さて発達を固有の問題として考察するのは、心理学の課題であろう。では教育学にとって、発達や発達段階の問題はどのような意味をもっているのだろうか。
端的に言えばそれは学校形態および接続の問題に関わっている。
多くの
小学校は6歳か7歳に始まる。これは、ピアジェ等の発達段階を研究した成果を見ればわかるように、6,7歳で発達上の明確な変化が多く認められるからである。世界的にみて、初等教育の開始を6、7歳におくことはあまり例外がない。
義務教育をより早く開始する場合もあるが、最初は幼稚園教育を行い、伝統的な初等教育はやはり6、7歳まで待つのが普通である。
しかし、中等教育の開始については各国でばらつきがある。
多くの国では初等教育が6年間であり、その後中等教育が開始されるが、ドイツは小学校が4年制であり、またデンマークでは日本の小学校と中学校がひとつになった「国民学校」が義務教育学校となっており区分しない。
かつて中等学校はエリート階層のための教育機関であった。そのような時期の中等学校は小学校を終えてから進学するものではなく、もともと中等学校の系統として学校が始まった。そして大衆教育機関であった小学校では、卒業後ももう少し長く勉強したいという要求と、ある程度レベルの高い労働者を求めた産業界の要請もあって、初等教育期間が延びる時期があった。戦前の日本には「高等小学校」という2年制の学校があった。この小学校後の教育ともともとの中等教育の期間とをどのように融合させるかは、その国の文化や経済事情で異なっていたのである。したがって、中等学校の区切りは必ずしも「発達」を第一の要因としていたわけではない。したがって、社会経済的な状況が変化すると中等学校の区切りが変わる傾向がある。
最近わが国でも、小学校と中学校の区切りを自治体が柔軟に配慮して、これまでの6-3という区切りを変えてもいいような制度改編が提案されている。2004年8月10日に出された
文部科学省の「「義務教育の改革案」について」と題する文書は義務教育制度について次のように書いている。
1 義務教育制度の弾力化
国民に共通に必要とされる確かな学力、豊かな心、健やかな体を養うという義務教育の役割を再確認し、学校教育法や学習指導要領を見直し、義務教育の9年間で子どもたちが身に付けるべき資質・能力の最終の到達目標を明確に設定する。
義務教育の制度を弾力化し、地方が多様な教育を主体的に実施できるようにする。6-3制の小・中学校の区分についても、地方の実情に応じ、例えば、6-3以外の区分を可能としたり、小中一貫教育の導入を可能とするなど、柔軟な制度にする。*14)
20年ほど前、日本教職員組合が学校制度の全体的な改編プランを作成したことがあるが、そのとき小学校と中学校は4-4というプランであった。
10歳から12歳くらいに第二反抗期という自立のための時期があるが、従来の小学校と中学校の区分では、その時期に区切りを置いている。しかし、どちらかというと、現在の学校の区切りは成長の加速現象以前の区切りであるから、第二反抗期は中学生として迎えるという制度であった。それに対して、シュタイナー学校は12年間の一貫教育であるが、区切りは8年間と4年間になっている。この場合明確に反抗期を初等の時期に迎え、反抗の対象となる教員として8年間の継続的な担任がおり、その担任は自立への踏み台となることが、初等8年間の最後の役割となっている。
このように、自立の契機をもって初等と中等で区切りを置くが、必ずしもこうした発達段階との関連を重視しない考えもある。初等と中等の学習内容の重なりなどの非効率的な編成を改め、国際競争力をつけるなどの経済的な要請によって、学校の区切りを考える場合もある。
最終更新:2008年08月19日 20:03