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「気を付けて!!奴は危険な魔法を使ってくるわ!!」
キノコ王国の王女、ピーチが警告するとともに、ハイラルの剣士、リンクは剣を上段に構える。

「誰が来ようと同じこと……!?」
2人が対峙する敵、バツガルフが魔法の詠唱を始めた瞬間、リンクは光の剣をダーツのごとく投げ飛ばした。
敵は魔法の詠唱をキャンセルし、光線の様な投擲は当たることは無かった。

(今のは危なかった……しかし、盾のみならず剣まで捨てるとは……そういうことか。)
先程炎魔法からピーチを守るのに、リンクは盾を投げた。
そして剣も投げた以上、敵は武具が無くなったことに安堵し、雷魔法の詠唱に入る。
一方で得物を全て投げたリンクは、猛然とダッシュを始める。


走った方向は、バツガルフではなく、奇狼丸が倒れている場所。
すなわち、リンクは最初から死者の正宗を用いて戦おうとしていた。

「ふはははは!どうするかなどお見通しだ!!」
しかし、移動先を読んでいたバツガルフは、その場所に雷を落とす。


「!!」
顔を押さえ、新たな黒こげの死体が出来ることを恐れるピーチ。
だが、空から降る金の槍は突然空中で止まり、地上にいた者に当たることは無かった。


「何!?」
「お見通しなのはお前の攻撃だ。」
ハイラルの剣士は、バケネズミの将軍が持っていた刀を手で掴むのではなく、足で蹴とばした。
宙を舞う正宗は、即興の避雷針になり、命を刈り取る雷を食い止める。


リンクのアクションは、これで終わりではない。
雷を止めたことを確認する間もなく、石畳の床を蹴り空高くジャンプ。
くるくると回転する剣の柄を、手を傷つけることなく器用につかみ取り、そのまま攻撃に転じた。


「獲るぜ、その首。」
空中で駅の柱を蹴とばし、そのまま稲妻と一体化したかのように、バツガルフの首へと斬りかかる。

(確かに早いが、距離はある。また時間さえ止められれば……)

「なっ!?」
正宗を拾う前と、拾った後。
聖剣にかけられた速度向上の魔法により、飛ぶ前と飛んでからの速さが異なっていた。



「くっ……バツバリアン!!」
「でぇやああああああああ!!」
正宗にかけられた所持者の素早さを上げる魔力も相まって、回転斬りで二体のバツバリアンが瞬時に斬り裂かれ、バツガルフの腹にも斬撃が入る。
とはいえ、術者の守りを固めるバツバリアンの助力により、リンクの十八番によるダメージは幾分か抑えられた。


敵の攻撃のタイミングをずらされ、さしものバツガルフも驚いた。
ストップはもう詠唱に間に合わないと判断し、防御で手を打つことにした。
バツガルフが黄緑色のファンネルのような姿をした機械生命体を操る方法は2通りある。
1つは詠唱時間を要するが、四体同時に召喚させる術。
もう1つは二体までしか呼べないが、ほぼノータイムで呼び出せる術。

攻撃の無効化を狙うか、ダメージカットで妥協するかで一瞬悩んだ末、後者を取ったが、その賭けは成功した。


それでも、戦いの風向きはバツガルフにとって向かい風なのは変わらない。
遠くの敵を倒すのは容易だが、一たび懐に潜り込まれると一気に不利になるのが魔法の欠点だ。

英雄の杖を翳し、詠唱を続けるが、続けざまにリンクは強引に間合いを詰め、正眼の構えから、様々な色のランプが点滅する敵の頭部目掛けて打ち込もうとする。
特別な力を持っている相手は、主に光っている、すなわちエネルギーのソースとなっている場所が往々にして弱点だということを、過去に戦ったマグドフレイモスやナルドブレアから学んでいた。


「これでトドメだ!!」
「くっ……テキヨケ!!」
あと少しで正宗が金属の頭を突き破ったはずだが、リンクの手には刺した時の様な感触が伝わってこなかった
敵の動きを止めるのではなく、敵から離れるための回比率を上げる魔法で、危機を脱するバツガルフ。


(ならば、奴より先に……!!)
接近戦は不利だということは僅かな間に、嫌と言うほど伝わったため、バツガルフはターゲットを変える。

「ファイアーウェーブ!!」
青い炎の波が、リンクに迫りくる。
再度リンクは体を捻り、バツバリアンの群れを一掃した時に似た構えを取る。
回転斬りで斬りはらってやろうと構えるが、その瞬間炎の波はリンクを避けたかのように二つに分かれた。
それは傍から見ればリンクが炎と言う名の海を割るモーセのよう。
だが、炎を割ったのはその中心にいる人物ではなく、魔法の詠唱者だ。


