飲みきらないとミイラになる呪いがかかっているらしいスポドリの、最後の一滴が七草にちかの喉奥に消えていった。

「……ぷは」

 体調は依然として絶不調の状態が続いている。
 意識は朦朧としているし、身体は倒れた拍子に痛めたのかすごく疼く。
 なくなった腕は黙っている分にはそこまででもないが、不用意に動かすと思わず声が出るくらい激しく痛むから参った。
 そんな体調だから、水なんて果たして飲めるんだろうかと不安だったものの、一口飲み込んでしまったら後はもう止まらなかった。

 どうやらにちかの身体は、彼女が思っている以上に水分を欲していたらしい。
 レッスン上がりにトレーナーが手渡してくれる、きんきんに冷えたミネラルウォーターの美味しさをにちかは思い出していた。
 あの五臓六腑に染み渡るような爽快感を何倍にもしたようなおいしさは何物にも代えがたいと今でもそう思う。
 こんな手で、また同じようにアイドルがやれるかどうかは分からなかったけれど。

「はふぅ……」

 カラオケルームのソファに身体を凭れかけて、嘆息しながらふと思う。

 ――摩美々さん、大丈夫かな。

 やっぱり冷静になると、どうしてもそこは気になってしまう。
 気にしないでほしいなんて言われたって、無理なものは無理だった。
 七草にちかの生きてきた十余年の人生の中で、間違いなく最も密度が高かっただろうこの二日間。
 それをずっと共に歩んできた、いわば戦友のようなもの。
 蜃気楼だろうが何だろうが、心配はするし追いかけたくもなるのだ。
 ……後者の方は、きっとすごい迷惑をかけてしまうだろうから実行に移す気はなかったが。

「まあ、何にせよ……もうちょっと休んでないとだめ、ですよね。
 ちょっとはマシになってきましたけど……やっぱりフラフラ、するし。あー、もう……しんっどぉ……」

 肺の底から息を吐いて、また吸って、目を閉じたくなって、流石にそれはやめて。
 その繰り返しだった。水分を摂ったおかげか意識はだいぶはっきりしてきた。
 そこで、思う。どうしようか、と。
 残してくれたスマホでも見て情報収集でもしておいた方がいいだろうか。
 それとも、こっちから霧子さんに連絡でもしてみようか――


 連絡。

 して、どうなるんだろう。


「全部、終わっちゃったのに」


 方舟の夢は、終わった。
 それは奇跡のように細い線を辿る旅路だった。
 もしこれがアイドルを主役にした物語だったなら、きっとそのか細い希望は報われて皆が笑顔でカーテンコールを迎えられたのだろう。
 けれどこれは、主役に優しい物語なんかじゃなくただの冷たい現実で。
 或いは、にちか達アイドル以外の誰かを主役にした物語だった。
 希望は奪われ。航路は、永久に見失われて。
 七草にちかは――独り残された。

 もう、どうあってもハッピーエンドは訪れない。
 少なくとも、"彼"が見せてくれた夢のような終わり方は絶対にあり得ないのだとにちかは実感していた。
 じゃあ、自分はこれからどうすればいいのだろう。
 サーヴァントもいない、おまけに片腕もない、一発逆転の切り札なんて持っているわけもない偶像一匹で、何を。

 ――どうして、私は生き残ったんだろう。

 そんな想いが、鎌首をもたげる。
 死んでもおかしくない状況だったのは間違いない。
 射撃の命中位置があとほんの少しずれていたら。
 メロウリンクの助けが、あとほんの少し遅れていたら。
 七草にちかは、きっとあの場で死んでいた。

 にちかは生き残った。
 生き残って、しまった。
 何もできない、何にもなれない、晴れてどこにでもある石ころとして。
 この世の誰にとってもどうでもいい、可能性の抜け殻として。

 ざ、ざ、ざ。
 足音が、して。
 にちかの居る部屋の扉が開いた。

(あ……帰って、きたのかな……)

 思ったより早かったな、という感想だった。
 飲んだボトルを見せるついでに、思わせぶりなことしないで下さいくらいは言わせてもらおう。
 あんな、まるで今生の別れみたいな出て行き方をするなんていたずらにしても度が過ぎている。
 そういうタイプの悪い子はほんとに良くないですよって、後輩だけど教えてあげなくちゃ。
 そんなことを想いながら、音の方をぼんやりと見つめるにちかの前に――


「よ。直接会うのは初めてかな」


 見知らぬ男が、現れた。


 白い青年だった。
 髪も、肌も。
 顔には見てて痒くなってくるような肌荒れの痕が残っていて、何とも言えず痛々しい。
 貧乏臭くてみすぼらしい身なりの筈なのに、どうしてか見ていると心の底から不安になってくる。そんな男だった。
 その青年は七草にちかにとって、初めて会う人に他ならなかったけれど。
 自分でも驚くくらい冷静に、にちかは彼が誰なのかを理解していた。

