ひょんなことから女の子化する一週間前
『都立振降高等学校・昼休みの教室』
『都立振降高等学校・昼休みの教室』
「ほら、急がないと休み時間おわっちゃうよ。あたしが食べさせてあげよっか?」
「ちょ、委員長、みんな見てるって……」
「ん~? いつもの事じゃない。あたしは気にしてないから、キミも気にしないでね。はいっ」
「そ、そんな勝手…… はむっ、はふはふ ……おいしい、です」
「ふふ、ありがと! 早起きして作った甲斐があったわね」
「で、でも、俺なんかのためにに毎日弁当作ってもらって、……いいのかな?」
「もしかして負い目感じてる? 元々料理好きだから気にしないで。それに……」
「?」
「それに、好きな人の為を想って料理を作るのって楽しいんだから!」
わたしがそう言うと、”彼”は視線を下に向けて顔を赤らめた。
──も~っ、なんて可愛いんでしょ!
若干たれ目がちな瞳はくりっと大きく、それが温和な印象を与えていて、
他の同級生(高校一年生)と比べて明らかに幼さの残る顔立ちは、小学生と言われても通用するぐらい。
短く切り揃えられた柔らかそうな髪は、見ていると頭を撫でたくなる衝動に駆られてしまう。
まるで、某少年合唱団の子供達のように穢れを知らなさそうな彼の風貌は、
まさに美少年という形容がぴったり。
わたしは、彼の全身から発している少年オーラも含めて彼が好き!
もう好きで好きで! うは~……(悶絶)
「……委員長っ、いいんちょってば! よだれ出てるっ!」
「うはぁ、イカンイカーン!!」
彼を見とれていたうちに垂らしていたよだれを、慌ててティッシュで拭いとる
「にははっ、委員長面白いね」
どことなく大人びてみえる彼の唇から笑顔がこぼれた。
以前、わたしが廊下で資料をばら撒きながら転んでしまった時に
『ちゃんと前見ないとダメだよ』って、彼が助け起こしてくれたんだっけ。
──その時と同じ、少年っぽい笑み。
わたしはこの笑顔を見た時から恋に落ちてしまったんだ。
ああもぅ我ながら、なんてベタ……。
横長 [sage]:2007/06/08(金) 17:26:17.99 ID:ErABkgko
「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるね」
彼はそう言って彼は席を立った。いつのまにか食べ終えていたお弁当はキチンと弁当袋に収められている。
「おーおー、飽きもせず毎日頑張りますなー! 恋する乙女は格が違った」
「でも恋愛までには進展しないでしょ。色恋沙汰に興味なさそうだもん、彼」
入れ替わりに、親友のAとBが呼んでもいないのににじり寄ってきた。
「いくらショタ趣味だといえ、委員長レベルの女子が毎日弁当作ってくれたら普通オチるとおもうんだけどなー」
「あ、あたしはショタなんかじゃ……」
「……こないだ貸したBLのソフト、年下キャラしか攻略してなかったよね?」
「うっぐ! ……そ、それは年功序列っ! 心だけは体育会系! アハハハー」
「うそばっか」
「でもこれだけ尽くしても反応が無いのって、委員長が女に思われてないんじゃない?」
思わずハッとした。
わたしと彼の関係って、恋人未満、いや、もしかしたら友達どまり?
単に『世話好きなお姉さん』程度にしか思われてなかったりして……。うは~……(落胆)
「進展ならあったよ~。委員長の猛烈プッシュでデートまで漕ぎ着けたって!」
「マジスカ! それは詳しく訊かせてほしいなー」
「訊かせてほしいねぇ」
ネガティブシンキングに浸っていたわたしをよそに、友人のCも加わり、
まるで獲物に喰らいつくかのように迫ってくる。
「ちょww それって昨日の事じゃない! どこで聞いたのよ?」
「彼と委員長はこの学校じゃ目立つから~。黙ってても色々と情報入ってくるんだ~」
「「「とゆことでkwsk!」」」
「kwskもなにも、まだ口約束だけだし話す事なんてないよ。……もしかしたら断られるかも」
「はぁ~。委員長って押しが強いんだか弱いんだか、微妙に判断付きかねるよね」
「うっさい!」
「でも、デートまで漕ぎ着けたら、あとは勢いで……」
「スキみて押し倒しちゃえ~! ○○・テスカトリの猛ダッシュのように!」
「唇を奪って、ついでに○貞も奪っちゃいなよー。○TAで車を窃盗するように!」
「Gファ○ターとガン○ムがドッキングしてGアー○ーになるように、委員長も彼と一つになればいい!」
「まじうっさい! つうか、あんた達の例えは分かりづらいからヤメレ」
「なんだか楽しそうだね。何話してたの?」
穏やかに微笑みながら渦中の人物が戻ってくる。
表情から察するに、わたし達の会話内容は聞かれてないみたい。
「ん? 委員長の惚気話に付き合ってただけだよ~。この、幸せもの~」
Cなりに気を利かせたつもりなのだろうが、
それを聞いた彼の顔は、ぽんっ!と擬音が聞えるくらいに紅く染まってしまい、
居心地悪そうに頭をかいた。
344 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/06/08(金) 17:26:38.43 ID:ErABkgko
ひょんなことから女の子化する一週間前
『都立振降高等学校・帰り道』
「ちょ、委員長、みんな見てるって……」
「ん~? いつもの事じゃない。あたしは気にしてないから、キミも気にしないでね。はいっ」
「そ、そんな勝手…… はむっ、はふはふ ……おいしい、です」
「ふふ、ありがと! 早起きして作った甲斐があったわね」
「で、でも、俺なんかのためにに毎日弁当作ってもらって、……いいのかな?」
「もしかして負い目感じてる? 元々料理好きだから気にしないで。それに……」
「?」
「それに、好きな人の為を想って料理を作るのって楽しいんだから!」
わたしがそう言うと、”彼”は視線を下に向けて顔を赤らめた。
──も~っ、なんて可愛いんでしょ!
若干たれ目がちな瞳はくりっと大きく、それが温和な印象を与えていて、
他の同級生(高校一年生)と比べて明らかに幼さの残る顔立ちは、小学生と言われても通用するぐらい。
短く切り揃えられた柔らかそうな髪は、見ていると頭を撫でたくなる衝動に駆られてしまう。
まるで、某少年合唱団の子供達のように穢れを知らなさそうな彼の風貌は、
まさに美少年という形容がぴったり。
わたしは、彼の全身から発している少年オーラも含めて彼が好き!
