学園都市。東京西部周辺にある人口約230万人でその8割が学生である学生の街。
学校や学生寮などの数も多く教育機関を中心とした造りをしている。
科学技術も発展しており、その技術は外よりも20年は進んでいると言われている。
しかし最も外と違う点は大勢の学生を集めて「授業の一環」として脳の開発を行っており、
それによる「能力開発」を行っていることである。しかしそんな街でも一歩路地裏に入ると途端に治安が悪くなる。
そんな路地裏に一人の少女の叫び声が響いていた。
「だわはははー!負け犬結構!世の中
プライドを迷いなく捨てられる人間が長生きするようにできてるのよっ!そんじゃねー!」
お嬢様らしさなどカケラもない捨て台詞を発しながら、全速力で不良たちから逃げている金髪ショートカットの少女がいた。
しかし彼女が着ていたのは、まぎれもなく学園都市でも指折りの名門お嬢様学校・
常盤台中学の制服だ。
彼女の名は
金束晴天。通称・常盤台の負け犬。一応れっきとした常盤台中学の2年生である。
「まてやコラァ!」
「逃がしゃしねーゼッ」
「俺たちが泣く子も黙る『
ブラックウィザード』のメンバーだと知っての狼藉かコラァ!!」
「狼藉とか無駄にお嬢様っぽい言い方してんじゃないわよ!私へのあてつけかコノヤロォォォ!!」
常盤台のお嬢様とは思えないようなトラブル。どうしてこうなった?
……………時間を少しさかのぼってみよう。
――――――――――
常盤台中学の制服を着た小柄な気弱そうなお嬢様を、黒いジャケットを着た集団が取り囲んでいる。
「へっへっへっ、俺たちと気持ちいいことしようぜコラァ」
「このサプリ、レベルが上がるってシロモノだぜ?」
「逆らわないほうが身のためだゼッ」
少女は何か能力を使おうとしたが、うつろな目をした何もしゃべらなかったスキルアウトが少女に手をかざす。
すると少女は金縛りにあったように動けなくなった。
「へっへっへっ、そいつはこのサプリで1人だけ動けなくする念動能力に目覚めたんだコラァ」
「でも時間は短いからてっとり早くすませるぜ?」
「覚悟するんだゼッ」
彼らは手に持った薬を少女に無理やり飲ませようとしていた。
「いやっ、誰か……助けて」
「やめろっ!」
次の瞬間、うつろな目をしたスキルアウトがぶっ飛ばされ、少女はスキルアウトをよけた。
「何だコラァ!」
スキルアウトが振り向いた視線の先には、襲われていた少女と同じ
常盤台の制服を着た金髪の少女、金束晴天が立っていた。
「負け犬根性染みついても、結局困ってる人はほっとけないみたいだわ」
金束はやれやれといった表情をした後、少女のもとに駆け寄り無事を確かめた。
「大丈夫?」
「ええ、何とか」
「つーか、お前本当に常盤台のお嬢様かよコラァ」
「制服だけパクってきた、なんちゃってお嬢様じゃね?グーで殴ってたし?」
「そりゃ言えてるゼッ!」
「「「ギャハハハハハハハ!!」」」
「んだとゴルアァァァァ!!」
金束は能力・肉体強化(チューンナップ)でうつろなスキルアウトをぶっ飛ばしたとき同様
見た目は変わらないが強化した拳で、スキルアウトの1人をぶっ飛ばした。
「ぐわっ、一体何が?…がふっ」
「今のうちに逃げてっ!」
「あ、ありがとうございますっ!」
「やる気かコラァ」
「このへんにいるメンバー全員呼んで来るんだゼッ!」
「了解だ!携帯貸せコラァ」
襲われていた常盤台生はうまく逃がせたが、あれよあれよという間にスキルアウトの仲間が押し寄せてきた。
2、3人程度なら倒せると思っていたが10人近くとなるとさすがに彼女の能力では分が悪かった。
「ちょっ、この人数はヤバいっ!こうなりゃ逃げるが勝ちじゃあああ!!」
金束は肉体強化で今度は脚を強化して逃げ出した。
しかしスキルアウトたちはしつこく追いかけてきた。
――――――――――
で、今に至る。
「チクショー!しつこい奴らねっ!!」
逃げる金束の前方によく見知った人物がいた。黒髪ロングで前髪ぱっつん。
ついでに胸もぱっつんぱっつんの、微笑んでいるような細い目が特徴の常盤台の制服を着た少女だった。
「あ、晴ちゃんおはよ~~晴ちゃんモテモテだね~~」
「おはよ~~って場合じゃねええええええ!!希雨!何とかしろーー!!」
「え?後ろのお兄さんたち、晴ちゃんのお友達じゃないの?」
「んなわけあるかァァァ!こいつらに襲われてンのよォォォ!!」
「ふ~ん、晴ちゃんを襲ってるんだぁ~………」
穏やかそうな少女・
銀鈴希雨は相変わらず微笑んでいるような表情だ。だが急に金束に悪寒が走った。
(ゲッ、希雨の奴相当怒ってる……)
見た前の表情が変わらないせいか彼女が怒っているのに気付いたのは金束だけで、彼女はそっとスキルアウトたちから距離を取った。
それにも気付かずスキルアウトたちは、下品な表情を浮かべながら銀鈴を取り囲む。
「へっへっへっ、こっちはまともそうなお嬢ちゃんだなコラァ」
