時は少し遡る。

「・・・・・・」
「“カワズ”様・・・。“ゲコっち”が慰めてあげます!!よしよし」
「げ、元気を出して下さい!!まだ、あの年頃の子供達には“カワズ”様の魅力が伝わらないのも致し方無いと思います!!」

純真無垢な幼子達にボコボコにされた挙句、「かーえーれ」コールの大合唱を喰らった“カワズ”を“ゲコっち”と“ゲコゲコ”が慰めていた。そんな時に・・・

<何やってんの、お兄さん?>
<・・・久し振りだね、林檎ちゃん?>

“カワズ”の脳に念話回線が繋がった。その主は、春咲林檎。以前の救済委員事件の折に、界刺の手によって病院送りにされた少女。春咲桜の・・・妹。

<・・・やっぱり、あたしに気付いてたんだね?あのガキ共にコールを喰らった後に、こっちに歩いて来たからさ。もしかしてって思ったんだよ>
<うん、気付いてた。『マリンウォール』には泳ぎに来たの?>
<ま、まぁね>
<・・・桜が心配していたよ?『林檎ちゃんが家に帰って来ない』ってさ>
<・・・・・・帰れるわけないじゃん。あたしが桜にどれだけ酷いことしたと思ってんの?パパやママにも勘当に近い扱いをされてるし・・・>

林檎の声が低くなる。対する“カワズ”も、彼女の様子に内心溜息を吐く。
以前、林檎は長女の春咲躯園と共に春咲に制裁を浴びせ、その結果として界刺にボコボコにされた。
農条達によって病院へ入院することになった林檎は、10日程で退院することができた。だが、その退院の前日に春咲家の両親が林檎の前に現れ、こう告げた。


『私達春咲家の名前に泥を塗るとは・・・親不孝者め!!!』
『今の私達は、貴方を自分達の子供だと思うことはできません。ですから、しばらくは1人で生活なさい。
お金は出してあげます。ほとぼりが冷めたら・・・また話し合いましょう』


それは、勘当に近い宣言だった。躯園が逮捕されたことで、著名な科学者であった両親は周囲から白い目で見られるようになった。
科学者としての矜持を傷付けたのがよりにもよって自分達の子供であるという事実が、両親にとっては許せなかった。
退院以降、林檎は各地のホテル等を転々とする生活を送っている。何時までこの生活なのかはわからない。自分がしたことの重大さが、その時になってようやくわかった。
だから、両親の怒りも納得できる。自分が親の立場なら、きっとあれくらいは怒っていたと思うから。

<それでもさ。桜は林檎ちゃんのことが心配なんだよ>
<・・・今は無理。合わせる顔が無い>

春咲が林檎のことを心配しているのは容易に想像できた。自分をとことん痛め付けた長女の躯園をすら、命を賭して助けたと聞いた時は『桜らしい』と零してしまった。
そんな心優しい姉を、自分は何度も傷付けてしまった。己の愚かさに歯噛みした。だから、今の林檎は春咲と会えない。
本当なら謝らなければならない。でも、それだけでいいのか?それだけで、許されてもいいのか?
春咲はこんな自分でも受け入れてしまうだろう。そうすることで、自分の犯した罪が有耶無耶になるのではないか?
そう、林檎は考えている。自分に甘い性格はまだ治っていないと思う。このまま会ったらいけない。でも、どうやったら自分を叩き直せるのか。
それすらわからない自分に苛立ちながら日々の生活を過ごして来た・・・そんな今日、かつて自分をボコボコにした人間の名前を耳にした。
幼子達にボコボコにされているカエルの着ぐるみを着た男の名前を。

<俺に話し掛けるのは恐くなかったのかい?>
<・・・少し恐かった。でも、お兄さんがあたしをボコボコにしたのにはちゃんとした理由があったから。
そう思ったから・・・思い切って。お兄さんに対してだけは・・・逃げたくなかったから>
<ふ~ん>
<・・・お兄さん。本当はこんなことを言える立場じゃ無いのはわかってるんだ。でも・・・こんなことをお願いできるのは、お兄さんしかいないんだ・・・>
<・・・何?>
<あたしの性根を叩き直して欲しいんだ>

林檎の願い。それは、自分自身の甘ったれた性根を叩き直すこと。自分1人ではどうしても甘くしてしまう現状を、“カワズ”の力を借りて打破したい。
自分の力で何とかしないといけないのはわかってる。でも、どうしても自分に甘くしてしまう。幼い頃から染み付いた悪癖は、そう簡単には取り払えない。

<・・・俺の性格とかをわかった上で頼んでるんだね?>
<うん>
<それは、両親や姉妹に合わせる顔を作るため?>
<・・・それもある。でも、それ以上に自分自身を変えたいんだ。このままじゃ、あたしはずっと自分に甘いままだ。それが、あたしは許せない!!>
<だったら1人でやれば?>
<ううぅ・・・!!や、やっぱお兄さんって厳しいね。・・・わかってんだよ、そんなことは。でも・・・でも・・・ううぅ・・・>
「(マ、マズイ!!この状態で泣かれたら、俺の頭が!!)」

