反応のスケールアップ
少量スケールでの反応が収率良く進行し,その条件を用いていざ大量スケールの合成を行おうという場合,考慮すべきポイントがある。
- 示量的と示強的
数値には,示量的なものと示強的なものがある。
・示量的
量を表す数値。体積や質量など,物質の量そのものに依存する数値。
量を表す数値。体積や質量など,物質の量そのものに依存する数値。
・示強的
性質や強さを現す数値。温度や気圧など,物質の量に依存しない数値。
性質や強さを現す数値。温度や気圧など,物質の量に依存しない数値。
この二つの数値をきっちりと区別し,示量的な数値のみ,スケールアップする事。基質の量を2倍にするならば,そのほか全ての示量的な数値も2倍にする。
示量的 | 示強的 |
スケールアップする | スケールアップしない |
化合物の質量 | 反応温度 |
溶液の体積 | 圧力 |
反応時間 |
スケールアップに付随する問題点
スケールアップは,基本的に示量性数値をすべて等倍にすればよいのである。ところが,実際にスケールアップしてみると,少量スケールの時とは様子が異なってくることがある。
- サイズ効果
物質の質量が小さいほど,質量あたりの表面積の割合が大きくなる。
このことが示しているのは,
少量スケールでは固体の表面積が大きく,反応性が高い。
ということである。つまり,少量スケールで反応が効率よく進行したからといって,スケールアップを安易に行うと,固体の表面積が相対的に小さくなって反応が遅くなる。
このことが示しているのは,
少量スケールでは固体の表面積が大きく,反応性が高い。
ということである。つまり,少量スケールで反応が効率よく進行したからといって,スケールアップを安易に行うと,固体の表面積が相対的に小さくなって反応が遅くなる。
- 熱効率
スケールが小さい時には溶液の体積が小さく,一瞬で冷却,加温することができる。しかし大量スケールになると,攪拌の効率が低くなる。