白髪の少年は、一〇〇〇メートル以上ある距離を一秒強で詰める。
そこには旅客機や運搬車が巨大な黒煙を上げて炎上し、ターミナルの残骸などが散乱している光景が広がっていた。
所々で警報が鳴り響き、消火作業をしている大型スプリンクラーが作動しているが、そんな作業でこの火災が止められないことは目に見えていた。
そこには旅客機や運搬車が巨大な黒煙を上げて炎上し、ターミナルの残骸などが散乱している光景が広がっていた。
所々で警報が鳴り響き、消火作業をしている大型スプリンクラーが作動しているが、そんな作業でこの火災が止められないことは目に見えていた。
白髪の少年は周囲を見回す。
これだけの騒ぎになっていながら、誰一人としていない。
(避難が完了したにしては早すぎる。ってことは予め、これは予想されてたってことか。それに今回の大規模な避難が秘密裏に行えたってことは統括理事会クラスの大物が承認してたことになる。アレイスターの関与は間違いねェ……チッ!学園都市ってのは、どこまでも食えねェ連中がいるもンだぜ)
はき捨てるように、少年は舌打ちをした。
ブツッ…と、突然、周囲のスピーカーから回線が焼き切れたような音が聞こえると、甲高い警報の音が止み、少年の周辺に覆っていた黒煙は一瞬で消え去った。
(うるセェと『思った』らスピーカーが故障して、前が見えねェって『思った』ら煙が消し飛ンだ上に、スプリンクラーまでオジャンかよ。…ったく、強すぎる力ってのも考えもンだな)
しかし、遠い場所では警報の音は鳴り響き、砂塵と黒煙が混じり合った巨大な煙は依然として空に昇っている。黒煙が消し飛んでいる地点を身長と視界から捉えられる遠近感覚、傾斜角を見積もり、自分の領域(テリトリー)の境界線を割り出した。
(煙の変化から見て、効果範囲はざっと半径二〇〇メートルってトコか。この力はまだまだ発展途上の上に不安定だな。今回はちッとばかり範囲が狭いらしい。――――が)
白髪の少年は宙に浮いたまま、ある方向に目をやる。
まるで船を引きずったように、アスファルトや地面が抉り捉れ、ターミナルから遠く離れた第二滑走路まで伸びていた。その終着点に、無数の鋭い羽根で出来た奇妙な漆黒のオブジェがある。
その目標物との距離は四〇〇メートル弱。
『竜王の翼(ドラゴンウイング)』から放たれた一部が変質した羽根。
スライムのように粘着性の高い液体の時もあれば、鉄板をバターのように切り裂く硬度を持つ時もある。鋭い羽根は後者の性質を持っていた。『何か』に無数の羽根が突き刺さり、巨大な黒いサボテンのような印象を与える。
もし、その『何か』が人間であった場合、肉や骨は跡形も無く切り刻まれ、おびただしい血の跡と僅かな肉片しか残っていないだろう。
これだけの騒ぎになっていながら、誰一人としていない。
(避難が完了したにしては早すぎる。ってことは予め、これは予想されてたってことか。それに今回の大規模な避難が秘密裏に行えたってことは統括理事会クラスの大物が承認してたことになる。アレイスターの関与は間違いねェ……チッ!学園都市ってのは、どこまでも食えねェ連中がいるもンだぜ)
はき捨てるように、少年は舌打ちをした。
ブツッ…と、突然、周囲のスピーカーから回線が焼き切れたような音が聞こえると、甲高い警報の音が止み、少年の周辺に覆っていた黒煙は一瞬で消え去った。
(うるセェと『思った』らスピーカーが故障して、前が見えねェって『思った』ら煙が消し飛ンだ上に、スプリンクラーまでオジャンかよ。…ったく、強すぎる力ってのも考えもンだな)
しかし、遠い場所では警報の音は鳴り響き、砂塵と黒煙が混じり合った巨大な煙は依然として空に昇っている。黒煙が消し飛んでいる地点を身長と視界から捉えられる遠近感覚、傾斜角を見積もり、自分の領域(テリトリー)の境界線を割り出した。
(煙の変化から見て、効果範囲はざっと半径二〇〇メートルってトコか。この力はまだまだ発展途上の上に不安定だな。今回はちッとばかり範囲が狭いらしい。――――が)