念話回線の中で、林檎の声が涙声になり始めた。以前に林檎の『音響砲弾』を何度も喰らっている“カワズ”は、あの再現を何よりも恐れる。
それに・・・林檎の抱く苦しみも理解できる。友達もいない。肉親には合わせる顔が無い。
所謂孤立状態に陥っているのは自業自得ではあるが、彼女はその中でも変わろうと必死にもがいているのだ。
その感覚は、“カワズ”にも経験があった。自分も他者と接することで変わることができたが故に。
自業自得。それは、他者の力を全く借りないというわけでは無い。自分で行動を起こし、偶然or必然において他者等と接し、そこから色んなことを学び、得るということだ。
そして、その責任は自分で負うということだ。功罪両方共に。今の林檎は、勇気を出して自分に話し掛けて来た。ならば・・・

<・・・いいよ。君の勇気に応えよう>
<ホ、ホント!?>
<あぁ。但し、俺が直接どうこうするという形にはならないと思う。俺は、君が変わる切欠を作るだけだ。そこから先は・・・君次第だ。それでいいなら・・・>
<いい!!それでいいよ、お兄さん!!>
「(これを風路の奴が知ったら怒りそうだ。『甘くねぇか?』ってね。・・・今回は仲間(さくら)のためでもあるからな。身内に甘いのは俺も一緒か。
しかしまぁ、こうも色んなことが重なって来るとはな。ゲコ太、ヒバンナ(ハバラッチ)、風路、林檎ちゃん、殺人鬼・・・俺って働きモンだなぁ)」

しかも、この後に加賀美までもが加わるのである。マジ働きモンである。嫌なら断ればいいのだが、それができないのは彼の信念的なものか。

「なでなで」
「頑張りましょう!!」
「・・・だああぁぁっ!!!」
「「うわっ!!?」」

そんな林檎との念話通信を知る由も無い“ゲコっち”と“ゲコゲコ”は、“カワズ”が出した大声にビックリする。

「ど、どうなされたのですか!?」
「うん?あぁ、ごめん。ちょっと気合を入れ直しただけだよ。・・・驚かせちゃったみたいだね?」
「わ、私は大丈夫です!!」
「“ゲコっち”先輩に同じく!!」
「そうか。なら、よかった。・・・・・・うん。“ゲコっち”!“ゲコゲコ”!君達に紹介したい女の子が居る。
もうすぐ来るみたいだから、彼女と一緒に鴉達の所へ戻ろう」
「・・・女の子?」
「・・・またですか?」

“ゲコっち”と“ゲコゲコ”は、新しい女の子の出現に呆れる。紹介と言うからには自分達が知らない女の子なのだろう。一体この男はどれ程の女性を侍らせているのか。

「うん?何だ、その文句がありそうな返答は?・・・言っとくが、紹介するのは桜の妹だぞ?」
「そ、そうなんですか!?」
「うん。春咲林檎って言うんだ。俺は彼女とは何もないよ?誤解を生まないように前もって言っとくけど。つか、この前ボコボコにして病院送りにしたし」
「病院送り・・・ハッ!!先日の“講習”に際に仰られていた、あなた様が病院送りにしたという中学生・・・ですか?」
「そう」

等と言っている間に、彼女は姿を見せた。金髪のツインテールにリンゴの髪留めが特徴な小さい女の子。
身長的には“ゲコゲコ”と同じくらいの彼女は、“カワズ”達の前に来て挨拶する。

「え、え~と・・・春咲林檎って言います。以前このお兄さんに色んな意味でお世話になりました。よ、よろしくお願いします」

ペコリと頭を下げる林檎。次いで“ゲコっち”や“ゲコゲコ”が挨拶返しを行う。その様子を見ている“カワズ”は、1人思案に耽っていた。






「お、お兄さん!頼みたいことってな~に!?は、早く教えてよ!!」

時は今に戻る。

「(あれ?この声って・・・)」
「(ぶっちゃけ、どっかで聞いたような・・・)」

林檎の声に聞き覚えがあるのか葉原と鉄枷は首を傾げるが、明確には思い出せないようだ。

「あ、あれは春咲林檎!!世の中の女性を愛して止まない俺が唯一受け付けない人間!!」
「えっ!?嘘!?一色が受け付けない女性なんて、この世に存在していたの!?」
「春咲林檎って、確か春咲桜の妹だよな?・・・あの野郎と繋がりがあってもおかしくは無い・・・か」

一色の衝撃的発現に鏡星が驚愕する。普段は女性のことばかりを考える変体紳士である一色のストライクゾーンは、幼女からお年寄りまでという幅広いものである。
そんな彼が受け付けない女性がこの世に居ようとは。一色を知る者ならば、誰でも驚愕するに決まっている。
一方、春咲林檎という名前に閨秀が己の記憶の中から血縁関係を引っ張り出す。