もう好きで好きで! うは~……(悶絶)
「……委員長っ、いいんちょってば! よだれ出てるっ!」
「うはぁ、イカンイカーン!!」
彼を見とれていたうちに垂らしていたよだれを、慌ててティッシュで拭いとる
「にははっ、委員長面白いね」
どことなく大人びてみえる彼の唇から笑顔がこぼれた。
以前、わたしが廊下で資料をばら撒きながら転んでしまった時に
『ちゃんと前見ないとダメだよ』って、彼が助け起こしてくれたんだっけ。
──その時と同じ、少年っぽい笑み。
わたしはこの笑顔を見た時から恋に落ちてしまったんだ。
ああもぅ我ながら、なんてベタ……。
横長 [sage]:2007/06/08(金) 17:26:17.99 ID:ErABkgko
「ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるね」
彼はそう言って彼は席を立った。いつのまにか食べ終えていたお弁当はキチンと弁当袋に収められている。
「おーおー、飽きもせず毎日頑張りますなー! 恋する乙女は格が違った」
「でも恋愛までには進展しないでしょ。色恋沙汰に興味なさそうだもん、彼」
入れ替わりに、親友のAとBが呼んでもいないのににじり寄ってきた。
「いくらショタ趣味だといえ、委員長レベルの女子が毎日弁当作ってくれたら普通オチるとおもうんだけどなー」
「あ、あたしはショタなんかじゃ……」
「……こないだ貸したBLのソフト、年下キャラしか攻略してなかったよね?」
「うっぐ! ……そ、それは年功序列っ! 心だけは体育会系! アハハハー」
「うそばっか」
「でもこれだけ尽くしても反応が無いのって、委員長が女に思われてないんじゃない?」
思わずハッとした。
わたしと彼の関係って、恋人未満、いや、もしかしたら友達どまり?
単に『世話好きなお姉さん』程度にしか思われてなかったりして……。うは~……(落胆)
「進展ならあったよ~。委員長の猛烈プッシュでデートまで漕ぎ着けたって!」
「マジスカ! それは詳しく訊かせてほしいなー」
「訊かせてほしいねぇ」
ネガティブシンキングに浸っていたわたしをよそに、友人のCも加わり、
まるで獲物に喰らいつくかのように迫ってくる。
「ちょww それって昨日の事じゃない! どこで聞いたのよ?」
「彼と委員長はこの学校じゃ目立つから~。黙ってても色々と情報入ってくるんだ~」
「「「とゆことでkwsk!」」」
「kwskもなにも、まだ口約束だけだし話す事なんてないよ。……もしかしたら断られるかも」
「はぁ~。委員長って押しが強いんだか弱いんだか、微妙に判断付きかねるよね」
「うっさい!」
「でも、デートまで漕ぎ着けたら、あとは勢いで……」
「スキみて押し倒しちゃえ~! ○○・テスカトリの猛ダッシュのように!」
「唇を奪って、ついでに○貞も奪っちゃいなよー。○TAで車を窃盗するように!」
「Gファ○ターとガン○ムがドッキングしてGアー○ーになるように、委員長も彼と一つになればいい!」
「まじうっさい! つうか、あんた達の例えは分かりづらいからヤメレ」
「なんだか楽しそうだね。何話してたの?」
穏やかに微笑みながら渦中の人物が戻ってくる。
表情から察するに、わたし達の会話内容は聞かれてないみたい。
「ん? 委員長の惚気話に付き合ってただけだよ~。この、幸せもの~」
Cなりに気を利かせたつもりなのだろうが、
それを聞いた彼の顔は、ぽんっ!と擬音が聞えるくらいに紅く染まってしまい、
居心地悪そうに頭をかいた。
344 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/06/08(金) 17:26:38.43 ID:ErABkgko
ひょんなことから女の子化する一週間前
『都立振降高等学校・帰り道』
「お昼はごめんね? わたし達をからかうのが趣味みたいな所があるから。A達って」
「いいよ、気にしてないし」
少しは気にしてほしかった…… orz
「そ、っそそそそそ、それよりも、あ、あの、デートの事、なんだけどっ!」
勢いつけて切り出したせいか語尾が荒くなった。おかげで周りの視線を集めまくりんぐ。
これだけ照れているのって、やっぱりわたしを女として意識してるからだよね?
「ええ。来週の日曜でよければ! でも無理なら諦めるから」
思わずうつむいてしまう。ええい! 強気で行けあたし! 守ったら負ける!
「無理じゃないです。……予定、空けましたから」
福音のような彼の声がわたしの耳に届き、嬉々として顔をあげる。
彼の表情は曇っていた。
その表情を見て、ああ、やっぱりか、と思った。
所詮わたしは『世話好きなお姉さん』なんだろう。
このデートも弁当のお礼のつもりで付き合うだけ。
恋人としてではなく、『世話好きなお姉さん』として。
──それでもいい。
こうして二人でいられれば。
そりゃ、出来ればお付き合い出来れば最高だけど、
今はこうやって彼を≪占有≫していられるだけで、充分満足。
満足、なんだ、ゼイタク言うな、わたし……。
「委員長、大丈夫? 気分悪い?」
彼が心配そうに私の顔を覗いている。
「え? ええ、大丈夫!」
「そうかな。無理しないでどこかで休んだら?」
「へーきへーき! それより予定空けてくれてありがとね?」
「うん……」
彼は右手でグーを作り、第二関節あたりを下唇に当てて彼独特のシンキングポーズを取った。
本人としては渋く格好つけているつもりなのだろうが、少年らしい幼さがそれを可愛くみせていている。
今はその可愛らしい仕草を見ても心癒されなかった。
(彼のキモチ、分かっていたつもりなのに。こう露骨に顔に出されると、きつい。きついよ……)
345 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/06/08(金) 17:26:55.17 ID:ErABkgko
「よーし、日曜は楽しもうね!」
あたしは心配かけまいと無理くり笑顔を作った。
彼もホッとした表情で優しく微笑んだが、その微笑もだんだん険しくなる。
「委員長っ!」
「な、なに? いきなり」
「……俺っ、委員長のキモチに答えないとっ、い、いけないって! それで、あ、あのっ!」
またもや語尾が荒くなり、再び視線のシャワーを浴びる事になる。
「あ、ああ、その事なら急いで答え出さなくても……」
「それじゃ!」
「いいのいいの。ゆっくり考えて欲しいな。急いでいる訳じゃないから」
「そんな、でもっ!」
「じゃあ、デートの後に聞かせてよ。ね?」
しぶしぶといった感じで、なんとか引き下がってくれた。
彼の答えなら聞かなくても分かっている。
NOだ。
それを受け入れてしまったら、デートすら立ち消えになるかもしれない。
せめて、デートだけは……。
せめて、日曜になるまでは、彼を≪占有≫していたい……。
「いいよ、気にしてないし」
少しは気にしてほしかった…… orz
「そ、っそそそそそ、それよりも、あ、あの、デートの事、なんだけどっ!」
勢いつけて切り出したせいか語尾が荒くなった。おかげで周りの視線を集めまくりんぐ。
これだけ照れているのって、やっぱりわたしを女として意識してるからだよね?