「……なんで、此処、分かったんですか。もしかして、ストーカーも兼ねてのヴィランだったり……?」
「近くに血痕があった。途中で途切れてたが、手負いなら近くの建物にでも潜んでんじゃねえかと思ってね。
 龍脈の力を手に入れたからかな、なんだか妙に感覚が鋭敏になってるんだ。"サーチ"とまでは、流石にいかないが」
「は……。そりゃ、また。ご苦労なことです」

 会ったことは、ない。
 話したことも、多分ない。
 けれど声を聞いたことはあるし。
 この人がどういう人間なのかは、嫌ってくらいよく知っている。

「私みたいな石ころのこと、わざわざ殺しにきてくれたんですね――連合の、大魔王様」

 ――――死柄木弔
 敵連合の王にして、方舟の敵。
 そして、ついさっき方舟を終わらせた男。
 "あの人"の仇である不倶戴天の大魔王が、満身創痍の敗者を冷たく見下ろしていた。


◆◆


 アシュレイ・ホライゾンを討ち、方舟の可能性を途切れさせた死柄木弔には二つの選択肢があった。
 ひとつは、このまま先に進んで方舟の残滓を皆殺しにし、後顧の憂いを完全に断ち切ること。
 そしてもうひとつは、方舟の核を落とした戦果を引っ提げてカイドウらを始めとする残存勢力の一掃に臨むこと。
 思案は数秒。それでも自分なりによく考えて、死柄木はまず方舟にとどめを刺すことを選んだ。

 合理的に言うならば、方舟が今しがた殺したライダーとは別口の切り札を保持している可能性を恐れて。
 感情的に言うならば、此処までずっと連合の向かう先にのさばり続けてきた方舟勢力を完膚なきまでに滅ぼして笑うために。

 カイドウを殺せる戦力がまだこの地平線上に残っているとは思えない。
 であれば、あの皇帝は後回しにしたって構わない――どうせ残っている目ぼしい敵はあれくらいのものだ。
 多少の寄り道はきっと許される。その腹積もりがじきに崩れるなんて露知らぬまま、死柄木は諧謔を優先した。
 正確に言えば理由はもう一つあったが、それは一旦置くとして。

 ――そして二人は、とうとう巡り合う。
 片や連合の王。片や、方舟の核たる要石。
 魔王・死柄木弔。偶像・七草にちか。
 すべてが終わったその後に、男と女は遂に初めての邂逅を果たした。

「まず、一個言わせてください」

 死柄木は、都市を滅ぼす能力をその手に宿している。
 やろうと思えば軽く地面をひと撫でするだけで、その目的は達成可能だった。
 にも関わらずわざわざ直接の対面を望んだのは、彼なりに方舟のクルー達を重く捉えていたからなのだろう。
 言わずもがな――"敵"として。
 彼女達は、魔王の見据える地平線に蔓延る"敵(ヒーロー)"と認識されていた。
 だからそれを踏み躙るために、真の意味で終わらせるために、死柄木は直接出向いて殺すことを選ばねばならなかったのだ。

「私、あなたのことがだいっっっきらいです」

 敵連合にとって、方舟は間違いなく最大の敵だった。
 すべてを壊すと願う魔王にとって、すべてを救うと願う方舟が目障りだったことは言うまでもない。
 彼女達は、確かにこの地平聖杯戦争において強者だったのだ。
 力ではなく存在することそのものの意味で、強者達の盤面を狂わせていた。
 それはこうして魔王が手ずから殺しにやってきたことからも、あまりにも明らかであった。

「馬鹿の一つ覚えみたいに、殺すとか壊すとか、そういう極端なことしか言わないし。
 おまけに被害者意識だけはいっちょ前で、まるで自分が孤独な弱者だみたいな顔してる」
「おいおい辛辣だな。自分の状況分かってんのか?」
「分かってますよ。どうせ殺すんでしょ」
「よく分かってんじゃん」

 彼らは――いや彼は、どこまでも方舟の対極だった。
 崩壊の能力。望む地平線(みらい)の形。
 何もかもが、方舟に対してのカウンターであった。
 方舟にとっての死神になったのが彼であった事実に因果すら感じてしまうほど。
 死柄木弔は、優しい未来の否定者としてこれ以上ない人材だったと言う他ない。

「誰かを傷付けて、誰かの夢を壊すことでしか、生きられない」

 もしも此処にいるのが摩美々だったなら。
 真乃や、霧子だったなら。
 きっとこんな言葉を吐きはしなかっただろう。
 けれどにちかに言わせれば、相手の事情だなんて知ったこっちゃない。
 にちかにとって連合は、眼前に立つこの魔王はずっとただただむかつくだけのヴィランだった。