「林檎ちゃん!それと“ピョン子”!こっちに来て!!」
「あっ!!居た!!」
「うわっ!?急に出現しないで下さいよ!!・・・私ですか?」
「あの“変人”・・・。まさか、俺が本能的に避けている少女すら手中に収めているのか!?幾人もの女性から告白を受けている癖に!?お、おのれえええええぇぇぇっっ!!!」
「あちゃー・・・一色君のヤキモチ癖が・・・」

林檎と“ピョン子”が“カワズ”に呼ばれ駆け足で走って行く。その姿に一色は歯をギシギシ言わせ、焔火が同僚の悪癖に溜息を吐く。

「え~とね、“ピョン子”の中身を交代するよ?つまり、ハバラッチがOUTで林檎ちゃんがINするってこと」
「ええぇっ!!?」
「ど、どういうこと!?」

葉原と林檎は、“カワズ”の真意を見極められない。

「ちょっとね、事情が変わった。俺は、これから林檎ちゃんを立派なレディーに成長させるためのお仕事をしなけりゃならなくなった。
林檎ちゃん。俺達はこれから数日の間、ボランティアに赴くことになっている。君には、その一員として来て貰う。鴉!!別にいいよな!?」
「あぁ。別に構わんぞ?人数は変わらないのだからな。だが・・・」
「ハバラッチ。君も色々忙しいんだろ?聞いたよ?先輩が病欠なんだって?だったら、君が優先するべきは俺達じゃ無くて、支部の仕事なんじゃないの?」
「そ、それは・・・」
「そうだ。偶には支部の皆と一緒に外回りしてみるってのもいいんじゃない?折角外に居るんだし?これだけの大人数で外回りする機会なんか滅多にないと思うけどなぁ」
「(・・・ハッ!!もしかして、緋花ちゃんと同行する機会を・・・!?)」

まず、葉原が“カワズ”の真意を汲み取る。

「林檎ちゃん。さっき俺がボコボコにされたように、小さな子供達と接するのはスゲー難しいぜ。正直、俺もここまで難しいとは思わなかった。
純真無垢なお子様方は、本音ばっかり言って来る。自分が気に入らないなら、我儘でも何でも言って来る。今の君には・・・最適な修行場だろ?」
「(た、確かに・・・!!)」

次に、林檎も“カワズ”の言わんとしていることを理解する。

「どうかな、リーダー?偶には、事務仕事してばかりの人間だって外に連れ出してやってもいいんじゃね?きっと、良い経験になると思うぜ?
何せ、176支部には頼りになるのかなららいのかサッパリわかんねぇ問題児集団が居るんだろ?
支部のまとめ役を務めることもあるハバラッチの同行は、マイナスにはならねぇと思うんだけど?」
「「「「「ピキッ!!!!!」」」」」
「(な、何言ってんの!?わざわざ挑発するようなことを・・・!!)」

“カワズ”の挑発に問題児集団(神谷・斑・鏡星・一色・姫空)のこめかみの血管が浮き上がり、加賀美は内心で冷や汗をかく。

「界刺さん・・・。あなたがそう言うからには、何か意図がありそうですよね?」
「いんや。別に」

そして、残りの1人―焔火―が界刺と相対する。必要以上に惑わされない。そう、心に強く誓いながら。

「・・・本当ですか?」
「あぁ。本当だとも。君等のことなんか、俺にはどうでもいいことだ」
「・・・じゃあ、何でゆかりっちの同行を薦めるんですか?」
「嫌なのかい?ハバラッチとは親友って聞いてだんだけど、案外冷たいねぇ」
「・・・意図を逸らさないで下さい。ちゃんと、私の質問に答えて下さい!」
「・・・俺からしたら、君の方が意図を逸らそうとしてる風に聞こえるけどね・・・クソガキ」
「!!!」



だが・・・誓いが微動する。



「葉原は、支部のまとめ役・・・つまりお目付け役的な仕事をすることがある。それは、親友である君に対しても。暴走気味な君がオイタをしないように。違うかい?」
「・・・!!」
「図星だね。だから言ってあげてんだよ、クソガキ。葉原の目から見て、君がどういう風に動いているのかを後で聞いてみるといい。参考になると思うよ?」
「な、何でそんなことを・・・!!私は1人で・・・!!」
「逃げてんじゃねぇよ、焔火緋花!!」
「ッッ!!」