不自然な動きをした炎を訝しむリンクは、背後に目を配る。
「危ない!!」

すぐに熱波は自分ではなく、背後のピーチを狙っていたことに気付き、敵では無く炎に斬りかかる。
高速回転により起こされた大風が炎を吹き飛ばし、姫は事なきを得る。


「敵に背を見せるとは愚かな!!」
しかし、これさえバツガルフの作戦通り。
敵2人が近づいた所を、まとめて雷で屠ろうという算段だ。


「私が足手まといだと思わないで!!」
しかし奇狼丸に戦う決意を貰った王女も、負けてはいない。
先程リンクがやったことを真似したかのように、上空にフライパンを投げる。
飛んだ金属の塊は、正宗と同じように疑似避雷針を作った。
先程バツガルフの顔面を滅多打ちにした時に一部が欠けたが、その際に鋭利な部分が生まれたことが功を奏した。


「おのれ……余計な知恵を付けおって……。」
1度ならず2度までも、自慢の魔法を、しかも2度目は人質か弾除けぐらいにしか思ってない相手に無効化される屈辱を覚える。

「あなたは逃げてください。」
「……」
コクリと首を縦に振り、フライパンを拾うと、傷ついた片足を引きずりながらも駅の出口へと足を進めるピーチ。


自分が戦えないのは癪だったが、それ以上に意地にかまけて死んでしまえば、奇狼丸の遺した言葉も無駄になる。
加えて、戦っているのは長剣を振り回す戦法を得意とするリンクと、広範囲にわたる魔法を得意とするバツガルフである以上、フライパン一つで迂闊に戦うことが難しい。
少しでも何か役立つことが無いか、辺りを窺っていた結果、そういった結論を出した。
不服ながらも、忠告に従い戦場から離れようとする。


「逃がすか!!」
再度杖にエネルギーを貯め終えたバツガルフの、冷凍光線が傷ついてない方のピーチの足を狙う。


―――二の奥義 盾アタック
しかし、地面に落ちていた盾を拾ったリンクのシールドバッシュが、光線を跳ね返す。

「お前の相手は俺だ。」
「小癪な……。」


既に現れていたバツバリアンの作りし障壁によって、ビームを反射されて自爆などということは無かったが、その間にピーチは見えない場所に行ってしまった。



「緑の勇者よ!!どうか無事で!!」
「あなたこそ怪我の無いように!!」

所々に正三角形のマークが象られた石柱を中心に作られた駅に、命を感じさせる若い男女の声が響き渡る。

それが、彼らが生きた上で交わした、最後の会話だった。
誰が何と言おうと、それだけは事実だ。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


「あの女を逃がしてよかったのか?盾ぐらいに使えたかもしれないぞ?」
「生憎だが俺の盾はこれ一つで十分でな。アンタのように3つも4つも出さなきゃいけない程弱腰じゃない。」
敵の挑発を、涼しい皮肉で受け流す。


「そうか。ならばわたしもオマエだけに集中できるな。」
ガラス膜に覆われた瞳が、ギラリと輝く。
バツガルフは杖をリンクに向け、詠唱を再開する。

「受けるがよい!!メガサンダー!!」
「当たるか!!」
今度は光の剣が落ちている場所と離れていたが、避雷針に頼らず、雷の槍が降り注ぐ場所を躱していく。
どの辺りに雷が落ちて来るかは、何度も魔法を目の当たりにしてきたため、見切ることが出来た。
横っ飛びやバック宙を繰り返し、連続して飛んできても当たることは無い。
だが、避ける方向に足を進めると、バツガルフに近づくことは出来ない。

「ならば行け!!バツバリアン共よ!!」
リンクがどう攻めるべきか悩んでいると、バツガルフの命令と共に、周囲を飛び回っていた黄緑の生命体が光り出し、リンク目掛けて真っすぐに飛んでくる。

「ちっ、防御だけじゃないのか……。」
思ったより威力があるその体当たりを、どうにか盾でガードする。
飛んで来た黄緑の生き物は結界を形成する定位置に戻るが、他の3体が矢継ぎ早に飛んでくる。

「そいつらばかりに構っている場合か!!」
剣と盾で捌ききったと思ったところで、バツガルフの杖から燃え滾る青龍が襲い来る。
「まだだ!!」
同じように回転斬りを放ち、炎を吹き飛ばす。