 なんで、みんながこんなに頑張っているのに。
 それを、正面切って声高に否定できるのか。
 見たこともないライブをこき下ろして、差し伸べてやった手を悪意まみれの皮肉で腐して。
 理解できないししたくもない。本当に、心底――嫌いだ。そんな気持ちを、ようやく会えたのをいいことにぶち撒ける。

「なんであなたみたいな人間が生きて、私の好きな人達が死んでいくのか……理解できません」
「弱いからだろ。生存競争って言葉知ってるか?」
「弱いのは、あなたの方でしょ。私には……私の知るアイドルの皆さんの方が、あなたなんかよりずっとずっと強く見えます」

 七草にちかは死柄木弔を知らない。
 彼の過去も、こうなるまでの経緯も、辿ってきた彼なりの戦いも、何も知らない。
 知る由もないし――知ったことではない。

 何がどうなったって、にちかにとって死柄木は"身勝手な加害者"だ。
 自分はこんなに不幸だから何をしても許されるだなんて、そんな幼稚なことを声高に述べるような生き様に嫌悪以外の感情はない。
 言いたかったすべてを堰を切ったようにぶつけていく。
 どうせ、たぶん、これが最後なんだからと。
 不思議と涙は出てこなかった。死ぬほどやるせない気持ちなのに、流れてほしい時に限って涙は出ない。
 アイドルとして売れても、役者にはなれないなあって、にちかはそう思った。

「私の知るみんなは、あなたよりずっと強かった。……あなたたちより、ずっと強かった」

 もうひとりの私(にちか)も。
 真乃さんも。
 霧子さんも。
 摩美々さんも、アーチャーさんも。
 ……"あの人"も。
 自分の知る限り、お前より弱い人間なんてひとりもいなかったとにちかは断言する。
 みんな必死に生きていた。狂いそうなほど辛い時間の中で、それでも優しく強くあることを貫いていた。
 断じて誰も、被害者の顔なんてしていなかった。人を傷付けて悦に浸ることなんてしていなかった。

「私に言わせれば……はは、あなたなんて、ただの負け犬ですよ。
 あなたになんて、私達みんな勝負以前のところで勝ってたんだから。
 なのに必死に噛み付いて、それで全部ぶち壊して、勝ったみたいな顔してるだけ。
 あなたなんかに、私の大事な人たちを――あの人たちを、笑う資格なんてない」

 だからこそ、七草にちかは否定する。
 連合の王の、その覇道を否定する。
 堕ちた天使が最後の壁と見据えた片翼を否定する。
 革命の徒が垣間見た救いを否定する。
 その言葉を受けて、魔王は一瞬だけ沈黙して。

 そして――

「そうかもな」

 一言だけ、そう言った。
 激昂ではない。かと言って自虐でもない。
 王は王としてただ、そこにあった。

「身の上話なんてする気はねえがな。まあ、俺の生まれは想像の通りだよ。
 不幸自慢のひとつもしなきゃやってられないくらいには地獄を見てきたし、そうやって自我を保つのが俺の生き方だった」

 今、彼はすべてを思い出している。
 師に見出された後のこともそうだし、その前のこともそうだ。
 死柄木弔は志村転弧を認識している。
 そうでなければ、この言葉は絞り出せない。

「俺のやってることは徹頭徹尾ただの八つ当たりだ。
 社会からこぼれ落ちたガキが、幸せに暮らしてる奴らに不公平だってほざいてるだけ。
 何があっても腐らず憎まず、真面目にひたむきに生きてるお前らの方が遥かに立派な人間だろうさ」

 別に、救ってほしくてやっているわけではないのだ。
 誰かに"辛かったね"と言ってほしくてやっているわけではない。
 そんな段階は、もうとっくのとうに過ぎている。
 この世界での彼で言うならそれはきっと、もうひとりの犯罪卿が散った瞬間だったろう。
 皇帝越えを成し遂げて、その身に余る力を手に入れたその時から――彼はもう燻る屑ではなくなった。
 あの瞬間、死柄木弔はオール・フォー・ワンの傀儡を脱し。
 他には決して代えの利かない、三千世界の地平線上において唯一無二の"魔王"となったのだ。

「だが、それでも貫くのが俺の生き方だ。実感しろ。お前らは、そんな弱者(おれ)に負けたんだよ。
 生き方は知らねえ。ひとりひとりの人生(かお)なんて知る由もねえが――
 そんな社会のゴミ一匹にお前らの夢は頓挫させられたってこと、ちゃんと覚えてあの世に行きな」
「……はっ。この期に及んで、出てくる台詞がそれですか。ほんっと、終わってますね」
「終わってるからこその敵(ヴィラン)だ。別に理解しなくてもいいよ。理解できたらお前もこっち側さ。そうなった時は歓迎するぜ」