誓いが・・・大きく揺さ振られる。“詐欺師ヒーロー”の手が、焔火の胸倉を掴む。声に・・・『本気』の色が混ざり始める。



「テメェは・・・色んなモンから逃げる“ヒーロー”になりてぇのか?そんなんで、本当に“ヒーロー”になれると思ってやがんのか?」
「!!」
「テメェの馬鹿さ加減には、ほとほと呆れるな。これじゃあ、お前を支えようと必死になってる連中が可哀想でしゃーないわ。
いい加減にしろよ、緋花?テメェ、債鬼から何を学んでやがったんだ?一人前の風紀委員として、しっかり踏ん張れる人間になるためじゃなかったのか?」
「そ、それは・・・!!」
「・・・逃げて、逃げて、逃げまくって・・・それで解決すると思うな。そんなにテメェの醜態を親友に晒すのが恥ずかしいのか?否定されるのが恐いのか?
債鬼はしばらくいねぇ。奴の縛りからテメェは解放された。だが、何も解決してねぇぞ?テメェが独り善がりのクソガキだって事実は、何一つ変わっちゃいねぇ!!」
「ッッッ!!!」



誓いは・・・跡形も無く崩れ去った。“詐欺師ヒーロー”は焔火を掴んでいた手を解く。直後、彼女はその場にへたり込んでしまう。その顔は蒼白の様相を呈していた。



「これは、そこの問題児集団にも言えることだ」
「「「「「!!!」」」」」

矛先が変わる。『本気』の“詐欺師ヒーロー”は、一切の容赦をしない。気に入らない奴は、全て叩き潰す。

「テメェ等・・・何時までおんぶにだっこに興じてるつもりだ?自由ってのは、責任を負わないことじゃ無ぇぞ?
こんな部下(した)ばっかりじゃあ、加賀美(うえ)は可哀想だな。部下の不始末の責任を負わされて、振り回されて、苦しんで・・・。
テメェ等みてぇなのは風紀委員とは言わねぇ。そこらの“不良”と何ら変わらねぇドチンピラだ。そんなに好き勝手やりたきゃ、風紀委員を辞めるんだな。
俺等のようなボランティア形式で学園都市の治安でも守ってろよ。今のテメェ等より、俺等(ボランティア)の方がよっぽどいい仕事してるぜ?
ったく情けねぇな・・・“風紀委員もどき”?まぁ、俺にとってはどうでもいいけど」
「「「「「・・・!!!」」」」」

一気に捲くし立てた“詐欺師ヒーロー”の言葉に、問題児集団は何故か反論することができない。その理由を・・・今の彼等には把握し切れない。

「(界刺先輩・・・!!自分は緋花ちゃんに直接関わらないって言ったのに・・・!!)」
「(まさか・・・私や緋花のために・・・!!)」

葉原と加賀美は“詐欺師ヒーロー”の行動に瞠目し・・・感謝する。彼が自分達のために怒ってくれたことがわかったから。
信念を曲げてまで行ってくれた彼のアドバイス。“詐欺師ヒーロー”だからできたそれを、2人は絶対に無駄にはしないことを誓う。

「・・・ということで、ハバラッチ。ここじゃあ子供達の目に付くだろうし、どっかの物陰でいいからその着ぐるみを脱いできてくれるかな?」
「わ、わかりました!」
「リーダー?」
「・・・わかったよ。今日はゆかりも私達と同行させる。あなたの言う通り、色んな意味で良い経験になると思うから」
「そう?そんじゃあ、後のアフターケアは任せるよ(ボソッ)?特にヒバンナの(ボソッ)。きっと、俺にガツンと言われた反動・・・所謂“我”が出て来ると思うから(ボソッ)」
「・・・わかった(ボソッ)」

加賀美へのアドバイスを終えた“カワズ”は、“ヒーロー戦隊”『ゲコ太マンと愉快なカエル達』の面々が居る場所に赴く。今後の行動を決めるために。
ちなみに、へたり込んでいた焔火は加賀美と葉原が引き連れて行った。各支部共に、本来の捜査任務に戻って行く。

「鴉!!もうすぐ昼飯だろ?それが終わってからの移動でいいよな?」
「あぁ!!野営地には今日中に到着すればいいからな!!当初の予定であった夕方頃であればギリギリだったが、昼ならば余裕で着くだろう!!」
「あっ!お兄さん!あたし、泊まってるホテルに荷物とかが・・・」
「あっ、そうか。なら、昼飯→林檎ちゃんの用事→野営地へGOって形でOK?」
「「「「「「OK!!!」」」」」」
「“ゲロゲロ”クンも一緒にご飯に行こうね」
「あぁ・・・。他人と飯か。一体何時以来だろうな。フッ・・・」
「葉原先輩・・・行っちゃうんだね」
「免力君~、残念だね~」
「でも・・・携帯の番号は交換したから・・・これで」
「さすが免力君~。抜け目ないね~」
「さて・・・どうやって飯を食うか。それが問題だ」

“ヒーロー戦隊”のメンバーは、『マリンウォール』からの撤収準備に入った。程なくして撤退は完了するだろう。その後は、近隣の定食屋にでも行くつもりだ。
もちろん、着ぐるみを脱いでである。“カワズ”以外は。どうやって着ぐるみを着た状態で飯を食うか悩んでいる“カワズ”の後ろから、聞き知った声が掛けられる。