白髪の少年は宙に浮いたまま、ある方向に目をやる。
まるで船を引きずったように、アスファルトや地面が抉り捉れ、ターミナルから遠く離れた第二滑走路まで伸びていた。その終着点に、無数の鋭い羽根で出来た奇妙な漆黒のオブジェがある。
その目標物との距離は四〇〇メートル弱。
『竜王の翼(ドラゴンウイング)』から放たれた一部が変質した羽根。
スライムのように粘着性の高い液体の時もあれば、鉄板をバターのように切り裂く硬度を持つ時もある。鋭い羽根は後者の性質を持っていた。『何か』に無数の羽根が突き刺さり、巨大な黒いサボテンのような印象を与える。
もし、その『何か』が人間であった場合、肉や骨は跡形も無く切り刻まれ、おびただしい血の跡と僅かな肉片しか残っていないだろう。
しかし、その『何か』が『魔神』であった場合―――――――――――――――――――
パリン!というガラスが割れたような音と共に、無数の黒い羽根は粉々に砕け散る。その粒はカットされたダイヤモンドのように煌びやかな光沢を放ちながら崩れ落ちていった。
そして、『魔神』の姿を捉える前に、
そして、『魔神』の姿を捉える前に、
『魔王』は動く。
「潰せ」
少年の周囲にある旅客機二機と、一五台の運搬車が浮かび上がった。
「潰せ」
少年の周囲にある旅客機二機と、一五台の運搬車が浮かび上がった。
さらに、半径二〇〇メートル以内にある残骸全てが、地球の自転と同じ、時速一六六六キロの速度で『魔神』に襲いかかった。
グシャアア!!
突如、投下された爆弾が地面に突き刺さり、爆発したような黒煙が舞い上がる。
二〇トンを超す旅客機のような鋼鉄の塊でさえ、破片をまき散らしながら、バスケットボールのように地面をバウンドし、二列の滑走路を越えて飛行機整備用の格納庫に直撃した。
白髪の少年の周囲には、何も無かった。
下には、地下通路がむき出しになった地面のみ。塵一つ、彼の周りには存在しない。機械が溢れる飛行場で、その一部だけ、金属類の物体が皆無だった。
一〇メートルを超す黒の翼を羽ばたかせながら、少年は接近する。
ものの数秒で、立ち上る黒煙は、『魔王』の領域(テリトリー)に入った。
突如、投下された爆弾が地面に突き刺さり、爆発したような黒煙が舞い上がる。
二〇トンを超す旅客機のような鋼鉄の塊でさえ、破片をまき散らしながら、バスケットボールのように地面をバウンドし、二列の滑走路を越えて飛行機整備用の格納庫に直撃した。
白髪の少年の周囲には、何も無かった。
下には、地下通路がむき出しになった地面のみ。塵一つ、彼の周りには存在しない。機械が溢れる飛行場で、その一部だけ、金属類の物体が皆無だった。
一〇メートルを超す黒の翼を羽ばたかせながら、少年は接近する。
ものの数秒で、立ち上る黒煙は、『魔王』の領域(テリトリー)に入った。
「邪魔だ」
轟!!と、土砂の入り混じった黒煙が吹き飛ばされ、その周囲に散乱していた何かの部品やガラス、タイヤや鉄筋などが紙クズのように『魔王』の前方に飛んでいった。
音速を超えた破片の雨は、飛行場から十数キロ離れた学園都市を覆う城壁に激突した。
残ったのは、直径四〇メートルを超すクレーターのように、ポッカリと穴が開いた土の地面。
轟!!と、土砂の入り混じった黒煙が吹き飛ばされ、その周囲に散乱していた何かの部品やガラス、タイヤや鉄筋などが紙クズのように『魔王』の前方に飛んでいった。
音速を超えた破片の雨は、飛行場から十数キロ離れた学園都市を覆う城壁に激突した。
残ったのは、直径四〇メートルを超すクレーターのように、ポッカリと穴が開いた土の地面。
その中心に『魔神』はいた。
無傷。
服に塵一つさえ付いていない。
その光景を見降ろしながら、白髪の少年は息を呑む。
服に塵一つさえ付いていない。
その光景を見降ろしながら、白髪の少年は息を呑む。
「超能力で『力』を手に入れて以来、俺は周りに随分とバケモノ扱いされてきたが…」
赤い眼光が、『魔神』に殺意を込めた視線を送る。
