銀光の闇配布イベント時のシナリオです。
深夜、オグウィンに銀色の訪問者が現れた。
通信を開いた訪問者は、自分のコードネームを――
通信を開いた訪問者は、自分のコードネームを――
暗光
……傭兵、暗光か。
……傭兵、暗光か。
暗光は顔を上げ、満天の星を見つめる――
暗光
名前はそれほど重要じゃないけど、次はもっと女の子らしいコードネームがいいな……
名前はそれほど重要じゃないけど、次はもっと女の子らしいコードネームがいいな……
通知音が再び鳴り響く。
……
暗光
「地脈」が適当に用意したベットで寝られるわけないよ。今夜はホテルに泊まって、ついでに情報も集めてくるつもり。明日、新しいシーツと布団を持ってこなきゃ。
「地脈」が適当に用意したベットで寝られるわけないよ。今夜はホテルに泊まって、ついでに情報も集めてくるつもり。明日、新しいシーツと布団を持ってこなきゃ。
……
暗光
心配なんていらないよ、ゆっくり休んで。私は正体を隠しておくから。
心配なんていらないよ、ゆっくり休んで。私は正体を隠しておくから。
通信は終わった。
暗光
(崩壊の英雄なのに、まるで母親みたい……)
(崩壊の英雄なのに、まるで母親みたい……)
文句を言いながらも、暗光の顔に微笑みが浮かんだ。
すぐに、暗光は現地のスワンホテルを見つけた。
暗光
空室はあるか?
空室はあるか?
暗光
傭兵だ。余計なことは聞くな。ルールは分かってる。金ならここに。
傭兵だ。余計なことは聞くな。ルールは分かってる。金ならここに。
フロント係
あの……申し訳ありません。
あの……申し訳ありません。
フロント係
最近オグウィンの街で連続殺人事件が起きていて、軍が私たちを監視しているので、新しいお客様の宿泊を受け付けることはできないんです。
最近オグウィンの街で連続殺人事件が起きていて、軍が私たちを監視しているので、新しいお客様の宿泊を受け付けることはできないんです。
暗光
……
……
暗光
(「地脈」で話した件かな)
(「地脈」で話した件かな)
星夜を散歩しながら、オグウィンの岸辺に沿って、薄暗い光の中、宿を探す。
暗光
田舎だからネットカフェもないし、通りには人もいないし、地下鉄もない……
田舎だからネットカフェもないし、通りには人もいないし、地下鉄もない……
暗光
えっ?
えっ?
困っていたところに、潮風が香りを運んできた。
暗光
あの路地に明かりが?
あの路地に明かりが?
狭い路地には、無数の屋台が並んでいた。一時的に敷かれた筵 や天幕しかなかったが、長い路地は人でごった返していた。
宝石を売る商人
オグウィンの特産品はいかがですかー!
オグウィンの特産品はいかがですかー!
アイスを売る商人
古い町のアイスクリームだよ、一つ買うと一つオマケだ!
古い町のアイスクリームだよ、一つ買うと一つオマケだ!
暗光
(なんでこんなに人がいるの!?)
(なんでこんなに人がいるの!?)
情報を集めるいいチャンスかもしれない、どこで聞き込みをしようか――
焼き肉屋の商人
新鮮な長空市の焼き肉団子!本場の味を保証するよ!
新鮮な長空市の焼き肉団子!本場の味を保証するよ!
暗光
もちろんここだね。
もちろんここだね。
昔の思い出が蘇ってくる。女の子が旅行をするなら、やはり肉を食べなければ!
焼き肉屋の商人
おや、傭兵様ですか?仕事の前に一本いかがです?
おや、傭兵様ですか?仕事の前に一本いかがです?
暗光
貰おう。
貰おう。
支払いを終える。屋台の主人は慣れた手つきで竹串を取り、グリルから三つの肉団子を串刺しにした。
それから串を別の小鍋のタレにくぐらせ、最後に粉末調味料をかけて暗光に手渡した。
それから串を別の小鍋のタレにくぐらせ、最後に粉末調味料をかけて暗光に手渡した。
暗光
ああ……
ああ……
暗光
(甘くて塩味があって、ピリ辛い)
(甘くて塩味があって、ピリ辛い)
暗光
(合成肉とはいえ、ミートボールの香りが豊かだ。水栗の細切りを加えて食感を良くしてる)
(合成肉とはいえ、ミートボールの香りが豊かだ。水栗の細切りを加えて食感を良くしてる)
暗光
なかなかいい。本場の長空市の焼き肉団子よりも美味しいな。
なかなかいい。本場の長空市の焼き肉団子よりも美味しいな。
焼き肉屋の商人
へへ、お客様にご満足いただけて光栄です。ただ、内緒にしていただけると幸いです。
へへ、お客様にご満足いただけて光栄です。ただ、内緒にしていただけると幸いです。
暗光
最近連続殺人事件が起きてるのに、まだ露店を出すのか?
最近連続殺人事件が起きてるのに、まだ露店を出すのか?
焼き肉屋の商人
最近来られたばかりのようですね。オグウィンで一番恐ろしいのは連続殺人犯なんかじゃありませんよ。
最近来られたばかりのようですね。オグウィンで一番恐ろしいのは連続殺人犯なんかじゃありませんよ。
暗光
軍隊を恐れているのか?それとも地元にマフィアがいるのか?
軍隊を恐れているのか?それとも地元にマフィアがいるのか?
焼き肉屋の商人
ハハ、両方ですよ!
ハハ、両方ですよ!