 にちかが、嗤い。
 それに死柄木も、嗤った。

 魔王が、手を差し伸べる。
 慈悲ゆえの手でないことは、もう語るまでもないだろう。
 魔王の手は万物万象を崩し、壊す。
 恐るべき海の皇帝であろうが、未来へ繋ぐ宙の方舟であろうが、そこに一切の見境はない。

「最後に言い残す言葉はあるか?」
「あは。聞いてくれるんですか?」
「いいよ。負け犬の遠吠えとして聞き届けてやる」
「そうですか。じゃあ、まずは」

 七草にちかを殺すための手が、伸びる。
 にちかに抵抗する手段はない。
 瞬く暇ひとつで、彼女のすべては幕を閉じるだろう。
 そんな状況だというのに――やっぱり不思議と、涙も怯えも出てこなかった。

「私のライダーさん。強かったですか?」
「……あれお前のサーヴァントだったのかよ。まあ、そうだな」

 やっぱりまず、何を置いても聞きたいのは彼のことだった。
 ライダー。アシュレイ・ホライゾン。
 いつまでも一緒にいてくれるものだと思っていた――そう信じたかった、もういない人。
 ついぞ、彼のためにアイドルをやることはできなかったけれど。
 ならばせめて、自分を今までずっと守ってくれた人の生き様くらいは知っておきたかった。
 口にしてから、「果たしてこの男がまともな答えなんて返してくれるんだろうか」とは思ったが――もう既に遅い。

 ぜったいに悪意にまみれた言葉が返ってくるだろうし、今から耳でも塞いでおこうか。
 いや、最後の最後がそんな一発ギャグみたいな終わり方でいいものか。
 葛藤するにちかをよそに、死柄木弔は。

「強かったよ」

 ごく端的に、そんな感想を零した。

「俺が戦ってきた中じゃ一番だったかもな。
 ほんのひとつでもボタンをかけ違えてたら、案外結果も変わってたんじゃねえか?」

 アシュレイ・ホライゾンは、無為に散ったわけではない。
 彼はそもそも、死柄木弔よりも圧倒的に弱者だった。
 生存の代償に覚醒という唯一の強みを奪われ、残ったのは火力に乏しい癒やしの銀炎。
 それは彼にとって尊い力には違いなかったろうが、聖杯戦争の佳境で運用するには些か頼りない力であったことは間違いない。
 それでも彼は、一歩も退かずに戦った。
 持っていた力と継承した力。
 そして――最後に掴み取った希望の光(スフィア)。

 全てが死柄木に通じていた。
 彼は、戦えていたのだ。
 死柄木が星を掴めなければ、その領域への覚醒がほんのわずかでも遅れていたら――勝ったのは方舟だった筈だ。

「けど俺が勝った。勝って、お前らのすべてを総取りだ」
「……、……」
「泣けよ、アイドル。お前らにはもう何もないんだぜ」

 アシュレイ・ホライゾンは強かった。
 彼は紛れもなく、魔王の闇を祓える勇者だった。
 その事実は、変わらない。
 そしてその上で彼が敗れ、闇が光を喰らい尽くしたこともまた確かであった。

「優しい世界は実現しない。
 お前らに未来はない。
 お前らの歌が誰かに希望を与える日は、もう二度と来やしない」

 夢は破れた。
 ラストステージは、消灯した。
 きらびやかな少女たちも、舞台が終われば奈落に還る。
 そしてただの人間に戻って、端役のように消えていくのだ。
 いつか時が流れて、衣装を脱いで、ステージを降りるように。
 普通の女の子に戻って、普通の人生に戻っていくように。
 夢の時間は終わりを告げ、後は現実に溶けていくだけ。

「お前らの全部が――俺達の踏み台で、俺達の犠牲だ。そのことしっかり噛み締めながら、俺に殺されて消えてくれ。方舟の砂粒」

 それは、これ以上ない"勝利宣言"で。
 方舟にとっての、完膚なきまでの"チェックメイト"だった。
 は、とにちかの口から乾いた笑いが漏れる。
 根負けしたような、或いは諦めたような……そんな声。

「……ほんと、嫌いです。あなたのこと」

 ――嫌いだ。
 本当に嫌いだ、こんなやつ。
 厭味ったらしくて、人を傷付けることでしかコミュニケーションを取れない人でなし。
 こんなやつに自分の大切な人達が苦しめられ、あまつさえ未来を奪われたのだと考えるだけで腸が煮え滾りそうになる。

 あの人も、なんだってこんなのに負けやがったのか。
 せめてもっとまともな奴に負けてくれればよかったのに。
 そしたらこんな、最悪な気持ちで負けを噛み締めることにはならなかったかもしれない。
 もしも英霊の座にまで声を届かせる手段があったなら、ありったけの八つ当たりをお見舞いしてあげたい気分だった。
 そして何より、何より腹が立つのは……