「ええ。来週の日曜でよければ! でも無理なら諦めるから」
思わずうつむいてしまう。ええい! 強気で行けあたし! 守ったら負ける!
「無理じゃないです。……予定、空けましたから」
福音のような彼の声がわたしの耳に届き、嬉々として顔をあげる。
彼の表情は曇っていた。
その表情を見て、ああ、やっぱりか、と思った。
所詮わたしは『世話好きなお姉さん』なんだろう。
このデートも弁当のお礼のつもりで付き合うだけ。
恋人としてではなく、『世話好きなお姉さん』として。
──それでもいい。
こうして二人でいられれば。
そりゃ、出来ればお付き合い出来れば最高だけど、
今はこうやって彼を≪占有≫していられるだけで、充分満足。
満足、なんだ、ゼイタク言うな、わたし……。
「委員長、大丈夫? 気分悪い?」
彼が心配そうに私の顔を覗いている。
「え? ええ、大丈夫!」
「そうかな。無理しないでどこかで休んだら?」
「へーきへーき! それより予定空けてくれてありがとね?」
「うん……」
彼は右手でグーを作り、第二関節あたりを下唇に当てて彼独特のシンキングポーズを取った。
本人としては渋く格好つけているつもりなのだろうが、少年らしい幼さがそれを可愛くみせていている。
今はその可愛らしい仕草を見ても心癒されなかった。
(彼のキモチ、分かっていたつもりなのに。こう露骨に顔に出されると、きつい。きついよ……)
345 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/06/08(金) 17:26:55.17 ID:ErABkgko
「よーし、日曜は楽しもうね!」
あたしは心配かけまいと無理くり笑顔を作った。
彼もホッとした表情で優しく微笑んだが、その微笑もだんだん険しくなる。
「委員長っ!」
「な、なに? いきなり」
「……俺っ、委員長のキモチに答えないとっ、い、いけないって! それで、あ、あのっ!」
またもや語尾が荒くなり、再び視線のシャワーを浴びる事になる。
「あ、ああ、その事なら急いで答え出さなくても……」
「それじゃ!」
「いいのいいの。ゆっくり考えて欲しいな。急いでいる訳じゃないから」
「そんな、でもっ!」
「じゃあ、デートの後に聞かせてよ。ね?」
しぶしぶといった感じで、なんとか引き下がってくれた。
彼の答えなら聞かなくても分かっている。
NOだ。
それを受け入れてしまったら、デートすら立ち消えになるかもしれない。
せめて、デートだけは……。
せめて、日曜になるまでは、彼を≪占有≫していたい……。
でも、その望みは叶うことはなかったんだ。
──突然の転校。
──突然の転校。
この次の日から彼の登校拒否が続き、何の連絡もないまま転校してしまったのだ……。
352 :横長 [sage]:2007/06/10(日) 19:25:01.84 ID:IrBtbrMo
352 :横長 [sage]:2007/06/10(日) 19:25:01.84 ID:IrBtbrMo
ひょんなことから女の子化して一ヵ月後
『都立振降高等学校・昼休みの教室』
『都立振降高等学校・昼休みの教室』
自分を責めた。
ひたすら、自分を責めた。
そりゃもう、A達が『自殺だけはしないでね?』とマジ心配をするぐらいに。
彼がいなくなったのは、わたしの押しが強すぎたからからに違いない。
彼がいなくなったのは、実は彼には元々付き合っていた人がいたからに違いない。
彼がいなくなったのは、わたしが原因で彼がいじめにあっていたからからに違いない。
……ネガティブな思想が次から次へと湧き出てしまう。
それも仕方ないことかもしれない。
何故なら彼の転校の真相が、一ヶ月経った今でも不明のままだから。
転校してから数日は、転校の理由を聞きだそうと職員室へ通い詰めた。
けれど、彼の転校先や引越し後の住所については、
ウチの担任はおろか、校長ですら詳細を知らないという有様だった。
いくらわたしを避けたいからといって、普通そんなことってありえるの?
(あの時、告白の返事を聞いておけば……。振られたとしても、彼が去ることなんてなかったんだ……)
過去の自分の選択に後悔をしてもどうにもならない。人、それをタラレバという。
「あきらめきれないよ……」
机の上につっぷしながら、声が出るか出ないかくらいの小さな呟きをもらす。
彼をあきらめきれない。でも今は彼に会って、あやまりたい、のに……。
「もうっ! 一ヶ月近くもその調子じゃない! アクティブだった頃の委員長はどこへいった?」
「さぁ。もうわたしの中には自責の念しか残ってないよ……」
「委員長! その自責の念で何を手に入れた?」
「(脱)力と迂闊さだ! さすれば勝つ!」
「私は人は殺さない!その無念を殺す!! ……とゆことで、はいこれ」
聖戦士ダンバ○ン(Aが最近ハマっていている模様)ごっこに脊髄反射で付き合いつつ、
手渡されたメモを無気力に眺める。
「何? これは、地図?」
明らかに役に立たない事必至の、イラスト入りの地図だ。
なぜ道案内にスプーのイラストが必要なのですかAさん?
355 :横長 [sage]:2007/06/11(月) 18:03:31.46 ID:cJOaK5.o
ひたすら、自分を責めた。
そりゃもう、A達が『自殺だけはしないでね?』とマジ心配をするぐらいに。
彼がいなくなったのは、わたしの押しが強すぎたからからに違いない。
彼がいなくなったのは、実は彼には元々付き合っていた人がいたからに違いない。
彼がいなくなったのは、わたしが原因で彼がいじめにあっていたからからに違いない。
……ネガティブな思想が次から次へと湧き出てしまう。
それも仕方ないことかもしれない。
何故なら彼の転校の真相が、一ヶ月経った今でも不明のままだから。
転校してから数日は、転校の理由を聞きだそうと職員室へ通い詰めた。
けれど、彼の転校先や引越し後の住所については、
ウチの担任はおろか、校長ですら詳細を知らないという有様だった。
いくらわたしを避けたいからといって、普通そんなことってありえるの?
