【名前】アリア
【性別】女
【所属】魔術
【能力】「ルンペルシュティルツヒェンの命名論」と魔道書「災厄の坩堝(パンデミックプラント)」
【能力説明】
原典に分類される魔道書「災厄の坩堝(パンデミックプラント)」を所有する。その形状はズバリ「子宮」。
アリアは本来人体に備わっている子宮を摘出され「災厄の坩堝」を取り付けられている。自律活動の為に魔道書によってアリアは常に一定の生命力を魔力に変換させられている。
その代わり、魔術の主体はアリアでは無く原典の方にある。地脈や龍脈から必要なエネルギーを供給する事でアリアの負担を軽くする事は可能。
魔道書の記述内容はギリシャ神話で語られる、この世のありとあらゆる災厄を詰め込んだ壷『
パンドラ』。
開かれた『パンドラ』に唯一残った人類の希望であり絶望でもある「エルピス」を時空に干渉する力と綴っている魔道書により、アリアは強大な予知能力と過去視能力をその身へ強制的に宿している。
「時空に干渉する力は壷の外の人類を絶望させる」「壷は人類の希望を喪失させないストッパー役」という点を強調されている為にアリアは“人間とコミュニケーションを取る為”の言葉、そして文字全般に渡る筆記機能を失っている。
よって、他者とは「だー」や「うー」など知的障害者のような意味不明な言葉でしかやり取りができないし、相手へ伝える為の文字を書く事もできない。
『パンドラ』は人類に様々な災厄を齎したが、見方を変えると『パンドラ』はありとあらゆる災厄を詰め込む事ができる倉庫のような働きを持つとも言える。
災厄を魔術と置き、アリアに害を及ぼす魔術は全て「災厄の坩堝」に呑み込まれる。例えるならば質量を保持する物質が存在するだけで時空が歪み、移動すると時空の歪みが広がる重力波。
アリアの周囲には重力波のような歪みが、降り掛かる災厄に応じて適時発生するようになっている。その歪みは「災厄の坩堝」へと誘う時空の穴。
「災厄の坩堝」内に呑み込める魔術の貯蔵量は膨大であるものの、量に応じて子宮の形を取っている魔道書は膨れ上がる。
つまり、アリアは魔術を呑み込む程妊婦のように内側からの圧迫に耐えなければならない。当然子宮が呑み込める上限にアリアの体は耐えられない。
ルンペルシュティルツヒェンはグリム童話に収録されている作品。願いを叶えて貰った代わりにお腹の子供を差し出すようドワーフに約束させられた女性が、ドワーフの名前を当てる事で約束から解放され、また名前を当てられたドワーフが自滅するという物語である。
抽出する魔術的記号は「口承」「妊婦」「名前」「ドワーフ」。ドワーフは通常では説明が付かない現象であるポルターガイストと見做されている場合があり、「ドワーフ」=「魔術」とした。
童話では約束を叶えて貰う代償として子供を差し出す約束が交わされたが、アリアは魔道書によって魔術を呑み込むだけで代償を支払うに値する行為をしたわけでは無いのでこの束縛からは解放されている。
抽出した魔術的記号「妊婦」は子宮形態原典「災厄の坩堝」と関連付けられる。同じく抽出した魔術的記号「名前」は対象の名前を知れば対象を支配できる概念、世界に共通する、名前に秘められた神秘性を宿す記号である。
「災厄の坩堝」に呑み込まれた魔術は『パンドラ』の蓋を空けるように時空の歪みを通じて外に排出する事はできるが、それだけでは魔術の支配権は再び相手に戻る。また、排出される魔術の取捨選択ができない為に排出の順序や量などの制御も利かない。
そこでグリム童話ルンペルシュティルツヒェンの理論を活用し、呑み込んだ魔術の名前と魔術的記号などを看破すればアリアは排出した他者の魔術を自身の魔術として操作できる。
ルンペルシュティルツヒェンはグリム童話として編集される前、現代より約四千年前から口承伝承として途絶える事なく伝えられてきたとされる。
その歴史の長さ、「口承」という性質から「ルンペルシュティルツヒェンの命名論」を使用する時のみアリアは他者と言葉や文字を交わす事ができ、加えて排出する魔術の順序や量などの制御もできる。
強制的に宿らされている予知能力や過去視能力を併用する事で看破の確率を飛躍的に上昇させている。
また、時空の歪み=時空への干渉である事から「災厄の坩堝」は三次元的干渉では変化させられない予知した未来を変える可能性を秘めている。
【概要】
魔術結社「
多からなる一(イ・プルーリバス・ウナム)」に保護されている12歳の少女。とある魔術師が製作した『パンドラ』伝承を綴った魔道書「災厄の坩堝」に唯一適合した被験体。
適合する被験体に行き当たるまで何千人もの幼い少女を誘拐し、第二次性徴を迎えた子宮を摘出し、手術によって消耗した少女に取り付けた原典による生命力吸収や汚染などによってその命を失わせている非道な実験を「災厄の坩堝」執筆者である魔術師と所属する魔術結社は十年以上繰り返していた。
アリアもまた争乱による貧困により2歳の時に両親を失い、行く宛ても無いところ結社に誘拐された。
10歳を迎え初潮が発生した頃、アリアもまた実験に参加させられた。実験の目的は「災厄の坩堝」を最大限に活かせる素材。
実験前までに魔術師になる為の育成も施されており、グリム童話ルンペルシュティルツヒェンの理論もまた「災厄の坩堝」を有効活用する為の魔術である。