「界刺・・・」
「何、破輩?」

それは、159支部の破輩。後ろには鉄枷と一厘も居た。どうやら、彼女達だけが『マリンウォール』に残っていたようだ。

「・・・この忙しい時に余りキツく言ってくれるな。あの様子だと、176支部の人間はしばらく悩みまくるぞ?」
「そんなモン、俺にとってはどうでもいいことだ。元は身から出たサビだ。それを改善して来なかった連中が悪い。違うか?」
「・・・そう、だな。お前はそういう人間だったな」
「・・・俺と仮屋様、それとサニーはしばらくここから離れる。こっちには真刺や涙簾ちゃん、バカ形製と桜が残る」
「・・・・・・何が言いたい?」
「事実を言っただけさ」
「(お、おい、リンリン。ぶっちゃけ、あの野郎が言いたいことって・・・)」
「(もしかしたら、『シンボル』の力を貸して貰えるかもしれないってことだと思う。不動さん達が承諾するかどうかはわからないけど)」
「(で、でもよ!!俺等は野郎達の力を頼らないって、一昨日吠えたばっかじゃねぇか!!)」
「(鉄枷に言われなくてもわかってるわよ!!・・・でも、あの人達の力はそれだけ魅力的なのよ。悔しいけど、界刺さんの言葉に安堵している自分が居る。確かに居る!!
さっきの界刺さんの問答を見てもわかる通り、彼等は皆自分の信念を強く持ってる人ばかりよ。ブレないし、迷わない。それは、戦場では何よりも頼りになる存在になる!!)」
「(んなモン、俺達だって負けてねぇぞ!!)」
「(それもわかってる!!私達だって、私達なりの信念を持っている。
だけど・・・あの人はその信念をいとも簡単に揺さぶって来る!!176支部の人達にしたように!!逆に、あの人の信念が揺さ振られることはまず無いわ!!
揺さ振られるのなら・・・その信念はまだまだ弱いってことじゃないの!?さっきから随分偉そうに言ってるけど、鉄枷はどうなのよ!?)」
「(うっ!!・・・お、俺も風紀委員として救済委員だった春咲先輩に手錠を掛けることができなかったしな・・・。俺もまだまだかもしんねぇ)」

存在が大きい。自分の心に根付いている光の輝きが、自分自身を安堵させる。自立への道はまだまだ険しい。揺るがぬ信念を身に着ける道も同様に。

「(きっと、“保険”のようなものなんだと思う。四の五の言ってる場合じゃ無い時があるかもしれない・・・その時に使えるモノは何でも使えって言いたいんだと思う。
以前私達が風輪のレベル4の人達に力を貸して貰った時のように。それに、そんな人間だからこそ界刺さんは今まで色んな困難を乗り越えて来られたみたいだし)」
「(・・・チッ。確かに、そいつ等に比べたらまだ『シンボル』の連中の方がマシかもしれねぇな。
裏切り者もいねぇし、最初からキッチリ纏まってるみてぇだし・・・春咲先輩を救ったし。そ、そうか!!もしかしたら、春咲先輩と一緒に・・・!!)」
「(・・・界刺さんに告白&キス済みなのは内緒にしとこう。それにしても・・・本当に自己主張が激しい光だわ。
頼らせよう頼らせようって鬱陶しいくらいに主張して来るんだから・・・!!嫌がらせにも程があるわ!!
これも、1つの試練!!負けないように頑張るしかない!!・・・どうしようも無い時以外は・・・できるだけ・・・きっと・・・・・・ええい!!とにかく頑張る!!
いずれ、私はあの人を“利用”しないといけないんだから!!)」

“カワズ”と破輩のやり取りから、鉄枷と一厘は『シンボル』の助力について思考を駆け巡らせる。

「・・・お前達の力を借りるつもりは無かったんだが・・・?というか、お前達を頼ることでお前のドヤ顔を見るのが嫌なんだが・・・」
「別に力を貸すだなんて一言も言ってないんだけど?・・・んふっ、そんなことを言っていられる余裕があればいいね、破輩?」
「・・・」
「きっと、今のお前より俺の方がずっと深く、深く考えているよ?より真剣に、真剣を重ねて。色んな結果を出すために・・・ね。
お前も命を張るなら、精々後悔しない程度には考えを張り巡らせておいた方がいい。次に会うのが墓前だなんて結果にならないことを祈ってるよ?」
「(・・・何か事情でも変わったのか?あれ程『ブラックウィザード』に関わらないと言い張って来た男が、ここに来て動き始めている。
これは、“アタリ”・・・というわけでは無さそうだな。この男の動きは、私にも読めないからな。“3条件”のこともある。油断はしないでおこう。もちろん、捜査でも!!)」

