだ「銀河鉄道」事件……。
しかし、どれだけ多くの事件を解き明かしたとしても、少女の心には、依然として戸惑いが残っていた。
それは……シルファリアが彼女にあげたものだった。
馬術場の片隅であの子に——かつての「先輩」と似た名前、そして傍系の血縁関係を持つ子に出会うまでは……。
ペルセポネー
シィル……。
シィル……。
「ありがとう、シィル……」
「ど、どういたしまして。また何か困ったことがあれば、あたしのところに来てね——」
遠くから聞こえてきた笑い声がペルセポネーの思考を遮った。
下を見ると、広場で生徒たちに囲まれているシィルの姿が目に入った。彼女たちは笑い、肩を寄せ合い、楽しそうな声をあげている。また何か重要なことを成し遂げたようだ。
「ど、どういたしまして。また何か困ったことがあれば、あたしのところに来てね——」
遠くから聞こえてきた笑い声がペルセポネーの思考を遮った。
下を見ると、広場で生徒たちに囲まれているシィルの姿が目に入った。彼女たちは笑い、肩を寄せ合い、楽しそうな声をあげている。また何か重要なことを成し遂げたようだ。
シィル
みんな……。
みんなと一緒にここにいられて、本当によかった!
みんな……。
みんなと一緒にここにいられて、本当によかった!
その遠くの笑い声を聞きながら、ペルセポネーは静かに手すりに寄りかかった。
ペルセポネー
……そろそろ会うときね。
……そろそろ会うときね。
シィル
先輩……。
……やっと、また会えましたね。
先輩……。
……やっと、また会えましたね。
ペルセポネー
……ええ。
……ええ。
シィル
あの、さっき、電話で先輩の声を聞いてから、あたしも少し考えていたんです。
あたしは先輩に比べれば……頭が悪いし、コミュニケーションも得意ではないし、先輩みたいに事件の真相を明らかにすることはできません。
でも……。
先輩が依然話していたように、「心」……「心」さえあれば、相手の悲しみを感じ、相手の痛みを理解し、そして相手の身になって助けてあげられます。
それが「心」の力なんですね……。
あの、さっき、電話で先輩の声を聞いてから、あたしも少し考えていたんです。
あたしは先輩に比べれば……頭が悪いし、コミュニケーションも得意ではないし、先輩みたいに事件の真相を明らかにすることはできません。
でも……。
先輩が依然話していたように、「心」……「心」さえあれば、相手の悲しみを感じ、相手の痛みを理解し、そして相手の身になって助けてあげられます。
それが「心」の力なんですね……。
ペルセポネー
……。
……。
シィル
あたしはバカですけど……でも、あたしでも感じられるときがあります。ペルセポネー先輩も、エーリヴァーガル先輩も、そして他のたくさんの生徒も、みんなの心の中にはそれぞれ表面とは違う何かがあるのだと。
それが何かは分かりません……でも、誰の心にも痛ましい傷痕が存在していることは感じられます。
——もしかすると、それこそ、みんなのためにあたしができることかもしれません……
あたしは先輩みたいにズバッと事件を解決することはできません——でも、他人の心の苦しみを分かち合い、みんなの友達になって、その心の傷痕を癒やすことができるなら……。
それこそが、あたしにできる最善ですよね?
……先輩、どう思いますか?
あたしはバカですけど……でも、あたしでも感じられるときがあります。ペルセポネー先輩も、エーリヴァーガル先輩も、そして他のたくさんの生徒も、みんなの心の中にはそれぞれ表面とは違う何かがあるのだと。
それが何かは分かりません……でも、誰の心にも痛ましい傷痕が存在していることは感じられます。
——もしかすると、それこそ、みんなのためにあたしができることかもしれません……
あたしは先輩みたいにズバッと事件を解決することはできません——でも、他人の心の苦しみを分かち合い、みんなの友達になって、その心の傷痕を癒やすことができるなら……。
それこそが、あたしにできる最善ですよね?
……先輩、どう思いますか?
ペルセポネー
……ええ。
でも、シィルが今言ったことは、1つだけ間違っているわ。
……ええ。
でも、シィルが今言ったことは、1つだけ間違っているわ。
シィル
えっ……先輩、な、なんですか?
えっ……先輩、な、なんですか?
ペルセポネー
私が見る限り——あなたはちっともバカじゃないってこと。
私が見る限り——あなたはちっともバカじゃないってこと。
そよ風が静かに吹き、バビロン学園の広場には日差しがゆったりと降り注いでいた。
かつて一緒に経験した事件の数々が、静かな時の砂のように目の前に浮かんできた。
かつて一緒に経験した事件の数々が、静かな時の砂のように目の前に浮かんできた。