多数の学校を擁する学園都市でも5本の指に入ると言われる、お嬢様学校・
常盤台中学。
能力レベルも3以上ないと、どんなに偉い人物であろうと入学試験を受ける資格すら与えられないという
学力面でも能力面でも名門中の名門と謳われる女子中学校だ。
そんな学校にふさわしくない小学生の口げんかのような言い争いが起きていた。
1人は常盤台のエース・御坂美琴のルームメイトにして1年生ながら優秀な風紀委員・白井黒子。
もう1人は通称・常盤台の負け犬こと
金束晴天の幼馴染で親友の2年生・
銀鈴希雨だ。
「だから~~晴ちゃんだってば~~」
「キィー相変らずあなたの言動はイライラしますの!お姉様に決まっておりますの!!」
「「常盤台1かっこいいのはっ!」」
「お姉様ですの!」
「晴ちゃんだよ~」
「お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様あぁぁぁ!!」
「晴ちゃん晴ちゃん晴ちゃん晴ちゃん晴ちゃん晴ちゃん晴ちゃんんん~~!!」
「だいたいあなたは、お姉様も狙っている浮気者じゃありませんの!」
「狙ってないよ~確かに御坂さんもかっこいいよ~。だけど1番は晴ちゃんだよ~~」
両者とも自分のパートナーが1番だということに対して一歩も引かない。
なぜか2人とも普段よりヒートアップしているようだ。
何事かと他の常盤台生の中には、彼女たちの様子が気になって遠巻きに見ている者もいる。
「何なら能力勝負で決めますの?」
「白黒さんがいいならやろうかぁ~~」
白井は犯人を捕獲する際に使用する鉄矢を手元にテレポートで持ってきた。
対する銀鈴は腰のペットボトルに右手を添えて居合抜きのような構えをとった。
「前々から風紀委員でもないのに、犯人を倒すあなたには一度お灸をすえようと思っていましたのッ!」
「それは御坂さんもやってるよ~。それにこの間は白黒さん、私たちに事情徴収押し付けやがったよねぇ~」
「だまらっしゃいですの!今日という今日はジャッジメントしてやりますの!」
両者からは、とてもお嬢様とは思えないドス黒いオーラが出ており誰も近づけないでいた。
そんな中勇気を出して2人を仲裁しに来た人物がいた。
大和撫子という言葉がふさわしい美人で、中学生とは思えないほどスタイル抜群だ。
彼女のあまりの大和撫子具合に周囲の者は一瞬、彼女の服装が常盤台中学の制服ではなく和服に見えた。
腰まである長い黒髪を姫カットにしており、頭には綺麗なカンザシをさしている。
彼女が動くたびに長髪から良い香りが漂い、成人女性やグラビアでもめったに見られないような大きな胸が弾んだ。
彼女の名は
鬼ヶ原嬌看(おにがわら きょうみ)。名前だけならどこぞの極道なお方を匂わせるような人物であるが……
「ひっ!……あのう……、喧嘩はだめですぅ……」
「「あ゛あっ!?」」
「ひいいいいい!!きゃー!やめてー!こないでー!」
中身は極道とはほど遠い心優しく、か弱い女の子だった。
白井と銀鈴に睨まれ、怯えて両手をじたばたさせる。そのたびにまた鬼ヶ原の大きな胸が弾む。
その怯えている様子を見て、恐がらせて申し訳なかったと思い2人はそれぞれの武器を片づけた。
「おっと、どなたかは存じませんが、巻き込んでしまい申し訳ありませんの」
「あらいけない、ごめんなさい~~」
「銀鈴さん、この方に免じて串刺しは勘弁してやりますの」
「命拾いしたねぇ~~白黒さん♪」
2人は能力で暴れるのはやめたようだ。しかしまだ彼女たちは主張を崩さず睨み合っていた。
鬼ヶ原は、もしかして2人の喧嘩の原因が自分の能力なんじゃないかと思い聞いてみた。
「あの……2人とも、私の能力は平気なんですか?」
「何のことですの?」
「何のこと~~?」
鬼ヶ原は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら自分の能力と、白井と銀鈴が言い争う直前にうっかり発動してしまったことを告げた。
「私、その……発情促進(バイアグラ)って能力で…あの…みんなを…発情させちゃうんです…さっき、うっかり発動して…」
「「ええっ!?」」
「では私がいつもよりお姉様を熱く語ったのも……」
「私がいつもより熱くなったのも~~?」
「いや、それが、興奮はしますが対象は私になっちゃうはずなんですが……」
「ハン、私はお姉様にしか発情しませんの!」
「私も発情はしないかな~~白黒さんと違って」
(ななな、何?何なのこの人たちーーー!?)
