0143:眠れぬ朝は君のせい・前編 ◆GrUZH7gF.E
───ボンチューさん強いっすね
(ちがう……!)
───ボンチュー、やっぱオマエ強えなあ
(オレは……アイツを……!)
───やっぱボンチューさんは最強っすよ
(……オレが弱かったから……)
───ボンチューさん十分強いじゃないですか
(助けることが…………できなかったんだ!!!!)
起き上がる。と、同時に体中に電撃のような衝撃が走りまわった。
(う!!……ぐっ………!!)
ひどく……うなされていた。
気が付くと、自分は木の板の床の上に寝かされていたようだ。
この痛みが激戦の後だったということを思い出させる。
(そして……あの緑野郎に打ちのめされた後…たしか妙な格好をした連中に助けられた……)
ボンチューは辺りを見渡す。
自分以外は誰もいない。
蟹座の黄金聖衣はいつのまにか脱げたのか、元の形態に戻って壁際に置いてある。
(……連中は……どこに行ったんだ?)
ただ自分を助けて、さっさとどこかへ移動してしまったのか?
もしやと思い、一番そばにあったドアを開けてみる。やはり誰もいない。
しかし、その部屋の向こう側にテーブルやキッチンのようなものをみつけた。
どうも意識はハッキリしないが、先ほどから、ひどく喉が渇いていた。
戦闘の疲れか、先ほどの夢にうなされたからか…?
とりあえず、今は水が欲しい。
水を飲むためにキッチンへ向かおうとする……だが、まだ全身が悲鳴をあげていた。
(……グッ…!!こりゃ相当やべえな…!!)
体を引きずるように移動し、テーブルの横の奥側にある流し台の水道に手を伸ばす。
少しずつ蛇口をひねる…が、予想に反し、水は一滴もでてこない。
「……!?」
蛇口を全開までひねるも、結果はかわらず水が出てくる気配は一切無かった。
(マジか…!?クソッ……!!)
前のめりに崩れる
ボンチュー。精神にも疲れがきたしているのか、急に支えを取られたような感覚だった。
たしか支給品に水があった気がしたが、もう体を動かす気力も無く、バッグも見当たらない。
再び眠ろうかと思った、その時だった。
「……おお、目を覚ましていたか」
キッチンの隣にあるドア…おそらく裏口であろう、頭から角を生やした男がのぞいていた。
ボンチューは流し台から再三体を起こそうとするが、やはり力が入らない。
むしろ足の力が抜けていき……その場に倒れこんでしまった。
「ど、どうした!大丈夫か、オイ!?」
床に伏している
ボンチューに、その男が駆け寄る。
「……………みずを………たの…む……………」
うつろな目で、力なく
ボンチューがつぶやいた。
「水か!?」
男は再び裏口を開け、外に置いてあったバッグをとる。
そのバッグからペットボトルを一つ取り出して、
ボンチューの口へと運ぶ。
ボンチューはゆっくりと水を飲み──少しずつ、確実に、体中に力が戻ってくるのを感じていた。
「………
バッファローマンっていうのか、あんた……すまないな、また世話になっちまった」
改めて椅子にもたれかかった状態から
ボンチューは小さく会釈をした。
「お前の名前は……ええと、
ボンチューだったな。
別に気にすることは無いさ。苦しむ時に助け合うのは当たり前なもんだろ?」
バッファローマンは食料のホイポイカプセルを取り出し、適当にメニューを選り分けていた。
「いろんな場所を探したんだが、とりあえず今のところ食料と水は限られた分しかないらしい。気をつけておけ」
「……ハッ、だからそこの蛇口からはなにも出てこなかった、てことか。小さな骨折り損だな」
少し鼻にかける感じで笑う
ボンチュー。
「ああ。だが、あの緑の男との戦闘が響いているはずだ。小さくてもあまり無理に動くんじゃないぞ。」
軽く
バッファローマンは
ボンチューに注意を喚起した。
「なあ…ところであの変な鎧をつけた男はどこにいるんだ……?オレが起きた時から見かけてないぞ?」
「変な鎧ってなあ……はじめ会った時のお前も妙な鎧を着けていたじゃねえか」
「あれは……」
返す言葉の無い
ボンチューを尻目に、
バッファローマンはバッグから地図を取り出し、テーブルの上に広げた。
「……その鎧男は
世直しマンという。
ヤツはいま、青森県の北部……下北半島というのか、その北端の方を調べに行っている」
「………なぜそんなところに?」
「やはり、寝ていたから聞こえてなかったんだな。例の放送だ」
ススス、と
バッファローマンの巨大な指が北海道の方を指す。
そこには大きなバッテンのマークと『8:00』という文字が書かれていた
「禁止エリアという
ルールがあったろ?その場所と時間が放送で発表されてな。
それで北海道がほんのちょっと前、禁止エリアになっちまったのさ。
つまり、もうこの海を渡って逃げたりすることは出来ねえことになるわけだ」
「……いやいや、だったらなおさらそんなところへ行く必要は無いんじゃねえのか?」
少し身を乗り出す
ボンチュー。と、
バッファローマンは指を立てて、左右にチッチッと小さく振った。
「いや、違う。よく考えてみろ、北海道が禁止エリアになった。そうなると北海道にいるやつはどうする?」
こういう考えることは苦手……といった感じに頭をボリボリと掻く
ボンチュー。
「そりゃあ…こっちに渡るしかないんじゃねえの?」
「そのとおり。必ずこっちの列島に移ってくるはずなんだ。そこで
世直しマンが連中に声をかける。
あいつは今、心を読む機械をもっている。相手の心を読んで敵か味方かの判断をする。
そして味方になりそうなヤツらと交渉をするわけだ。
このゲームに乗っているやつがそう多いとは思わんからな。だから今のうちに仲間を増やしておくってわけだ」
バッファローマンは地図上の北海道と青森県の間を指で行き来させる。
しかし、
ボンチューはとりわけ「心を読む機械」という単語の方に反応していた。
もはや何でもありということには魔界での戦いで慣れていたつもりだったが……
世界は広い……それを改めて痛感する
ボンチュー。
「まあ襲ってくるなら戦う、敵意が無いなら仲間に誘う、そんなところだ。
仮に敵に出会ったとしても、
世直しマンはそんな簡単にくたばるヤツではない。あいつの実力はオレも認めるところだ」
「なんでこっちの青函トンネルとかいうヤツのほうに行かねえんだ?