「胸もさっきの下品な奴よりデケェしな」
「俺たちと薬(イイモノ)キメようゼッ」
「セイチャンガ、ゲヒン?…………オマエラミンナコオッチャエ」
そうつぶやくと、銀鈴は腰に携えていたペットボトルの水を思いっきりスキルアウトたちに浴びせてタッチしていった。
次の瞬間、氷でできた愉快なオブジェが彼らの数だけそびえたっていた。
これが濡れている触れたものを凍らせる銀鈴の能力・氷結籠手(アイスハンド)である。
「あなたたちのドブ水以下の下品さにはかないませ~ん。フフフ」
(お、鬼だ……希雨の後ろに鬼が見える……)
「晴ちゃん、もう大丈夫だよっ♪」
すると、愉快なオブジェのかげからもう一人スキルアウトが現れた。
「ナメたまねをしてくれたな」
「あっ、せっちゃんに月ちゃんおはよ~~」
「その油断こそが君を苦しませ俺に快感を………おぶうっ!!」
が、すぐに飛んできた小麦色の肌をした野生児のドロップキックの餌食となった。
驚くべきことに、お嬢様という単語が金束以上に無縁そうな彼女も常盤台中学の制服を着ていた。
ワイシャツ姿で、胸の部分が止められないのかボタンを2、3個止めていないという激しく着崩した状態ではあったが……。
「せいてん!きさめ!大丈夫かっ!」
「ま、まってくださいですぅ……」
「つきよはもう少し体を鍛えたほうがいいっちゃ!」
「ゼェゼェ………あなたが速すぎるんですぅ」
その野生児・
銅街世津の後ろから、もう一人小柄な眼鏡の少女が息を切らしながらやってきた。
こちらは銅街とは対照的に、雪のように色白で常盤台の制服も校則通り1番上のボタンまできっちり止めていた。
それとほぼ同時に、肩あたりまでの茶髪の少女とツインテールの風紀委員が反対側の路地から現れた。
「あれ?ウチの子がスキルアウトに襲われてるって聞いたんだけど?」
「ジャッジメントですの!って何ですのこの愉快な氷のオブジェは!……さてはまたあいつらですの!?」
「あいつら?」
「常盤台バカルテット、常盤台のエースであるお姉様とは正反対の常盤台の恥部ですの!」
反対側から出てきた彼女たちは、名門常盤台中学でもエースと謳われる「超電磁砲(レールガン)」御坂美琴と
ルームメイトで優秀な風紀委員でもある白井黒子である。白井の発言に金束は即座に反応した。
「何だとこの白黒野郎ォォォ!!」
「ハン、相変わらず負け犬の遠吠えは下品ですの」
「まあまあ、金束さんも白井さんも落ち着いてくださいです」
「そうよ黒子、アンタも無駄に喧嘩売らない!」
「しかし、風紀委員でもないのにお姉様もコイツらも………」
するとこの空気をぶち壊すように、いつもののんびりした口調で銀鈴は
さっき使用したペットボトルを片手に御坂に話しかけた。
「あっ、御坂さんだ~。よかったらサインもらえます?」
「え、ええサインくらいなら……」
「バカルテットォォ!お姉様に近寄るんじゃねえですのおおおお!!」
すかさず白井が銀鈴を威嚇する。ツインテールがうねうねと別の生き物のように不気味に動いていた。
銀鈴が一瞬ひるんだ隙を逃さず白井は御坂の手をとった。
「お姉様、早く行かないと初春たちとの待ち合わせに遅れますわよ。テレポートで飛びますのっ!」
「え?ちょ、ちょっと!黒子!」
次の瞬間、御坂と白井はテレポートで現場から消えた。
「あ、サイン…………orz」
「まあそう気を落としちゃいかん!きさめ!元気出すっちゃ!」
「ウイハル?うちの学校にそんな名前の子いたか?」
「他校の生徒でしょう。御坂さんなら他校生の友人がいてもおかしくないです」
「超能力者で他校生にも慕われているとか、チクショーーー!リア充爆発しろォォォォ!!」
「晴ちゃん、白黒さんはいいけど御坂さんは悪く言わないでぇ~~~」
「白井さんはいいのかよ……です」
すると黒髪長髪の警備員服からでもわかるほどの、スタイル抜群の女性警備員が声をかけてきた。
彼女の名は黄泉川愛穂。このあたりではいい意味でも悪い意味でも、色々な意味で有名な警備員だ。
「白井が言ってた、あいつの代わりに事情徴収受けてくれるのはお前らじゃん?」
「えぇっ??」
「あっ黄泉川さんだ~~」
「 (´・ω・`) モキュ?」
「あの白黒野郎ォォォォーーーーーーーー!!!」
「ちょっ、お前ちょっとうるさいじゃん」
逃走した白井黒子の分も含め、4人はがっつり事情徴収されたそうな。
(ほとんど私しかまともに答えてませんでしたがね……ハハッ)
By最後までフルネームが出る機会がなかった鉄なんとかさん……ではなく
鉄鞘月代
END
(補足)
氷の愉快なオブジェのかげから出てきたスキルアウトは、薬で能力に目覚め幹部になる前の
永観策夜です。
攻撃を受けた後、応戦しようともしましたが敵の人数が集まってきたため、すぐにこっそり逃げました。
最終更新:2012年06月20日 23:16