赤い眼光が、『魔神』に殺意を込めた視線を送る。
キイイイイイィ!!と、直後、耳を劈くような一際高い音が鳴り始めた。
周囲には、再び砂埃が舞い上がり、『魔神』の正面には、まるで水で出来た壁があるかのような波紋を帯び、眩い光が生じる。
『魔王』の『願望』が実現する世界で、『殺せ』という『法則(ルール)』が適応されない。
周囲には、再び砂埃が舞い上がり、『魔神』の正面には、まるで水で出来た壁があるかのような波紋を帯び、眩い光が生じる。
『魔王』の『願望』が実現する世界で、『殺せ』という『法則(ルール)』が適応されない。
「俺がバケモノなら、テメェは一体何なンだよおおおおおおおおおおおおオオオ!!!」
白髪の少年は、心に溢れ出す『殺意』と、『竜王の翼(ドラゴンウイング)』を『魔神』に向けた。
空間に揺らぐ波紋はさらなる拡大を見せ、響き渡る音と目が眩むような光は激しさを増した。そして、その波紋の中心に、二対の『竜王の翼(ドラゴンウイング)』は激突した。
しかし、ドロドロとした黒い何かは、まるで透明なガラスに泥水が当たるかように弾かれていく。
『竜王の翼(ドラゴンウイング)』に呑み込まれた物体は、数百万Gという力で圧縮されてしまう。翼が黒く見えるのは、当たった光が全て翼の内部に取り込まれてしまうからである。ブラックホールのような吸引性を持っている翼を弾くこと自体、異常なのだ。
空間に揺らぐ波紋はさらなる拡大を見せ、響き渡る音と目が眩むような光は激しさを増した。そして、その波紋の中心に、二対の『竜王の翼(ドラゴンウイング)』は激突した。
しかし、ドロドロとした黒い何かは、まるで透明なガラスに泥水が当たるかように弾かれていく。
『竜王の翼(ドラゴンウイング)』に呑み込まれた物体は、数百万Gという力で圧縮されてしまう。翼が黒く見えるのは、当たった光が全て翼の内部に取り込まれてしまうからである。ブラックホールのような吸引性を持っている翼を弾くこと自体、異常なのだ。
鋭く尖った赤い視線は、眩い光の中、『魔神』の深淵な黒い瞳と交差した。
辺りには鼓膜が破けそうなほどの高音が響き渡っているにも関わらず、『魔王』は、『魔神』の言葉がはっきりと聞き取れた。
辺りには鼓膜が破けそうなほどの高音が響き渡っているにも関わらず、『魔王』は、『魔神』の言葉がはっきりと聞き取れた。
「弱い。弱すぎる。興ざめだ」
失望の色を露わにした声を、『魔神』は紡ぐ。
その言葉に、白髪の少年の喉が、砂漠のように干上がった。
「……………………………………………………………………………………………ッ!!」
この恐怖を、彼は知っている。
かつて、自分を最強から引きずり下ろした少年の姿を、
『垣間見た』。
その言葉に、白髪の少年の喉が、砂漠のように干上がった。
「……………………………………………………………………………………………ッ!!」
この恐怖を、彼は知っている。
かつて、自分を最強から引きずり下ろした少年の姿を、
『垣間見た』。
瞬間。
白髪の少年の顔面に、『見えない』右手の拳が突き刺さった。
白髪の少年の顔面に、『見えない』右手の拳が突き刺さった。
「ブッ!……ガハァア!?」
『魔王』の脳天に、頭を貫くような激痛が走った。
急に鼻の周辺が熱くなり、目下からは涙が溢れる。
両手で顔を押さえたまま、円状の砂埃を発てて、地面に着地した。
ポタ、ポタ、と。両手から流れ落ちる血で、アスファルトに赤い斑点を作る。
(一体、何が…)
理解できなかった。
少年は殴られた。
鼻の骨をへし折られた。
それは分かる。
では、一体誰に殴られたのか?『魔神』は指一つとて動かしてはいない。
その時、悲鳴に近い少女の叫び声が「聞こえた」。
(『恐怖』や『絶望』を考えてはダメ!範囲内の人間に『死ね』と『願った』ら、実現可能な殺害方法によって死ぬけど、これは貴方も例外じゃないの!もしも貴方が『死にたい』って『思った』ら、同じように死んでしまう!ってミサカはミサカは貴方に警告してみる!!