破輩は界刺の変化に戸惑いながらも、彼の申し出の有用性を考え・・・決断を下す。

「・・・わかった。背に腹は代えられない時もあるか・・・。フッ。いざという時は、あいつを何としてでも口説き落とすしかなさそうだ」
「・・・何か別の意味にも聞こえる台詞だね?」
「うっ!?こ、これは言葉のあやだ。あいつには、昨日酷い目に合わされたからな。その借りを返さなければと思っただけだ!!」
「あぁ、あれか。仮屋様から聞いたよ?破輩って、本当は気弱な女の子なんだよね?今は男勝りな性格だけど、いざって時はその地が出て来るんでしょ?」
「ブッ!!」

読まない時はとことん空気を読まない男が、破輩の素を暴露する。

「なっ・・・!!?」
「破輩先輩が・・・気弱!!?」
「らしいぜ?昨日、真刺の奴に指圧マッサージしてもらっていた最中に零してたそうだ。昔はそこらの野良犬にビビるか弱い女の子だったってさ」
「嘘・・・だろ!?」
「・・・夢でも見てるのかな、私?界刺さん。私の頬を抓ってみて下さい」
「えい!」
「痛っ!・・・夢じゃない!!?」
「お、お前等・・・!!!」

徐々に己の素を見せて行こうと思っていた矢先の暴露に、破輩は怒り爆発状態になる。

「しかも、この気弱な女の子は支部員の輪に入りたくても入れない、本音すら碌に言えない恥ずかしがり屋さんなんだって(人ってのは見た目で判断しちゃいけないんだなぁ)」
「・・・破輩先輩。すんませんっした(ブハハ!!ぶっちゃけ、全然想像できねぇよ!!)」
「す、すみませんでした。破輩先輩の気持ちに気付いてあげられなくて(後で、佐野先輩や湖后腹君にも教えよっと)」
「ぐうぅっ!!い、いや、その・・・なんだ・・・。これは、私の努力不足というか・・・」

しかし、破輩のカミナリが落ちる前に自分達の落ち込む姿と謝罪の言葉を示すことで、彼女の怒りを霧散させる腹積もりの鉄枷と一厘。そして、それに乗っかってしまう破輩。

「破輩先輩!!これからは、俺達にも先輩の本音をバシバシ言って下さい。できるだけ受け止めてみせますから!!仕事とお仕置き以外は!!!」
「破輩先輩!!私達も先輩と共に在りたいです!!だから、これからはもっと頼って下さい!!私達も先輩に頼りますから!!ですんで、飲み物の買出しを破輩先輩に・・・」
「・・・お前等。私の地が気弱だとわかった途端に、全く遠慮をしなくなったな?」
「「輪に入るってことはそういうことですよ!!!」」
「まぁ、159支部の結束は固まったわけだし、良かったんじゃないの?」
「・・・何か上手いコト乗せられたような・・・」
「細かいことは気にすんなって。・・・これとさっきの『事実』で176支部の件はチャラな?」
「・・・お前」
「おーい!!界刺!!行くぜ!!」
「あぁ!!わかった!!」

仲場から出発する旨の言葉が掛けられる。それを受けて“詐欺師ヒーロー”はウインクを見せながら(着ぐるみなのに)『マリンウォール』を後にする。

「そんじゃ、ご武運を。風紀委員さん?」






「あれ~?固地君じゃない?どうしたの?」
「どうしたと言われてもな。ここは図書館なんだから、本を読みに来る以外の理由があるのか?」
「あっ。そうだね」
「全く・・・どこか抜けているな、お前は」

ここは、国鳥ヶ原学園近くの図書館である。3階まであるこの図書館は貯蔵量も中々の物であり、国鳥ヶ原に通う生徒もここをよく利用している。

「立川は・・・夏休みの宿題か?」
「ご名答。ここなら静かだし、資料とかも沢山あるから捗るんだ」
「成程」
「ちなみに、固地君って夏休みの宿題は・・・」
「そんな物、7月中に全て終わらせた」
「だよね~。風紀委員の仕事で忙しいのに、よくできるよね~。私、感心しちゃうなぁ」

昼前になってこの図書館を訪れた休暇中の固地が出会ったのは、クラスメイトの立川奈枯。固地は、彼女の物怖じない性格を気に入っている。
対する立川も勉強等で行き詰った際に固地に教えて貰ったりしているので、彼のことは結構気に入っている。つまり、友人関係といった所だ。
2人は、図書館のある一角に腰を据える。その途端、近くに座っていた生徒らしき人物数名が立ち去って行く。

「・・・相変わらず、固地君って嫌われてるよねぇ」
「別に気にもならん。俺の性格を知って立ち去るなら、それは賢明な判断だ。普通、俺のような人間と付き合おうとは思わんだろう?」
「何よ~。私が普通じゃ無いとでも言いたいわけ?」
「そう聞こえなかったら、耳鼻科に行くことをオススメする」
「口の減らない人・・・。だから、周囲に敵を作っちゃうんだよ?」

立川は、入学当初から見て来た固地の言動に溜息を吐く。この男は、その傲岸不遜な態度で国鳥ヶ原でも色んな敵を作っている。
これで固地が風紀委員で無ければ、すぐにでも報復のような事態に発展しているかもしれない。それだけ、国鳥ヶ原の治安は安定していない。
また、敵で無くとも固地のような人間と関わり合いたく無いと思う人間も多く居る。
現にこの一角に座っているのは、固地・立川の他には目に髪が垂れている黒髪の少年しかいない。