(あの時、告白の返事を聞いておけば……。振られたとしても、彼が去ることなんてなかったんだ……)
過去の自分の選択に後悔をしてもどうにもならない。人、それをタラレバという。
「あきらめきれないよ……」
机の上につっぷしながら、声が出るか出ないかくらいの小さな呟きをもらす。
彼をあきらめきれない。でも今は彼に会って、あやまりたい、のに……。
「もうっ! 一ヶ月近くもその調子じゃない! アクティブだった頃の委員長はどこへいった?」
「さぁ。もうわたしの中には自責の念しか残ってないよ……」
「委員長! その自責の念で何を手に入れた?」
「(脱)力と迂闊さだ! さすれば勝つ!」
「私は人は殺さない!その無念を殺す!! ……とゆことで、はいこれ」
聖戦士ダンバ○ン(Aが最近ハマっていている模様)ごっこに脊髄反射で付き合いつつ、
手渡されたメモを無気力に眺める。
「何? これは、地図?」
明らかに役に立たない事必至の、イラスト入りの地図だ。
なぜ道案内にスプーのイラストが必要なのですかAさん?
355 :横長 [sage]:2007/06/11(月) 18:03:31.46 ID:cJOaK5.o
「そ。彼の家の地図! といっても転校する前のだけどね」
「なら役に立たないんじゃ?」
「どうかなー。転校したからといって、学校だけ変えて引越していないケースもあるでしょ?」
「…………」
「それに彼の近所の人なら、何も知らされてない先生達よりかは手がかりを持っているはず!」
「……ありがと、A。……でも彼がわたしに会いたくなかったら」
「もーっ! すぐそうやってネガティブモードに入るーっ! 大丈夫。彼は委員長の事嫌ってないって!」
「なんで、そう言い切れるの……?」
「ん~? だって彼、委員長に欲情してたもの」
初めて聞くAの衝撃の告白に、わたしの全身の血が顔に集まったんじゃないかってくらいに火照り出す。
「な、な、な?」
「欲情してたの。無理もないよね。委員長ってばこれだけの胸を持て余してるんだもん」
わたしの背後に回ったAが腕を伸ばし、ガッシィィーンと胸を鷲掴みにする。
「ひゃあ!」
「傍から見てれば一発でわかるよ。本人としては隠していたつもりだったんだろうけどさ」
「そ、そんな……、わたしのこと、を?」
「それにしても、委員長はDカップだったっけ? これだけの質量があれば立派な兵器だよ。……D兵器」
喋っている間もAはわきわきとあたしの胸をもみしだく。
クラスの男子の好奇の視線が限りなく鬱陶しい。
「ちょ……、もう、やめ、……っ」
「冗談はこの辺にしといて……。続きは彼にやってもらいなさい!」
A自作の地図を目前につきつけられる。
確かに真実を知らぬまま日々を送るよりかは、答えを知っておいた方がいいのかも……。
「ありがと。一度行ってみようかな」
「よし、がんばれ。彼に会って、彼の気持ちと白濁液を躰で受け止めてこい!」
「……”白濁液”って何?」
「ちんぽみ○く^^」
……聞いたわたしがバカでした。伏字の位置が適切でないのもAクオリティといったところか。
「放課後の掃除なら肩代わりするから、放課後になったらすぐ行きなよ? 正直ネガティブな委員長は見ていてつらい」
「ごめん……、迷惑かけてるね。わたし」
「だーっ! シュンとするなってば! そんな顔してたら嫌われるよっ。笑顔笑顔!」
Aの激励に自然と笑顔がこぼれる。
それを見てAも満足そうな笑みを返す。
友達の存在はありがたいと、心から思う。Aの想いに応えるためにも頑張らなければ……。
(よし、覚悟決めた!)
会いに行こう。
会って、彼の答えを聞くんだ。
その答えがどういうものであれ、わたしは受け止めなくちゃいけないんだ。
「なら役に立たないんじゃ?」
「どうかなー。転校したからといって、学校だけ変えて引越していないケースもあるでしょ?」
「…………」
「それに彼の近所の人なら、何も知らされてない先生達よりかは手がかりを持っているはず!」
「……ありがと、A。……でも彼がわたしに会いたくなかったら」
「もーっ! すぐそうやってネガティブモードに入るーっ! 大丈夫。彼は委員長の事嫌ってないって!」
「なんで、そう言い切れるの……?」
「ん~? だって彼、委員長に欲情してたもの」
初めて聞くAの衝撃の告白に、わたしの全身の血が顔に集まったんじゃないかってくらいに火照り出す。
「な、な、な?」
「欲情してたの。無理もないよね。委員長ってばこれだけの胸を持て余してるんだもん」
わたしの背後に回ったAが腕を伸ばし、ガッシィィーンと胸を鷲掴みにする。
「ひゃあ!」
「傍から見てれば一発でわかるよ。本人としては隠していたつもりだったんだろうけどさ」
「そ、そんな……、わたしのこと、を?」
「それにしても、委員長はDカップだったっけ? これだけの質量があれば立派な兵器だよ。……D兵器」
喋っている間もAはわきわきとあたしの胸をもみしだく。
クラスの男子の好奇の視線が限りなく鬱陶しい。
「ちょ……、もう、やめ、……っ」
「冗談はこの辺にしといて……。続きは彼にやってもらいなさい!」
A自作の地図を目前につきつけられる。
確かに真実を知らぬまま日々を送るよりかは、答えを知っておいた方がいいのかも……。
「ありがと。一度行ってみようかな」
「よし、がんばれ。彼に会って、彼の気持ちと白濁液を躰で受け止めてこい!」
「……”白濁液”って何?」
「ちんぽみ○く^^」
……聞いたわたしがバカでした。伏字の位置が適切でないのもAクオリティといったところか。
「放課後の掃除なら肩代わりするから、放課後になったらすぐ行きなよ? 正直ネガティブな委員長は見ていてつらい」
「ごめん……、迷惑かけてるね。わたし」
「だーっ! シュンとするなってば! そんな顔してたら嫌われるよっ。笑顔笑顔!」
Aの激励に自然と笑顔がこぼれる。
それを見てAも満足そうな笑みを返す。
友達の存在はありがたいと、心から思う。Aの想いに応えるためにも頑張らなければ……。
(よし、覚悟決めた!)