さっき貴方は、『ドラゴン』の視線から、一年前に『上条当麻』に殴り倒された時のことを思い出した!その『恐怖』があまりにも強烈で具体的だったから、大気の圧力で、その時の同等の威力を持つ衝撃波が作り出されて、それが『現実』になっちゃったの!)
「―――――――――――――――――――――――ッ」
軽い脳震盪が起こり、白髪の少年の頭は大きく揺らいでいた。
目元の涙を、赤く染まった袖で拭った。鼻血と服に付いた乾いた血も相まって、生臭い鉄の匂いが酷く鼻につく。
しかし、体がフラつく状態であっても。獣のような眼光は『魔神』を捉えて離さなかった。
『魔王』の脳天に、頭を貫くような激痛が走った。
急に鼻の周辺が熱くなり、目下からは涙が溢れる。
両手で顔を押さえたまま、円状の砂埃を発てて、地面に着地した。
ポタ、ポタ、と。両手から流れ落ちる血で、アスファルトに赤い斑点を作る。
(一体、何が…)
理解できなかった。
少年は殴られた。
鼻の骨をへし折られた。
それは分かる。
では、一体誰に殴られたのか?『魔神』は指一つとて動かしてはいない。
その時、悲鳴に近い少女の叫び声が「聞こえた」。
(『恐怖』や『絶望』を考えてはダメ!範囲内の人間に『死ね』と『願った』ら、実現可能な殺害方法によって死ぬけど、これは貴方も例外じゃないの!もしも貴方が『死にたい』って『思った』ら、同じように死んでしまう!ってミサカはミサカは貴方に警告してみる!!
さっき貴方は、『ドラゴン』の視線から、一年前に『上条当麻』に殴り倒された時のことを思い出した!その『恐怖』があまりにも強烈で具体的だったから、大気の圧力で、その時の同等の威力を持つ衝撃波が作り出されて、それが『現実』になっちゃったの!)
「―――――――――――――――――――――――ッ」
軽い脳震盪が起こり、白髪の少年の頭は大きく揺らいでいた。
目元の涙を、赤く染まった袖で拭った。鼻血と服に付いた乾いた血も相まって、生臭い鉄の匂いが酷く鼻につく。
しかし、体がフラつく状態であっても。獣のような眼光は『魔神』を捉えて離さなかった。
『魔神』の異変に気づく。
黒髪の少年の周囲だけが、蜃気楼のように揺れていた。
フワリと、クレーターのように陥没した地面から体を浮かせた。
目線が白髪の少年と同じ高さになると、その浮上が止まる。
黒髪の少年の周囲だけが、蜃気楼のように揺れていた。
フワリと、クレーターのように陥没した地面から体を浮かせた。
目線が白髪の少年と同じ高さになると、その浮上が止まる。
『魔神』と『魔王』の視線は再び交差した。
黒髪の少年は、白髪の少年を見つめ、言葉を紡いだ。
黒髪の少年は、白髪の少年を見つめ、言葉を紡いだ。
「所詮は人が作り出した、『余』の紛い物か」
「…なンだと!?」
白髪の少年は言葉を張り上げた。言葉の意味を理解できなかった。
(―――――――――――――――、っ!!)