「・・・そういえば、風紀活動はどうしたの?何か忙しいって言っていたけど?」
「しばらくの間休暇を言い渡された。俺自身、体に疲れが溜まっていたようだ。だから、こうやって休暇を満喫している所だ」
「嘘!?あの仕事命、仕事に人生を懸ける、仕事しないと生きていけないの3拍子が揃った固地君が!?」
「・・・俺は何処ぞのマグロか?俺にだって、憩いの一時くらいは必要だ」

固地は、目の前に居る少女の言動に呆れる。こうやって固地に対するツッコミを平気で口にすることができるのが、他のクラスメイトから一目置かれている理由の1つだったりする。

「・・・でも、何で図書館なの?本を読むことだって頭を使うんだから、逆に疲労が溜まるんじゃないの?」
「部屋で寝てばかりというのは性に合わん。だったら、こうやって静かな場所で読書というのもいいかと思っただけだ」
「・・・・・・ううん!!よくないよ!!」
「うおっ!?」

向かいの席に座っていた立川が身を乗り出して来た。固地の姿を映す彼女の瞳は、爛々と輝いていた。

「よ~し!!これは、私も宿題をしてる場合じゃ無いね!!固地君!!私と一緒に遊びに行きましょ!!」
「なっ!?」

そう言って、立川は急いでノートや筆記用具を鞄に仕舞う。

「お、おい!!俺は別に承諾して・・・」
「固地君は、この夏は全然遊んで無いんでしょ!?そんなんじゃあ、体を壊すのも当たり前だよ!!それに、固地君の意見なんて一々聞いてたら何処にも行けないし!!
フフン。今日は、私が固地君をエスコートしてあげる!普段から勉強とかでお世話になってるからね!!あぁ、私も固地君と一緒なら日焼けできるかも!!」
「それは、どういう理屈だ!?・・・立川。お前、近頃性格が変わったか?以前のお前はもっと穏やかだったような・・・」
「もしかしたら、辛辣・罵詈雑言・傲岸不遜の3拍子が揃った固地君の影響かもね」
「・・・・・・ハァ」

立川は固地の意見を無視しながら彼の手を引っ張り、図書館を後にする。傍から見ている分にはデートしに行くような流れだが、2人共にそんな意識は無い。
そもそも、立川は固地に苛められていると周囲から捉えられていたので、立川が率先して固地を遊びに連れて行く姿は新鮮・・・というか驚愕モノであった。
そんな慌ただしい2人が図書館を去った後に、固地達が座っていた一角に居た気弱そうな少年が席を立つ。そして、図書館から出て行った。






「・・・どうだ?模写はできそうか?」
「当然だ。俺を誰だと思っている。人間の裸身を、毛の一本まで描き切る男だぞ?」
「(・・・七刀の『思想断裁』は破られていたか)」

朝一番から図書館の3階に鎮座しているのは救済委員である雅艶総迩と麻鬼天牙。彼等は、昨日固地からの連絡を受けていた。
もちろんダミーのSIMを使用しているので、会話を傍受されることは無い。内容は、『ブラックウィザード』の件である。

「確か、会合以降も峠がずっと調べていたな。雅艶、彼女とのコンタクトは?」
「もう着けてある。今日の夜にも合流する予定だ。春咲桜の件で世話になった風紀委員の頼みと言ったら、即座に返事が返って来た。
俺にとっても可愛い後輩の頼みだ。無下にもできないだろう?」
「そうだな。『ブラックウィザード』の監視があるかもしれない以上、風紀委員における要注意人物である固地は身動きが取れない。
休暇中であったとしても、“風紀委員の『悪鬼』”とも謳われる男がじっとしているわけが無い。そう睨んでいるからこその依頼だからな」
「元風紀委員のお前には不服か?」
「別に。今回の件は俺の同輩達が関わっているんだ。元同輩が動いても、何ら不自然では無い。それに、固地は俺が認める数少ない『本物』だからな。
奴は、『偽善者』共の巣窟の中で己が正義を貫き通している。俺が失望したのは風紀委員や警備員という枠組みであって、個人に失望したわけじゃ無い。
固地の場合は、俺の言葉に負けない程の信念を持っていた。そんな奴を、その枠組みの中で奮闘する固地の覚悟をどうして否定できようか。
前に会った“後輩”は、その辺りの覚悟も信念も持ち合わせていなかった。だから、力尽くで行った。それだけの話だ」