普通、そういう奴らは海じゃなくてここを通ってくるんじゃないのか?」
「もちろんそちら側にも回るさ。
ただ、調べるには順番がいる。ならばここから近い方を調べようってことだ。」
「それじゃあ……時間がかかり過ぎねえか?遠回りしなきゃ…」
「その点は心配に及ばねえな。我々は人間とは比にならん体力を持っているのさ。
対岸まで泳ぐなんて朝飯前のもんだぜ」
「帰ってくる時は?相手もそんなに体力あるわけじゃないだろうし」
「その時はちゃんと陸を回ってくるさ。
ここは本物の日本よりかなり狭くなっていやがる。だいたい1時間もすりゃあ帰ってくるだろうよ」
ボンチューの疑問に
バッファローマンは次々と答えを返していった。
「さて、ちょっと話を区切るか。ほらとりあえずメシだ、食っとけ食っとけ」
バッグから取り出したカプセルのスイッチを押して
ボンチューの元に放る
バッファローマン。
「BOMB!」と、そこにどんぶりのままのラーメンがでてきた。
そばのバッグからパックに入ったパンを取り、パリッと袋を破る。
「…………」
ふと、箸を握ったまま、
ボンチューが静かになった。
「……どうした?少しでも食べておかないと、この先がもたんぞ?」
パンを取り出し、適当なサイズにちぎって食べる
バッファローマン。
「あ、ああ………」
(猫舌とは……言えねえ……)
ボンチューはラーメンを必死に冷まそうと、息をフーフー吹き続けていた。
「それと食べながらでいい、ちょいとこいつを見てくれ」
バッファローマンはテーブルの中心に紙を広げた。
なかなか食べられずにいるラーメンと格闘しながら視線を移す
ボンチュー。
それは
バッファローマンの名前を確認する時に自分も見た参加者一覧の紙。
ただ自分のソレと違うのは、所々名前のところに横線や注意書きのようなものが記されているのだ。
「放送で発表された死亡者には横線を入れてあるんだ。
その中に……自分の知り合いがいるかどうか、確認してくれないか?」
「お、おう……」
そう言われ、
ボンチューは咀嚼しながら一覧を眺めた。
(………
たけし…
マミー………んー……二人とも無事みたいだな。)
強敵(とも)の無事を確認し、少し安心する
ボンチュー。
自分も化け物に殺されかけていたのだ。
あの二人だとしても、必ずしも生き延びてるとは思えなかっただけ、少しばかりの嬉々だった。
───ただ、自分の隣にあった「
ゴン蔵」にも横線が引かれていたのだが……
ボンチューは「誰だコイツ?」という感じで、気にすら留めていなかった。
「俺の仲間達は無事だった。当たり前だがな。
ただ……まあ、
世直しマンの知り合いが一人やられていたそうだ。それもかなりの実力者だったそうだがな」
「オレのツレも無事みたいだ。そいつはもうしまっていいぜ」
「さて、おれはちょっと出かけることにするぜ。
どうも日本は慣れねえからな……ここらへんをまだ調べなきゃならねえ」
「それと、お前はまだ安静にしとけよ!まだ動ける体じゃねえんだからな!」
さっきまでの口調より、ひとしきり大きな声で
ボンチューを注意した。
ちぎったパンをもしゃもしゃと食べ、ペットボトルの水を一口だけ飲んだ。
「……ああ、ちゃんとここに残っとくわ。オレもだいぶ調子がよくなった。
もう少し休めばオレも十分動けるようになるだろ。その時は力になってみせるから頼りにしてくれや…!」
ボンチューはいつもの威勢も取り戻し、自身たっぷりの口ぶりで言った。
「ハハハ そいつは頼もしい……………??」
バッファローマンは窓の外を覗いた、そしてそこに何者かの人影が見えた。
「お?」
同じく窓に視線を移す
ボンチュー。
確かに遠くに見えるのは、自分を助けてくれた時に見た鎧の男、
世直しマンだった。
悠然とした面持ちで、ずんずんこちらに歩いてきている。
だが、前に見た時と微妙に違うシルエット。
その肩には…ぐったりとして担がれる、黒髪の少女の姿があった。
【青森県/午前】
【ボンチュー@世紀末リーダー伝たけし!】
[状態]ダメージ大、睡眠中
[装備]なし
[道具]荷物一式、蟹座の黄金聖衣(元の形態)@聖闘士星矢
[思考]一刻も早く体調を回復させる
【世直しマン@とっても!ラッキーマン】
[状態]健康
[装備]世直しマンの鎧@とっても!ラッキーマン
読心マシーン@とっても!ラッキーマン
[道具]荷物一式
[思考]?
【バッファローマン@キン肉マン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]荷物一式
[思考]世直しマンの連れてきた少女が気になる
【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]右腕に軽度の火傷、気絶中?
[装備]コルトパイソン357マグナム、残弾21発@CITY HUNTER
[道具]荷物一式 ・遊戯王カード(青眼の白龍・次の0時まで使用不可)@遊戯王
[思考]?
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最終更新:2023年12月17日 06:11