「なんであなたが、私の知らない……あの人の強いところを、知ってるんですか……」

 こんなに方舟(わたしたち)のことを馬鹿にしているのに、あの人の強さだけは認めてくれたことだ。


 死柄木弔は、方舟を認めない。
 けれど、厄介な敵だったとだけは認めてくれる。
 彼は方舟の否定者であると同時に、方舟の生き様を誰より肯定してもいた。
 それがにちかによりいっそうのやり切れなさと敗北感を与えてくるのだ。
 いっそ弱かった、愚かだったと声をあげて嘲笑でもされていたなら――まだ抵抗(わるあがき)のしようだってあったろうに。

「あなたなんかに、認めてほしくなかった」

 最後まで、失った彼の光(アイドル)になれなかった少女は。
 彼が見せようとしていた、その胸に秘めた光の実像を知らない。
 けれど死柄木弔は、勇者の敵たる青年はそれを知っている。
 悔しい。今まで味わったどの敗北よりも、そのことがただただ悔しくてならなかった。

「あなたなんかが、あの人を……っ」

 七草にちかは偶像である。
 でも、もうこの地平に彼女達の出番はない。
 生き残っている偶像はお日さまの少女がひとりだけ。
 七草にちかは、そこに数えられない。
 彼女はもう――終わってしまった存在だから。

「あの人を、すごい奴だって、言わないでほしかった……!」

 ぶち撒けた気持ちは、ただの負け惜しみ。
 いや、きっとそれ以下の醜いだけの感情。
 無様だなあ。滑稽だなあ。みっともないなあ。
 にちかはそう思いながらも溢れ出す言葉を止められなかった。

 アシュレイは消えていった。
 誰も知らないところで、誰も知らない彼だけの英雄譚を生きた。
 でもその姿を、七草にちかは知らない。
 アシュレイが戦っている間、自分は血まみれで無様に伸びていた。
 あんなに一緒だったのに、いろんなことを助けてもらったのに。
 蓋を開けてみれば、「さよなら」も言えずに彼は逝ってしまった。
 眼前の魔王の方が自分よりよっぽど、アシュレイの強さを知っているという事実に、にちかは、泣いた。

 泣いて、泣いて、泣いて、泣いて。
 泣いて――


『かわいいぞ、にちか』


 そんな言葉を、皮切りに。
 七草にちかの脳内に、たくさんの"言葉"が溢れてきた。


『…だから頑張れ、"七草にちか"。私じゃない私(あなた)』

『必ず帰ってくるのよね。嘘だったら――怒るからね』

『そして君はその先、君の人生で夢を叶えるんだ。
 俺というサーヴァントへの報酬は、それだけでいい』


 ああ――なあ、七草にちか。


『――君の結末が、アイドルであろう事を常に祈るよ』


 おまえ、何諦めてるんだよ。


「――あの。もう一つだけいいですか」
「あ? 長え遺言だな」


 何を悟った顔で諦めようとしているんだと、にちかはこんなことになっても直らない自分のいじけ虫っぷりに赫怒した。
 ライダーさんは消えてしまった。方舟の夢は、どうやったって叶わなくなった。
 そして目の前には最強の敵、嫌いで嫌いで仕方ない悪の大魔王が手を翳している。
 何がどうあっても詰み。此処から入れる保険はない。
 でも――それでも。

 膝を折ったままじゃいられない理由が、おまえにはあったんじゃないのか。

「殺さないでほしいです」
「はあ?」

 にちかは今、丸腰だ。
 武器のひとつも持っていない。
 ペットボトルの中身は飲み干してしまったし、摩美々の携帯電話を武器に殴りかかるくらいしか抵抗の手段はない。
 そしてもちろん、サーヴァントさえ殺してしまえるような化け物を相手にそんな悪あがきが通じるわけもないとにちかは分かっていた。

 だからにちかは、精一杯のやり方で生にしがみついた。
 魔王の目を見上げて、見つめて、言葉を紡いで乞い願う。
 要するに――命乞いである。

「死にたくない。こんなところで、終われないんです。私は、まだ……!」

 交わしてきた約束がいくつもある。
 アイドルになるとか、無事に帰ってくるとか。
 此処で運命を、このくそったれな現実を受け入れてしまったらそれをすべて破ることになる。
 もう、残っているものは何もない。
 未来はすべて、瓦礫の残骸の中に消えてしまった。
 ――でも、にちかは声をあげるのだ。

 まだだ、と。
 まだ終われない、生きていたい、と。
 無様も滑稽も百も承知で、声を張り上げる。
 必要なら額を擦りつけたって、靴を舐めたって構わないと思っていた。

「……自分の言ってること、理解してるか?」

 魔王の声が響いてくる。
 ひどく冷め切った、背筋まで凍りつくような声だった。
 そこに宿る感情は呆れ。当然だろうな、とにちかは思う。にちか自身、彼の立場だったら同じ気持ちになったろう。