実験の結果アリアは手術による消耗や原典の生命力吸収・汚染などから生死の境を彷徨うものの息を吹き返し、「災厄の坩堝」に適合した被験体となる。
魔術師になる為の育成と平行して結社に忠誠を誓う洗脳教育も行われていたアリアだったが、実験による命の危険、取り付けられた魔道書による弊害、自分の実験が終わった後在庫処分のように「廃棄」された少女達の惨状、何より女性としての機能を剥奪した結社に忠誠を誓う気など無くなってしまった。
結社にはアリアを魔術で洗脳するという手もあったが、皮肉な事に「災厄の坩堝」に呑み込まれ無効化されてしまうので有効な手立てを見出す事ができない日々を過ごす中、以前から敵対関係にあった「多からなる一」の攻勢によって結社は壊滅、「災厄の坩堝」の執筆者である魔術師はこれもまた皮肉な事に反逆したアリアの手によって命を落とした。
「多からなる一」に保護されたアリアだったが、他者と文字や言語を通じたコミュニケーションを取れない束縛から当初は孤立状態に陥った。
原典の汚染で頭をやられた知的障害者みたいに捉えられるのが嫌で塞ぎ込んでいたが、ご飯を運んで来る魔術生命体のハニワ三姉妹と交流を重ねていく内にアリアの心境に変化が現れる。
会話できない束縛はあくまで人間限定で、人間で無ければ言葉を話せる事に気付いたアリアはハニワ三姉妹との交流を経て次第に明るさを取り戻し、今では三姉妹の生みの親である
ダイアム=クレバリーの農作業の手伝いをするようになった。
ダイアムや他の構成員達とコミュニケーションを取る時は主にボディーランゲージ。小柄な体型を懸命に動かして身振り手振りを繰り返すアリアはようやく「多からなる一」に腰を据える事ができるようになった。
現在「多からなる一」の保護下(=保護対象)となっているアリアは構成員達から色んな魔術を呑み込ませて貰っている(排出も適時実行している)。
勿論各々の特有の魔術では無く、『人払い』や地脈・龍脈に干渉する一般的な魔術など“呑み込ませても自分が不利を被らない”魔術が多数を占めている。
アリア側からすれば魔道書に記されている『パンドラ』の力(=知識)を広める事ができ、「多からなる一」からすれば未知数な部分が多い原典「災厄の坩堝」の概要を知る事ができ、双方に利がある。
何より自分を救ってくれた「多からなる一」に報いる為にいずれは正式に構成員となり、自分が過ごしたような悲惨な境遇から抜け出せずにいる人達を今度は自分の手で救いたいという思いをアリアは秘かに抱いている。
そして、誰かを救えた時に初めて今は無い自身の魔法名を見定める事ができるとアリアは考えている。また、少数ながらアリアに“独特の魔術”を呑み込ませている(=「ルンペルシュティルツヒェンの命名論」にて扱えるよう教えている)者達の例として、
世界中の蛇伝承を蒐集している「多からなる一」の現主導者
イロ=コイやかつて傭兵魔術集団「革命者の王冠」に所属するなど極めて魔術的戦闘経験が豊富な
ビッグス=フォー=カラミズム等がいる。
最近では生物の心を読めると豪語する
トワイライト=グリモスに自分の通訳係になって貰おうと果敢にアタックしている。
「ルンペルシュティルツヒェンの命名論」はアリア主体の魔術だが、「災厄の坩堝」による魔術は原典が主体となっている為にトワイライトはアリアのアタックを強制的に止める事ができない。
また、心を読まれる事を全く恐れないアリアのアタックにトワイライトは辟易しながらもアリアの魔術が有益である事自体は認めており、必要だと思う範囲で渋々付き合っているが通訳係を承諾した事は一度も無い。
現状構成員では無い為に『未来を変える』必要でも無い限り外に戦闘に行く機会が中々無いアリアは、年端もいかない子供らしく今日もまたハニワ三姉妹と一緒に大地を駆け回りながら多種多様な文化に彩られている街の中で元気に遊んでいる。
【特徴】
年齢通り小学生くらいの体格。腰まで届くボリュームたっぷりの髪は全体的に深い青色だが毛先付近は翠色に染まっている。
鳥の羽が装着されている麦藁帽子を被り、エメラルドブルーのチューブトップとスカート風パレオを着用する。パレオの下には短めの黒スパッツを穿いている。いつも裸足。
自分の性は知らない。アリアという名は所有していた両親の遺品に記載されていたもの。
【台詞】「ルンペルシュティルツヒェンの命名論」を用いない限り人間と会話する事ができない。独り言も漏らせない。人間では無い生命体に話し掛ける事はできるが、アリアの声が聞こえる範囲に人が来た途端喋れなくなる。
「うー、うーあー。……むーむー。いーあー!」
「ハイヌウェレもオホゲツヒメも『産める』んだよね。…私はもう子供を産めないからさ、ちょっと羨ましいな……なんて。えへへっ。切り合うのは全然羨ましくないけどね。伝承の再現と言えばそれまでだけど、ダイアムももうちょっと上手いやり方は無かったのかな?」
「(さぁ私の心を読んで!あなたみたいな魔術師と出会えるなんて想像すらしていなかったけど、あなたなら私の通訳係になれる!予知したあの未来を良い方向へ変える為に、あなたの力が必要なのよトワイライト!!)」
【SS使用条件】
特になし
最終更新:2016年03月08日 16:39