『打ち止め(ラストオーダー)』は絶句した。
(え、ウソ!?『ドラゴン』の『神の物質(ヴァルハラ)』とのシンクロ率が三〇%を超えてる!?
『マザー』によるアプリケーションで『感情』と『魂』の範囲固定化を組み込んで、私たちの魂を合わせても二・〇%が限度なのに!
やばい!やばいよ!!早くここから逃げて!!)
少年の脳裏に、昨日、少女が言った言葉が頭をよぎった。
白髪の少年は言葉を張り上げた。言葉の意味を理解できなかった。
(―――――――――――――――、っ!!)
『打ち止め(ラストオーダー)』は絶句した。
(え、ウソ!?『ドラゴン』の『神の物質(ヴァルハラ)』とのシンクロ率が三〇%を超えてる!?
『マザー』によるアプリケーションで『感情』と『魂』の範囲固定化を組み込んで、私たちの魂を合わせても二・〇%が限度なのに!
やばい!やばいよ!!早くここから逃げて!!)
少年の脳裏に、昨日、少女が言った言葉が頭をよぎった。
『能力なんて貴方が一〇〇人いようが勝てっこないしー。天然の『神上』だもんねーって、ミサカはミサカは反則すぎる彼の設定に世界の不条理を訴えてみたりー』
その現実が、目の前に立ちはだかっていた。
少年は奥歯をギュッと噛みしめた。
(『恐怖』や『絶望』を感じるな!俺は。俺はッ!!)
「俺は、『絶対能力者(レベル6)』!『神の力』を持つ絶対者なンだよォ!!」
これは『魔神』に言った言葉では無い。自分自身に言い聞かせた『魔王』の『願望(ルール)』。
だが、彼は知っている。
『圧倒的』な力は、『絶対的』な力には敵わないことを。
だからこそ、『魔神』に紡がれた言葉は、心に強く響いた。
少年は奥歯をギュッと噛みしめた。
(『恐怖』や『絶望』を感じるな!俺は。俺はッ!!)
「俺は、『絶対能力者(レベル6)』!『神の力』を持つ絶対者なンだよォ!!」
これは『魔神』に言った言葉では無い。自分自身に言い聞かせた『魔王』の『願望(ルール)』。
だが、彼は知っている。
『圧倒的』な力は、『絶対的』な力には敵わないことを。
だからこそ、『魔神』に紡がれた言葉は、心に強く響いた。
「だから貴様は、『神の如き者(ミカエル)』なのだろう?」
『魔神』の表情からは笑顔が消えた。
『魔神』は、まるで『魔王』が視界に入っていないかのように、独白する。
「『竜』とは古来から『破滅』を象徴する生き物だ」
『魔神』は、まるで『魔王』が視界に入っていないかのように、独白する。
「『竜』とは古来から『破滅』を象徴する生き物だ」
両腕を大きく広げた。彼の周囲の大気の歪みは、さらに増す。
「『無』から『有』を作り出すのが『神』というのなら」
「『無』から『有』を作り出すのが『神』というのなら」
蜃気楼のような空間の歪みは『魔神』の左右に大きく広がっていく。
「余は『有』を『無』に帰す『神(バケモノ)』だ」
「余は『有』を『無』に帰す『神(バケモノ)』だ」
白髪の少年の背後から噴射している黒い翼は、その歪みに打ち震えた。
『魔神』は、告げる。
『魔神』は、告げる。
「神を殺す『神』――――――――――――――これこそが『ドラゴン』たる存在の本義」
『魔神』の左右に広がる、蜃気楼のような空間の歪み。
『魔王』の役目は終わった。
『魔王』の役目は終わった。
「退場しろ。『魔王』。これが余の―――――――――――――――――――――――――」
四〇〇〇メートルを超す滑走路を覆い尽くすほどの巨大な大気の揺らぎは、『あるもの』を形作る。
「――――――――――――――――――――真の『竜王の翼(ドラゴンウイング)』だ」
透明な二対の『翼』が、全てを、薙ぎ払う。
激しい光が、周辺一帯を包みこんだ。
激しい光が、周辺一帯を包みこんだ。
この瞬間、第二三学区が『消滅』した。