「生きてどうする。この世界は、もうすぐ終わるってのに」

 方舟が事実上の壊滅を喫したことにより、聖杯戦争はとうとう最終局面に入ったと言っていい。
 残っているのはカイドウと多少の有象無象。
 やもすれば、自分のように何らかの手段で力を手に入れたジョーカーが紛れているかもしれないが……何にせよ、後は数名の強者とたまたま生き残ってしまった者だけしかこの地平線上には残っていない。死柄木はそう考えている。

「此処で死んだ方がまだ楽だぜ。生き残ればお前は、ゆっくり、じっくりと死の実感に浸る羽目になる」
「……、……」
「一人ずつ減っていく。世界が、少しずつ終わっていくんだ。
 でもお前の未来はどうあっても変わらない。戦争が終われば、この世界と一緒に溶けて消える泡さ」

 マスターの資格は確かにまだ残っている。
 だが、令呪はない。資格があったからって、契約する相手がいなければそれも無用の長物だ。
 七草にちかに、生きている価値はない。
 生きていたって、どうにもならない。
 彼女にできることは、死にゆく世界をただ見届けることくらいのもの。

「……まだ、私達は終わってない」
「終わったんだよ。ライダーは死んだ。俺が殺した」
「――まだ、あの舟のクルーは残ってる!」

 だとしても。
 それでも、途中で降りることはしたくなかった。
 まだ続いている命を投げ捨てたくなかった。
 もう二度と、にちかはシューズを捨てたくなかったのだ。

「私は……こんなところじゃ、死ねない。死んでなんかられないんです、それじゃ本当にただの石ころって終わっちゃう」

 死んでもいいなんて思えない。
 負けたって悔いがないなんて、口が裂けても言えない。
 にちかは弱い。弱いから、生きたいし勝ちたいし、何ひとつ失いたくないと当たり前にそう言い続ける。
 でも今は何よりも、自分が吐いた言葉と、それを信じてくれた人達の心を無為にしてしまいたくなかった。
 ファンになってくれた子がいる。
 応援してくれた仲間がいる。
 帰りを待ってくれている、家族がいる。
 こんな自分を見初めて、送り出してくれた人がいる。

 ――こんな私に、翔び方を教えてくれた人がいる。

「人質でもなんでもいい。連れて行ってください、あなたの決戦に……いや」

 だからにちかは、全身全霊、一番の気合を込めて命乞いをした。
 それは、何かを乞うにしてはふてぶてしい態度と物言いだったけれど。

「私達の、世界の終わり(ラストステージ)に」

 それでも、にちかにできる精一杯だった。
 土下座したって響くとは思えない。
 靴を舐めて機嫌が取れるとも思えない。
 なら後はもう、死ぬほど頑張って死にたくないって心を伝えて。
 敵(ヴィラン)の王様の嗜虐の琴線にちょっとでも触れてくれることを祈るしかなかった。

 魔王・死柄木弔が――沈黙する。
 その顔に笑みは浮かんでいなかった。
 やがて、彼のかさかさに乾いた唇がゆっくりと開いて。

 そして――


「いいよ」


 そんな言葉が、にちかの死神の口からこぼれ出た。

「どうせお前が生きてたって何にもならない。最後に残ったひとりを俺が踏み潰す光景が見たいってんなら、席をやるよ」

 ただ、と死柄木は続ける。
 気まぐれに偶像の余命を伸ばした死神は、こんなことを言った。

「その前にひとつ寄り道だ。顔を見ときたい奴がいる」


◆◆


 命運を握る死神に連れられた先は、地下道だった。
 にちかにとっても馴染みの深い場所で、土地勘は問題なくある。
 しかし今や、地下は見る影もない荒れ果てぶりを見せていた。
 地上ほどではないにしろ、此処で何か大きな戦いがあったことは誰の目にも明らかな――そんな惨状。

 そこをしばらく、目の前を歩く死柄木に付いて行って。
 荒れ果てた景色の先にあった階段の途中で、にちかは田中摩美々を見付けた。

 声は、出なかった。
 ただ、奇妙な納得だけがあった。
 やっぱりあの時既に、摩美々は覚悟を決めていたのだろう。
 自分はこれから死ぬかもしれない。生きて帰れない可能性の方が、きっと高い。
 そう分かった上で、それでもこの人は戦うことを決めたんだなあと、にちかは思った。

「此処で待ってろ。逃げたら殺すからな」
「心配しなくても逃げませんよ。この身体で走ったりとかできないって、ちょっと考えたら分かるでしょ。
 第一あなたさっき、私が生きててもなんにもなんないとか好き勝手言ってたくせに」
「追いかけるのが面倒臭いから言ってんだよ。石ころは雑踏に紛れんのが得意だろ?」
「あーはいはい。相手にしてたら疲れそうなのでそのへんで。ムキムキにちかを自由にして暴れ回られるのが怖いってことにしときます」