実は、この図書館に固地が来たのは偶然では無い。元々雅艶達との物理的では無い接触を図るつもりで来たのだ(=待ち合わせ場所)。
固地と雅艶は国鳥ヶ原の生徒である。この2人が国鳥ヶ原の生徒がよく利用する図書館に訪れるのは、極普通のことである。
麻鬼が危惧するように、固地は『ブラックウィザード』が警戒する風紀委員の中でも、特に注意を払わなければならない人間である。
そんな彼が接触する人物は、全て監視リストに入れられる可能性がある。電波を使った情報伝達は、万が一の危険性(傍受等)がある。
故に、固地が取った行動は『「ブラックウィザード」に関する資料を入れた鞄を持ち歩き、その鞄を雅艶の「多角透視」によって透視させる』であった。
雅艶は絵描きが大の得意であり、同時に記憶力もずば抜けている。その記憶力は、学園中の生徒の裸身を頭にインプットしているくらい凄まじいのだ。
そんな彼に掛かれば、鞄に入っている資料をすぐに記憶し完全模写するくらいわけないのである。

「俺達への依頼・・・『「ブラックウィザード」の構成員の捕捉』、『活動範囲の探索』、『拠点の特定』。手掛かりは、『眼球印の黒い着衣品』。
確かに俺の『多角透視』や峠の『暗室移動』ならば、短期間の内に連中の捕捉が可能かもな」
「ギブアンドテイクを信条とするお前が、今回は特段の要求をしなかったのは・・・春咲桜の件か?
固地には、彼女の処分について口利きをして貰ったからな。あの“『悪鬼』”も呆気に取られたような声を挙げていたぞ?
どんな見返りを要求されるか見極め切れないために、俺達への依頼を躊躇っていた末に出した背水の陣(けつだん)を、ああも簡単に聞き入れるんだからな。
まさか、固地の奴も雅艶があの少女にそれ程の負い目を感じていたとは夢にも思っていなかっただろう」
「・・・・・・」
「それに、彼女があの『シンボル』に加入したと聞いた瞬間にお前の表情が緩くなったのも知っているぞ、俺は?」
「・・・目聡いな?」
「覗き趣味のお前に言われたくは無い」

雅艶と麻鬼は、互いに微笑を漏らす。春咲の件については、雅艶や麻鬼も各々の価値観でもって反省していた。斬山の言う通り、もう少し穏便なやり方があった筈だ。
それを無視した結果、穏健派と過激派の衝突にまで至ってしまった。あの衝突は2人にとっても不本意であった。やり方は違えど、同じ仲間であることには変わりないのだから。
その引き鉄となった春咲が、あの『シンボル』に入ったと聞いて2人は心の何処かで安堵していた。
雅艶は、あの“変人”の下でなら春咲はうまくやれると判断したために。一方、麻鬼は風紀委員では無い組織で春咲が活動するようになったことに・・・である。

「あぁ、そうだ。後は・・・興味深い人間も見付けた」
「というと?」
「以前から気にはなっていたんだ。気弱な態度を纏っているのに、その身体は極限にまで鍛えられている国鳥ヶ原の生徒・・・。名は戸隠禊

雅艶の『多角透視』によって看破していた、己が身体を極限にまで高めている生徒・・・戸隠。雅艶は己が後輩に、疑惑の『目』を向けていた。

「・・・固地を監視していたのか?」
「・・・そのようだ。今俺の『多角透視』で戸隠を追っているが、奴は数百m離れた位置から望遠スコープで固地達を監視している。
『眼球印の黒い着衣品』は見当たらないが・・・この時期だ。『ブラックウィザード』と関係があると見て間違い無いだろう」
「国鳥ヶ原の生徒は、『多角透視』の能力を『前方70mまで透視できる』と『頭上に掲げている』ことしか知らないんだったな」
「嘘ではないからな。別に何とも思わない。安易に手の内を全て晒すのは、愚か者がすることだ」

雅艶の嘲笑を含んだ笑みが、麻鬼の耳に入る。雅艶の『多角透視』の全容を知っているのは麻鬼と峠しかいない。
他の過激派救済委員でさえ、『多角透視』の全容は教えられていないのだ。上記の2人にも、他者への漏洩は固く禁じている。

「どう見る、麻鬼?」
「おそらく監視に徹するんじゃないか?現状では危害を加えるまでには及ばないだろう」
「俺も同意見だ。奴の身のこなし・・・只者では無いな。能力を使わずに尾行するとなると骨が折れそうだ」
「・・・どっちに張り付く?」
「立川という少女の方だな。手を出すのなら、固地より彼女の方が確率は高い。まぁ、それでも手を出す可能性は低いがな。
予定変更だ、麻鬼。今日は立川という少女の近くで網を張る。峠には、俺から連絡を入れておこう。
戸隠については、このまま尾行するのは困難だな。逆に俺達の存在が気取られる可能性がある。今は情報収集に徹する。とりあえず、この情報は後で固地に伝えよう」
「了解。では、行くか」
「あぁ」


この後すぐに2人は図書館を後にする。様々な勢力が蠢く中、過激派と呼ばれる救済委員達も風紀委員の依頼を受けて動き始める。

continue!!

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最終更新:2012年09月12日 01:02