会いに行こう。
会って、彼の答えを聞くんだ。
その答えがどういうものであれ、わたしは受け止めなくちゃいけないんだ。
いま、会いに行きます
362 :横長 [sage]:2007/06/15(金) 21:02:57.91 ID:O64ldOko
「えーと? もうちょっと先なの、かな……?」
先ほどからAの地図を片手に彼の家を捜しているのだが、
この地図、駅と目的地、それを道路でつないだだけの単純なもので、
目印になりそうな建物のかわりに、中国産ドラえ○ん等のイミフなイラストが所狭しと書き込まれている。
かろうじて住所は記載されていたので、今ではそれを頼りに彼の家を捜している。
(ったく、Aったらマトモな地図を用意しておいてよ! 早く見つけないと陽が落ちちゃう)
初めて訪れる住宅街は、まるでゴーストタウンのように閑散としていて不安を掻き立てる。
それでも彼に近づけるヒントが得られるのならば、そんな不安もなんのそのだ。
(にしても、彼がわたしに欲情……してた……?)
彼のような幼い少年(同級生だけど)でもやはり、男、なのだろう。
あたしに対してそういう感情を持っていたことに、嬉しくもこそばゆくなる。
浮世離れとはいかないまでも、俗っぽさを持たないピュアな少年。
それが、あたしの中の彼のイメージだ。
それゆえ、彼が同年代の男子と同じ思考を持っている事にギャップを感じてしまう。
(……身体で詫びるってのも、悪くないよね。ウヘヘ)
ついつい頭の中で妄想が膨らんでしまう。
全裸に犬のしっぽと犬の耳を付けて四つんばいになり、小動物のような潤んだ瞳でわたしを見上げる彼……。
そんな彼にリード付きの首輪をはめ、下卑た微笑でご満悦なわたし……。
(うぁあ! なーに考えてんだ! しかも『身体で詫び』てないじゃない!)
ふるふると頭を振って、自分の頭の中の妄想をかき消そうとする。
こんなBLでもありえないシチュばかり妄想していれば、彼が逃げるのも当然、か……。
当初の目的を忘れそうになってしまう自分の心を戒めつつ、
自ら作り上げた妄想から逃げるように足取りを速めた。
366 :横長 [sage]:2007/06/17(日) 21:59:18.66 ID:ThA01Q2o
あたしは近所に配置してある地図とAの地図の大雑把っぷりに辟易しつつも、
なんとか住所の番地あたりまで近づいた。
もうすぐだ。彼の家付近で聞き込みをすれば彼に近づくヒントを教えてもらえるはず……。
そう思うと、自然と身体に気力がみなぎってくる。
(念の為、彼の写真を用意しておこうかな。──なんだか刑事ドラマっぽいかもっ)
あたしは財布の中から雑誌の切り抜きを取り出した。
これは彼がアーケードゲームの大会で優勝した時に掲載されたもので、
そこにはニカッと満面の笑みの彼(背後にオタク2人とサラリーマン風情がいてとても邪魔)がモノクロで写っている。
以前に彼に写メ取らせてとお願いしたこともあるが、写し出されるのは大抵照れか困り顔のどちらかで、
今にも彼の『にはは~』と声の聞えてきそうなこの切抜きは、あたしにとって値千金の価値がある。
(でも、照れ顔も困惑顔も可愛いんだけどね~……)
──とてててて
背後で人の走る音を聞き、なんとなしにふり返る。
そこには、こんな住宅街には不似合いなほどの美しい容姿を持った少女が商店街の方へ走って行くところだった。
年は12,3才くらいだろうか?
濃い藍色のダッフルコートに灰色のマフラー、レザーのロングブーツといったいでたちだ。
ダッフルコートはぶかぶかで、サイズが合っていないのか袖から手が出ていない。
でもそれが結果的に少女の愛らしさを増加させている。
雪のように白い肌には、少女に似合わぬ大人びた紅い唇が美しいコントラストを生み出していて、
スラリと肩のあたりまで伸びたストレートヘアには、ツヤによって天使の輪が比喩ではなく実際に浮かび上がっている。
そして、何よりも心惹かれたのは彼女がまとっているのは『彼』だけが持ちえる少年のオーラ。
あたしのショタセンサーが、あろうことかこの彼女に対してバリ3超反応している。
彼の血縁者だろうか? でも彼は一人っ子だったはず……。
もしかして、彼の彼女……?
あたしは居ても立ってもいられず少女を尾行した。
ここまでの道のりは大体覚えたし、聞き込みならば日を改めてすればいい。
今はこの少女こそが、彼に近づくキーになりえるかもしれない……。
あたしは自分の直感を信じ、気付かれないように彼女の後を追いつづけた。
373 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/06/20(水) 23:27:37.91 ID:poWKWtso
「おいすー^^!」
「おうチャンプ、遅かったな!」
「ねぇねぇ、今日って妙にプレイヤー多いよね。……もしかしてドミネイトの新シリーズ入った?」
「……相変わらずチャンプは鋭いでヤンスなぁー」
「ご名答! 待望の新エキスパンション登場っふ! その名も『ダイナミック・ポゼッション』!」
「ダイナミック・ポゼッション?」
「そうっふ、今回追加されたカードは、戦場を≪占有≫することをメインに考えられたカードばかりっふ!」
「ドミネイト(敵部隊を捕獲して自部隊として運用する技)を成功させやすくする変り種カードも増えたぜ!」
「うわぁ、俺好み~! 新カードみせて~!」
「おk。これとかスペックも高くていい感じだぜ ≪仙人医師サジマジバーツ≫。
チャンプなら気に入るんじゃないか?」
「ふむむ……、”これが攻撃するかわりに部隊の背後に張り付き、
その部隊とシンクロして移動/旋回する”……?」
「あきらかにドミネイトを成功させやすくするための能力だが、
足の速い自分の部隊に取り付いて運用とか出来るんじゃないかな?」
「そっか! 取り付く対象は敵部隊でなくてもいいんだ!」
「そういうこと。そのカードあげるから一戦交えないか?」
「ありがと! お礼にサラリーをフルボッコしてあげるね!」
「言ってくれる……。この俺様が黙ってやられるものかよ! ……さぁデッキをセットしな!」
「あ、その前に両替っ!」
折角キメたところを肩透かしにあい、軽くずっこける。
そんな俺の気も知らずにとてててて、と小走りに両替機へ向かうチャンプ。
──やはりチャンプは可愛い。
チャンプがひょんなことから女の子化してから一ヶ月、
謎の美少女ドミネイトプレイヤーの噂は意外すぐるほどのスピードで広まった。
今ではチャンプ目当てに足を運ぶ輩もいるぐらいだ。
俺達の存在が集客に役立っているのだから、店側はプレイ代金を無料にしてもいいくらいだぜ……。
話が逸れた。
つまり、チャンプは可愛い。そして、好意を寄せている男性がかなり、多くなった。
といっても、チャンプの取り巻きが俺やデ ブガリコンビの怪しい面々なせいもあって、
チャンプに話しかけてくるものは皆無に等しい。
つうか、自分自身を怪しい面々と認めてしまったが、チャンプに近づくものがいなくなるのなら、まあよし、だ。