 溜息をつきつつ、更に下まで降りていく背中を見送って。
 にちかは、倒れ伏したまま動かない彼女の横へ腰を下ろした。

「……なんであんななんでしょうね、あの人。ほんっと嫌いです。ライダーさんも、あんなクソ野郎に負けんなって感じですよね」

 そう語りかけても、そこにある"紫色"はちっとも動かなくて。
 ああ、本当に死んじゃったんだ、と今更の実感をにちかに抱かせた。

「摩美々さんも摩美々さんですよ。アイドルが、こんな場所で死んでちゃダメでしょ。まったく……」

 けれど、それも無理はない。
 摩美々は、死人と呼ぶにはあまりに穏やかな顔で事切れていた。
 口元に薄い笑顔を浮かべて、満足して眠っているみたいな顔だった。
 服に滲んだ血と、全身のそこかしこにある傷がひどくアンバランスに映る。

「――すっごく、すっごく迷いました。ほんとはちょっぴり、もう十分頑張ったでしょって気持ちもあったんです。
 私だけ生き残ったって、あの人が言う通りなんにもなんないですし。
 霧子さん達ががんばってどうにかしてくれたって、もうライダーさんはいないから、方舟(わたしたち)の夢は叶わないし」

 自分が生き残れる余地が少しずつなくなっていく過程を、じっと見つめながら生きる。
 霧子が勝ったとしても、そこにもう自分の席はないのに。
 それでも生きる。それは、死柄木の言う通りもっとも過酷な余生だった。
 痛みも感じる間もなく一撃で、塵に変えられて消えてしまう方がずっとマシだろう。

「でも、もうちょっとがんばります。だって私、まだぜんぜんなみちゃんみたいになれてない。
 プロデューサーさんにあんな偉そうな口叩いといて、自分はあっさり諦めておしまいだなんて格好悪すぎるでしょ」

 それでもにちかは、生きることにした。
 もう少しだけ、自分のステージで踊ることにした。
 あの子が、あの人が、みんなが生きたこの世界(ステージ)で、羽ばたくことを選んだ。

 もう、八つ当たりを聞いてくれるあの人はいないけれど。

「……まあ、あっさり死んじゃうかもしれませんけどね。
 その時はあっちで、プロデューサーさんや真乃さんと一緒に迎えてくれたら嬉しいです。
 もうひとりの私は、またぶーぶー文句言ってくるでしょうけど」

 亡骸の傍に、空っぽのペットボトルを置く。
 ちゃんと飲みましたよ、ミイラにしないでくださいね、と言葉を添えて。

「もし死んじゃったら、文句のひとつは言いますから。
 私みたいなのをひとり置いて逝っちゃった摩美々さんの責任も、当然あるんですからね」

 死柄木は何をしにこんなところに来たんだろうと、ふと思った。
 もしかしたらこの下に、何かとんでもない力でも眠ってたりするんだろうか。
 それとも、思わず笑っちゃうくらい下らない目的があったりするのかもしれない。
 何にせよ、きっと摩美々と一緒にいられる時間は――彼女を想える時間はこれが最後だろう。
 もう何も言ってくれない、からかいもいたずらもしてくれない先輩アイドルの傍に、にちかは寄り添って。

「……ほんと、なんで死んじゃうかなあ」 

 ――もう少し、あなたの歌(こえ)を聞いていたかったと。
 そんなことを、ふと想うのだった。


◆◆


 ホーミーズとは、ソルソルの実の能力によって生み出される使い魔である。
 とはいえ、能力者が生み出したホーミーズに対して使える権限は実のところそう多くはない。
 現に先代であるビッグ・マムはホーミーズに裏切られたし、それは死柄木にも起こり得る事象だった。
 ただ、死柄木はマムほど多数の魂を持っておらず、よって使役している数も限られている。
 故にホーミーズの生存状況はリアルタイムで把握できており、だからこそ彼は"それ"を見逃さなかった。

 田中にサーヴァント代わりに付けていた、偶像のホーミーズ。
 星野アイの血を媒介に生み出した『アイ』が、消えたことを。

 端末の類は戦闘の中で壊れてしまったため、正確に状況を把握することはできなかった。
 だから死柄木はこうして、『アイ』が最後の戦闘を行ったであろう地下通路を訪れることにしたのだ。
 階段の近くには、彼女の――元を辿れば自分自身の魔力の残滓が残っていた。
 此処が最後の決戦場になったのだろうと察しつつ、点々と続く血痕を追って階段を下った。

 階段の途中で、初めて会う気がしないアイドルの死体を見つけた。
 にちかをそこに置いて、死柄木はまだ階段を下る。
 因縁のある相手だったが、死んだというならもう興味もない。
 方舟はやはり終わったのだと、改めてその認識を強める要因くらいにしかならなかった。
 階段をもう少し下りたところに、死柄木の探していたモノはあった。