焼き肉屋の商人
昼は役人様に金を納め、夜はマフィアの世話をしなければならない。私たちの商売は本当に大変です。
昼は役人様に金を納め、夜はマフィアの世話をしなければならない。私たちの商売は本当に大変です。
焼き肉屋の商人
でもね、最近マフィアのリーダーが死んだという噂があるんです。
でもね、最近マフィアのリーダーが死んだという噂があるんです。
焼き肉屋の商人
誰かが正義のために悪を懲らしめているんじゃないかって、みんなで噂してるんですよ!
誰かが正義のために悪を懲らしめているんじゃないかって、みんなで噂してるんですよ!
暗光
……なるほどな。死ぬのが怖くないのか?
……なるほどな。死ぬのが怖くないのか?
焼き肉屋の商人
怖いに決まってます。でも今稼がないで、いつ稼ぐんです?食べて行かなきゃならないんですから。
怖いに決まってます。でも今稼がないで、いつ稼ぐんです?食べて行かなきゃならないんですから。
焼き肉屋の商人に別れを告げ、暗闇の中でマーケット全体を観察し始める。
暗光
(ここは炒飯やパンの屋台が一番多くて、値段もとても安い。)
(ここは炒飯やパンの屋台が一番多くて、値段もとても安い。)
暗光
(客はほとんどがオグウィンの地元民だ……ここを食堂代わりにしているのかな?)
(客はほとんどがオグウィンの地元民だ……ここを食堂代わりにしているのかな?)
暗光
(まともなレストランだと料理はいくらするんだろう?)
(まともなレストランだと料理はいくらするんだろう?)
暗光
他の物を見てみようか――あれ?
他の物を見てみようか――あれ?
暗光は奇妙な看板を見つけた。
暗光
「身売り」?
「身売り」?
顔が汚れている男が道端に座り、自分を売りに出すという看板を掲げていた。
暗光は遠くから、市民たちがその男性を揶揄する声を聞いた。
……市民たちがどよめいた。値段はかなり高いようだ。
暗光は遠くから、市民たちがその男性を揶揄する声を聞いた。
……市民たちがどよめいた。値段はかなり高いようだ。
暗光
どうした?金に困ってるのか?
どうした?金に困ってるのか?
ぼろぼろの男
はい。
はい。
ぼろぼろの男
傭兵様、私は盾になることも、囮になることもできます……そのお金をいただけるのでしたら。
傭兵様、私は盾になることも、囮になることもできます……そのお金をいただけるのでしたら。
暗光
大金だな。
大金だな。
暗光
何に使うんだ?
何に使うんだ?
ぼろぼろの男
妻と娘を都心部で生活させたいんです。
妻と娘を都心部で生活させたいんです。
暗光
どういうことだ?
どういうことだ?
ぼろぼろの男
私たちは共管区の家族で……数年前にオグウィンに来ました。運よく、都心部で仕事を見つけたんですが……
私たちは共管区の家族で……数年前にオグウィンに来ました。運よく、都心部で仕事を見つけたんですが……
暗光
(なるほど、逃げ出してきたんだ)
(なるほど、逃げ出してきたんだ)
ぼろぼろの男
数年かけて貯金をして、妻と娘を呼び寄せました。しかし……
数年かけて貯金をして、妻と娘を呼び寄せました。しかし……
ぼろぼろの男
昨日、私の財産は全て軍に没収されてしまいました。
昨日、私の財産は全て軍に没収されてしまいました。
暗光
どういうことだ?
どういうことだ?
ぼろぼろの男
彼らは私が居住許可証を持っていないと言いました……しかし、オグウィンでは都心部に住んでいる紳士を除いて、郊外のほとんどの人はそんなものを持っていません。
彼らは私が居住許可証を持っていないと言いました……しかし、オグウィンでは都心部に住んでいる紳士を除いて、郊外のほとんどの人はそんなものを持っていません。
暗光
金を巻き上げる口実か?
金を巻き上げる口実か?
ぼろぼろの男
居住許可費と税金を追加納付しろって言われて……
居住許可費と税金を追加納付しろって言われて……
ぼろぼろの男
私のせいです。最近買い物をしすぎて、購入記録が監視されていたんです……
私のせいです。最近買い物をしすぎて、購入記録が監視されていたんです……
暗光
(この年は住民の買い物まで監視するの?)
(この年は住民の買い物まで監視するの?)
暗光
金はない。だが、これならやれる。
金はない。だが、これならやれる。
大きなパンが男の手に渡された。
ぼろぼろの男
ああ――ありがとうございます、ご主人様、ありがとうございます!
ああ――ありがとうございます、ご主人様、ありがとうございます!
このような場面には慣れていない。暗光は素早く立ち去った。
暗光
状況はおおよそ把握できたな、そして今――
状況はおおよそ把握できたな、そして今――
また光が彼女の注意を引いた。今度は眉をひそめる……
暗光
「帰還者」?どうしてここに?
「帰還者」?どうしてここに?
暗光
……後で「地脈」に知らせないと。
……後で「地脈」に知らせないと。
暗光は先ほどまでいた路地を振り返った。夜闇の中で、そこだけがかすかな光を放ち、つかの間の賑わいを残していた。
暗光は仮面を外した。同時に周囲の光が遮られる。
暗光は仮面を外した。同時に周囲の光が遮られる。
暗光
帰還者の数は少ない。いっそのこと片付けてしまおう。
帰還者の数は少ない。いっそのこと片付けてしまおう。
暗光
天の帳。
天の帳。
そうするのは突然抱いた善意でも、自分の「正義感」を満たすためでもない。ただ――
暗光
あの焼き肉屋の肉団子が美味しかっただけ。
あの焼き肉屋の肉団子が美味しかっただけ。
暗光は建物の間を躍動し、薄暗い夜空に銀色の輝きを染み込ませた。