377 :横長 [sage]:2007/06/21(木) 21:35:44.55 ID:ucVFEGUo
チャンプが好かれる理由は外見だけに限ったことではない。
どこぞのお嬢様と言われても信じてしまいそうな、美しいがどことなく近づきがたい外見に、
元々人当たりの良い性格(多少生意気だが)が組み合わったことにより、
ラノベのヒロインにありがちな”快活で天真爛漫な美少女”を地でいく存在になりえたのだ。
現実世界では国宝級に珍しいこの少女に、好意を寄せる男が集まるのは必然なのだろう。
そして何より、チャンプといると、楽しい。
ちゃんと聞いたことは無いがデ ブガリコンビもチャンプを好いていると思う。
無論、俺もチャンプの事が好きだ。友達としてではなく、異性としての好き、だ。
だがこの想いを打ち明ける事は出来ない。
女の子化して一ヶ月、チャンプは女としての自分に不慣れであるはず。
チャンプが変ってしまった今も、以前と変らずに接している俺達の存在は、
チャンプの心の支えになっていると自負している。
そんな最中に想いを打ち明けたところで、今の俺達の関係が崩れ去るのは確定的に明らか。
そんなこと俺は望まないし、チャンプも望んではいないだろう。
それでも自らの気持ちを抑えられなくなる時もある。
まあ、その時は若干セクハラ気味のジョークで乗り切るわけだ^^(SS【能登半島】参照)
チャンプ自身は茶化されてると思っているだろう。
俺も茶化してると思われるぐらいがちょうどいい。
俺の想いを伝えるのは、チャンプが自らを女として認めてから……。
それがいつになるのか……、一年後、いや、十年後になるかもしれない……。
ひょんなことから男に戻る可能性だって捨てきれないのだ。
もし自らを女として認めたとしても、チャンプと俺の年齢差は10才前後の開きがある。
これは正直分が悪い。
ロリコンは世間的にも肩身が狭い。
それでも俺はチャンプの変化を待つ。待ち続ける。これも惚れた弱みというヤツだ……。
「ツラいぜ……」
「どしたの、妙にシリアスな顔しちゃってさ」
上目遣いで顔を覗き込むチャンプ。
彼女の表情を真正面から見れるのは俺達だけの特権だ。
取り巻き連中のくやしそうな顔を想像して、妙に誇らしくなる。
「おぉ戻ったか。……なんでもね。それより対戦しようぜ!」
「のぞむところだっ!」
「フッ、自信だけはあるようだな。この俺様を見くびらないでもらおう! さぁデッキをセッ……!」
「あ、その前に新カードでデッキ作る!」
再度キメたところを肩透かしにあい、再び軽くずっこける。
──やはりチャンプといると楽しい。
381 :横長 [sage]:2007/06/22(金) 19:11:21.86 ID:TybqaL2o
【我が軍の完敗じゃ。しっかりせい!】
画面上には藤甲鎧に身を包んだ少女(年寄り口調)が自軍の惨状を伝えていた。
(毎度の事だが、やはりチャンプは強い……)
基本的に俺のプレイスタイルは攻撃一辺倒だ。
最高のタイミングで最大のダメージを与えるお膳立てとして策略も使いこなす。
だが、チャンプは対戦相手のやりたい事を瞬時に見抜き、
時には全部隊で、時には策略で、的確なインターセプトで無力化してくるのだ。
自惚れているわけではないが、俺はこのゲーセンで五本の指に入る実力がある。
(何たって全国大会三位だぜ!! ……チャンプは一位だから自慢にもならないが)
そんな俺が、気付かないうちにチャンプの掌の上で遊ばされてしまうのだ。
これはゲームの知識はもとより、部隊全体の観察力、猛攻に身をさらしても動じない度胸、
そして何よりセンスが無ければ出来ないプレイスタイルだ。
これはチャンプのような若い柔軟な脳だから成せる技なのだろう。恐るべし。
384 :横長 [sage]:2007/06/23(土) 20:52:21.17 ID:w8KmWE6o
チャンプの方へ目をやると、筐体に肘をつき、トントントンと右人差し指でこめかみを叩いていた。
これは彼女独特の勝利ポーズだ。チャンプの男の頃からのクセで、当時は憎たらしいだけだったが、
少女の姿だと小悪魔的な魅力があり、思わず顔がほころびそうになる。
実際にほころぶと『キモい……』と一蹴されてしまうのだが。
正直かなり傷つくので、俺はキッっと平静を装う。ちんちんキッ!キッ!
(それにしても……、なんなんだ、このギャラリーの数は!)
チャンプの背後には、チャンプのプレイ見たさ、もしくはチャンプ自身見たさに
20人ほどのギャラリーが肉の壁を作っていた。
ギャラリーの視線からしてゲーム展開に興味を示している数の方が少ないようだ。
(大抵の奴はチャンプ目当てかよ……。ん? 珍しいな。女の子も混ざってる……)
ゲーセンに女性が来るのは別段珍しいことではないが、
カードを使用してプレイする、明らかに初心者お断りなこのゲームに興味を持つのは珍しい。
それに加えてドミネイトのプレイ人工が20代のフリーターから30代のサラリーマンあたりが主なので、
その輪に入って女の子がプレイするとなれば相当の勇気が要るだろうし、抵抗もあるはずだ。
となると、この女の子もチャンプ目当てだろうか? どことなく思い詰めた表情でチャンプを見つめている。
年齢は15~16才位。
年の頃にしてみればかなりの長身である。
(大体160、それ以上はあるだろうか。それに較べてチャンプは140前後…… 勝った!)
全体的に我の強さが垣間見える顔立ち。チャンプとはまた違ったベクトルの美少女だ。
もちろんこの少女が可愛いからといって浮気する事はないから安心して欲しい。……誰に言ってんだ俺。
肩あたりまで延びた髪をカチューシャで後ろにまとめて、惜しげもなくオデコを晒している。
ふっくらとした唇は笑うと可愛らしいのだろうが、今は残念ながらへの字口だ。
切れ長の若干つり上がった目に、黒斑フレームの眼鏡が良く似合っている。
それらのパーツが見事に合わさって、彼女を見た人はあるイメージを浮かべるだろう。
彼女はまさに……。
「委員長っ!!」
チャンプ、それ、俺の台詞……
362 :横長 [sage]:2007/06/15(金) 21:02:57.91 ID:O64ldOko
「えーと? もうちょっと先なの、かな……?」
先ほどからAの地図を片手に彼の家を捜しているのだが、
この地図、駅と目的地、それを道路でつないだだけの単純なもので、
目印になりそうな建物のかわりに、中国産ドラえ○ん等のイミフなイラストが所狭しと書き込まれている。
かろうじて住所は記載されていたので、今ではそれを頼りに彼の家を捜している。
(ったく、Aったらマトモな地図を用意しておいてよ! 早く見つけないと陽が落ちちゃう)
初めて訪れる住宅街は、まるでゴーストタウンのように閑散としていて不安を掻き立てる。
それでも彼に近づけるヒントが得られるのならば、そんな不安もなんのそのだ。
(にしても、彼がわたしに欲情……してた……?)