「は。最後の最後まで、格好のつかねえ奴だな」

 田中一は、額から血の花を咲かせて死んでいた。

 アイドルにやられたのかと思ったが、どうもそうではないらしい。
 近くにはワイヤーと、彼のものではないだろう拳銃が一丁落ちている。
 ブービートラップに引っかかって死んだらしいと悟り、死柄木は思わず笑った。
 どうせ死んでいるだろうとは思っていたが、それにしたって格好のつかない、何とも"らしい"死に様ではないか。

「面倒ばかりかけやがって。思えば俺は、なんでお前なんかにわざわざ気を回してやってたんだか」

 田中一という男は、決して有用な駒ではなかった。
 メンタリティの脆さもそうだし、スペックも人間の域をまるで出ていない。
 連合に対する忠誠心くらいしか評価できるところはなかったと、今振り返るならそういう結論になる。

「……これで、とうとう残りはあいつだけか。敵連合も終わりだな」

 流石に二人で連合を名乗るのは間抜けというものだろう。
 それに、もはや聖杯戦争は最終局面。
 初めて会って間もなく"彼女"と交わした約束が、果たされる時が近付いている。

 ――敵連合は、終わるのだ。
 もうすぐ彼らは"仲間"から、望む未来のために殺し合う"敵"同士になる。

「田中」

 ……田中一という男は、決して死柄木にとって価値のある駒ではなかった。
 だが、彼は恐らく誰よりも敵連合という集団を愛していた。
 だからこそ彼は、死柄木の敵を排除することに努め続けた。
 裏切り者のアイドルを殺し、方舟の最後の希望を断ち切り、紫色と傭兵を道連れにした。

 死柄木はその功績を買って、死に顔くらいは拝んでやろうと思い此処まで来たのだ。

「じゃあな」



 世界の壁が壊れ、渋谷が界聖杯の"深層"へと墜ちる、その直前の一幕であった。



【渋谷区・地下(階段)/二日目・午後】

七草にちか(騎)@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[状態]:精神的負担(大/ちょっとずつ持ち直してる)、決意、全身に軽度の打撲と擦過傷、『ありったけの輝きで』
    片腕欠損(簡易だが止血済み)、出血(大)、サーヴァント喪失
[令呪]:全損
[装備]:
[道具]:スポーツドリンク、田中摩美々の携帯電話
[所持金]:高校生程度
[思考・状況]
基本方針:283プロに帰ってアイドルの夢の続きを追う。
0:最後まで、ありったけの輝きで。
1:アイドルに、なります。
2:殺したり戦ったりは、したくないなぁ……
3:梨花ちゃん達、無事……って思っていいのかな。
[備考]
聖杯戦争におけるロールは七草はづきの妹であり、彼女とは同居している設定となります。
WING決勝を敗退し失踪した世界の七草にちかである可能性があります。
当人の記憶はWING準決勝敗退世界のものですどちらの腕を撃たれたかはお任せします。

【死柄木弔@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:継承、全身にダメージ(大/回復中)、龍脈の槍による残存ダメージ(中)、サーヴァント消滅、肉体の齟齬解消
[令呪]:全損
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数万円程度
[思考・状況]基本方針:界聖杯を手に入れ、全てをブッ壊す力を得る。
0:勝つ
1:全て殺す
[備考]※個性の出力が大きく上昇しました。
※ライダー(シャーロット・リンリン)の心臓を喰らい、龍脈の力を継承しました。
全能力値が格段に上昇し、更に本来所持していない異能を複数使用可能となっています。
イメージとしてはヒロアカ原作におけるマスターピース状態、AFOとの融合形態が近いです。
それ以外の能力について継承が行われているかどうかは後の話の扱いに準拠します。
※ソルソルの実の能力を継承しました。 
炎のホーミーズを使役しています。見た目は荼毘@僕のヒーローアカデミアをモデルに形成されています。 
血(偶像)のホーミーズを造りました。見た目と人格は星野アイ@推しの子をモデルに形成されています。今は田中に預けています
風のホーミーズを使役しています。見た目は殺島飛露鬼@忍者と極道をモデルに形成されています。
光のホーミーズが消滅し、合神ホーミーズは作れなくなりました。衝撃のホーミーズは残っています。
※細胞の急激な変化に肉体が追いつかず不具合が出ています。ほぼ完治しました。
※峰津院財閥の主要な拠点を複数壊滅させました。
※偵察、伝令役の小型ホーミーズを数体作成しました。
※個性が進化しました。魔力や星辰体などに対しても崩壊を適用できるようになりました



◆◆






 世界の終わり(ラストステージ)の、幕が上がる。






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時系列順


投下順


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174:帰らぬやつらを胸に(1) 七草にちか(騎) 177:カーテン・コール(前編)
173:ラスト・カウントダウン 死柄木弔 177:カーテン・コール(前編)

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最終更新:2024年03月24日 16:03