完全ではないが自分の暴走した能力が効かない人物が一度に2人も現れたことに、鬼ヶ原は困惑していた。
言い争っていたはずの2人の少女はなぜかドヤ顔をしていた。(銀鈴は表情が読みにくいためわかりにくかったが……)
そして、はたから見るとすごくどうでもよさそうな議論を再び始めた。
「と・に・か・く!常盤台1かっこいいのはお姉様以外ありえませんの!」
「晴ちゃんだよおぉぉぉ~~~~!」
「ぬおおおおお姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様あぁぁぁ!!」
「晴ちゃん晴ちゃん晴ちゃん晴ちゃん晴ちゃん晴ちゃん晴ちゃんんん~~!!」
「ゼェ……ゼェ……やりますわね…」
「ふぅ……ふぅ……白黒さん…こそ……」
(これだから私の能力効かないのかな……;)
騒ぎを聞きつけて、そろそろ先生か誰か出てくるかと思ったそのとき
両者に対してほぼ同時に斜め45度から首の後ろに綺麗にチョップをきめた者がいた。
2人の保護者もといパートナーである御坂美琴と金束晴天である。
「全く、風紀委員が校内で暴れてどうするの」
「これ以上騒ぐとまた先生か寮監にドヤされるわよ」
白井と銀鈴は一瞬「お前が言うな」という言葉が頭をよぎり、倒れた。
教師か寮監、特に常盤台の絶対恐怖の象徴・泣く子も黙る寮監様が出現するまでに強引ではあるが
事態を収拾できたことはこの場にいる全員にとって幸福と言えただろう。
現にこの場にいたギャラリーほぼ全員が心の中で御坂・金束に対し「グッジョブ!」と親指を立てていた。
実際やってる人もちらほらいた。
「ゴメンね。ウチの黒子が迷惑かけたみたいで」
「いやいや、こっちも悪かった」
「お互い苦労するわね」
「ああ…」
常盤台のエースと負け犬は変な所で意気投合してしまい、どこか遠くを見ていた。
パートナーの曲者っぷりに苦労するという点で。
「「先輩、こいつが迷惑かけてすみませんでした!!」」
「い、いえ……」
御坂と金束は背中にそれぞれの手のかかるパートナーを背負い、鬼ヶ原に謝ってそれぞれ去って行った。
2人とも彼女が先輩ではなく1年生であることを最後まで気付かないままに。
どうやら鬼ヶ原の容姿を見て勝手に先輩だと判断してしまったようだ。決して胸を見て判断したわけではない……と思う。
このままこの先も気付かないほうが幸せかもしれないが。
(あの娘が私と同じ1年だということは黙っておきますの。お姉様が『限りなく絶望に近い運命』に堕ちるのを避けるためにも……)
(あの娘が1年生だってことは黙っとこ~。晴ちゃんまた「私はやっぱり負け犬かー!」とか言ってスネちゃいそうだし……)
………白井と銀鈴は、変な所で気遣いが見られる部分も似た者同士だったのかもしれない。
そして1人取り残された鬼ヶ原はつぶやいた。
「私、1年生なんですけど……」
―――――――――――――
「私たちの出番はなかと?」
「ありませんよ」
「ちなみに、きさめとしろくろがあのまま勝負してたらどっちが勝ったと?」
「銀鈴さんには悪いですが、白井さんですね」キッパリ
「やっぱ風紀委員ってすごかねー」
「風紀委員はハードな訓練してますからねー」(せっちゃんなら、わからなかったかもしれませんが……)
「それにしても、私も出たかったっちゃ!」
「私も…出たかったですよ……名前覚えてもらうチャンスが……グスッ……ヒック」
「つ、つきよ?」(これは……あのモードに入る前兆っちゃ……)
「せっちゃんはまだいいですよ!少しでも出番あれば存在濃いですし!私なんか『鉄なんとかさんw』とか言われてるんですよ!!」
「お、おちつくっちゃ。つきよ!」
「ウワアアァァァン!ヤダヤダヤダァァァ!!出番欲しいよおおおお!名前覚えて欲しいよおおおおお!!」ジタバタジタバタ
「せいてーん!きさめー!早く帰ってきとくれぇぇーーーーーーー!!」
おわれ☆
最終更新:2011年12月07日 21:22