彼のような幼い少年(同級生だけど)でもやはり、男、なのだろう。
あたしに対してそういう感情を持っていたことに、嬉しくもこそばゆくなる。
浮世離れとはいかないまでも、俗っぽさを持たないピュアな少年。
それが、あたしの中の彼のイメージだ。
それゆえ、彼が同年代の男子と同じ思考を持っている事にギャップを感じてしまう。
(……身体で詫びるってのも、悪くないよね。ウヘヘ)
ついつい頭の中で妄想が膨らんでしまう。
全裸に犬のしっぽと犬の耳を付けて四つんばいになり、小動物のような潤んだ瞳でわたしを見上げる彼……。
そんな彼にリード付きの首輪をはめ、下卑た微笑でご満悦なわたし……。
(うぁあ! なーに考えてんだ! しかも『身体で詫び』てないじゃない!)
ふるふると頭を振って、自分の頭の中の妄想をかき消そうとする。
こんなBLでもありえないシチュばかり妄想していれば、彼が逃げるのも当然、か……。
当初の目的を忘れそうになってしまう自分の心を戒めつつ、
自ら作り上げた妄想から逃げるように足取りを速めた。
366 :横長 [sage]:2007/06/17(日) 21:59:18.66 ID:ThA01Q2o
あたしは近所に配置してある地図とAの地図の大雑把っぷりに辟易しつつも、
なんとか住所の番地あたりまで近づいた。
もうすぐだ。彼の家付近で聞き込みをすれば彼に近づくヒントを教えてもらえるはず……。
そう思うと、自然と身体に気力がみなぎってくる。
(念の為、彼の写真を用意しておこうかな。──なんだか刑事ドラマっぽいかもっ)
あたしは財布の中から雑誌の切り抜きを取り出した。
これは彼がアーケードゲームの大会で優勝した時に掲載されたもので、
そこにはニカッと満面の笑みの彼(背後にオタク2人とサラリーマン風情がいてとても邪魔)がモノクロで写っている。
以前に彼に写メ取らせてとお願いしたこともあるが、写し出されるのは大抵照れか困り顔のどちらかで、
今にも彼の『にはは~』と声の聞えてきそうなこの切抜きは、あたしにとって値千金の価値がある。
(でも、照れ顔も困惑顔も可愛いんだけどね~……)
──とてててて
背後で人の走る音を聞き、なんとなしにふり返る。
そこには、こんな住宅街には不似合いなほどの美しい容姿を持った少女が商店街の方へ走って行くところだった。
年は12,3才くらいだろうか?
濃い藍色のダッフルコートに灰色のマフラー、レザーのロングブーツといったいでたちだ。
ダッフルコートはぶかぶかで、サイズが合っていないのか袖から手が出ていない。
でもそれが結果的に少女の愛らしさを増加させている。
雪のように白い肌には、少女に似合わぬ大人びた紅い唇が美しいコントラストを生み出していて、
スラリと肩のあたりまで伸びたストレートヘアには、ツヤによって天使の輪が比喩ではなく実際に浮かび上がっている。
そして、何よりも心惹かれたのは彼女がまとっているのは『彼』だけが持ちえる少年のオーラ。
あたしのショタセンサーが、あろうことかこの彼女に対してバリ3超反応している。
彼の血縁者だろうか? でも彼は一人っ子だったはず……。
もしかして、彼の彼女……?
あたしは居ても立ってもいられず少女を尾行した。
ここまでの道のりは大体覚えたし、聞き込みならば日を改めてすればいい。
今はこの少女こそが、彼に近づくキーになりえるかもしれない……。
あたしは自分の直感を信じ、気付かれないように彼女の後を追いつづけた。
373 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/06/20(水) 23:27:37.91 ID:poWKWtso
「おいすー^^!」
「おうチャンプ、遅かったな!」
「ねぇねぇ、今日って妙にプレイヤー多いよね。……もしかしてドミネイトの新シリーズ入った?」
「……相変わらずチャンプは鋭いでヤンスなぁー」
「ご名答! 待望の新エキスパンション登場っふ! その名も『ダイナミック・ポゼッション』!」
「ダイナミック・ポゼッション?」
「そうっふ、今回追加されたカードは、戦場を≪占有≫することをメインに考えられたカードばかりっふ!」
「ドミネイト(敵部隊を捕獲して自部隊として運用する技)を成功させやすくする変り種カードも増えたぜ!」
「うわぁ、俺好み~! 新カードみせて~!」
「おk。これとかスペックも高くていい感じだぜ ≪仙人医師サジマジバーツ≫。
チャンプなら気に入るんじゃないか?」
「ふむむ……、”これが攻撃するかわりに部隊の背後に張り付き、
その部隊とシンクロして移動/旋回する”……?」
「あきらかにドミネイトを成功させやすくするための能力だが、
足の速い自分の部隊に取り付いて運用とか出来るんじゃないかな?」
「そっか! 取り付く対象は敵部隊でなくてもいいんだ!」
「そういうこと。そのカードあげるから一戦交えないか?」
「ありがと! お礼にサラリーをフルボッコしてあげるね!」
「言ってくれる……。この俺様が黙ってやられるものかよ! ……さぁデッキをセットしな!」
「あ、その前に両替っ!」
折角キメたところを肩透かしにあい、軽くずっこける。
そんな俺の気も知らずにとてててて、と小走りに両替機へ向かうチャンプ。
──やはりチャンプは可愛い。
チャンプがひょんなことから女の子化してから一ヶ月、
謎の美少女ドミネイトプレイヤーの噂は意外すぐるほどのスピードで広まった。
今ではチャンプ目当てに足を運ぶ輩もいるぐらいだ。
俺達の存在が集客に役立っているのだから、店側はプレイ代金を無料にしてもいいくらいだぜ……。
話が逸れた。
つまり、チャンプは可愛い。そして、好意を寄せている男性がかなり、多くなった。
といっても、チャンプの取り巻きが俺やデ ブガリコンビの怪しい面々なせいもあって、
チャンプに話しかけてくるものは皆無に等しい。
つうか、自分自身を怪しい面々と認めてしまったが、チャンプに近づくものがいなくなるのなら、まあよし、だ。