しかし再度定位置に戻ったバツバリアンが光を帯び、再度リンクに襲い来る。
(くそ……コイツら、俺を近づかせないつもりか……。)
剣を振り回し、虫を払うかのように身を守るが、防戦一方だ。

「どうした?オマエの剣は盾替わりでしかないのか?」
攻撃が終わった所で、杖から撃たれたのは冷凍光線。
今度は氷の耐性を持つトルナードの盾で受け止めるが、弾き返す程の余裕は無かった


ピーチを守るためとはいえ、距離を離したことが悪手だったと実感する。
取り巻きが攻撃している間に詠唱を始め、その攻撃が終わった直後に魔法を使い、終わればまたしても取り巻きに攻撃させる。
絶え間ない波状攻撃は、リンクに距離を詰めることも、反撃することも許さない。
魔法の詠唱の被害を受け、ボロボロになった壁や柱の欠片を蹴とばしても、障壁に阻まれてしまう。
どうにか光の剣が落ちている場所に近づけたため、再び雷攻撃を突破口にしようと目論んでいたが、相手もそれを警戒してか炎と氷のみで攻めてきた。


「ふはははは!!所詮はその程度か!!」
(くそ……このままじゃ俺も……。)


電気を纏って襲い来る小型生物の攻撃をガードしきれず、次第に傷が増えていく。
最初は勢いに任せて優勢だったのが一転、徐々に不利になっていく状況を噛みしめられた。


さらに、まずいのはこれだけではない。
駅の外側から、見知らぬ音が聞こえて来た。
即ちピーチが、何者かに襲われている可能性があるのだ。
敵の攻撃と背後の見知らぬ存在がリンクの焦りを生む。


「いい加減飽きたな。これで楽にしてやろう!!」
(来た!!)
バツガルフが杖を天に向け、雷魔法の詠唱を始める。
本来なら現れないはずの場所に黒雲が集まる。
それを千載一遇のチャンスと見抜いたリンクは、地面に転がっていた光の剣を黒雲目掛けて蹴とばした。


このまま一気に敵に突っ込み、回転斬りでバツバリアンを纏めて斬り裂き、それから後敵が魔法の詠唱をする前に一気に串刺しにする。
だが、そうしたリンクの目論見は、予想外な形で崩壊した。

「しまった!!」
蹴とばしたリンクの剣が、ガチンという音を立てて、明後日の方向に飛んで行った。

「甘い!!甘いぞ!!」
「しまった!!」

飛来するバツバリアンに空中で弾き飛ばされ、頼りの避雷針になるはずの光の剣も形無しだ。


魔法詠唱中に、4つ飛ばしてきたはずのバツバリアンが、一度だけ3つだけしか飛んでこなかった。
バツガルフは雷の詠唱をした瞬間、リンクが同じように剣を蹴とばして来るだろうと予想し、1つだけ飛ばすタイミングをずらしたのだ。

「わたしが間違いを犯したとでも思ったか!メガサンダー!!」
油断して、躱す暇もなく雷が襲い来る。

「ぐわああああああ!!」
白金のごとく輝く雷光の糸が、リンクに絡みつく。
炎や氷ではなく、受けたことが無い雷のダメージは、致命的だった。
トルナードの盾を上空に掲げ、僅かでもダメージを押さえようとするが、それだけでは即死を防ぐのが精いっぱいだ。
触覚のみならず視覚や聴覚までもが責めつくされる。

しかも、食らい慣れてない電撃により動悸が乱れ、持っていた剣を落としてしまった。
そのまま盾だけ持って、両脚も言うことを聞かず、どさりと崩れ落ちるリンク。


服のあちこちから煙を出し、立ち上がろうとするも、電撃の痺れが神経を引っ掻き回し、上手く立てない。
視界はなおも真っ白で、平衡感覚もおぼつかない。
既に微量な電撃を、バツバリアンからの攻撃で何度も食らっていたこともあり、無理に動こうとするとそのダメージまでぶり返す。


「ふん。他愛もないな。いつぞやの赤いヒゲほどでもない。」
バツガルフのリンクを見下ろしながら吐いたセリフも、雷魔法は聴覚にまで影響を及ぼしていたため、何を言っていたのか判然としなかった。


(まだ……俺は………。)
「そう焦ることもない。今楽にしてやろう。」

ゆっくりとリンクに近づいた後、杖を掲げた。


最終更新:2021年04月28日 16:40