377 :横長 [sage]:2007/06/21(木) 21:35:44.55 ID:ucVFEGUo
チャンプが好かれる理由は外見だけに限ったことではない。
どこぞのお嬢様と言われても信じてしまいそうな、美しいがどことなく近づきがたい外見に、
元々人当たりの良い性格(多少生意気だが)が組み合わったことにより、
ラノベのヒロインにありがちな”快活で天真爛漫な美少女”を地でいく存在になりえたのだ。
現実世界では国宝級に珍しいこの少女に、好意を寄せる男が集まるのは必然なのだろう。
そして何より、チャンプといると、楽しい。
ちゃんと聞いたことは無いがデ ブガリコンビもチャンプを好いていると思う。
無論、俺もチャンプの事が好きだ。友達としてではなく、異性としての好き、だ。
だがこの想いを打ち明ける事は出来ない。
女の子化して一ヶ月、チャンプは女としての自分に不慣れであるはず。
チャンプが変ってしまった今も、以前と変らずに接している俺達の存在は、
チャンプの心の支えになっていると自負している。
そんな最中に想いを打ち明けたところで、今の俺達の関係が崩れ去るのは確定的に明らか。
そんなこと俺は望まないし、チャンプも望んではいないだろう。
それでも自らの気持ちを抑えられなくなる時もある。
まあ、その時は若干セクハラ気味のジョークで乗り切るわけだ^^(SS【能登半島】参照)
チャンプ自身は茶化されてると思っているだろう。
俺も茶化してると思われるぐらいがちょうどいい。
俺の想いを伝えるのは、チャンプが自らを女として認めてから……。
それがいつになるのか……、一年後、いや、十年後になるかもしれない……。
ひょんなことから男に戻る可能性だって捨てきれないのだ。
もし自らを女として認めたとしても、チャンプと俺の年齢差は10才前後の開きがある。
これは正直分が悪い。
ロリコンは世間的にも肩身が狭い。
それでも俺はチャンプの変化を待つ。待ち続ける。これも惚れた弱みというヤツだ……。
「ツラいぜ……」
「どしたの、妙にシリアスな顔しちゃってさ」
上目遣いで顔を覗き込むチャンプ。
彼女の表情を真正面から見れるのは俺達だけの特権だ。
取り巻き連中のくやしそうな顔を想像して、妙に誇らしくなる。
「おぉ戻ったか。……なんでもね。それより対戦しようぜ!」
「のぞむところだっ!」
「フッ、自信だけはあるようだな。この俺様を見くびらないでもらおう! さぁデッキをセッ……!」
「あ、その前に新カードでデッキ作る!」
再度キメたところを肩透かしにあい、再び軽くずっこける。
──やはりチャンプといると楽しい。
381 :横長 [sage]:2007/06/22(金) 19:11:21.86 ID:TybqaL2o
【我が軍の完敗じゃ。しっかりせい!】
画面上には藤甲鎧に身を包んだ少女(年寄り口調)が自軍の惨状を伝えていた。
(毎度の事だが、やはりチャンプは強い……)
基本的に俺のプレイスタイルは攻撃一辺倒だ。
最高のタイミングで最大のダメージを与えるお膳立てとして策略も使いこなす。
だが、チャンプは対戦相手のやりたい事を瞬時に見抜き、
時には全部隊で、時には策略で、的確なインターセプトで無力化してくるのだ。
自惚れているわけではないが、俺はこのゲーセンで五本の指に入る実力がある。
(何たって全国大会三位だぜ!! ……チャンプは一位だから自慢にもならないが)
そんな俺が、気付かないうちにチャンプの掌の上で遊ばされてしまうのだ。
これはゲームの知識はもとより、部隊全体の観察力、猛攻に身をさらしても動じない度胸、
そして何よりセンスが無ければ出来ないプレイスタイルだ。
これはチャンプのような若い柔軟な脳だから成せる技なのだろう。恐るべし。
384 :横長 [sage]:2007/06/23(土) 20:52:21.17 ID:w8KmWE6o
チャンプの方へ目をやると、筐体に肘をつき、トントントンと右人差し指でこめかみを叩いていた。
これは彼女独特の勝利ポーズだ。チャンプの男の頃からのクセで、当時は憎たらしいだけだったが、
少女の姿だと小悪魔的な魅力があり、思わず顔がほころびそうになる。
実際にほころぶと『キモい……』と一蹴されてしまうのだが。
正直かなり傷つくので、俺はキッっと平静を装う。ちんちんキッ!キッ!
(それにしても……、なんなんだ、このギャラリーの数は!)
チャンプの背後には、チャンプのプレイ見たさ、もしくはチャンプ自身見たさに
20人ほどのギャラリーが肉の壁を作っていた。
ギャラリーの視線からしてゲーム展開に興味を示している数の方が少ないようだ。
(大抵の奴はチャンプ目当てかよ……。ん? 珍しいな。女の子も混ざってる……)
ゲーセンに女性が来るのは別段珍しいことではないが、
カードを使用してプレイする、明らかに初心者お断りなこのゲームに興味を持つのは珍しい。
それに加えてドミネイトのプレイ人工が20代のフリーターから30代のサラリーマンあたりが主なので、
その輪に入って女の子がプレイするとなれば相当の勇気が要るだろうし、抵抗もあるはずだ。
となると、この女の子もチャンプ目当てだろうか? どことなく思い詰めた表情でチャンプを見つめている。
年齢は15~16才位。
年の頃にしてみればかなりの長身である。
(大体160、それ以上はあるだろうか。それに較べてチャンプは140前後…… 勝った!)
全体的に我の強さが垣間見える顔立ち。チャンプとはまた違ったベクトルの美少女だ。
もちろんこの少女が可愛いからといって浮気する事はないから安心して欲しい。……誰に言ってんだ俺。
肩あたりまで延びた髪をカチューシャで後ろにまとめて、惜しげもなくオデコを晒している。
ふっくらとした唇は笑うと可愛らしいのだろうが、今は残念ながらへの字口だ。
切れ長の若干つり上がった目に、黒斑フレームの眼鏡が良く似合っている。
それらのパーツが見事に合わさって、彼女を見た人はあるイメージを浮かべるだろう。
彼女はまさに……。
「委員長っ!!」
チャンプ、それ、俺の台詞……